タワーディフェンス
オロルンの背後に、アセンダントの一団が忍び寄っていた。レーザーブラスターが、唸りを上げて起動する。
その一人がバイザーを直す。「ターゲット確保。どうします――」
「いや、いい」ハンクは彼らを見もせずに、片手を上げた。「放っておけ」
アセンダントたちが、動きを止めた。
一人の兵士が囁く。「今、『いい』って言ったか?」
「ああ、でも――」
「おい、こいつ今、ボスを暗殺しようとしたんだぞ!」
「しっ、黙れ! ボスに文句つける気か!?」
オロルンは、肩を一度、軽く回した。すでに荒れていると分かっている海に飛び込む前の男が、体をほぐすような仕草だった。
――潮の流れに乗れ。すでに掴まれちまってから逆らったって、意味はねえ。
「フィンガーナイフ!」
指が、純粋な意志の刃と化した。目で追うことすら許さない速さで、前へと突き出される。手が霞むほどの速度で動き、ハンクの胴体、胸、肩、腕へと突き刺さっていく。千回はこの動作を繰り返し、一度たりとも二度目を必要としたことがない男のリズムで。
ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!
一撃ごとに、肌に命中する。傷口から血が滲み、すぐに広がっていった。
そして彼は動きを止め、胸を大きく上下させながら、後ろに一歩退いた。
ハンクは、自分の体を見下ろした。無数の小さな穴から、シャツを伝って血が流れている。
一瞬の沈黙。
そして――
「ハハハ」
ハンクがにやりと笑い、巨大な片手の甲で胸の血を拭った。
「感心したぞ。ただの暗殺者にしちゃあ、いい動きしやがる」
彼の目が、敬意とまでは言えないが、それに近い何かを湛えてオロルンに向けられた。
「その七死尽ってやつ、本気で悪くねえな」
オロルンが答える前に――
掴まれた。
ハンクの手が、彼の左腕を握り締めた。万力そのものだった。完全に、逃げ場がない。
オロルンは、引き戻そうとした。
びくともしない。
ハンクが、握りを強めた。
ボキッ。
「ぐああああっ!」
痛みが腕を突き抜ける。骨が、限界の縁で軋んでいた。
必死に、右手を突き出す――
「フィンガーナイフ!」
斬る。斬る。斬る。ハンクの胸、肋骨、喉へと、次々に打ち込んでいく。
何も起こらない。
ハンクは、ほとんど身じろぎもしなかった。
オロルンは歯を食いしばり、口の中に鉄の味を感じた。「なんでお前、死なねえんだよ!?」
「俺の体は、とんでもなく頑丈でな」ハンクが握る力をさらに強める。オロルンの視界の端が、揺らいだ。「それに――もし俺が本気で力を込めたら、お前の指なんて、乾いた珊瑚みたいにへし折れるぜ」
そして、ハンクが体をひねった。
ブンッ!
オロルンの全身が、まるでピンと張ったロープを引かれたかのように空を切り裂いた。重さもなく、あるべき形も失って。ハンクの筋肉が、盛り上がる――
投げた。
彼は空へと打ち上げられ、制御を失って回転しながら、内臓が遥か下に置き去りにされるような感覚を覚えた。
ハンクの拳が、彼を迎えるように上がる。岩塊ほどの大きさで。辛抱強く。待っていた。
ボキッ。
拳が肋骨を内側へ陥没させ、衝撃波が中庭の石畳を波打たせた。オロルンの体は、さらに上へと打ち上げられていく――
ズガアアン!
高層ビルを貫通した。ガラスと鉄骨が、きらめく雨のように四方へ弾け飛ぶ。
沈黙。ひとかたまりの瓦礫が外れて落ち、下の舗道に激突するまで、ゆっくりと転がり続けた。
ハンクが後頭部を掻いた。「ああ、まいったな」彼はため息をつき、自分のビルに開いたぎざぎざの穴を見上げた。「ハンクタワー、壊しちまった」
アセンダントたちが、それを見つめた。
一人が、ついに呟く。「あの人、塔に自分の名前つけてたのか」
「黙って警報鳴らせ!」
「はい! 警報! 鳴らします!」
サイレンが、施設全体を切り裂いた。
オロルンは、鉄筋と石膏の破片の山の中に横たわり、割れた床に血を吐きながら咳き込んでいた。胸が、まるで海そのものに座られたかのように痛む。手を動かそうとすると、震えた。
自分の肋骨を見下ろす。中の何かが、確実に折れていた。
「チッ」彼はコンクリートに赤い唾を吐いた。それから、歯を食いしばりながら、ほとんど親しみを込めるように呟いた。「くそ。あの野郎、サンゴ礁の牙みたいな殴り方しやがる」
すべてが痛むにもかかわらず、乾いた、信じられないという笑いが漏れる。
「黄色い目玉、こいつをちゃんと見てるといいけどな。語る価値のある話になったぞ、これは」
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その頃――
警報が、刑務所の廊下いっぱいに鳴り響いていた。
エレオの耳がぴくりと動く。「うわ、まずい! なんでバレたんだ!? 誰も警報鳴らしてるとこ見てないのに!」
トニーは腕を組み、まるで天気を確認する男のような、動じない様子で周囲を見渡した。「俺もだ。まあ、行く頃合いだな」
二人が引き返そうとした、その時――
格子の間から手が伸び、エレオの腕を掴んだ。
「待て! 行く前に――俺を出してくれ。頼む」
エレオとトニーが振り返ると、鉄格子に体を押しつけた影が見えた。顔も体格も、独房の暗闇にすっかり紛れている。
トニーはエレオを一歩後ろに引き寄せた。急ぐことなく、だが確かに。「で、なぜ我々がそうする必要がある?」
囚人の声は、落ち着いていて、慎重だった――不安定な足場を選ぶように、言葉を一つ一つ選んでいる男の声。
「借りは返す」
エレオが両手を腰に当てた。「よし! じゃあ僕のクルーに入れ!」
「……は?」
トニーが彼に身を寄せ、囁く。「エレオ。本気か、それ」
「本気だよ」
影の男が、躊躇する。「本当に、それしか道はないのか」
エレオがにやりと笑う。「あれ? 自由になりたくないの?」
「わ、わかった、わかったよ! 入る!」
エレオが両手を打ち合わせる。「よし! さて……どうやって出す?」
トニーが、壁の光る赤いボタンをのんびりと指差した。「ここにあるぞ」
エレオが、大袈裟に顎を撫でる。「うーん。リーダーとして、僕がこのボタンを押すことにする」
トニーが顔をしかめた。「待て――市長の船を盗む計画を思いついたのは俺だぞ。押すのは俺だ」
「じゃあ、じゃんけんで決めよう!」
トニーが拳を鳴らす。「かかってこい」
囚人が、格子越しに顎を強張らせた。「お前ら、いい加減にしろよ!?」
エレオが彼に向き直る。「おい! 自由になりたいの、なりたくないの!?」
諦めたような唸り声が返ってきた。「わかった、わかったから! さっさとやってくれ!」
「じゃんけん――ぽん!」
エレオはグー。トニーはチョキ。
トニーが、まるで致命傷を受けた男のように胸骨を押さえてよろめいた。「くっそおおおお!」
「はっはっは! 僕の勝ち!」
エレオが、これ以上ないほど得意げにボタンを押す間、トニーは大袈裟に膝から崩れ落ちた。牢の扉が一斉にスライドして開き、光が廊下いっぱいに広がって、解放された囚人たちの列が瞬きしながら現れた。
その影の人物が、光の中に足を踏み出した。
長身で、電光のような青い髪が、ギザギザに尖って逆立っている。目は、深い水の上に張った氷のような色。真夜中を思わせる紺色の着物が、状況がどれほど混乱していても身の回りをきちんと整えておく男の、丁寧で控えめな清潔さで、その体にかかっていた。腰には漆塗りの刀――鞘は使い込まれているが、刃だけは、間違いなく手入れされていた。
彼はエレオの前で、片膝をついた。
「解放してくれたこと、感謝する」
エレオが瞬きする。「いやいや、ええと……?」
男が立ち上がる。「ケンジだ」
「いいね! 僕エレオ! こっちはトニー!」
トニーが、気だるい敬礼をした。「よう」
ケンジが頭を下げた。その動きは小さく、正確で、誠実さになる前から、体に叩き込まれてきた礼儀だった。「よろしく」
彼の声が、冷たくなる。「さて。俺の刀を探さねばならん」
エレオが、彼の前に飛び出した。「待って! さっき僕のクルーに入るって言ったよね!」
ケンジが鼻の付け根をつまむ。「すでに了承した」
「よし! じゃあ――ケンジ! 僕のクルーに入る!?」
「入ると、今言ったばかりだろうが」
トニーが、小さく笑い声を漏らす。「これは、面白いことになりそうだ」
一枚の紙が、空中に現れた。
『名前:ケンジ ―― 年齢:十六 ―― 身長:百七十五センチ ―― 種族:人間』
ケンジは、長く、ゆっくりと鼻から息を吐いた。今日一日についての理解を、まるごと再調整する男の呼吸だった。「もう後悔している」
エレオが、彼の肩に腕を回す。「家族へようこそ、ケンジ!」
ケンジが硬直する。「……離れろ」
「もう手遅れだぜ、相棒」トニーがにやりと笑う。「お前はもう、俺たちから逃げられない」
ケンジは首を回し、小さな緊張をほぐした。「わかった。俺の刀、取りに行っていいか」
「もちろん! たぶん、めちゃくちゃ強い奴と戦わなきゃ取り戻せないんじゃない?」
ケンジが、廊下の少し先にある扉を指差した。「いや。あの倉庫の中にある」
エレオが瞬きする。「あ」
一拍。
「インク・キャノン!」
爆風が扉を木っ端微塵に吹き飛ばし、煙が漂った。
トニーが爆笑する。「はっはっは! ナイスだ、エレオ!」
「どうも」
ケンジがため息をついた――生涯を忍耐と精密さの修行に費やしてきた剣士が、なぜかこんな場所に流れ着いてしまった、そんなため息だった。彼は瓦礫の中へと足を踏み入れた。
中では、痩せた男が看守のバッジをつけたまま、ケンジの刀を白くなるほど強く握りしめていた。この瞬間に至るまでの、あらゆる選択を明らかに再計算している様子だった。バッジには『フクシュウ』と書かれていた。
ケンジの目が、刀――自分の刀――に細められた。その佇まいが、とても静かに、とても穏やかになる。牢の扉が閉じられて以来ずっと背負っていた重荷を、下ろす男の静けさだった。
「渡せ」彼は言った。脅しではない。事実の陳述だった。繰り返す必要のない類の。
フクシュウは、手を震わせながら、次に何が起こるか確かめるリスクを冒すよりはと、刀を投げつけた。ケンジは見もせずにそれを空中で受け止め、すでに柄を返して、巻きの状態、重心のバランス、何も損なわれていないかを確かめる細部を確認していた。
そして、柄に気づいた。
上から下まで、小さな紫色の水玉模様で覆われていた。
ケンジの顎が、強張った。鼻から一度、息を吐く。
「お前……」
フクシュウが答える機会は、与えられなかった。ケンジの拳が、一つの滑らかな動きで彼の腹に命中した――怒りでも、残酷さでもなく、ただ、あまりにも長引いた会話の、速く、完全な終わりとして。男は体を折り曲げ、それ以上何も言わずに倒れた。
エレオとトニーが、背後で笑い声を上げた。
ケンジは刀を鞘に収めた――水玉模様など気にもせず、正確に、丁寧に。二度と開くつもりのない本を閉じる男の、静かな終止符とともに。
「助かった」トニーが、まだにやにやしながら言う。
「あいつは俺の忍耐に、先に血を流させた」ケンジが真顔で言う。「大抵の土俵では、それは正当な取引だ」
三人は廊下へと進んだ。サイレンが、ゆっくりと脈打つ赤い光を壁に流し続けている。ケンジは周囲を見渡しながら、すでに出口を計算していた――子供の頃から、どんな部屋でも常に三つの脱出経路を把握しておくよう叩き込まれてきた男の、反射的な習慣だった。
「よし。ここを出るぞ、その前に――」
「待って待って」エレオが遮る。「市長の船、盗まなきゃ」
ケンジが、ぴたりと止まった。「は?」
「うん」トニーが頷く。
ケンジは二人を振り返り、こめかみに血管を浮き立たせた。「お前ら、頭おかしいのか」
エレオが、廊下の先を大袈裟に指差す。「リーダーとして言う。船を取りに行く」
トニーが敬礼する。「賛成」
ケンジは、まるでこの五分間を肌から物理的に拭い去ろうとするかのように、ゆっくりと顔を手で拭った。「馬鹿に囲まれている」
「つまり、賛成ってことだな?」
長く、諦めたような息。「……わかった。了解だ」
三人は、警報の赤い光に照らされた薄暗い廊下を歩いた。足音が金属の床に響き、まるで建物そのものが、もっと悪いことが起きる前に息を止めているかのように、赤い光が壁を撫でていった。
そして――
ブンッ!
天井から、三体の巨大なロボットが落下してきた。重々しく、同期した音を立てて着地し、光る赤い目が一斉に三人を捉える。前腕に埋め込まれたレーザーブラスターが、唸りながら起動した。
「侵入者ハ止マレ!」
無機質で平坦な声が、三体分の声を一つの音として発した。
ケンジの眉が、驚きよりも苛立ちで、ぴくりと動いた。「チッ。うるさいな」
彼の刃が、鞘から一気に、しかし急ぐことなく抜かれる。その抜刀は、あまりにも滑らかで、ほとんど「動いた」とすら認識できないほどだった。
「剣閃!」
一筋の斬撃が、空気を切り裂いた。
ヒュオオオオ。
ザシュッ。
三体すべてが、音節の途中で胴体からきれいに分断された。断たれた配線から火花が散り、上半身がずり落ちて、煙を上げる金属の山となって床に崩れ落ちた。
ケンジは刀を納め、そのまま歩き続けた。「行くぞ」
エレオとトニーが、背後でハイタッチする。
「くうう」トニーがにやりと笑う。「今の、すげえかっこよかったな」
「だよね! 僕がやってもよかったんだけど、ケンジに見せ場譲ってあげたんだ」
ケンジは振り返らなかった。「黙れ」
三人はエレベーターに辿り着いた。金属の扉が開くと、五人の武装した兵士が、すでにブラスターを構えて待っていた。
「動くな! アセンダント部隊の命令により、貴様らを逮捕する! 大人しく投降しろ、犯罪者ども!」
エレオが首を傾げる。「待って待って――犯罪者? ちょっと言い方きつくない?」
一人の兵士が前に出る。ヘルメットの下から、間抜けなカールした口ひげがはみ出していた。「はっ! 市長の船を盗もうとしておいて、自分らが犯罪者じゃないと思ってんのか!? 笑わせるな!」
別の一人が腕を組む。「お前らみたいなクズを野放しにしないのが、俺たちの仕事だ!」
その時――
カチャン。
背後から、音がした。ケンジが振り返り、動きを止めた。
さらに多くのアセンダントが、明滅する警報の光の下でブラスターを光らせながら、暗がりから現れる。だが、彼の注意を引いたのは、それではなかった。
彼らの背後に、肩の高さだけで二メートルを超える、鱗に覆われた巨大な何かが立っていた。その体には、街のどこにも本来存在してはいけない類の、原始的で古い力が詰まっていた。爪が石を引っ掻く。ずらりと並んだ鋸状の牙が、涎を垂らしながら光っていた。
ケンジの目が、ぴくりと動いた。「あれは、一体何だ」
隊長らしき男がにやりと笑う。「ん? これか。うちのペットだ」
別の一人が付け加える。「しばらく餌やってないんだよな」
三人目が拳を鳴らした。「で、言っとくが――こいつ、めちゃくちゃ腹減ってるぞ」
その恐竜が、天井から埃が落ちるほどの咆哮を上げた。
ゴオオオオオオッ!
ケンジが、一歩後ずさる。「俺たち、恐竜と戦うのか、これ!?」
エレオが耳から耳まで届く笑みを浮かべ、つま先で弾みをつけた。「かっこいい! 僕、最初にあれと戦いたい!」
トニーが顎をさすりながら考え込む。「あいつらを先に食わせておけば、実質、相手にする人数が減るんじゃないか」
「そういう問題じゃないだろうが!」ケンジが鋭く返す。
アセンダントたちが、一斉に銃を構えた。「逃げ場はないぞ! 投降するか、消し飛ぶか選べ!」
エレオが拳を鳴らし、笑みを深めた。「へへ。殴って突破するしかないな」
ケンジは再び刀を抜き、構えを取った。それは、準備というより、一度も迷ったことのない唯一の言語に、感謝しながら帰っていく男の姿に近かった。
「こうなると思ってた」
トニーの笑みが、大きく、獰猛に広がった。
「派手にいこうぜ」




