ジャンク街とアダルトショップ
翌日は朝から移動を開始した。
なにしろ、予定が詰まっている。まずはベルドーン市の端にある、『ジャンク街』へ。
フタリとも昨夜の盛り上がりの余韻から、朝からイチャイチャ。
バス馬車を待つ間も、寄り添って立ち、互いの髪をナデたり、と周囲にバカップルっぷりを披露。
ソレはバス馬車に乗ってからも続き、あまりのウザったさに、ほかの客から注意を受けたくらいである。
「若いんだから、イチャイチャしたくなる気持ちは良くわかるけど。公衆の場ではちゃんとしないと。知らない人に互いのことを悪く思われるのは切ないでしょう?」
オバサンにコンコンと諭され、マサヒコもアリスも恐縮してしまった。
しっかり謝ったアト、フタリはさすがに自重した。きっ、と姿勢よく座り、小声で話す。
「ゴメン、俺が調子に乗りすぎた」
「ウウン。ウチが悪いの。マサヒコとイチャイチャしたくて。我慢できなくて」
「イヤ、俺が……」
などとフタリで謝り合う。
ウルルンがイイ加減にしときなさいよ、というように、フタリをチョンチョンと交互に叩いた。
『ジャンク街』は南東の外壁沿いの一角。名前から予想していたが、ズラリと並んだ露店の数々。箱に入ったパーツの数々。
いったい何に使うものなのか分からないような部品が売られていたりする。
かと思えば、食料品を売っていたり、ナニヤラ怪しい薬を売っている店もある。
とにかく露店も店舗も怪しさ満点の店ばかりだ。
「とにかく、タブレットか、モニターを探そう」
「アーイ」
フタリは腕を組んで歩いた。
カップル率はあまり多くない。だいたい歩いているのは怪しい男たちだ。
3階建てのタブレット専門店があったので入ってみる。
中にはそこらかしこに様々なサイズのタブレットがあった。基本的に機能としては大きなシュマホーといったところで、ちゃんと通話機能もある。
「コレとかどう? 型落ちでカナリ安いよ」
マサヒコが手にしたのは10インチのタブレット。置いて見るにはヤヤ小さいが、寝転がって見るには、コレくらいが限界。
「コレで映画見れんでしょ。イイんじゃね?」
というわけで10インチタブレットを購入。ついでに立てかけるためのスタンドも買った。
さてアトは、とマサヒコがどっちに向かうか見回していると、アリスに耳打ちされた。
「アレっ、アレ見て」
「ナニ?」
マサヒコがアリスの指さす方を見ると、そこには、ピンク色の光る看板で『大人玩具店サキュバス』という文字。
「えーと、その、アリス、興味ある?」
「ショウマとあーいう店入ったことあるんだけど。イロイロ売ってたよ。エッチな気分になる薬とか。コスプレ用の服とか。アト、エッチなDVDとか。アト……」
そこでアリスが言いヨドんだ。
「アト?」
「イイ。言わないどく。マサヒコ、また嫉妬するし」
「しないから、言ってよ」
と続きを促しながらもすでに嫉妬しているマサヒコであった。
「だ、だから……バ、バイブとか? そーいう玩具系?」
言うアリスの顔が真っ赤だ。
「ちなみに使ったことは?」
「……ある……カナ」
うつむいて申しワケなさそうに言った。
「ゴメンね」
マサヒコは嫉妬よりもアリスの可愛さにクラクラとした。もう、今すぐ、宿に行って、イロイロしたい。イロイロをだっ。
「よし、行ってみるか」
マサヒコ、堂々と言う。
「マジっ?」
「アリスだって、興味あるから、俺に教えたんだろ?」
アリスが真っ赤な顔のまま、コクリと頷く。
「てか、マサヒコ、なんかさっきから意地悪くね?」
それにマサヒコがフキ出した。
「ゴメンゴメン。ナンカ照れるアリスがカワイくて。アトやっぱ、ちょっと嫉妬した」
「イイけどぉ。ウチのコト、ビッチとか思ってない?」
上目ヅカイに聞く。
「アリスはアリスじゃん。カワイイくてステキな俺の大切な人だよ」
「だから、ホストかよっ」
そんなやりとりを経たアト、フタリはアダルトショップへと入った。フタリとも、超ドキドキだ。マサヒコなど、自分から言い出しておいて、やっぱヤメた方がイイんじゃないかと後悔したくらい。
店内は外観以上に怪しさ満点だった。
もちろん、エロスも満点。もうエッロエッロである。
アダルトな動画の数々。やはり、異世界でもエロ関係はしっかり発展するらしい。
「ねっ、マサヒコ、こーいうの観たコトあるの?」
「ノーコメント」
「ハアっ? さっきウチに答えさせた癖に。ノーコメントとかねーから」
「まー、その、男の子ですから。嗜む程度には」
「ソレで自分でするんだ?」
「まー、男ですから」
「てか、マサヒコ、チンチン立ってない?」
「しょうがないんだって。そういうもんなの。男はエロいこと考えると、そうなるの。もう自動的に。反射的に」
アセりながらも言い訳する。
「てか、なんかムカつく。ほかの女見てチンチン立つとか、腹立つんですけどぉ」
「イヤ、ホントそーいうもんなの。ウワキ心とか、そーいう問題じゃないの。お腹空いてる時にゴチソウ見ると、お腹鳴るじゃん。そーいう感じ」
唇をトガらせるアリスをナダめながら、アダルト動画のフロアから移動。
地下へ降りる階段と上に上る階段。とりあえず地下へ。
地下はますます怪しかった。
アダルトなアイテムとか、アダルトな薬とか、アダルトグッズ満載。
マサヒコもクワしくはないので、アレは、いったいどう使うんだ? とか、ソレはなんのタメにあるんだ? とか、イロイロ気になった。
「女の子的にどーなの? こーいうの?」
マサヒコが男性器の形をした物体を指さして言った。
「あんまりイカついのはアウトでしょ。そーいうのとか、無理じゃん。絶対」
「ナンカ買ってイイ?」
「……イイけど、別に。マサヒコもそーいう趣味あるんだ」
ジト目で言った。
「イヤ、好奇心。ただの好奇心だから。趣味とかそーいうんじゃないから」
「でっ? どれ使いたいの?」
「そちらの触手を少々」
「ウワっ、ナニコレ。キモいんだけど」
「触手は男のロマンだからなー」
「知らんから」
結局、マサヒコは触手をアキラめた。まだ、こんな上級プレイは俺たちには早い。もっともっと精進しなくては。
マジメだぞ、マサヒコ。
アダルトホビーな地下から今度は2階へ。地下のようなマニアックなものではなく、セックス関連の雑貨が売っていた。
「あっ、コレ買おうよ」
「『避妊シール』かー。こないだ買ったじゃん」
「これ、イチゴ味になるんだって。こっちはバナナ味。これはリンゴ味」
「……まあ、イイけど」
『避妊シール』のいろんな味を購入。
さらに、マッサージオイルや、アロマキャンドル。
「なんかさ、シタくなっちゃった」
店を出たところでアリスが言った。
「だよね。俺もそうなんだ。どうする、どっかで……」
マサヒコ、かなり喰い気味に言った。
「でも、もったいないから、デートしよっ。今夜は、寮に帰らないんでしょ?」
「ウン、まーね」
ちょっとションボリしてマサヒコは言った。大丈夫、たった数時間の辛抱さ、と自分に言い聞かせる。
アダルトショップを出たところで、マサヒコは、ふとキーボードが欲しいと思った。
せっかくタブレットを買ったのだから、キーボードがあればパソコン感覚で使える。
どうも、マウスというのは、この世界にはないようだが。
「アッチかな」
なにやら部品が売っている方へ向かう。
アリスはつい先ほどのアダルトショップで、カナリ欲情しており(マサヒコもカナリのモノだが)いつも以上にマサヒコの腕を強く抱いて歩く。
「そーいえば宿予約しておいたよ。その、ちょっと、そーいう感じで特別なトコ」
今朝、アリスが支度する間に調べてメールで予約しておいたのだ。
「アリガト」
言ってから、アリスが、へへっ、と笑う。
「ナンカ超期待しちゃってんだけど。ウチ」
「大丈夫。俺、アリスの3倍くらい期待してるから」
高校生男子のエロさは並みではないのだ。
アリスがフキ出した。
「ゼンゼン、大丈夫じゃないし」
笑って言う。
「でも、そんなに変な感じなトコじゃなくて。どっちかっていうと、リゾートホテルっぽいトコだったよ」
マサヒコ自身、ラブホテルに行ったことがないのでナントモ言えないが、ベッドが大きくてキラビヤカで、室内に広い風呂がついているところを選んだ。
イメージとちょっと違うなあ、と思いながら。
「じゃあ、ウチらが、新しく作ったら流行るんじゃね? もうラブホテル、って感じのトコ。ウチらのアトにも誰か来るカモだし。便利じゃね?」
ああ、そうか、とマサヒコは、自分たちのアトに来る者たちのことを考えた。
クラスメートの先駆者たちが名を成したように、帰る前にこの世界に自分たちの名を残しておくのもイイかもしれない。
「でも、ラブホテルの創始者って、ナンカ微妙だな」
「ウチらのコト、知ってさ。驚くかも。ええー、あのフタリが、みたいな?」
少なくともクラスメートたちは意外さを禁じ得ないだろう。陰キャでボッチで、下手すると名前すら覚えられていない青木正彦と、陽キャでギャルの鈴木亜里栖が、こんなコトになっているなんて。
「そりゃあ、驚くよ。ビビると思うよ。マジで」
いったいナニがフタリに起こったんだ、と思うコトだろう。
キーボードはすぐに見つかった。いちおう店員に聞いてみると、タブレットでもモニターでもシュマホーでも、ツナがるとのこと。
そのあたり、魔法の接続はカナリ優秀らしい。
そこでフト、マサヒコは疑問に思ったことを聞いてみた。その店員がフランクだったので、以前から頭に描いていたインターネットについて話してみたのだ。
「ウーン、オモシロイこと考えるねー。だけど魔法ってのは基本、一方通行なんだよ。シュマホーの通話だって、高速で音を飛ばし合ってるだけで、双方向じゃないからなー」
「えーと、つまり、サーバー……大きなポイントを1つ作って、ソコに向かってみんながアクセスするみたいな感じなんですよ。だから、双方向というワケじゃなくて。みんながそのホスト相手にメールを出して、ホストはそのメールを蓄積しておいて、必要な返信をする、みたいな」
「へー、俺もクワしくはないけど。技術的にはイケそうな気がするね。できたら、スゴい便利だなあ」
そこそこ魔法にクワしそうな相手がそういうなら、技術的には可能なのかもしれない。
インターネットの構築。ネットがあれば、この世界の情報網は段違いに発展するだろう。
そして、ソレは後に来るかもしれないクラスメートたちの大きな助けとなるハズだ。
もちろん、それによって得られる富や名誉が主目的である。元の世界に戻るためには情報が必要だし、それを集めるにはある程度の力がいるのだ。
『ジャンク街』をスッカリ堪能した頃には、ちょうど昼食時になっていた。
フタリは『ジャンク街』近くのラーメン屋に入った。
セマい店だったが、味は絶品。アッサリ目が好きなマサヒコだったが、濃厚なスープの味に、趣旨替えしたくなりそうだった。
「超美味しい。ウチ、この味好きカモ」
アリスも満足そうだった。




