アリの巣へ行ってみよー
フタリは湖畔に上がると魔装を解いた。だが、コレは早すぎた。気温が思った以上に下がっていたのだ。
「寒い。超寒いんだけどぉー」
「もう一度、魔装顕現しよう」
というわけで、また魔装顕現。
そのままの姿で駅まで戻る。
この日は、もう1本、依頼を入れている。
キラーアント退治だ。カナリ大きな巣が作られてしまったタメに、早急な駆除が必要とのこと。
「ナンカ、ちょっと疲れたかも」
アリスがダルそうに言った。
「確かに泳ぎ疲れたかもね。今日は、もう帰る?」
ただ、キラーアント退治の依頼はカナリ緊急性が高い。できれば今日中が望ましいと受付で言われたのだ。
「ウウン、もう1本、終わらせてこ。せっかく受けたんだからさ」
「でも、疲れたんじゃない?」
「休憩とれば平気っしょ。馬車の中でも寝れるし」
ソコに駅馬車が来た。
さすがにフタリとも水着姿というワケにはいかない。再び魔装を解く。
すると一気に寒くなった。
「うーっ、寒い。マサヒコ、寒いよぉ」
言ってピタッとくっついてくる。
マサヒコはそんなアリスを抱きしめる。さっきのキスでかなりエロエロな気分になっていたので、こんな抱擁も刺激的。
チンチンも元気いっぱいだ。
馬車が到着したらフタリともすぐに乗り込んだ。行き先はベル池周辺駅から、さらに5駅先。
車内は空いていた。マサヒコとアリスのほか、一般人らしき中年夫婦が1組。
アリスはよほど疲れていたらしく、すぐにマサヒコの肩に頭をアズけて、くぅーくぅーと寝息をタテ始めた。
そういえば、とマサヒコは今さらウルルンのことを思い出した。【ギルドカード】からウルルンを出す。
ウルルンはマサヒコのレザーコートに容赦なく爪を立てた。
ウルルンと遊びつつ、ときどき、アリスの顔をウカガう。口をワズカに開けて、少し眉を寄せて。
ウルルンがすぐにアリスのところへ行こうとするのを阻止する。
「ちょっと寝かせてやってくれよ。疲れてるんだからさ」
マサヒコの言葉にウルルンは少し不満そうにウナりつつ、アリスの方へ飛び移ることを断念してくれた。
マサヒコも少しウトウトしてきたところで目的の駅に到着。アリスは結局、最後まで起きなかった。
声をカケながら優しく揺すってやると、んんっ、と声を上げて目を開けた。
「ツイたよ」
「あっ、マジ、ガッツリ寝てた。あっ、ウルルン、元気だったぁ?」
さっそくマサヒコのヒザの上のウルルンを抱き上げ、頬ずりする。
「降りようか。それで、昼にしよう」
「アーイ」
馬車を降りる。
フラナン村。マサヒコたちが村に入ったところで、いきなり声をカケられた。60台ほどの男性。
「君たち、ヒョットして冒険者ギルドから来たのかい?」
「ハイ。キラーアント退治に来ました」
「良かった。さっそく頼むよ。もうだいぶ巣が広がっちまったらしくて、村の方にまで入り口が開いちゃったんだ」
昼食にするつもりだったが、村長はすぐトリカカってくれ、とフタリを村の奥へと連れて行った。
村の奥。集会場のような大きな建物の裏手。ソコにポッカリと直径1メートルほどの縦穴が空いていた。
「まだ、キラーアントは出てきていないが。いつ出てくるか。下手に埋めちまったら、一気に出てくるカモしれなくて、なにもできないんだよ」
さすがにこんな村長の前でノンキに昼食をトる気にはなれない。フタリは魔装顕現して穴へと突入した。
軽武装のマサヒコ。バニー魔装のアリスが続く。チナミにアリスが水着魔装のタメに消した魔装はギャル魔装。
「少し、飽きてきたし」とのこと。
縦穴を五メートルほど下ったところで、少し曲がり、横穴へと変わった。
なにしろ暗闇。魔装の設定で視界の明度を変えても、もとが真っ暗なので意味がない。
「く、暗い。ウチ、暗いの怖いんですけどぉ」
アリスが泣きそうな声でマサヒコの腰にしがみつく。
「ちょっと待って。コレ、確か照明機能もあるハズ」
言ってマサヒコは【魔物レーダー】をイジった。完全な球体だが、ところどころに隠れたスイッチがある。
今はメロンほどの大きさでマサヒコの右肩の少し前方を浮遊させている(自動追尾機能アリ)。
【魔物レーダー】がピカーと明るく光った。
穴の広さは直径2メートルほどにまで広がった。広くはないが戦えなくはない。
マサヒコは【魔物レーダー】を確認(前面は明るく光っているが背面はモニターのようになっている。
「アリス、敵が来る。ちょっと離れてて。シュマホーで照らしててイイから」
「ウン、ゴメンね」
手の平サイズの猫を肩に乗せたバニーガールが後ろに下がる。
マサヒコは短剣を抜いた。
さすがにこの広さでは長剣を振り回せない。ほとんど使ったコトのない短剣だが、こういう時には役に立つ。
ガサガサという音とともに巨大なアリが這ってきた。黒くて子牛ほどもあるアリだ。
キラーアントは本来ならDランク魔物。だが、なにしろ巣を広げ、すぐに数が増える。巣の潰滅となると、それなりの実力が必要になる。
マサヒコはキラーアントに飛びかかった。
剣スキルは短剣では使えない。
それでもレベル45は伊達ではない。巨大アリのアゴ(あぎと)をカワし、その首を短剣でハネる。
姿勢を低くして次の魔物にソナえる。すぐに仲間の屍を越えてキラーアントが現れた。
マサヒコの短剣がシュッと風を切り、キラーアントを切り裂く。
なにしろマサヒコが戦闘態勢に入ると、敵の動きが緩やかになる。倒すのは、とっても簡単だ。
マサヒコは瞬く間に5体のキラーアントを倒した。ココに来るまでに調べた情報によると、キラーアントの尻から分泌されるエキスが高値で買い取られるという。アトは巣で作られた蜜。
マサヒコはサっとキラーアントを素早く解体し、腹部を【ギルドカード】に収納した。
今まで、ほとんど解体などしたことがなかったが、ヤってみるとそれなりにできる。
これも魔装のおかげかもしれない。
「アリス、大丈夫かい?」
後ろが静かなので振り向くと、アリスがしゃがんで体を抱いている。
アリスの両手の間から、ウルルンが顔を出し、ペロペロと手を舐めている。
「セマくて、暗くて、怖いよぉ」
「アリスは外で待っててくれ。敵も大して強くないし、俺ヒトリでヤルよ」
「ウウン。ウチも行く。戦えないカモだけど、ナンカあったらフォローすっし」
ヒきつった顔で言った。
「ムリしなくてイイって」
「ウチがヤなの。待ってるの、不安じゃん」
まあ、あの村長が上で待機してたら落ち着かないだろうな、とマサヒコは思った。
それにマサヒコもこのセマくて暗い巣穴に潜るのはジャッカン心細い。
「そーだ。ナンカ音楽でもカケてこうか」
「イイのあんの?」
「結構、イロイロあるよ。藤見さんがガンバったみたいで。『芸術神』って呼ばれてるくらいだから」
「キョーカ? アイツ、ナニやってんだ」
「コッチでは超有名人。モーツアルトとレオナルドダビンチとシェイクスピアとビートルズと、まー、いろんなスーパースターをひっくるめたくらいのスターっぷりだよ」
元の世界のいろんな芸術をパクって広めたからだが。
「マジかー」
「おかげで、普通にポップスっぽい曲もあるし。ロックもジャズもクラシックもある」
言ってマサヒコは藤見鏡花作曲で、彼女をリスペクトするアーティストが、彼女の曲を演奏したトリビュートアルバムをシュマホーで再生した。
ブっ、とアリスがフきだす。
「コレっ」
それは某有名少年漫画のアニメの主題歌だった。
「イロイロ違うところは彼女がウロ覚えだったのか、アレンジがされたのか。聞いてると面白いよ。洋楽のパクリは歌詞が超テキトーだし。クラシックはいろんな曲が合体してるしさ」
音楽を流していたおかげか、またしてもキラーアントが寄ってきた。
マサヒコは聞き覚えがありつつも、違和感がハンパない曲をバックにキラーアントを片付ける。
不思議と音楽を聞きながらだと動きがいつもよりスムーズだ。あまりリズム感のある方ではないのだが、要するにノッてしまう。
アリスも音楽が気分転換になったようで少し元気になった。それでも移動時にはマサヒコにピッタリとしがみついてきた。




