余韻の朝
目を覚ましたマサヒコは、一瞬、自分はエロい夢を見たのではないかと思い、股間を確かめた。
オッケー、大丈夫だ。
すぐに後ろで聞こえる寝息に気づいた。
それに裸の背中に触れる髪の感触。
体の向きを変えるとアリスの顔があった。
しかも、アリスは裸だった。毛布がハダけ、小麦色の裸体がバッチリ見える。
ヤバイ、ギャル最高なんだが。
アリスの可愛らしい寝顔をナガめる。エロより、そっちに気がトラれる。イイ夢を見ているのか、少し笑っているようだ。
それにしてもカンガイ深い。
現代日本にいた頃には想像もできなかった。
自分があの、ギャルでカースト上位の鈴木亜里栖と契ってしまう日がくるとは。
イヤ、もう、絶対、触るコトもないと思ってたからね。
それが、スキンシップして、笑いあい、ツキアって、そしてエッチまでしちゃって。
もう感無量である。
アリスがあんな風に自分の名前を呼ぶなんて。
あんな、コトして。そんなコトまでして。でもビッチだと思われたくなくて。
カワイすぎるでしょーが。
しばらく、感慨にフケったアト、シュマホーで時間を確認。
午前4時。なんだかんだで、あのアト、長々と、シタ。もー、スゴいイロイロ、シタ。
このあいだの娼館でのデキごとがカスムくらい、エロいコトしまくった。
思い出していたら、またチンチンが元気になってきた。
アリスの体に触れようと手を伸ばし、イカンイカンと空中停止。
アリス、良く寝てるし、起こしちゃダメ。
エロのタメに、起こしちゃダメ。
エッチしたからコソ。もっともっと大切にしないとダメだ。雑な扱いとか絶対ダメ。
求めすぎちゃダメ。
ストイックだ。マサヒコ。ストイックになるんだ。
とはいえ、隣に裸の女体があるのは刺激が強い。しかも、眠る前に、貪りまくった女体が。
マサヒコは目を閉じた。二度寝しよー。そーしよー。
…………眠れるわけがない。
こんなチンチンがフルマキシマムな状態で、眠れるワケがないではないか。
マサヒコはアリスを起こさないように、匍匐前進のようなカッコウで、その場から抜け出した。ただ、床が柔らかいので余計に波打った。普通に抜け出した方が早いし、揺れなかっただろう。
こっそりテントから出たマサヒコは、自分たち以外にも冒険者が寝ているのを目にした。自分たちのようにテントなど使わず、毛布をカブってゴロンと寝ているか、寝袋に入っているか。
自分たち以外に2パーティがいる。
ウワっ、ナンカ、スッゲー、気マズい。
テントは防音なので外に声が漏れたということはないだろうが、できれば顔を合わせたくない。
ついでに自分が裸だと気付いて【ギルドカード】から着替えを出して着る。
トイレを済ませ、水を飲みながらシュマホーをイジりイジり。
1時間ほど、そうしていると、毛布をカブって寝ているパーティの1人が、ムクリと体を起こした。
目が合う。
男だ。30代前半といったところ。深緑色の髪が後退気味なトコ以外は、マイナスポイントのないハンサム。
男がマサヒコの方へやってきた。
「オハヨウ」
マサヒコも挨拶を返す。
ちょっと気まずい気分。この人、俺たちがヤってる時、いたのかな?
「スゴいの持ってるな。高かったろう」
男がテントを見て言った。
「ええ、結構しました。でも、これからドンドン使っていくと思うので」
「うちは4階層攻略を目指してるんだ。ソッチは?」
「5階層攻略です」
Bランク昇格試験を受けるための条件は4階層の攻略。だが、マサヒコたちはついでだからと、5階層攻略までを考えている。Aランク昇格試験を受けるための条件は、2択である。Aランク依頼100件達成。あるいは【迷宮】5階層を攻略しつつ、Aランク依頼を30件達成。
マサヒコのプランではともかく早めにAランクまでランクを上げておきたい。元の世界へ戻るための情報収集をするタメためには、それがやりやすい。
だがAランク依頼100件達成というのは非常に時間がカカる。気が遠くなる。
30件でも時間はカカりそうだが、まだ先は見える。ただ、5階層攻略の難易度は非常に高いらしい。Aランクパーティでも厳しいとか、なんとか。
それでも【トレーニングルーム】ではAランク魔物余裕で倒せたマサヒコである。5階層までは問題ないと思えた。
ムリそうならさっさと引き上げるつもりである。そのための【緊急脱出装置】だ。
男が驚いた。
「じゃあ、ヒョットして、Bランクなのか?」
「いや、Cランクです。でもせっかくなら挑戦してみようと」
「そうか。スゴいな。だけど、無茶しないようにね。ウン? Cランクでエイジア系。まさか、君、今話題のキングバスター」
「えっ、ソレ、なんです? 俺、確かにゴブリンキング倒しましたけど」
マサヒコは顔が引きつるのを感じた。
なんだ、キングバスターって。スッゴい二つ名なんだけど。
「イヤ、そういう名前がツイてんだよ。君に。冒険者になって数日でゴブリンキングを倒した期待の大型新人って、話題だぜ。そーか、もう5階層に挑戦する気か。スゲーな」
「話題なんですか? ゼンゼン知りませんでした」
「はてはSランクなんじゃないかなんてな。ベルドーンからSランク冒険者が出るんじゃないかって、ギルド職員が期待してるぜ」
「イエイエ、そんな。買いカブりですから」
ソモソモ自分たちが目指しているのはAランクである。Aランクに上がったら、元の世界に帰還するために旅立つつもりである。
「そういえば、Sランクって、今、何人くらいいるんですか?」
話題をソラそうと聞いてみる。
「そうだな。確か、大陸中で15パーティだったハズだ。人数で言えば、60人くらいか」
思ったよりも多い。イヤ、大陸中と考えると少ない方か。
「Sランクもピンからキリだって話だからな。なにしろAの上はすべてSなワケだし」
「その中でも最強のパーティは?」
「そりゃー、間違いなく『ブレイブ』よ。なにしろ、『勇者』がいるからな」
「『勇者』? えっ、『勇者』って、リョー・モリモトのコト?」
「イヤ、そりゃー、本物の『勇者』だろ。じゃなくて、『勇者』って二つ名のレニオス・バックルだよ」
「へー。そんな人がいるんですね。強いんですか?」
「そりゃー、もー。グレイトドラゴンを1人で狩っちまうような奴だぞ。しかも、『ブレイブ』は他の5人も相当なもんだからなあ。まあ、あの人たちが冒険者のトップで間違いない。しかもな、強いだけじゃなくて、正義感があってな。素行の悪い冒険者なんかを指導したりしてるんだ。彼らがいるから、ナラズモノみたいな冒険者も頭を押さえられてる感じがするな」
「ヤッパリ冒険者にも悪いヤツがいるんですか?」
言いながらも、マサヒコはシャーリーを襲ったヤンキー冒険者を思い出した。ああいうのが評判を落としているのかもしれない。
「いるいる。いっぱいいるぜ。そーいうのとは、関わらないようにしろよ。この変だと、Sランクの『女喰い』デビアン・ドーベルがヤバいってウワサだぜ」
「『女喰い』って、またスゴい二つ名。モテモテってコト?」
スゴいイケメンなんだろうか? もう二つ名からして反感しかない。
「ソレが、そーじゃなくてな。女を調教して、イイナリにして何人も引き連れてんだと。首輪をつけてな」
うわっ、とマサヒコは思わずそんな声が出た。最悪だ、ソイツ。
「ヤツに目をつけられた女は終わりだって話だ。アンタも気をつけろよ。相棒、女の子なんだろ?」
「アリガトウ。気を付けます」
そんなヤバい奴には絶対近づかないでおこう、とマサヒコは思った。
男と、しばらくそのまま雑談していると、テントからアリスが顔を出した。
「オハヨ」
少し寝ぼけた、ぽやぁー、とした顏。マサヒコが話していた冒険者に気づき、小さく頭を下げる。
「じゃーな。お互い、ガンバローな」
言って男、レックス・リッカスは自分のパーティのところへ戻っていった。
後半は彼の恋愛事情についての話だったのだ。同じパーティの青年に惚れているのだが、彼はやはり同じパーティの女の子に夢中だそうな。
会ったばかりで、ズイブンあけっぴろげな話をされたものである。
「ウチら以外にも人いたんだ」
アリスがやはりテントから顏だけ出して言った。
「ウン、夜のうちに来たんだろうね」
言いながらもマサヒコはアリスの顔を直視できなかった。なにしろ、昨夜は、あんなコトやそんなコトをしてしまったのだ。
スゴク照れクサイ。
「てか、起こしてくれたら良かったじゃん」
アリスが頬を膨らませる。
「早く起きすぎたんだよ。起こしちゃ悪いと思って」
「ちょっとシャワー浴びてくる」
言って、アリスがテントから出てきた。毛布カブって体を隠している。
タタタっ、マサヒコの横を通りすぎるが、すぐピタリと足を止めた。
「あのさ。ウチ……どう、だった?」
背中で問いかける。
どうってナニが? と言いかけ、すぐにエッチのことだと気づいた。一瞬で、アリスとの昨晩の行為が脳内画像に連続で現れ、体の血が熱くなった。特に、股間。
「決まってんじゃん。サイコーだった」
マサヒコは言った。
実際、もう最高以外の言葉など出てこない。
アリスが振り返った。満面の笑顔。ヒヒヒっ、と変な声で笑った。
「ウチなしじゃあ、生きられない体にしてヤっから」
言って、【簡易シャワー】に入っていった。
うわぁー、なんだよソレ、超カワイイよ。
マサヒコは赤面する顔を手で覆った。




