↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付いたら???になっていた〜全てを飲み込む影〜  作者: 小鳥遊 蓮
第一章『始まりの街〜トルム街〜』
2/33

第二話

 

 ハウンドウルフとして過ごし始めて早くも2週間近く経った。2週間近くといっても、朧げな記憶で『日が昇って沈んでを7回繰り返したら1週間』だったような気がするから、日数で言えば15日間だ。


 15日間この森で過ごして分かった事と収穫が幾つかある。


 まずこの森について。

・生きている人間どころか死体すら発見出来ないほど人の出入りが無い。

・出てくる動物は大体初日のウルフで、たまに熊やら鹿やら出てくる。

・時々見たことも無いような生き物がいるが、すぐ逃げるし詳細は不明。

・俺の体は骨だろうが狼だろうが多少疲れるだけの違いで腹は一向に減らない。


 次に収穫。

・色々と探したり調べながら探索した結果、スキル【鑑定初級】を獲得。簡単な動植物なら鑑定出来るように。

・熊と鹿を捕食した時点で変化素体に加わった。ハウンドウルフのように進化的な変化は30とかの条件がありそう。

・【肉生成】による人体形成は途中で完全に停止。恐らく人体素体が無いから完全再現出来ない。

・森で生活していく中で生活系のスキルが増えてきた。【木登り】【水質浄化】などだ。


 そして現在俺が何をしているかというと、魔物狩りだ。

 見たことも無い生き物がいるがすぐ逃げるって言った奴。

 実はこいつら、隠れて様子を見てたら不思議な技というかスキルっぽいものを使ってたんだよな。


 水が球体になったようなブヨブヨの物体は、触れたものを溶かす液体を飛ばす。ただ量と飛距離があまり無く、敵を見るとすぐ逃げる。


 細長い胴体に短い手足の、イタチのような動物は尻尾を振って、薄緑色で半透明な三日月状の刃を飛ばしてくる。

 ただ以前人骨状態の俺の骨密度に手も足も出ない事を知ってからは逃げるように。


 今目の前にいるのはイタチの方だが、こいつは元々攻撃的な所為かあまり臆病ではなく、隠れていれば気づく様子は無い。

 問題はコイツが逃げる前にどう倒すか…。


 ハウンドウルフでスキルが使える事はもう分かっているし、背後からの【無音移動】、そして【影操作】で捕獲&捕食が一番成功率が高そうだな。


 地面で木の実を夢中で食べてるイタチの後ろから忍び寄り、影操作でゆっくりと数本の影を伸ばす。

 なるべくイタチの視界に入り難いように上から影を向かわせて、最後は一気に絡みつかせる!


 キュウキュウ鳴いてるところ悪いけど、お前は一度俺を攻撃した。故に慈悲は無い。



〈鎌鼬を捕食したことにより鎌鼬への変化が可能です〉


 まずは1匹、後でコイツに変化すればそのスキルも手に入るはずだ。

 よし、今日はこの調子でどんどんスキル持ってそうな生き物を捕食していこう!



〈アシッドスライムを捕食したことによりアシッドスライムへの変化が可能です〉



 次!



〈クロウモールを捕食したことによりクロウモールへの変化が可能です〉



 まだまだ!



〈鎌鼬を一定数捕食したことにより鎌鼬から風鼬への変化が可能です〉


〈アシッドスライムを一定数捕食したことによりアシッドスライムからポイズンスライムへの変化が可能です〉


〈クロウモールを一定数捕食したことによりクロウモールからグラウンドモールへの変化が可能です〉



 ふう…一日中走り回って捕食に捕食しまくったから、見たことある生き物が一通り次の変化になったな。

 あとは全部に変化してスキルを得れば、それがハウンドウルフ状態で使用出来る。

 鼬でも良いけど、やっぱり動き易さとスピードはウルフが勝るからな。


 鼬とスライムは見たから分かるけど、モールってやつは気配察知した地面に影の針を刺して仕留めてたから見たこと無かったんだよなぁ。

 なんか、こいつ薄ら記憶あるぞ。

 確かモグラとか言う動物だ。爪がここまでデカくて鋭くは無かったけどな。


〈風鼬に変化したことによりスキル【カマイタチ】【風刃】【威嚇】を獲得しました〉

〈ポイズンスライムに変化したことによりスキル【粘液】【アシッドボール】【ポイズンボール】【分裂】を獲得しました〉

〈グラウンドモールに変化したことによりスキル【穴掘り】【潜伏】【モールクロウ】【グラウンドクロウ】を獲得しました〉


 スキル大量ゲット!

 何個か使えるのかコレ?っていうスキルもあるけど、それは試してみて判断すれば良いか。







「きゃぁぁ!」



 ッ!?悲鳴⁉︎

 いやそれよりこれって、人の声!

 おいおいマジか!初めて人に会える!

 悲鳴の方向へ全速力!



 森の入り口付近でフォレストウルフ3体に囲まれた女の子発見!

 スキル【風刃】を三発撃ってフォレストウルフを両断する。

 勿論捕食することも忘れない。


 助けた女の子が無事かと見ると、さっきより怯えた様子でガタガタ震えながら座り込んでしまっていた。




 …あぁ、人に会える喜びばかり先行して、『会える状態』じゃないことを忘れてた。

 ウルフ3体を瞬殺した別のウルフなんて、恐怖でしか無いよな。残念だけどここは早く立ち去った方が良さそうだ。


 でも最後にもう一度だけ初めての人間を見ておきたい。

 見た目は15・6の女の子。柔らかそうなセミロングのブロンドヘアに、空のように綺麗な水色の瞳(涙目)。白いワンピースも今は座り込んでやや汚れてしまい、近くの地面には籠が転がり見覚えのあるキノコが数個。


 なるほど、キノコを採取しようと来たらフォレストウルフに囲まれたって感じか。

 俺が恐怖心を更に煽ったようなもんだし、ここはお詫びもしなきゃな。

【影操作】で近くに生えている同じキノコを大量に収穫。

 影を伸ばして女の子の近くへ積み上げ、喋れないから「ごめんな」と思いながら頭を下げて立ち去る。


【気配察知】によると近くに動物はいないみたいだし、無事に帰れるだろう。

 さようなら。俺が人間になれたら、次は話せると良いな。





「ま、待って!」





 ……え?


「待って」って、俺に言ったのか?

 怖がらせたばかりなのに?

 俺が逆の立場なら、ウルフ3体瞬殺、しかも遠距離攻撃持ちとか恐怖でしか無いんだが、よく話しかけてきたな。


 でも正直嬉しすぎるからちゃんと止まって振り返る。

 未だに泣きそうな女の子は、それでも頑張って立ち上がり頭を下げてきた。


「あの、助けてくれてありがとうございました。言葉が通じてるか分からないけど、お辞儀をしたって事は知能があるんですよね。何故貴方のような高位の魔物がこんな森にいるのか分からないけど、この御恩は絶対に忘れません!」


〈条件を達成したことにより称号『優しき魔物』を獲得しました〉


 …あぁ、人だ。

 俺が会いたくて、なりたくて、焦がれてると言っても過言では無い人だ。

 この世界で初めて聞いた言葉も理解出来る。俺から何か伝える事は出来ないけど、今はこれだけで十分嬉しい。


 せめてこの子が去るまで、この目に焼き付けよう。

 俺はいつか絶対に人間になって、自分の事を思い出して、それから…


 それから、どうしたいんだろう。

 あまり深く考えて無かったな。何か情報が欲しくて人間になりたかったわけだし。

 まぁそれはその時考えよう。


 おすわりの状態で見つめていると、女の子はキノコを大事そうに籠へ入れてから、もう一度お辞儀をして去っていった。


 人にはなりたい。それは絶対だ。

 その為には捕食が必要になる。

 でも誰でも良いわけじゃない、女の子と会ってそれはより強い決意に変わった。


 捕食対象は二つ。

 一つ目は俺に害意を持って近付く、または実際に攻撃してきたやつ。

 二つ目は誰からみても悪人。盗賊など人にも害を与えるやつ。

 そいつらを探し出して捕食しよう。


 その為にはもっと力を付けなければならない。

 この世界の人間がどのくらい強いか分からないからだ。

 当面の目標はこの森で敵なしと言えるくらいになろう。

 攻撃スキルを持っている、もしくは強い変化が出来た時持っていそうな生き物を優先的に捕食だな。


 具体的にはフォレストウルフと鎌鼬の二種類。

 こいつらがもっと強い変化になれば攻撃スキルや補助スキルも手に入りそうだし、単純に強そうだから。


 ある程度ウルフと鼬の変化レベルを上げたら、森の反対側へ行ってみよう。

 女の子が去っていったのは前に見た街のある方だ。

 森を挟んだ向こう側にはまだ行った事無いし、もしかしたらより強い生き物がいるかもしれない。


 何より谷側の森は人が少ないどころかほぼいない。今日初めて人に会ったくらい居ない。

 なら反対側ならいる可能性も0ではないし、運が良ければーー普通は運が悪く、悪人だったらーー攻撃してくるかもしれないし、そしたら人の素体としては申し分ないからな。


 それと今日一日狩りをしていて確信したのは、スキルの変化レベルが上がるには同じ素体を30体取り込むという条件がある。

 ただ次も同じ数か分からないし、同系統の強い生き物を取り込めば少なく済むかもしれない。

 スキルの存在やそれを使ってくる生き物がいる世界だってのは理解出来たけど、まだまだ調べていかなきゃならない事ばかりだ。


 調べると言えば、【鑑定初級】ってことは鑑定しまくって回数クリアしたら初級から上がりそうだよな。

 初めて人の形で動く喜びをくれたこの女性の情報が、『人・女』だけではあまりに虚しい。

 せめて名前とか、何処の人か分かれば今後の足掛かりになりそうなんだが。


 何をするにもまずは俺自身の強化からだ。

 幸い食事は要らないし、疲労は感じるとは言え微々たるものだから、いくらでも狩りは出来る。

 ウルフの元々の特性なのか夜でも視界には困らない。

 いざと言う時は【気配察知】で周りの状況は分かる。


 まずは主体になっているウルフの強化だな。

 いつも以上に索敵範囲を広げて走り回り、見つけたら即【風刃】や【影操作】で処理して捕食していく。

 ハウンドウルフになってから数えて60体目を捕食した時、念願のメッセージが来た。



〈フォレストウルフを一定数捕食したことによりハウンドウルフからブラッドウルフへと変化しました〉

〈ブラッドウルフに変化したことによりスキル【嗅覚強化】【暗視】【血液操作】を獲得しました〉



 よし!また新しいスキルが増えた。

 二つは名前で分かるとしても、【血液操作】か…。

 名前的には【影操作】の類似スキルなんだろうけど、ピンとこないな。

 そうだ。こう言う時こそ【鑑定初級】を。


『【血液操作】:対象の血液を操作する

  対象条件 :接触』


 なるほど、つまり触れた対象の血液を操作するという説明通りのスキルなわけだ。

 とはいえ俺はここまで出血するような怪我はしてないから、あまり出番は無さそう。

 今回使えそうなのは【嗅覚強化】と【暗視】か。


 実際いつもより臭いを細かく嗅ぎ分けられるようになったし、通常の夜目より視界が良い。

 こういうスキルは常に発動してるみたいだから助かるな。


 新しいスキルのお陰で生き物を発見しやすくなり狩りは更に効率的になってきた。

 そして二回目の条件がウルフと同じなら、この鼬の60匹目で変化レベルがアップするはずだ。



〈鎌鼬を一定数捕食したことにより風鼬から嵐貂(らんてん)への変化が可能です〉


 おぉ、嵐貂とか格好良いな。ちょっと変化してみよう。


〈嵐貂に変化したことによりスキル【暴風刃】【雷刃】【跳躍】を獲得しました〉



 お、おお?

 雷刃ってことは電気か!

 結構色んな自然エネルギー系のスキルあるんだな。

 ウルフに戻って【跳躍】してみると、いつも【木登り】で上がっていた3mくらいの枝まで跳べた。

 これなら多少の障害物は飛び越えられるし重宝しそうだ。


 取り急ぎ変化素体のレベルアップは出来たし、次は何体必要かも不明だから今日はここまでにしよう。

 出来るなら早く人間になりたいけど、捕食対象は変更するつもり無いし、こればかりは運に任せよう。

 暫くは素体レベルアップを目標にしながら森の反対側を目指すか。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。