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気が付いたら???になっていた〜全てを飲み込む影〜  作者: 小鳥遊 蓮
第二章『ネクノロギア王国』
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第二十一話

 

「じゃあ、今度こそ体に気を付けてね?」

「うむ、もう大丈夫だろう。心配かけたな」

「ローズが無事ならそれで良いさ…あぁ、それとシャドウが消えていたから出してやってくれ」

「む?シャドウが?」


 その割には思考に干渉してこなかったな。

【分裂】してダークウルフのシャドウを生み出してみるが、やけに頭が重く下がっている。


『うぇ…何か急に存在が曖昧になったと思ったら突然ここにいたんだが、なにこれ?』

『すまない、どうやら私が買った使用人達が私の寝込みを襲ったようでな。幸いヴァイト達に阻止されたようだが、その時に【分裂】が解除されたようだ』

『あぁ?寝込みを襲われた?そんな奴等連れて大丈夫なのかよ』


 シャドウがソフィア達を睨み付け怯えさせてしまっているが、本人達もヴァイト達に叱られて懲りただろう。


『心配するな、ヴァイト達が既に反省させている。シャドウはリリの護衛をしながら魔の森に戻ってくれ』

『あいよ。あくまで本体はそっちなんだから、あまり無理はするなよ?』

『分かっている。シャドウと私の大事な体だからな。目的を果たすまで死ぬつもりはない』


 ヴァイトとリリ、そして王都を出るまではリリの影に潜り込んだシャドウを見送り、今回の騒動は完全に終わった。

 私とソフィア達の距離が少し変わったような気がするが、それもあと僅かだろう。

 それまで回復させるべきか、それともその後を考えて少しでも鍛える機会を作ってやるべきか。


「二人は体調はどうだ?」

「はい、ご主人様のおかげで大分回復することが出来ました。ありがとうございます」

「それが二人を私利私欲の為に買った私の義務だからな。もう少し回復に専念するか?それとも今後を考えて戦闘の勘でも取り戻すか?」

「そ、それは…ご主人様と御一緒に戦うという事でしょうか?」


 む?そうか、一度は化け物と思ってしまった私が近くで戦っていると怖いだろう。

 少し距離が縮まったからと失念してしまっていたな。


「いや、私はあくまで見るだけにしよう。危ない状況になったら手を出すくらいだな」

「…そうですか…分かりました。お願い致します」


 何やら残念そうだが、慣れたら逆に化け物具合を見たくなったのだろうか?

 いまいち昨日までと様子が違い過ぎて考えが読み取れん。


 ソフィア達を連れてギルドへと向かう。

 今更だが、二人はギルドカードを持っているのだろうか?


「二人のギルドカードはあるか?」

「はい、戦闘要員として買われる場合もございますので、最低限の持ち物としてそのまま持っております」

「そうか、では問題無いな」


 ギルドへ入ると、受付嬢が私を見て嬉しそうな顔をした。


「ローズさん!無事で何よりです!」

「うむ、心配かけたようですまない。もう大丈夫だ」


 まさかギルドにまで二人の犯行が広まってしまっていたとは。

 ここは大袈裟でも平気そうな様子を見せて、大した事無かったように思わせねば。


「本日は使用人の方も御一緒なんですね」

「今日は二人が主に戦うのでな。CランクとBランクで受けられる依頼は何かあるだろうか」

「少々お待ち下さい」


 依頼書を漁った受付嬢が2枚の依頼書を渡してきた。


『依頼内容:ベビースパイダー10体の討伐

 依頼場所:毒の洞窟

 受注条件:Cランク二人以上

 依頼報酬:銅貨6枚』


『依頼内容:レッサーバット15体の討伐

 依頼場所:毒の洞窟

 受注条件:Cランク二人以上

 依頼報酬:銅貨8枚』


 あの洞窟、毒の洞窟と呼ばれていたのか。

 たしかに得られるスキルは毒関係ばかりだったな。

 条件も私がいなくとも満たしているし問題ない。


「これで頼む」

「はい。それとローズさん、お待たせしていたギルドカードを返却致します」

「ありがとう」


 銅色のギルドカードから銀色のギルドカードへ変わったが、本当に条件を無視してAランクになってしまったな。


「ご主人様、Aランクになられたのですか?」

「あぁ。ジャイアントポイズンセンチピードを2体同時に討伐したら昇格させてくれたのだ」

「…そ、それは…流石ご主人様ですね」


 少しぎこちないが、また怖がらせてしまったか。

 こればかりは私にはどうしようもないから仕方ないな…

 二人のギルドカードを提示させて依頼を受ける。

 私も一応一緒に受けるが、あの魔物達ならば二人でも大丈夫だろう。


 受注が完了したので早速洞窟に向かおうとすると、ソフィアとネルが不安そうな目で見上げてきていた。


「どうしたお前達」

「あ、あの…毒消しやポーションなどは買われないのですか?」

「…申し訳ありません…ご、ご主人様に必要が無くとも、私達には必需品でして…」

「そうか、そういった物もあるのだったな。今後もお前達には必要なものだろうから、何か持ち運ぶ入れ物も買った方が良いか」

「ありがとうございます、ご主人様」


 雑貨屋と薬屋か?

 まずは近くにあった雑貨屋に入るか。

 肩掛けの鞄や持ち手の付いた小さい鞄、両肩に掛けて背負える鞄など、様々な種類があるな…

 二人が今後旅をしながら使っていく入れ物であるならば、近接のネルが持つより後衛のソフィアが持つべきだ。

 となれば両手を塞がないように背負えるものを探そう。


「これなんかどうだ?ソフィアが背負えるほど軽くて容量もそこそこありそうだが」

「は、はい!ご主人様に頂けるものであれば何でも!」

「いや、それでは駄目だろう。自分達が今後使っていく物は自分で決断すべきだ。私はあくまで買うだけに過ぎん。気に入った物が他にあれば遠慮なく言うといい」

「あ、はい…分かりました」


 私を気遣って無理に歩み寄る必要は無いのだ。

 一度は反省し馴染んだように振る舞ってくれているが、私に対する怯えもまだ完全には消えていない。

 今私に合わせて無理に買っても、実は使い難いものであったなど、双方得をしないではないか。


「ではソフィア様、こちらのリュックは如何でしょうか」


 ネルが持ってきた物は私が選んだ物より一回り小さく、少女向けの水色の可愛らしいものであった。

 ほう、背負う鞄はリュックというのか。


「可愛らしいですね。容量は【拡張】スキルで見た目以上にありそうです。ご主人様、こちらでもよろしいでしょうか?」

「うむ、二人が選んだものであれば今後も使い易かろう。買ってくる」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます」


 会計を済ませてソフィアに背負わせる。

 うむ、やはり二人が見た目にこだわった甲斐がありよく似合っている。


「では次はポーションとやらを調達に行くか」


 私に毒は効かないが、二人の為に解毒薬なども買っておくべきだろう。

 薬屋に入りポーション10本、解毒ポーション10本を購入し、早速ソフィアのリュックに20本収納する。


「これで支度は十分か?」

「はい、ありがとうございました」

「では洞窟に行くとしよう」


 三人で検問を通りながら見知った検問達に挨拶をし、少し歩いた先の洞窟内へと入った。


 まだ昼近くの為か洞窟内は薄暗い程度であったが、ソフィアには視界が悪かったらしく光を生み出した。

 あれもスキルなのだろうが、明るくするスキルなんてものもあるのだな。

 少し進むと、すぐに【気配察知】と【振動感知】に反応が。


「来るぞ。ベビースパイダーが5体だ」

「はい!」

「分かりました」


 この前通った時に乱獲してしまった所為だろうか。

 あの時はもっと多い群れだったはずなのに、今回は随分と少ないな。


「ソフィア様、援護をお願い致します!」

「任せて下さい!【スピードアップ】【パワーアップ】!」


 む?なんだそのスキルは。

 ネルが薄く発光していることから察すると、ステータスを上げる補助スキルだろうか?


 ネルが走り出した速度より更に加速して蜘蛛に突っ込む。

 短剣二本を逆手に持ち擦れ違いざまに2体の頭を切り裂き仕留めた。

 このベビースパイダーは1体では精々Dランク、群れの数が少なければネルの相手では無いな。


 だが仲間がやられた蜘蛛達は全く臆する事なくこちらに向かってきている。

 初めからソフィアが狙いか。

 自分達が敵いそうな相手はソフィアだと見抜いているようだ。


「行かせるか!【キャットウォーク】!」


 お?ネルが壁や天井を蹴りながら移動しソフィアと蜘蛛の間に素早く戻ってきた。

 あの立体的な移動と素早さ、流石は猫獣人といったところか。


「【風刃】!」


 ネルも【風刃】のスキルを持っていたのか。

 風系統の短剣を買った時点で予想はしていたが、同じスキルを持っていると親近感が湧くな。

 いや、いかんいかん。あまり近付き過ぎては別れが辛くなる。

 気を付けねば…


 難なくベビースパイダー5体を倒したネルが足を切り落とし討伐証明にソフィアのリュックに入れる。

 残った体に何かしようとしているが、それは待ってもらおう。


「すまないが、討伐した魔物は私が貰って良いか?」

「え?あ、はい。ベビースパイダーは特に売れる部位も無いので、問題ありません」

「では遠慮なく頂くとしよう」


【捕食】を発動してベビースパイダーに影が絡みつき飲み込んでいく。

 たかが5体されど5体だ。こうしていけばいつかは進化も出来るからな。


「そ、それがご主人様の【捕食】スキルですか?」

「うむ、気分を害したら謝る。今後は見えないように処理しよう」

「と、とんでもございません!初めて見るスキルなので気になってしまっただけですので」


 あと少しの付き合いだ。

 これ以上怯えさせるのも申し訳ないから、なるべく化け物感は出さずにいきたいのだが、こればかりは我慢してもらおう。


 その後も順調にベビースパイダー4体やレッサーバット6体などを討伐していき、洞窟の中間地点の広間に着いた。

 その中央には見慣れた姿の毒百足が…


「今度はちゃんとポイズンセンチピードのようだな。しかし、以前倒したのにまた同じ位置にいるのはどういう仕組みだ?」

「魔物は基本同じ種族が同じ位置に生息しやすいと聞きます。地中の何処かから洞窟に入り込んだポイズンセンチピードが過ごしやすい位置を目指して、このように同じ位置に住み着くのでしょう」

「なるほど、それならば納得だ。コイツは依頼対象では無いから、私が相手をしよう」


 あまり強力なスキルを使うとまた怯えさせてしまうだろうから、極力自分の肉体や黒薔薇で倒すとするか。


 ソフィア達を広間の入り口で待機させ、私は毒百足の所へ歩いていく。

 黒薔薇を広げて【カマイタチ】を飛ばすが、やはり避けるか。

【暴風刃】すら掠る程度なのだから当然だな。

 だが毒百足の狙いが私一人に向いたのは良い事だ。


 ガチガチと牙を噛み合わせながら突っ込んできた毒百足の牙を黒薔薇で上に弾き、ガラ空きとなった顎の下を蹴り上げる。

 大毒百足すら千切った蹴りは、毒百足程度で耐えられるはずもなく呆気なく粉砕した。


「す、スキルも殆ど使わずBランクのポイズンセンチピードを…」

「流石はご、ご主人様ですね」

「此奴の部位で高く売れる場所はあるか?」

「鋼鉄の牙が高く売れますご主人様」

「やはり牙だけか。ありがとう」


 二本の牙を根本から折り、本体を捕食する。

 やはりBランクと言えど2体目では進化はしないか。

 これは時間がかかりそうだな。


 二人の依頼を続けるとしよう。




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