葛藤×葛藤
シャワー室でアリスはどうにも我慢できなくなってしまい、自らを慰めた。
だが、先ほどのキスの快楽に比べれば、ゼンゼン遠く。どうしてキスであんなに脳天を突き破るような快感が走ったのか、意味が分からなかった。
今まで5人の男とツキアって。それなりの数セックスをした。いろんなプレイもした。道具もイロイロ使った。
だが、結局、アリスは快楽の絶頂を感じることはなかった。特にソレを追及しようとも思わなかった。
だから、先ほどいきなりキタのは本当に驚いた。こんなコトあるんだ、と思った。
そこそこ、エッチの知識が大めのアリスでも、ゼンゼンそんなことは知らなかった。
というか、キスだけであんなに気持ちいいなら、エッチしたらどんなんコトになるのか? もう、想像するだけで、ヤバい。
マトモに歩けない。
ハア、と悩ましいタメ息をついて、アリスはシャワーを止めた。
ホースのツナがっていないシャワーヘッドをフックにかける。
「乾燥」
すると、ブオォーと温かい風が上から吹いて、体の水っけをどんどん飛ばしていった。
乾いたところで【ギルドカード】から服を出して着る。さすがにセマい。以前のアリスなら面倒くさくて外で着替えただろう。
だが、今はマサヒコの目が気になる。
裸を見せることはゼンゼン問題ない。
もう、コンナ体で良かったらいくらでも見て、見て、という感じ。
むしろガッカリされないか不安なのだ。腹とか二の腕とか。できれば、明るいところでは見て欲しくなかった。
パジャマ替わりのダボっとしたシャツとズボンに着替えて、『簡易シャワー』を出る。いちおう、下着はセクシーなヤツにした。
できれば、スッピンを見せたくないが、ここでメイクをし直すのも超不自然。
えっ、ナンデこいつメイクしてんの? みたいに思われそうだ。
「どうだった?」とソファに座るマサヒコが言った。
「ちょっとセマいけど、イイんじゃね」
「良かった。ケッコーしたから使えなかったらヤバいって思ってさ」
「ゼンゼン、使える」
「じゃあ、俺もシャワー浴びてくるよ。なんかあったら、大声出して」
「アーイ」
交代でマサヒコが【簡易シャワー】に入っていった。
アリスは今さらながらシャワー室の底に変な毛が落ちていないか心配になった。
たぶん、大丈夫だと思うが。
ソファの、マサヒコの座っていたところに座る。空気が詰まっているのでググっと沈み込む。
ハア、とまた甘いタメ息。
ナンデ、ウチ、こんなに変になってんだろ? ワケワカラン。
イヤ、ホントは分かっている。
本当に好きな相手だからだ。今までの、まー、好きカモ、くらいの曖昧な気持ちではなく、もうハッキリ好きなのだ。大好きなのだ。
そんな相手に良く思われたい。嫌われたくないと思うのは当然で。
だから、余裕がなくなる。しごく当然で真っ当な心の反応。
テントを見る。
黄色い三角形のテント。
試しに入ってみたがカナリ快適だった。
床も柔らかく、4人用だから広さも十分。
しようと思えば、エッチもできる。
アリスはハッキリ言って、もうイロイロ限界である。もう我慢できるかっ、という心境。あんな気持ちいいキスしたら、その先も期待するのは当然だ。
ウチから誘った方がイイのかな。てか、ヤッパ、着替えて、メイクもすっか?
でも、そんなんヤル気まんまんじゃん。
コイツ、どんだけヤリたいんだよ、とか思われそうじゃん。
ソレでなくても、5人とツキアったエッチな女、などと思われてそうだ。今まで、ビッチと言われたことはケッコーあった。あとヤリマンとかも。
アリスにしてみれば、そういうのはツキアってもないのに、手当たり次第にエッチするようなヤツじゃん、と思うし、自分は該当しないという認識だった。
だが、実際、5人という体験人数はアリスの歳では多い方らしい。
結局、問題はアリスの認識ではなく、マサヒコの認識で。
たぶん、マサヒコは5人という数を、スゴい多いと思っていそうだ。
今さらながら、自分がアケスケにイロイロ話してしまったことが悔やまれた。アレもコレもソレも、と話しすぎである。
アリスの方からアプローチしたら、やっぱビッチだ、とか思われそう。かといって、マサヒコは、アリスを大事にしたいエッチは当分なし、と宣言した。
ウー、とアリスはウナった。
コレ、詰んでね?
アリスは、またタメ息をついた。
「エッチしたいな。マサヒコと」
アリスがモンモンとしている頃、マサヒコもセマいシャワー室でモンモンとしていた。
イヤ、そりゃあ、スルでしょ。当たり前じゃん。
こっちはヤリたいサカリの高校生。彼女はめちゃくちゃカワイクて。オマケに経験済みで、しかもケッコー、経験豊富で。
エロいキスまでして。今夜はセマいテントでフタリきり。
さっきだってキスの時に、実はチンチンめちゃくちゃヤル気になってたのだ。気づかれるんじゃないかと、気が気じゃなかった。
それでも、とマサヒコは熱いシャワーを浴びながら思った。
アリスとのキスを思い出してイキリ立ったチンチンが、ドーニカシロ、という風に訴えかけているが。
それでもっ。
アリスを失望させたくない。
ヤッパ、マサヒコも男か、ヤリたいだけなんだ。
そんな風に思ってほしくない。
今までの彼氏とは違うって思ってほしい。
エッチしたいから、結婚なんて言葉を出したとか、思ってほしくない。
ソバにいるだけでオッケーだって安心してほしい。
「じゃなきゃ、嘘だろ」
マサヒコはツブヤいた。
もう、ココでヌイちゃうか?
マサヒコは何度目かの問いを自分に投げかけた。実は、さっきアリスがシャワーを浴びている時も悩んでいた。
男は1回、放出してしまえばカナリ性欲がダウンする。マサヒコは男子高校生なので、すぐ回復してしまうが、それでも一時シノギにはなろうというもの。
考えてみれば娼館での脱童貞以来、ヌイていない。タマりっぱ。性欲ゲージMAX。
現代日本にいた頃は、ほぼ毎日寝る前にはしっかり、カカさず、排出していたというのに。
もう、右手でシャシャっと高速運度をしただけで、コトが終わるは必然。ものの5分とカカらないだろう。
出したものはシャワーで流せば証拠隠滅もできる。まさに完全犯罪。
でもなあ……。
アリスがすぐソバにいるのである。
いくら隔離空間であるシャワー室であっても、フタリの距離は10メートルも離れていない。
こんなところで悦楽的作業を行ってしまえば背徳感ビシバシである。
好きな子の半径10メートル以内で自ら慰める、などという特殊なプレイが成立してしまう。
もう、いっそう、アリスが眠ったアト、こっそり抜け出して、階段を降りた先で処理してしまってはどうだろう?
なんなら『簡易トイレ』を持っていって。
それは名案に思えた。
誰も傷つかない。素敵なプラン。
よし、そうしよう。だから、今は、コラえてくれ。
マサヒコはソソリ立つ男性自身に心の中で言い聞かせた。
シャワーを出ると、アリスとバッチリ目が合った。
バチッと全身に電流が駆け抜けたような気がした。ウルんだ瞳で、頬を上気させて、オマケにマサヒコの好きなスッピンアリス。
せっかく静まった下腹に潜む分身が、オヤっ、思ったよりも早かったな、と立ち上がる気配がした。
「あー、サッパリした」
微妙に体の角度を変えて盛り上がりかけた股を隠す。
「セマかったけど、十分じゃん」
「……でしょ」
「ウン」
なぜか気まずい沈黙になる。
もちろん、マサヒコは自身の欲求を沈めるためであったし、アリスは風呂上がりのマサヒコに見惚れていたからである。
風呂上りが色っぽいのはナニモ女性だけではないのだ。
「えーと、じゃあ、寝ようか」
マサヒコは言った。もうさっさとアリスを寝かせて、ムスコを大人しくさせるタメの儀式をしたい。
「…………ウン」
アリスは小さくうなずいた。
その心は、ヤバっ、キタっ。大丈夫? うち、襲っちゃわね? などとドキドキ。
というか、気が付いたら、マサヒコに覆いカブさってそうで怖い。
マサヒコはテントの入り口のジッパーを開けた。中に上半身を入れてノゾく。
気温は適温。暑くも寒くもない。
そもそも【迷宮】内はヤヤ温かい程度。寝ようと思えば外でも寝られるくらいだ。
床もしっかり柔らかい。むしろ柔らかすぎるくらい。体が沈む。壁や床の硬さは調整できるので、寝ニクいようならもう少し硬くした方が良いかもしれない。
靴を脱いで中に入る。
立ち上がっても頭がツカないほど高さはある。広さも寝そべって足を伸ばしても多少余裕があるほどには広い。
マサヒコは隅に寝転がった。ナニカ体が熱くなっており、とても眠れる気がしない。
そう、いうなれば血が踊っている。
アリスが顔をノゾかせた。
「そんなハシっこで寝なくても良くね?」
「あ、あー。ナンカ、スミっこの方が落ち着くんだよね」
「そう……。じゃあ、ウチはここかな」
アリスはテントの中に入ると、マサヒコのすぐ隣に寝そべった。おかげで片側半分はガランと空いた。
「えーと、アリス、もう少し……」
体の向きを変え、アリスの方を見ると、目が合った。ウルんだ瞳でジっとマサヒコを見ている。ナニカを期待するように。
イヤ、イヤ、イヤ。勘違い。勘違いだから。
マサヒコは自分に言い聞かせた。
誘ってるなんて、そんなのは男の勝手な妄想だ。
「キス、しよっか」
アリスが言った。
マサヒコは吸い寄せられるようにアリスの顔に顔を近づけた。そのままキスをする。
寝たままのキスは強烈にエロかった。
すぐに唇を割ってアリスの舌が口内に入ってくる。マサヒコは舌をカラませあいながらも、アリスの体を探らずにはいられなかった。
さらなるエロスを求め、アリスの胸にフれる。
アリスがビクっと震えた。
それでマサヒコは手を引いた。
やっぱ、ダメじゃん。オッパイはナシじゃん。
だが、アリスの手がマサヒコが離した手をトった。そのまま自分の胸に誘う。
薄いシャツの生地越しにアリスの胸の感触が伝わってくる。白いシャツなので下に着ている黒いブラも透けている。エロい。
寝たままキスをしているので、ともすればゴロンと体が転がる。いつのまにかアリスが上に乗っていた。
んあっ、と唇を離す。
アリスが濡れた瞳でマサヒコを見下ろす。
垂れたアッシュブロンドの巻き髪。
「アリス、俺、その、本当にアリスのコト大事にしたくて。こーいうの、よくないんじゃないかって」
マサヒコはハアハアっと息を切らしながら言った。
「ムリっ。ウチがシタいの。マサヒコと。我慢できっかぁ」
ガアー、と肉食獣のように吠える。
「アト、マサヒコ、ウチのコト、超大事にしてくれてるから。スゴい分かってるからね」
それから食べるようにマサヒコの唇に唇を合わせてくる。
そのまま、また長いキス。先ほどよりも情熱的で激しい。
一度、アリスの体が大きく震えた。そのまま力を失う。しがみつくようにマサヒコの体に体をアズケる。
「またぁ……キス、スゴすぎなんですけどぉ」
弱々しい声で言った。
「その、本当にイイの? 俺、まだ我慢できるよ。エッチしなくても、ぜんぜんオッケーだよ」
マサヒコは言った。
ケッコー、ムリしてる。めちゃくちゃカッコつけてる。
それでも、想いは本当だ。
アリスが顔を上げて近距離からマサヒコを見る。涙がアフれていた。
「ウチだってさぁ。ビッチとか思われたくないじゃん。マサヒコに思われたくないじゃん。でも、ナンカ、もうエロいんだもん、マサヒコが。そんなん、我慢できないじゃん」
「えっ、俺、エロかった?」
マサヒコは思い当たるフシがありすぎた。
そんなにエロ丸出しだったのかっ。
「ゴ、ゴメン。その、俺も男だし。その、アリスカワイイし。エロいコトばっか考えちゃって。ゴメンな」
「違くて、セクシーってコト。ソソルってこと。ヤリたくなるってコト」
言って、アリスがマサヒコの鎖骨にキスした。
「こことか、超エロいし」
次はマサヒコの指を唇に当てる。
「指も好き」
その手をフタリの顔の間にハサむ。
「ねえっ、この指で、ウチの体、触ってよ」
上気した顔でそんなことを言われて正常でいられわけがない。
マサヒコはもう頭が爆発しそうだった。意識がトビかけた。夢中でアリスの体を触りまくった。探求しまくった。
「んっ、マサヒコ、ウチ、ビッチじゃないかんね。エッチ、たくさんしたけど、違うから。これから、絶対、マサヒコ以外としないからっ」
「知ってるよ。アリスはマジメでイイ子だもん」
「んっ、んっ、あーっ、んっ。好き。コレ、超超超超超大好きの略だからぁ」




