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気が付いたら???になっていた〜全てを飲み込む影〜  作者: 小鳥遊 蓮
第二章『ネクノロギア王国』
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第十二話

 

 街を後にした私は魔の森を通過しながらシャドウと言葉を交わし、ヴァイトと初めて会った草原に出た。

 前は草原に出てすぐに戻ったからな、今度はゆっくり歩いてみよう。


 反対側は殺風景な渓谷だったが、テテム村を思い出す長閑な草原だ。

 取り敢えず、遠くに見えるトンネルや洞窟がある山まで歩いていこう。


 山の麓まで来たが、遠くから見た通り向こう側が見えるトンネルと、先のわからぬ洞窟があるな。

 洞窟が何処に通じているのか、行き止まりなのか分からぬが、トンネルを進むと戻るのも面倒だ。

 先に洞窟から探索してしまおう。


 縦横3m程度の通路で、早速曲がり道がある所為で先が見えん。

 一応『黒薔薇』を出しておくか。


 一本道だが、左に曲がり右に曲がりを何度も繰り返す。

 分岐しないのならこの曲がり道に何の意味があるのだ?

 時々蝙蝠のような生き物がいるが、私と目が合うと驚いて飛んでいってしまう。

 暗闇なのに目が合って吃驚したのだろうか。


 曲がり道が多いということは入り口からの光は疾うに消え、暗闇だけだ。

 私には【暗視】スキルがあるからハッキリ見えるが、向こうからしたら見えてないはずの人間に見られたということだろう。


 光が無ければ影もない、私の【影操作】も使えないだろうと試してみる。

 結果、むしろ光が当たっていない場所は全て有効らしく、半径5m程度の範囲内ならば【影操作】が可能であった。

 てっきり自分の影を操作するスキルかと思ったが、どうやら『自分と接している一定範囲の影』のようだな。


 そんな新発見をしながら進むこと20分程。

 特に何もなく最奥に到達してしまった。


「ドラゴンの石像に、祠?」


 石造りの小さな祠の両脇に、厳つい風貌のドラゴンを模した石像が飾られている。

 何かの儀式だろうか?

 それともこの土地の守り神のようなものを祀っているのか?


 何やら祠の中には白と黒の丸い球が二つ飾られているが…

 全く分からんな。

 こんな時ヴァイトがいれば色々と推測や知識を出してくれたのだが。


 触るか、触らないか。

 何かの儀式や封印の類だと不味いと思う。

 正直私は自分の強さというものを正確に測れていない。

 今までの比較対象では少し力不足だったからだ。

 ヴァイトと一度真剣勝負でもしてみるべきだったかもしれんな。

 いや、シャドウと訓練していたのだから、少なくともAランク相当ではあると思って良いか。


 少し悩んだ末に、『触らずに見落としがないかもう少し近くで観察してみよう』という結論に至り一歩踏み出す。



 ……何も起きんな。

 やはり祀ってあるだけの祠か、ただの飾りのようだ。

 いや、もしかしたら何かしらの条件を満たしていない可能性も。


 何にせよ今の私には意味の無い事のようだし、戻るとしよう。

 ここに「祠らしきものがあった」ということだけ覚えておけば良いだろう。


 洞窟から出てもう一つの道、トンネルを潜る。

 む、また洞窟か。正直もういいのだが。

 今度は何やら看板が立っているな。


 “この先ネクノロギア王国!但し洞窟内はBランク魔物がいる為、腕に自信の無い者は山を迂回せよ”



 危険を呼び掛ける看板か。

 魔の森ではスキル獲得と進化が滞っていたからな。

 ここで少し稼がせてもらうとしよう。

 迷わず洞窟に入る。

 中は先程同様すぐに光源が無くなるが、私には関係無い。


 暫く進むと【気配察知】に反応が。

 この感じ、天井か?


 先程の洞窟で見かけた蝙蝠より一回り大きな蝙蝠が私を天井から見下ろしていた。いや、奴からすればぶら下がって逆さまだから、見上げていたが正解か?


 コイツは逃げないようだな。

 ただ【気配察知】の反応からしてもBランクに満たないようだし、あまり戦闘訓練の役には立たないか。

【影操作】で手短に捕食してしまおう。


 操作範囲内の天井の影から何本か蔓のようなものを生やし、蝙蝠に巻き付ける。

 呆気なく捕まった蝙蝠は不快になるような鳴き声を上げて飲み込まれていった。

 何だったのだ今の声は。状態異常の類か?ならば何とも無いだろう。

 さて、取り敢えず変化してみるか。


〈レッサーバットを捕食したことによりレッサーバットへの変化が可能です〉

〈レッサーバットに変化したことによりスキル【エコー】【聴覚強化】を獲得しました〉


『【エコー】:超音波を発して敵の位置を感知する。また仲間との情報伝達にも使われる』


 なるほど、恐らく最後の叫びで仲間に何かを伝えたようだ。

 私としては、仲間に助けを求めて大群が来てくれると嬉しいのだが…


 私の願いが通じたのか、洞窟の奥から【気配察知】の反応が大量に近づいてくる。

 ざっと反応を数えただけでも30から40匹はいるだろうか。

 これは早々に進化が期待できそうだ。


 先頭の集団が見えてきて10匹が私に噛みつこうとしてきたが、その直前に【恐怖の波動】を発動した。

 羽すら動かせなくなり、地面を擦りながら滑ってくる10匹を影を絡めて捕食。

 後続が一気に出てきたが、【ダークファング】と【アースバイト】の同時発動で1匹残らず息耐えた。


 やはりこの程度の魔物では何体いようが脅威にはならんな。

 まだ入ったばかりということを考えると、奥に行けばもう少し歯応えのある魔物がいるとは思うのだが。


〈レッサーバットを一定数捕食したことによりレッサーバットからキラーバットへの変化が可能です〉


 やはり30体以上いたようだな、早速変化しよう。


〈キラーバットに変化したことによりスキル【ノイズ】【毒牙】【気配遮断】を獲得しました〉


『【ノイズ】:特殊な音波を発生させ、聞いた者を『混乱』『聴覚不良』の状態異常にする』


『【毒牙】:自身の牙に毒を付与し、噛み付いた対象を状態異常『毒』にする』


『『状態異常【毒】』:毎秒体力の1%を失う』


 毎秒体力の1%?

 その1%とやらと体力というのはどうやって分かるというのだ。

【鑑定上級】ではそこまで分からないか、もしくはまだそういったものを確認するスキルを持っていないのか。


 やはり名残惜しいが街を出て正解であったな。

 私はまだまだ知らないことが多すぎる。

 大きな国へ行けばそういったことも調べられよう。


 一通りのスキル確認を終えて歩いていると、再び【気配察知】に大量の反応が。

 今度は体長20cm程度の蜘蛛型魔物のようだ。


 毎回【ダークファング】や【アースバイト】では偏るな。

 折角たくさんスキルがあるのだから、色々な戦闘方法をやっていかねば勿体ないか。


 私は黒薔薇の要を纏めている布を解き、10本のバラけた鏢にする。

 そして【気流操作】で全てを浮かし、蜘蛛の大群へ飛ばす。

 20体程の密集地に飛ばしたおかげで避けられない個体を貫き、同時に8体仕留めた。

 すぐさま鏢を反転させ後ろから強襲。これを繰り返す。

 途中から一本一本違う軌道で飛ばしたからすぐに片付いたが、これは中々に集中力が鍛えられるな。


〈条件を達成したことによりスキル【集中】を獲得しました〉


『【集中】:『操作』系のスキル使用時の負担軽減』


 …こんなことでスキルを得られるのか。

 何だか随分と私だけ楽に生きられる世界だな。

 他の人間たちは精々20程度のスキルと聞いているのに、これでは何だか申し訳ないぞ。


 まぁ得られるのなら文句はない。

 この力を正しい事に使えば罰も当たらんだろう。

 さて、早速蜘蛛を取り込むとするか。


〈ベビースパイダーを捕食したことによりベビースパイダーへの変化が可能です〉

〈ベビースパイダーに変化したことによりスキル【粘着糸】【操糸】を獲得しました〉


【粘着糸】は体の先端ならば何処からでも糸が出せるようだな。

 試しに指10本から糸を出してみると、シュルルと細い糸が指から伸びてきた。

【操糸】で10本の糸を操り、網目状にしたり丸い球体にしたりと遊んでみる。

 慣れれば色々と便利そうな糸だな。耐久性はどの程度あるのだろうか。


 一本だけ天井に貼り付け足を浮かせてみるが、すぐにプツンと切れてしまう。

 二本・三本と増やしていき、片手分全ての五本目にして私が全体重を掛けても切れない強度となった。

 落ちてしまった時や何かに貼り付けて移動に使う際には、片手分の糸と覚えておかねばな。


 その後も進んでいる間に蝙蝠と蜘蛛の襲撃を受けていく。

 毎回違うスキルの組み合わせを試していき、戦闘の幅を広げていった。


〈ベビースパイダーを一定数捕食したことによりベビースパイダーからレッサースパイダーへと変化が可能です〉

〈レッサースパイダーに変化したことによりスキル【毒付与】【毒牙】を獲得しました〉


 やはり同じ洞窟に生息しているとスキルも被ったりするのだな。

 鏢に状態異常が付与出来るのは嬉しいから、あまり細かいことは気にしないが。


 蜘蛛も蝙蝠も60体で三次進化になるだろうが、最初に大群を倒した所為か発見しても数匹程度。

 このペースで進むとそれより先に洞窟を抜けてしまいそうだな。

 ここでスキルアップに励むべきか、早くネクノロギア王国へ進むべきか。

 現状スキルにはそこまで困っていない、ここは先を優先しよう。


 洞窟に入ってから体感で20分程進んだだろうか。

 今までの通路のような道から大広間のような空間へ出た。

 まだ洞窟は先があるようだが、この空間はいったい…

 特に何か置いてあるわけでも無いようだが。



 真ん中まで来ると、突然地面が振動し私の真下の地面が陥没した。

【気配察知】には反応無かったが、【遮断】系のスキルでも持っていたのだろう。

 素早く飛び退いた直後、立っていた場所から巨大な牙のようなものが一対現れ挟むように閉じた。

 もう少し反応が遅れていたら巻き込まれていたな。

【勇猛果敢】のスキルに感謝だ。


 獲物を逃したことで怒ったのか、牙の持ち主が奇声を上げながらその姿を見せる。

 体長10mはありそうな巨大百足であった。

 この広間でも少しギリギリの大きさだが、ああやって地中に潜ることで普段は隠れているのだろう。


 様子見で【暴風刃】を飛ばしてみる。

 素早く横に動いた百足の左足を数本切り飛ばす程度で終わった。

 私の遠距離スキルの中で速度重視の攻撃なんだが、この百足は大きさの割に素早いようだ。


 お返しとばかりに突進してきた百足を【跳躍】で躱す。

 しかし、そのまま頭を持ち上げ空中の私目掛けて牙を突き出してきた。

 空中戦で使えそうなスキルは…

 黒薔薇を扇状に広げて【気流操作】で飛んで避ける。


 私より遥かに大きく、その割に素早い魔物は初めてだ。

 これはなかなか楽しいぞ。

 幸いスキルをいくら使おうとあまり疲れないからな、出し惜しみせず使っていこう。


【混乱の権化】を発動し状態異常を起こさせる。

 む、これは失策か。

 混乱状態になった百足が暴れまわってしまった。


 今度は【幻影】で百足の目の前に私の幻影を生み出し囮にしてみる。

 うむ、一心不乱に噛み付きまくってるな。これは有効だ。


 その隙に地面に降り立ち、【毒付与】と【麻痺毒付与】を五本ずつかけた黒薔薇を飛ばして百足に刺していく。

 刺さった箇所の周りが毒々しい紫へと変色したり、百足がピクピクと動けなくなった事から成功と言える。


 最後に頭に【エアクラッシュ】、そして胴体は二箇所に分け【ダークファング】と【アースバイト】を。

 グシャ、バキという生々しい音と共に百足の動きは完全に停止した。


 苦戦とは言わないまでも、今までで一番良い訓練になる魔物だったな。Bランクぐらいあるのではないか?

 スキルも期待出来そうだ。


〈ポイズンセンチピードを捕食したことによりポイズンセンチピードへの変化が可能です〉

〈ポイズンセンチピードに変化したことによりスキル【猛毒牙】【甲殻の鎧】【キリングバイト】を獲得しました〉


『『状態異常【猛毒】:毎秒体力の5%を失う』


『【甲殻の鎧】:皮膚を分厚い甲殻が覆う。防御力(大)』


『【キリングバイト】:使用者の攻撃力に対して対象の防御力が半分以下の場合、即死効果が発生する』


 おお、これは中々に良いスキルだ。

 巨大百足の攻撃力がどの程度か分からんが、スキルで極大補正の掛かっている私が使えばある程度の魔物なら一撃だろう。


 試しに使ってみるか。

 人間状態に戻り、壁に向かって発動。

 目の前の空間から巨大百足のものと同じ2m程の鋼鉄の牙が現れ、その場で挟み込む動きをした。

 なるほど、近接攻撃スキルだったか。

 近付くリスクを考えても効果を考えれば十分な威力だろうな。


 恐らくコイツが看板に書かれていたBランク魔物で間違いなさそうだ。

 他は蝙蝠と蜘蛛ぐらいしかいないのなら、襲ってきたものだけ捕食しながら出口を目指そう。




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