↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付いたら???になっていた〜全てを飲み込む影〜  作者: 小鳥遊 蓮
第二章『ネクノロギア王国』
25/33

第二十二話

 

 洞窟を往復する頃には依頼を達成しており、日ももう少しで暮れる頃合いになっていた。

 洞窟を出て王都へ戻る途中、ソフィアが私の横に並び見上げてくる。


「あの、ご主人様を見ていて疑問に思ったことがあるのですが」

「ん?なんだ?」

「ご主人様のステータスは私達の何倍も高いもので、ここ数日で更に強くなられています。ですが、ご主人様の動きはそれ程常軌を逸したものではないように見えました」

「ふむ、そういえば確かにそうだな。私が特に意識して動いて無いのが理由かもしれん」

「えっと、どういう事でしょうか」

「言葉通りだ。蹴ろうと意識して蹴っているわけではなく、ただ蹴り上げる動きをしているだけであったり、走ろうとしているわけではなく、ただ少し速く移動しようと動いているに過ぎん」

「…それはつまり、手を抜いていると?」

「簡単に言えばそうなるか」


 スキルもそうだ。

 当てる為に位置だけは意識するが、特に攻撃的な意思を持って使っているわけではなく、これが良さそうだと発動しているだけだ。


 そういう意識1つで変わるのかは分からんが、ソフィアに指摘されるということはそういうことなのだろう。


「では、ご主人様の本気って…」

「見たいのか?」


 余計に怯える原因を作るつもりは無いのだが…


「ご主人様さえ良ければ、拝見したく…」

「…私も気になります」

「ふむ。お前達がそう言うならば」


 ではどうしようか。

 ここで攻撃スキルは危険だな。

 少し本気で走るだけにしよう。


 今までと違い明確に速く走る意識で地を蹴る。

 一瞬でソフィア達から遠ざかった私は【地面操作】で壁を作り、それを蹴ることで方向転換してソフィア達の下へ戻る。


「……え?…ご主人様、今あの土の壁まで行かれたのですか?」

「…200m近く離れていますが」

「本気で走るという感覚に慣れていない所為か少し離れすぎたな」

「やはり、ご主人様は凄いです」


 おや?思っていたより怯えなかったな。

 自分達から見たいと言ったからだろうか。

 そんなやりとりをしている内に南門に到着した。


 検問に見送られ王都へと入り、ギルドで依頼達成の報告をする。

 主人である私に銀貨1枚銅貨4枚、それと牙の買取価格の銀貨1枚が渡されたが、それをそのままソフィアへと渡す。


「え?あの、ご主人様?」

「これはお前達が受けお前達が達成した依頼だ。今後の為にも貯めておけ」

「は、はい…ありがとうございます」


『ネル、少し話が』

『はい、ソフィア様』

『ご主人様、明らかに私達を遠ざけてますよね?まるでもうすぐお別れするかのような…やはり、私達の態度が酷くご主人様に愛想を尽かされてしまったのでしょうか』

『…ソフィア様、一つ重大な事を見落としておりました』

『な、何ですか?』

『私達は今朝、ご主人様に付き従う事を決意しましたが、それをご主人様に報告しておりません。ご主人様は恐らく、私達が回復したら出て行くという認識のままなのでは…』

『っ⁉︎そ、それは大変です!すぐにでもお伝えしなければ!』


 む?またも二人から念話の気配が。

 依頼も問題無く出来るくらい回復したからな。

 そろそろ旅立つ計画でもしているのだろう。

 長いようで短かった関係だが、これ以上私に怯えながら生活するのは耐えられないと思う。

 ここが潮時か…


「ご、ご主人様!宿に戻りましょう。大事なお話があります」

「あぁ、そうだな。それが良い」


 やはりそうなのだな。

 だが最初の頃のように、酷く怯えたまま何も言わず去るよりはマシか。

 二人は十分に頑張ってくれた。


 宿に戻り三人でテーブルを囲む。

 私は二人が話し易いよう、少しでも笑って話を切り出すのを待つとしよう。


「あ、あの…ご主人様、お伝えしなければいけない事があります」

「うむ、決心がついたのだな」

「はい…ネルも、そのつもりです」

「そうか。お前達ならば、上手くやっていけるだろう」

「…私達は、ご主人様にこれからもお仕え致します!」

「うむ……ん?待て、どういうことだ?」


 私に仕える?何故だ?

 いつそんな決心に変わった。

 あんなに怯えていたではないか。


「私達は間違っていたのです。どのような力を持っていようとも、その人の心が正しければ、力もまた正しく使われるという至極当然の事を、分かっておりませんでした」

「…だが私は魔物を捕食する影だ。人だって捕食してきた」

「…ヴァイトさんにお聞きしました。ご主人様は悪人を捕食しただけだと。そしてリリさんのご家族を救ったと」

「むぅ、確かにそうだが…私は自分でも自覚している程に化け物だぞ?」

「っ、違います!」

「…ネル?」

「ご主人様の内面を見ず、力のみで判断し、傷付け続けた私こそが、化け物なのです」


 まさか、ネルからそんな言葉が出てくるとは。

 様子が変わってからも必要最低限の会話のみしかしてこないから、ネルだけは私に否定的なままだと思っていたのだが…


「どうか、ソフィア様と共にお傍にいさせて下さい」

「お願い致します!」

「……こんな私で良いのか?」

「「はい!」」

「…そうか。正直私にそれほどまで言わせる価値があるか分からんが、それが二人の意思ならば喜んで受け入れよう」

「ありがとうございます!ご主人様!」

「ありがとうございます!」


 むぅ、何やら予想外な事になったな。

 元々離れる予定だったから、今後も一人で旅をするつもりだったのだが…

 私の個人的な目的の為に二人を連れ回して良いのだろうか。


「二人には、私の旅の目的を話しただろうか」

「以前浴室で、自分の事を知りたいからだと教えて頂きました」

「うむ、知っての通り私は人間ではない。種族はソフィアのおかげで分かったが、正直謎だ。それに、数ある人骨を取り込んだ中で、この姿になった意味も調べる為に旅を始めた」

「はい。ヴァイトさんからも、そのように伺っております」


 ヴァイトの奴、かなり私の事を話したようだな。

 それとも、その時には既に二人の決心が変わっていたのか?


「受け入れはしたものの、そんな個人的な旅にお前達を同行させて良いものか正直悩んでいる」

「私達如きではご主人様のお役に立てないかもしれませんが、私達はそれでもご主人様と共にいたいのです」

「…そこまで言われたら、断る理由が無いではないか。改めて、よろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願い致します」

「よろしくお願い致します」


 当初の予定とは違ったが、これはこれで悪くない。

 何より旅の始めに望んでいた、皆で笑い合える仲間に一歩近付いたという事が喜ばしい。


「話はまとまった事だし、風呂を用意しよう」

「それは私達にお任せ下さい!それと、本日は是非私にお身体を洗わせて下さいませ!」

「ソフィア様、ここは元々お世話が仕事であった私が」

「ネルは一度ご主人様と入ったではありませんか!」

「いえいえ、元とはいえお嬢様にそのような事をさせるわけには」

「こんな時ばかり都合よくお嬢様扱いしないで下さい!」

「そんなに言うなら二人で洗い合えば良いではないか」

「「それでは意味がありません!」」

「そ、そうか…」


 何やら二人共譲れないものがあるのだろう。

 先に湯船にお湯を溜めておくとしよう。


 お湯が溜まったというのに、二人はまだ言い争いを続けていた。

 何をそんなに意固地になっておるのだ。


「お前達、早くしないと先に入るぞ?」

「え⁉︎ま、待って下さいご主人様!」

「お一人で入られるのはダメです!」

「では早く決めるか、いっそ二人共来い」


 その手があったか、という衝撃を受けたような二人が脱衣所へ入ってくる。

 何故そんなに私と入りたがるか分からんが、仲が良い事は素晴らしいことだ。

 しかし、ここでもまた問題が起きた。


「ですから、ご主人様を洗うのは私です」

「ソフィア様は一緒に入れれば良いのでは?私がご主人様を洗います」

「お前達は仲が良いのか悪いのか…」

「「ご主人様はどちらに洗って欲しいですか⁉︎」」

「…では、頭をネル、体をソフィアに頼めば良かろう?」

「「流石はご主人様です!」」


 やはり仲は良さそうだな。

 まずは座ってネルに頭を洗ってもらう。

 うむ、やはりネルの洗い方は丁寧で気持ちが良い。


「ふふ、ネルは洗うのが上手だな」

「ありがとうございます」

「むぅぅ…わ、私だってご主人様を気持ち良く出来ます!」

「うむ、では身体を頼むぞ」

「お任せ下さい!」


 ソフィアの小さい手で身体が擦られていく。

 リリを思い出す手で落ち着くな。


「ソフィアはリリに洗われてるようで落ち着くぞ」

「…そうですか、リリさんのような…(ご主人様を巡る最大のライバルに並んだ事を喜ぶべきか、悔しがるべきか)」


 その後ソフィアとネルでお互いを洗い合い、少々手狭だが三人で湯船に浸かる。

 こうしていると、初日から今朝までずっと怯えられていたとは思えん進展だな。

 今後も誰かに身体を洗ってもらえる事を考えれば、仲間が増えて良かったと思えた。


 これから私の事やシャドウの事、それからこの世界の事を調べていく内に色んな国で色んな人と巡り合うだろう。

 ソフィアのように【ステータス看破】を持った人間は稀だろうが、こうして風呂や楽しい時間を共に過ごせる仲間が増えると良いな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。