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気が付いたら???になっていた〜全てを飲み込む影〜  作者: 小鳥遊 蓮
第一章『始まりの街〜トルム街〜』
1/33

???

 

 ……知らない景色だ。


 あれ?なんだここ。どうして俺はここに?

 というか、俺?俺って男だったっけ?


 駄目だ、何も分からない。

 自分が何処の誰かも。

 辛うじて男だったような感じがする。


 …よし、分からない事は気にしない。

 それより現状を考えよう。


 見える景色から察するに、ここは深い谷底だ。

 遠くに細く青空が見えるからな。


 だが、不思議な感覚だ。

 仰向けになっている感覚は無いのに上を見ている景色。


 あれ?体が動かない。

 そもそも、動かそうとする感覚が無い。

 取り敢えず景色だけでも変えたい、上ばかり見てても周りが全く分からないし。


 お、前を見たいって思ったら角度が多少変わったか。

 目の前にあるのは…石?

 いやいや、なんで石がこんな目の前に?

 それにめちゃくちゃ近い、石ってこんな大きかったか?実は岩だった?


 いや、良く見渡せば地面すら目の前だ。

 という事は、俺は地面の高さから見ていると。

 体は?こんな薄っぺらいの?


 駄目だ。疑問ばかりしか出てこない。

 何故か分からないけど、自分が地面と同じ高さにしか居なくて、でも体も無さそうで、視点は変えられる。


 ……ペラッペラな紙じゃね?

 え?俺紙なの?

 でも紙に目なんて無いよな?


 せめてここから動ければ…おぉ?

 動きたいと思ったら視点が少しズレた!

 という事は、身体は無いけど移動は出来るのか!



〈条件を達成したことによりスキル【平行移動】を獲得しました〉



 んん⁉︎ちょ、只でさえ自分の事も分からないのに余計混乱する状況に!

 え、スキル?スキルってなんだ?


【平行移動】って事は、今の動きって事か?


 あ、ちょっと動き易くなってる!

 なるほど、何かしらの行動を起こせばこういう補助的なものが生まれるのか!


 よし、出来る事を探してみよう。






 ・・・なんて意気込んでいた時がありましたよ。

 俺って本当なんなんですかねぇ⁉︎

 平行移動は出来るのに、声は出せない、上へ行く事も出来ない、というか何も出来ない!


 仕方ない、平行移動で動き回ってみよう。



〈日向へ出たことによりスキル【日光抵抗】を獲得しました〉

〈日向へ出たことで消滅の恐れがあります〉


 はいぃ⁉︎

 消滅ってなんだよ!

 日向⁉︎確かに崖の影から少し外れたけど!


 ん?影?


 日向には確かに影って無いよな、てか影じゃないからこそ日向か。

 え?てことは俺、もしかして影なの?


 …影ってなんだよ。

 何が出来るんだよ。

 むしろ影だけで意志持つってどういうこと?

 またしても訳分からなくなったきた。


 えーと、一旦整理しよう。


 俺…恐らく男であっただろう自分は、現在影であろう存在になっていて、何故か移動は出来る。

 でも影が存在しない日向に出ると消滅しそうになる。


 ふ、ファンタジー。


 ファンタジーって幻想って意味だっけ?

 何で名前すら思い出せないのにこういう単語は覚えてるかなぁ。

 じゃあ俺はファンタジー的な影ということで、これから影の中だけしか移動出来ないな。


 日向に気を付けながら移動するか。

 スーって感じの平行移動をしながら影を進む事数十分、上空に崖と崖を繋ぐ橋のようなものが。


 橋、ってことは人工物。

 つまりここにも人間はいるって事か。

 良かった。自分は多分人間だっただろうけど、こんな影が存在してる場所だし、居ない可能性もあったからな。


 まぁ、居たところで意思疎通も何も出来ないけど。


 その橋の下である谷底には何やら白いものが沢山…


 ほ、骨だ!人骨だこれ!

 うわぁマジか。確かに数百mはありそうな谷底だけど、ちょっと心の準備が…


 いや負けるな俺。

 初めて見つけた人間の手掛かりなんだ。

 何かここの情報が分かる物があるかもしれない!


 恐る恐る移動しながら骨の下まで移動。

 …よくよく考えたら手も足もないんだし、手掛かり探すとか無理じゃね?



〈生物の組織を感知したことによりスキル【影中捕食】を獲得しました〉

〈スキル【影中捕食】で取り込みますか?〉


 え、影中捕食?

 それって文字通りこの骨食うって事?


 いや腹は減ってないというか、そもそも骨というか…食べられるの?

 折角見つけた情報源だし、取り込めば何かしら変化はあるだろうけど、良いのだろうか。


 悩むこと体感五分。

 このままじゃ何も進まないと決意した俺は影中捕食する事に。

 すみません!成仏してください!



〈スキル【影中捕食】にて人骨を捕食しました〉

〈人骨から生前の情報を獲得しました〉

〈人骨を捕食したことによりスキル【人骨化】を獲得しました〉



 落ち着け、俺の情報処理が追いつかない。

 えっとまず、スキルで取り込んだ骨の生きてた時の情報をゲットした。

 ここは国と国を繋ぐ橋だった…え、それだけ?

 そして肝心のこの骨の元の人の情報すら…


『種族:人属

 性別:女』



 まさかの情報不足に俺は戸惑いを隠せない。

 影中捕食で取り込んだのは身に付けていた物も含まれていて、ボロボロながら豪華だなとは思ったけど、まさか何処かのお嬢様?かなり罰当たりだったんじゃ…。


 そしてそんな何が出るか分からない骨達がここには沢山あるわけで…。

 た、食べるか?

 正直取り込むと色々情報が手に入るし、何やらスキルとかいうやつも増えていく。


 スキルといえば、なんか新しいのが増えたな。


【人骨化】…まんまだな。

 これまさか、今使ったらこの人の骨として動く事に?

 性別的に心と体が違うって変な気もするが、いつまでも影(?)のままじゃ何も出来ないし、正直まともな手足が欲しい。

 いや骨の時点でまともじゃないけど。


 てことで、【人骨化】しちゃいましょう!



〈【人骨化】をします〉

〈【人骨化】を行ったことによりスキル【人骨操作】を獲得しました〉

〈【人骨操作】を獲得したことによりスキル【二足歩行】を獲得しました〉


 おぉ、ついに視点が高く!

 正直骨でどうやって動くんだって不安だったけどスキルで動くのか。

 他の人達(骨達)には悪いけど、このまま全員取り込ませてもらいます。



〈一定数影中捕食したことによりスキル【影中捕食】が【影操作】【捕食】へ変化します〉

〈人骨を一定数捕食したことよりスキル【骨密度増加】を獲得しました〉

〈衣類を一定数捕食したことによりスキル【衣類修復】を獲得しました〉

〈骨の素体:犬・猫・馬を獲得しました〉

〈素体となった種族の骨への変化が可能です〉


 スキル強化で影中捕食が分離した感じか?

 自分の影が立体的に浮き出てきてグニャグニャ形を変えられるようになった。

 でもってまたも新スキル【骨密度増加】。

 これは、骨の強度が上がる的な?

 てことは、頑張ればこの崖登ってる最中に落ちても無事なのでは?

 ただ人骨化しても声帯が無いなら喋れないんだよね。

 人に会えても意思疎通出来ない。いやそもそも人骨に会ったら普通逃げられるか攻撃されそう。

 でもって次の【衣類修復】だけど、骨が服着たところでって感じだし、保留。


 うーん、試しに【骨密度増加】して崖を殴ってみよう。

 ガンッという鈍い音と共に崖の一部が崩れ落ちる。

 おぉ、この骨密度増加、結構強い!


 よし、これなら崖登れそうだな。

 落ちないように慎重に岩肌の突起を探しながら登っていく。


 現在崖の丁度半分くらい。

 ここまで登って俺は今更気付いたことがある。

 さっき手に入れたスキルに【影操作】なるものがあったが、もしかしてそれで登りやすくなるのでは?と。

 早速スキルを使って影を何本もの細い針のようにして、崖に刺す。

 そうやって身体を支えながら登ってみると、凄く登りやすかった。

 何故もっと早く気が付かなかったんだ…。


 1時間くらいして漸く崖の上に到着!

 結構長く登ったけど、全く疲れないな。

 骨だから?筋肉も無いから疲労も無いとかなら嬉しい誤算だ。


〈日向にいる時間が一定時間を越えたことによりスキル【日光抵抗】が【日光耐性】へと変化しました〉


 お、そういえば今普通に太陽の下にいるな。

 消滅しそうなメッセージも無いし、順調順調。

 さて、無事に崖を脱出出来たは良いが、何処へ行こうか。

 骨の時点で人と会うのはまだ早いだろうし、腹も減らなさそうだから餓死の心配も無さそう。

 なら今最優先すべきは人の身体を手に入れること。

 かと言って生身の人を襲って取り込むなんて避けたい。

 つまり、人以外の動物とか死骸を探して取り敢えず肉を得る。

 それで良いスキルが出れば良し、出なければその時また考えよう。


 崖を境に今俺が立っている側を進むと草原、そしてその奥に人が住んでいそうな街が見える。

 反対側は端が見えないくらいの巨大な森。

 目的を考えると間違いなく森に行くべきか。

 人に会わない事を願って歩き、森へ突入。見た事無い木の実やキノコがたくさんあるな。

 骨って毒とか効くんだろうか。もし効くなら一人かつ人間には避けられそうなこの見た目は最悪の事態になりそうだ。


 キノコ達を無視して更に森の奥へ。

 森の入り口も見えなくなってきた頃、ガサガサという音がした方を見ると、俺の腰(元となった女性の腰)程の犬?が4匹出てきた。

 生きてるな。完全に生きてる。肉は欲しいけど流石に殺すのは…。

 なんて考えてたら飛び付かれて手足に噛みつかれた。

 敵対心ありまくりですか⁉︎

 この世界の犬は獰猛か!

 なんて考えてる余裕があるのは、骨密度増加のおかげで全く痛く無いし骨も削れないし、むしろ犬達の牙がボロボロになっているから。

 それでも離さないなんて、凄い執念だな。


 まぁ、そっちがその気なら遠慮はしないぞ。

 噛み付いたままの犬ごと腕を振りかぶり、足に噛み付いてる犬に叩きつける。

 ギャンッ!って悲鳴を上げても許してやらん。お前らは俺の良心を裏切った。

 仲間がやられて逃げようとした薄情な残り2匹の首を両手で捕まえて、頭同士を思い切りぶつけてやった。


 許せとは言わん。これも弱肉強食。

 なんて格好付けてる場合ではなく、影を使って捕食。


〈生身の生物を捕食したことによりスキル【肉生成】を獲得〉

〈生身の生物素体が足りない為【肉生成】が不完全です〉

〈フォレストウルフを捕食したことによりフォレストウルフへの変化が可能です〉


 …ウルフ?狼?え、あいつら犬じゃ無かったのか。

 それに不完全な【肉生成】とは?

 取り敢えずやってみよう。


 骨を覆うように人の身体が出てくるが、虫食いみたいな状態と、皮膚の無い剥き出し状態。

 これは…まさしくゾンビ!

 頭を触ってみても髪らしきものは無い、まだまだ素体が足りないって事か。

 それにしても犬を取り込んで人肉になるって、いよいよファンタジーな世界だ。


 当面の目的は完全な人体形成と、自分の事すら分からないこの情報不足を何とかしなければ。

 やっぱその為には死体で良いから人を取り込むしかないのか。

 メッセージによるとフォレストウルフにもなれるみたいだけど、もう暫く人の形でいたいので保留。


 森を彷徨うこと早2時間。相変わらず出てくるのは犬ばかり。

 しかも出会い頭に全員噛み付いてくるサービス付き。

 この世界の犬どうなってんの?


 もうこれで捕食30匹目なんだが、大分人間らしくなったから良いけどさ。


〈フォレストウルフを一定数捕食したことによりフォレストウルフからハウンドウルフへの変化が可能です〉


 ハウンドウルフって何なのか分からないけど、内容的に強くなった気がする。

 ちょっと気になるし、ハウンドウルフになってみよう。


〈ハウンドウルフに変化したことによりスキル【四足歩行】【気配察知】【無音移動】を獲得しました〉


 え?ウルフにもスキルってあるのか。

 しかも森で凄い使えそうなやつばかり。

 保留なんてしてないで、もっと早く変化しとけば良かった。

 他の動物ーー見境なく襲ってきたやつ限定ーーも変化出来るようになったら積極的にしていこう。

 そしてこのハウンドウルフ、めちゃくちゃ足が速かった。

 なのに木も簡単に避けられるしそのまま木を垂直に登る事も出来る超優秀な身体能力。


 どうせ完全な人間になるには肉が足りないし、暫くこのままハウンドウルフでいいや。


 ただ初めて完全な生物になった所為か、未だに腹は減らなくても疲れのようなものを少し感じる。

 まぁ、走り回って疲れがこの程度なら全然ってレベルなんだが、今日はもう色々あって肉体より精神的に疲れたし、木の上で休むとしよう。

 明日は更に行動範囲を広げて死体と動物探しだな。



 あ、この世界の日付とか時間ってどういう感じなんだろ。

 人になって街に行けたら調べてみるか。






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