魔導書ゲット
階段を降りた先は、やはり【階段の間】。広い部屋の中心に階段がある。そこで休憩をトっているパーティがいた。
ウィナスとリーズだ。
「おっ、マサヒコ。久しぶりじゃねえか」
「ウィナスも。最近見ないと思ったら、【迷宮】探索してたのか」
「ああ、レベルアップすんなら、コッチの方が効率がイイからな。おかげで、ずいぶん強くなったぜ」
「リーズとはどう?」
「……ふっ」
ウィナスが余裕っぽく笑った。
マサヒコはピンときた。
「ま、まさか、ウィナス」
「ああ。そのまさかだ」
どうやら男女として行きつく先に行ったらしい。
「そういうソッチは、どーよ。アリスとはツキアったりしないのか?」
「イヤ、それが、ツキアイ始めたんだよ。俺たち」
「マジか。そーか。そーか。イイもんだよな。恋人がいるってさ」
「ホント、そう思う」
などとマサヒコとウィナスがリア充っぽい会話をしている間、アリスとリーズも話していた。
「どう? マサヒコとウマくやってんの?」
リーズはすでにアリスから、ツキアっていることをメールで知らされている。
「うん。超ラブラブ」
「良かったじゃん」
互いに近況を報告し合い、良かったデートスポットなどを教えあう。
ウィナスとリーズは帰途。これから【迷宮】を出るようなのでソコで別れる。
彼らの背中を見送りながら、アリスが言った。
「ウチら、今日は【迷宮】で泊まんだよね」
「ウン、せっかくテントやらナニヤラ買ったしね。できれば、一気に地下4階フロアまでクリアしたいな」
「じゃっ、今日はテントで一緒に寝るんだ」
小声でアリスはツブヤいた。
「えっ、ナニ?」
聞き取れなかったマサヒコが聞き返す。
「べ、別に、なんでもないから」
「そう? えーと、まあ、とにかく今日はできるだけ頑張って進んでみよう」
「はーい」
地下2階フロアはEランク魔物が発生するようになった。相変わらず発生頻度が高い。
大ネズミ。人食いゴキブリのキラーコックローチ。マッドマン。二足歩行の犬、コボルトなど。
当然ながら、どれもマサヒコとアリスとの敵ではない。マサヒコの風魔法、アリスの火魔法。ほとんど出現と同時に瞬殺。
まったく手こずることもなく、青い扉の前までやってこれた。
「てことは、次はDランクのボス?」
「そーいうコトだろうね。Dランクっていうと、ゴブリン、キラーアント、ブラッドスライム、ロックバードあたりかな」
「まっ、どれが来てもラクショーでしょ」
言うアリスだったが、この2階フロアではズイブン及び腰の場面があった。巨大ゴキブリのキラーコックローチが苦手だったのだ。
何度、耳をツンザクような悲鳴をアゲられたか。
「じゃあ、開けるよ」
「どうぞぉ」
マサヒコは青い金属扉を開いた。
例によって正方形の大部屋。部屋の奥にもう1枚青い扉がある。
フタリが進むと、また青いモヤモヤが現れ、そこから魔物が吐き出される。
シルエットから色づいた魔物は大きなタカのような黒鳥だった。デカい。翼を広げれば部屋のハシからハシへ届くだろう大きさ。
クチバシはギザギザしており、鳥類のものというよりワニかナニカの口のように見える。
巨鳥ロックバードだ。
「てか、こんなトコで馬鹿じゃね」というアリスの言葉通りだった。
なにしろ、翼を広げただけで部屋いっぱいなのである。飛べるワケがない。
ギザギザの歯のクチバシをツルハシのように振り下ろしてきたり、巨大なガギ爪で引っかいてくるくらいが関の山。
だが、フタリはそれすらさせなかった。
アリスが新たに覚えた魔法【ファイアリング】(リング状に炎を出し、相手を燃やす。炎は類焼せず、燃え尽きもしない)で、ロックバードの首に首輪をつけた。
同時にマサヒコも新魔法の【エアバレット】(風の弾丸を放つ)でロックバードを攻撃。
首に巻かれた炎と、次から次へと体を貫通する見えない弾丸に、ロックバードはほとんどナニもできずに倒れた。
「魔法も楽しいな」とマサヒコ。
今のところ短剣や長剣の方が攻撃力はありそうだが、なんというかマンガとかの異能力バトルじみているのが中二心をくすぐってやまない。
「ウチは、弓の方が好きかな」
ギンギラギンのなんちゃってナースが、炎(手袋が【魔発】)で焼きまくり。これもまた一周回って違和感がない。
【フロアボスの間】の奥の青い扉の向こうは、やはり【階段の間】。
ここで休憩をトることにした。シュマホーを見ると、時間は午後4時。迷路じみたところを歩きまわるので、時間がカカるのだ。
『簡易ソファ』を出して(空気の入ったエアーソファーのような感じ。革製)、フタリで腰かける。
アリスはマサヒコの体にモタれカカった。こうしているだけで、ナンダカ気持ちイイ。
「疲れた?」
「別に。ただ、こーしてたいダケ」
顔を赤くしてそう言った。
それにマサヒコの顔も赤らむ。
ヤバい。ナンカ、最近、アリスのカワイさがハンパない。
マサヒコはアリスの肩に手を回した。
ギュっと抱き寄せる。
アリスの息が乱れる。
気持ち良いのだ。
ナンデ、こんだけで、ウチこんなんなってんの? オカシクね? ただ、肩抱かれてるだけじゃん。
そのまましばらくフタリは黙って時間を過ごした。
◇
地下3階フロアはDランク魔物が現れる。通路の様子は上階と変わらず。出現魔物が変わっただけで特に変化はなかった。
マサヒコはモンモンとしていた。
さっきの休憩時。マサヒコはキスがしたかった。スゴく、キスがしたかった。
考えてみたらアリスが風邪でダウンしてからキスしていない。
なんというか、言葉にはしヅライのだが、風邪が治ってからアリスが少し変わった気がする。
スキンシップが減っているというか。イヤ、減ってはいないが、ナニカが違う。リアクションもナンカ変だ。
それが良い変化なのか悪い変化なのかマサヒコには判別つかなかった。
ただ、コレだけは言える。
最近のアリスはカワイすぎる。カワイさが限界突破している。ヤバすぎる。
今までもカワイイと思っていたが、どうしてもエロさの方に目がイってしまっていた。
それが、なんだか逆転した感じ。とにかく、カワイイのだ。
キスしたい。アリスとキスしたい。
そう思うのだが、今までしょっちゅうしてきたのに、アリスからはまったくしてこなくなった。
もちろん、自分から行くべきである。だが、筆おろし済みではあっても、どこか童貞魂を引きづっているマサヒコは、自分からキスというのが中々ハードルが高い。
どのタイミングで?
いきなりイってイイもんなの?
2階フロアから3階へ降りる【階段の間】での休憩タイム。あれはチャンスだった。もう、あそこでキスしないでいつするんだ? というくらい絶好のチャンスだった。
だが、デキなかった。
なんてチキンだよ、俺。
今までアリスがガンガンきてくれた。
だから自分からイクというのが、ここまで勇気が必要だとは思いもしなかった。
マサヒコは、この【迷宮】攻略行の間になんとかキスをしようとヒトリ誓うのであった。
それはそうと3階フロアの何個目かの宝箱を開けたときに、本のようなモノを見つけた。
「なにコレ? 本?」
アリスが首をカシげる。
「本だね。たぶん、コレ【魔導書】だ。確か魔法を覚えられるんだよ。ちょっと待ってて」
マサヒコはシュマホーで以前読んだ魔法について書かれた本を起動。さっさとページをメクり該当カショを見つける。
「【魔導書】は【迷宮】の宝箱から発見される。大賢者チアキ・ホンダが自ら記したもので、【魔導書】にオサめられた魔法をどれか1つ覚えることができる。1度使用すると【魔導書】は消える。また【迷宮】の外に持ち出すことはできない。【魔導書】の表紙に手を載せて、覚えたい魔法の名を唱えると、魔法を取得できる、か」
「チアキが? アイツ、スゴいじゃん」
アリスは【魔導書】をパラパラとメクる。なにやら文字やら図やらが書いてあるが、アリスにはまったく意味が分からない。
「頭良かったもんな、チアキ。ホイ」
言ってアリスがマサヒコに【魔導書】を渡す。
マサヒコは革表紙をメクってみた。
どうやら風系統の【魔導書】らしい。
目次を見ると【エアブロック】【ホール】【ブラスト】の3つの魔法のどれかが覚えられるらしい。
マサヒコはシュマホー書籍の魔法辞典でそれぞれの魔法を調べた。本当に便利だ、シュマホー。
【エアブロック】は空中に見えないブロック、エアブロックを造り出す。エアブロックはその場所に固定され、どんなことをしても動かない。もう一度エアブロックを使用するか、一定時間が経過すると消える。
【ホール】は空間に空気の穴を造り出す。その穴は周囲の空気を吸い寄せる。要するに穴が空気を吸い込んで風を起こすということらしい。
【ブラスト】は衝撃波で攻撃する魔法。カナリ広範囲にも攻撃可能。
マサヒコはそれらをアリスに説明した。
「風ならマサヒコが使ったらイイんじゃね?」
「アリスが風魔法を覚えるのもイイかもしれないけど」
風系統の魔法を1つ覚えれば他の風魔法も覚えられるのだ。
「ヤッパ、ウチはイイや。マサヒコが風使えるなら、それでイイじゃん」
まあ、確かにそれもそうか、とマサヒコは思った。フタリが同じ魔法を使えてもあまり意味がない。
となると、マサヒコが覚えたい魔法は決まっている。
「じゃあ、俺が、【エアブロック】覚えてもイイかな?」
「ウン。ゼンゼン、オッケー」
さっそくマサヒコは【魔導書】に手の平を載せて、叫んだ。
「エアブロック」
【魔導書】が緑色に輝いた。
次の瞬間、マサヒコの手に光が移った。光はすぐに消えた。【魔導書】とともに。
「これで覚えたのかな。エアブロック」
マサヒコは2メートルほど先の空宙を意識しながら唱えた。
すると、まさにソコに出したいと考えていた空間が緑色に光った。触ってみると、一辺が50センチ程度の立方体がある。
「オモシロ」
アリスが見えないブロックをペタペタと触って言った。
「3分間で消えるって」
するとアリスがカウントダウンを開始。カウントが終了する前に、彼女の手が空をカク。
「わっ、マジ、消えた」
マサヒコがこの魔法を覚えた理由は汎用性の高さ。まず足場にできる。短剣スキルで動き回るマサヒコ。コレがあれば平原のような場所でも立体的な動きが可能。
他にも防御に使える。
絶対動かないという点がポイントである。それはつまり、あらやる攻撃を受けられるということではないか?
ヒョットしたら魔法には弱いかもしれないが、それでも物理攻撃には完全な防御になるハズ。難を言えば小さいところか。
他にも罠のような使い方や攻撃にも使えそうだ。とにかく汎用性が高そうなのである。
「良かったね」
アリスが微笑む。ホクホク顔のマサヒコをカワイイと思ったのだ。
「他は微妙だったけど。【魔導書】はイイな」
マサヒコは満足げに頷いた。




