ニンジャってイイヨネ
フタリで音楽を聴きながら暗い穴の中を歩く。傾斜になっていたり、二股に別れていたり、縦穴になっていたり。
さすがに巣穴。次から次へとキラーアントと遭遇する。
それをマサヒコがまるでアサシンのような動きで処理していく。
どうも短剣を使うイメージがニンジャかアサシンなのだ。
五差路のようなところでの戦闘。
次々と襲い来るキラーアントをシュッシュッシュと俊敏に絶命させていると、悲鳴が聞こえた。
見るとアリスがキラーアントに背中に乗られている。後ろ手で必死にアゴをツカんでいる。
マサヒコはとっさに拳銃を抜いた。
十字の照準をキラーアントに合わせ、引き金を引く。
轟音が轟いた。耳が割れるような轟音だ。
アリスを襲っていたキラーアントの胴体がチギレ、その半ば以上がフっ飛んだ。
魔装のおかげで鼓膜が破れるようなことはなかったが、それでもキーンと耳鳴りが続く。
「アリス、大丈夫?」
「ウルルンがぁ」
見るとアリスの手の中でウルルンがピクピクと痙攣している。
マズい。
マサヒコはすぐに【ヒール】をカケた。
ウルルンの体が光り輝く。すぐに痙攣はオサまったが元気はないようだ。アリスに甘えるように頭をスリつけている。
「ゴメン。ココで使うには音が大きすぎた。アリスは耳、大丈夫?」
「ウチは大丈夫。ウチがヤラれそうだったから、悪いんだし。ゴメン」
「待って。ナニカ音が」
ガサリガサリガサリとそこらかしこから音が聞こえてくる。
マサヒコはすぐに銃の特殊効果を思い出した。銃は魔物を引き寄せる。
「ヤバい敵が集まってくる」
マサヒコは【魔物レーダー】を確認。五差路のうち3方向から、光の点が列をなしてやってくる。
「アリス、コッチ」
マサヒコはアリスの手を引くと敵の来ない通路へ走った。
迎え撃つには数が多すぎる。
セマい通路を走る。走る。
「あっ、ウルルン」
アリスの声。
アリスが足を止めて振り返って手を伸ばす。ウルルンが地面に降りてあらぬ方へと走っていく。マサヒコやアリスの緊迫感が伝わり、混乱させたのかもしれない。
マズい、マズい、マズい。
「マサヒコ、ウルルンっ」
「分かってる」
一瞬、戻ることを躊躇した。このまま見捨てる? 俺たちの命には替えられない。
だが、アリスへの気持ちが。
彼女の期待は裏切れない。
「アリス、俺にツイてこい」
マサヒコは言うと踵を返して、走った。
アリスの手を握ったまま。これを離したら彼女が恐怖で動けなくなる。
すぐにキラーアントの群れとブツかった。
数が多い。通路が埋め尽くされている。
コレ、ヤバいだろ。
思いながらも、マサヒコは吠えた。
自分を鼓舞するために。ヤンキーがケンカをするときに怒声をあげる気持ちが分かった。大きな声を出して自分を動かしているのだ。
マサヒコの短剣が手あたり次第、キラーアントを斬っていく。
だが、数でオされて動きが鈍る。
ダメだ。もっと効率的に。確実に。
急所を一撃で。
その時、マサヒコの目に黒光りするキラーアントの体にいくつもの線が見えた。じんわりと輝く点線。首、胸、頭部。そのあたりにいくつもある。
特に関節には必ずあった。
スキル? 短剣のスキルか。
マサヒコは輝く点線をサっ、とナゾるように斬った。キラーアントの頭部がキレイに落ちる。今までのムリやり斬っていた感じとはまるで違う。まるで、もともとあった切り取り線を切り離すような。
そこからは作業だった。
ただひたすら、迫りくる敵の体の輝く点線をナゾるように斬り続ける。特に首を落とすことに集中した。
ポロっ、ポロっと近づく魔物がドンドンと首無しになって倒れる。
それでも敵の数はまるで減らない。通路一杯に詰めかけて津波のように押し寄せてくる。
範囲攻撃があればイイのに。
いきなり、敵の奥の方に火が付いた。
振り返るとアリスが弓を構えていた。
どうやら火矢を使ったらしい。
イヤ、火はマズいだろ。
マサヒコは思った。ウルルンの生存確率が減る。だが、それはアリスの他の特殊矢でも同じことか。
ニャーと炎のあたりからウルルンの鳴き声が聞こえた。
嫌な予感が当たった。
クソっ、もっと速く。もっと速く動け、俺。
ウルルンの焼け焦げた死体を見たアリスが、どんな顔をするか。それを思うと、体が燃えるように熱くなった。
アリスの悲しい顔。そんなモノ見たくない。絶対に。
そうだ。
マサヒコは思いついた。
「剣、顕現」
空っぽの左手に長剣が現れる。
短剣を鞘にオサめ、剣を構える。
そして見据えた。目の前に迫るキラーアントたちではない。そのずっと先。炎が広がりつつある一帯。
視界に白い矢印が伸びる。その矢印は炎のところに突き刺さった。
「【駿足剣】」
マサヒコは剣を振り上げ叫んでいた。
まるで背中をドンっと強い力で押されたかのごとく、体がグイっと前に跳んだ。その突進力がキラーアントを蹴散らす。
黒い昆虫の体にブツかりながら、一気に10メートルほどの距離を移動し、敵をブった切る。
もう一度。
視界に矢印が再び発生。
「【駿足剣】」
再び、スキルで突進斬り。
群がるキラーアントをフキ飛ばし、無理やり前に進む。
炎は、もうすぐソバだ。
「ウルルン、来い。コッチに来い」
叫びながら長剣を放り出し、短剣に持ち替える。
ニャーとまた鳴き声。小さな影が走ってくる。
マサヒコは【ギルドカード】を出すと、キラーアントを狩りつつ、走り寄るウルルンに近づいた。素早くその体をスクい上げ、【ギルドカード】にオサめた。
ヨシっ、と思わず声に出した。
アトはキラーアントを全滅させるだけだ。
マサヒコはまず背後のキラーアントを処理していった。
【駿足剣】でムリやり蹴散らしたために、まだ生きている個体ばかり。それらをテキパキとシトめていく。
泣きそうな顔のアリスが見えた。
「アリス、ウルルンはちゃんと保護したから。大丈夫だから」
アリスがペタンと地面に座り込んだ。
「すぐ終わらせるから、待ってて」
言うと、マサヒコはまたキラーアント狩りに戻った。
ひたすら、短剣で魔物の首の光る点線をナゾるように斬っていく。これは本当に楽だ。スルっと首が落ちる。
それを続けていると、今度は視界に【駿足剣】のような矢印が浮かぶようになった。
なんだ、コレ、またスキル?
矢印の色が違う。緑色。
矢印に意識を向けてみると、体がフっと軽くなった。次の瞬間、矢印の先に体が移動していた。どうやら、高速で移動するスキルのようだ。
コレ、面白い。
マサヒコは次々と現れる矢印を使い、高速で動き回った。どうやら障害物を無視して移動できるらしい。敵をすり抜け、その背後に回る。実にスカウトっぽい動きだ。
高速移動を駆使して、キラーアントを倒しまくる。
最初はギコチなかった高速移動も、使っているうちに慣れてきた。ゲームのイメージが良かったのだろう。
サッ、サッ、サッと、一瞬姿を現しては、短剣を振り、また消えて別のポイントに出現。そんなことを繰り返す。
より、スタイリッシュに。などと、カナリ調子に乗りながら、キラーアントを殲滅していく。
今まで使わなかったが短剣は面白い。スキルを覚えたら、もう楽しくて仕方がない。
そうこうしているうちに、さらに別のスキルを覚えた。
今度は壁や天井に緑色の足跡のようなマークが浮かんだ。試しに壁に浮かんだ緑色の足跡に向けて矢印移動。
すると壁に垂直に立った。重力を完全無視。
ヤバい、最高なんだけど。
さらに天井の足跡に緑矢印で移動。今度天井に逆さに立った。テンション、爆上がり。
コレ、いよいよニンジャじゃん。
壁に立つとか超カッコイイ。
マサヒコはますます調子に乗ってキラーアントを倒しまくった。もはや彼を止める者は誰もいない。




