ジョーマ
マサヒコとアリスはCランク依頼をバリバリこなした。結局、フタリは【迷宮】の第3層攻略はやめてCランク依頼50本をコナすコトにした。
「まー、そんなに大変じゃないし。お金もケッコー入るしね」
「ウン、ウチも楽しいし。好きカモ」
なにしろパーティはフタリきり。デートのようなものである。ツライ要素がナニもない。
マサヒコは思い切って高性能の【魔物レーダー】を買った。球形で半径500メートルまで魔物を探知できる。しかもズームアップ機能があり、映像まで見られる。
250万エーン。
さらにもう1つ。
【乗魔】を購入した。乗用魔物の略称で、要するに馬のように乗るタメの魔物である。
猫型の魔物で頭と肉球が大きく胴が長い。毛はトラジマ。
普段は小さく手の平サイズだが魔力を注入すると巨大化する。
「超カワイイんだけど。もうヤバいじゃん、カワイすぎんじゃん」
乗魔物屋に入った瞬間、アリスがヒト目ボレして、この猫型に決めたのだ。
普段は手の平サイズなのでアリスの肩に乗っていたり、マサヒコの背中にヘバりついていたり。
基本的に【乗魔】は品種改良されており、従順で大人しい。さらに、定期的に魔力を与えることで主人にナツく。
ウルルン、とアリスが名前を付けた。
エサはなんでも食べるし、やたらめったら鳴くこともない。カワイイヤツである。
そもそもの目的がペットではなく乗用である。駅馬車から降りて徒歩で歩くようなことが多く、時間がカカっていたのだ。
初めて巨大化したウルルンにフタリで乗った時は、マサヒコもアリスもワーワー、キャーキャー、騒いだ。
ウルルンの背中には、ナニカ座席のようなコブがあり、乗り心地が良かった。
走り出すと、ものスゴイ揺れるのだが、不思議と酔うことはなかった。レベルアップしているせいかもしれない。
ウルルンの素晴らしいところは、平地だろうが、デコボコ道だろうが、斜面だろうが、なんなく走るところ。
馬ではこうはイカなかっただろう。
「マジ、気持ちイイんだけどぉ」
ちなみにアリスが前。
マサヒコがアリスの胴を抱くように後ろに乗る。
「振り落とされないようにね」
マサヒコが風切り音に負けないように声をハって言った。
だが、ナニカの魔法なのか。磁石のようにピタリとウルルンの背とくっついており、まったく振り落とされる気がしない。
進路はアリスやマサヒコが「そっち左、とか、そっち右」とか言うとその通りに進んでくれる。ある程度の人語を解するらしい。
ウルルンの購入により、フタリの移動速度が格段に上がった。街中では乗れないが、郊外なら駅馬車の代わりにウルルンに乗っていける。次の馬車が来るまでの待ち時間が長い時はソチラの方が早い。
さらにやはり徒歩が減った。
コレが大きい。今まで駅馬車の到着した村から、魔物の巣くう現場まで歩いて向かわなくてはならなかったのだ。
オマケにペットとしてもカワイイときている。アリスはもとより、マサヒコもウルルンに夢中になった。
「マジ、カワイイんだけどぉ」
アリスはシュマホーをイジる頻度が減って、代わりに手の平サイズの猫型魔物と遊ぶようになった。
そして、マサヒコは猫型魔物にメロメロになっているアリスを見て癒された。
順調に依頼をコナすフタリ。
1日、5本、6本は当たり前。
稼ぐ金額は1日に数百万。
スキルもガンガン覚えている。
マサヒコは剣スキルの【駿足剣(シュンソクケン】と【溜斬】。【駿足剣】は遠間から一気に高速で踏み込み、敵を斬る。【溜斬】は名前の通り、パワーをタメての一撃必殺の剣。破壊力大。
アリスは5つのスキルを覚えた。
【流星群】。1本の矢が複数の礫になって飛んでいく。散弾のような矢。
【絶対命中】。誘導弾のように矢がホーミングする。
【火矢】。火属性の矢を放つ。当たると延焼。
【氷矢】。氷属性の矢を放つ。当たると凍結。
【爆発矢】。爆発の矢を放つ。当たると爆発。
もともとワンサイドゲームのような一方的な戦闘ばかりだったが、いよいよ、その色が濃厚に。とにかくアリスの遠距離攻撃が強すぎる。
やがてアト3本の依頼で昇格試験を受けるためのノルマ50本達成というところまできた。
「アレ、珍しい依頼が来てるけど。マッドフィッシュ?」
朝の掲示板前でアリスが言った。
最近スッカリ寒くなったので白のモフモフコート。頭にもモフモフした白い帽子をかぶってる。その肩には手の平サイズの胴長の猫。
マサヒコがシュマホーでスカサズ調べる。
「あー、コレ、水棲魔物。体調5メートル。鋭い歯で人を食べる。全身から触手を伸ばす。触手なんてないじゃん」
マサヒコはアリスに画像を見せた。
「ウワっ、サメじゃん。そんな映画なかった?」
「ジョー〇ね。まー、コッチは淡水魚みたいだけど。あー、前に行ったベル池だね。ほら、ヘルスパイダー倒したトコ」
「魔装なら水の中でも平気なんだっけ」
「そーらしいね」
「じゃあ、ヤっか。ちょっと魔装変えてくる」
「えっ、なんで?」
「せっかくなら、水着着たいじゃん」
アリスは、いつマサヒコとエッチしてもイイように体の手入は余念がない。すぐ水着になれる女なのだ。
「じゃあ、俺も変えようかな」
「ウン、せっかくなら、楽しもうぜ」
こうしてフタリはマッドフィッシュ退治にカコつけて、水遊びをするコトにした。
フタリして【カスタムルーム】で、魔装チェンジ。マサヒコは今までほとんど使う機会のなかった重魔装を変更。レザーアーマーをイジってウェットスーツのような魔装にした。
アリスは秘密とのコトで先にマサヒコは【カスタムルーム】を出ることに。
チナミに、その際、久しぶりにステータスを確認したら(あまりにも強いので最近スキルを見るくらいしかステータス確認をしていない)【ステータスポイント】が凄まじいことになっていた。
Cランク魔物とはいえハイペースで倒しているので【レベル】もカナリ上がっているのだ。
「そういえば、アリス、【レベル】いくつになった?」
マッドフィッシュ退治のベル池周辺駅に向かう途上の駅馬車内。
ヒザの上のウルルンと指で遊ぶアリスが、ウン? と首をカシげる。
「【レベル】。結構、上がったでしょう?」
「あー、ちょっと待って」
言ってアリスがその場でステータスウィンドを開いた。コレはマサヒコには見えない。
「32だって。マサヒコは?」
「おー、思ったより、イってる。俺は46」
「【ステータスポイント】、ゼンゼン使ってないけど」
「とりあえずはイイかな。俺も放置だし」
「てか、ウチら強すぎじゃね?」
「ウン。たぶん、【ステータスポイント】の他にもイロイロ補正がカカってるかも。別の世界から来たせいかな」
「千秋とか妃瑠陀とかがイロイロやってくれたのかな」
自分たちよりも何百年も前にこの世界に来たクラスメートたち。彼らのおかげでコチラの世界でも快適に過ごせている。
「そーかも。Aランクでも楽勝だもんなー」
チナミにコノ世界の魔物のランクは最高がAランクの上のSランク。
コレはとにかく強すぎてソレ以上のランク付けできません、という強さである。
冒険者のランクも同様にSランクが最高。Sランクともなれば各国のトップと自由に面会できる。
実力だけならばマサヒコたちもSランク相当かもしれない。




