バリバリこなすぜ
翌日になるとアリスもだいぶ動けるようになった。
「ウン、コレならイケんじゃね? 冒険者ヤレると思うよ」
「そう? あんま無理しなくても、今日一日休んでもイイけど」
「ウウン。マジ、大丈夫。ウチ、2日目ゲキオモだけど、アト楽だから」
マサヒコが意味がよくわからず首をカシげる。ピンとこない男、マサヒコ。
そういったワケで朝食後冒険者ギルドに行った。
カナリ肌寒い日だったのでマサヒコもアリスもコートをハオっている。マサヒコは黒い革のロングコート(マーサ横丁でヒト目ボレして買った)。
アリスは白いエリ元にファーがモッサリついたコート。下はエリぐいの深い超ミニのニットワンピなので、コートの下はナニも着ていないように見える。
フタリが来たのは例によってCランク掲示板。
「ギガマウス? ナニコレ」
アリスが依頼書を見て首をカシげる。
「確か馬鹿デッカいネズミだよ。トラックくらいあるような」
「デカっ」
「だけど、まー、1体ならどうってコトないと思うよ」
「じゃあ、受けっか」
アリスが依頼書をハがした。
「コレも受けよう。ブラッディツリー退治」
群生する人食い樹ブラッディツリーを駆除するというモノ。
「コレは? サラマンダーだって」
「ウーン、俺たち魔法があんまりだからなー。ヤメとこうか」
力押しでもイケなくはないだろうが、ムリをすることもない。
マサヒコたちは他にも2本の依頼書をハがした。計4本の依頼。
受付嬢もマサヒコたちのハイペースには慣れたらしく、笑顔で受理してくれた。
ギルドを出る際に案内娘のシャーリーが、ガンバってくださいね、とエールを送る。
アリスがムッとした顔になった。
「気持ち、揺れてない?」
「えっ、気持ち? ナニソレ」
マサヒコは鈍感だった。
アリスは、ジーとマサヒコを見つめ、それから、ナットク。大丈夫そうだ。
最初の依頼はブラッディツリーの駆除から。
ベルドーン市から出て西に駅馬車で1駅。村から20分ほど歩いた先にある森。
森へ向かう途中、あまりにも風が冷たく、フタリは寄り添うように歩いた。
だが森の前で魔装顕現すると、アラ不思議。寒さなど微塵も感じなくなった。スゴいぞ、魔装。
「もー、魔装でずっと過ごしたくなるな」
とマサヒコ。機動甲冑の魔装(黒いぴったりフィットの甲冑に赤マント)である。
「マジ、ソレ。超快適なんだけど」
アリスはギャル魔装(タートルネックノースリーブの金色のワンピ風クサリカタビラに、シースルーのコート)である。
今まで気にしなかったが魔装には体温を適温にタモつための、機能があるらしいのだ。夏は涼しく、冬はあったか。
スゴいぞ、魔装。
葉がスッカリ落ちて寒々しい冬枯れの森へと入る。積もりに積もった落ち葉が、カサリカサリと歩くたびに大きな音をたてる。
森は広く、深い。葉が落ちていても下手をすると迷いそうだ。魔装の方位磁石機能が頼りになる。
「あっ、ソッチにいる」
【魔物レーダー】を見ながら歩いていたマサヒコは言って進路を変える。
「アレじゃね?」
アリスが指さした。
アリスの指の延長線上に真っ赤な木が見える。枝がブキミに動いている。
間違いない。
「ウン、アレだ。そーいえば、新しいスキル覚えたんだっけ?」
「うん。【力矢】だって」
マサヒコは素早くシュマホーで調べた。
「パワーをタメて強い矢を射れるみたい。コレ、使ってみたら」
「オッケー」
アリスは言って弓にハートの矢をツガえた。
視界に現れる十字の照準を真っ赤な木の幹に合わせる。視界の端にゲージが現れた。どんどんソレがタマっていく。
最大にタマったところで放つ。
ハートの矢が輝きながら飛んでいった。光の尾を引きながら。
矢は見事、ブラッディーツリーの幹に突き刺さり、突き抜けた。貫通したカショに大穴がウガたれる。ソコから真っ赤な液体が大量に流れ、ブラッディーツリーは見る見る枯れてしまった。
「スゴいじゃん」
アリスはすでに次の矢をツガえている。すると、視界がズームアップし、木々の先に生えている2本のブラッディーツリーを見つけた。
「あっ、アレもじゃね?」
またしてもタメて輝く矢を放つ。
アリスのアーチャーぶりも堂に入ってきた。
結局、ブラッディツリー退治でマサヒコの出番はなかった。アリスが100メートル以上先のブラッディーツリーをイチ早く発見し、駆除してしまった。
森の中をさまよったので思ったよりも時間がカカった。駅馬車で村を離れたのが10時すぎである。
次は隣村でのゴブリン退治。
ゴブリンは本当にドコにでも現れ、すぐに増えてしまうのだ。
コチラも順調。数も20体もいなかったし、場所も村から近かったのだ。
今回はマサヒコが長剣で暴れ回った。
オカゲでついにマサヒコも剣スキルを覚えた。
「やった。俺もスキルゲット」
かなりウレしくて、さっそくシュマホーのスキル辞典で調べた。
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【飛斬撃】
最大10メートルの距離に斬撃を飛ばすコトができる。剣を振る際に剣先が飛んでいくイメージが重要。
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ワリと名前のまんまであった。
だが、マサヒコのテンションは上がった。
マンガとかアニメでよくある、アレ。
離れている相手を斬る、超カッコイイ技。
なんて男心をクスぐるスキルなんだ。
「良かったじゃん」
アリスは言った。ニコニコしているマサヒコをカワイイなー、と思って微笑ましく見ていた。
ゴブリン退治の次はギガマウスである。
コレはさらに2駅先。村から1キロほど離れた草原。ソコに小山のような巨大ネズミがいた。遠目からだと、毛だらけの丘といったところ。
「ウチがヤっちゃってイイ?」
「ウン。近づくと大変そうだし、アリスの矢で動きを止めよう。足を狙える?」
「ヤってみる」
アリスは【遠矢】のズームアップと【力矢】を組み合わせた遠距離かつパワー攻撃の矢を放った。
輝く矢が軌跡を残しながら、山なりに飛んでいく。
それはマサヒコには黒い塊にしか見えないギガマウス、それも前足に、見事命中。大きな足を一矢で破壊した。
天に向かって鳴くギガマウス。遠く離れたフタリにまで聞こえてきたギャーという鳴き声。
ギガマウスが踵を返し、逃げようとする。だが遅い。
アリスはすでに、2本目の【遠矢力矢】を放っている。それも見事命中。今度は後ろ足を破壊。
またしてもギガマウスが鳴く。
逃げようとするも、さすがに2本の足がツブれてはほとんど動けない。そこにアリスの3本目の矢。ソレは頭部に突き刺さり、大穴をウガった。
アリスは黙々と矢を放つ。
一切の容赦ナシ。やがてギガマウスは地に伏した。
「スゴい。一方的」
マサヒコ、喝采。
「ラクショーだし。でも、あんなん、収納できなくね?」
確かにギガマウスはデカい。さすがに【ギルドカード】には入らないだろう。
マサヒコはシュマホーで魔物辞典をチェック。
「ああ、ナンカ、ヒゲが高価みたいだよ。ヒゲだけ切ってアトは置いてこうか」
「オッケー」
村に戻り、駅馬車を待つ間に昼食をトる。あらかじめ買っておいた総菜パンを、駅馬車の前のベンチで食べた。
「あーあ、ヤキソバパン食べたーい」
アリスが肉とレタスのハサまったパンを持って言った。
ヤキソバパンはアリスの好物。
今のところ、コチラの世界でヤキソバパンにはお目にカカっていない。
「俺はカレーパンかな。ないよねー」
マサヒコが手にしているのはベーコンと目玉焼きがハサまったパン。
「今度作ってみよっかな」
「アレ、アリス、料理できるっけ?」
「あっ、ウチのコト馬鹿にしてね? コレでも、結構、料理すっから」
むーっと唇をトガらせる。
「そーなんだ」
「今度、食べさせたげる」
「オっ、イイね。彼女の手料理」
へへへっ、とアリスが照れクサイ顔をする。ハムハムハムとパンをカジる。
マサヒコはそんなアリスがタマらなくカワイイと思った。なんというか、素直なのだアリスは。
パンを食べ終わり、もう少しで駅馬車が来るだろうというところで、アリスがポツリと言った。
「ウチの料理、誰にも食べさせたコトないから」
えっ、大丈夫なの、とマサヒコは思ったが口には出さなかった。
「マサヒコが初めてだから」
真っ赤になりながらそんなコトを言った。
ヤベっ、やっぱカワイイ。
マサヒコはメロメロになった。
◇
最後の依頼はまたゴブリン退治。
退治自体はすぐに終わったが現場に行くまで時間がかかった。
ベルドーン市から駅馬車で1時間半の町。そこから、さらに別の駅馬車に乗って30分。山のふもとの小さな村だった。ソコから徒歩20分。
例によってマサヒコたちの実力を疑われたが、30分もカカらずに全滅させて戻ってくると、村人たちは多いに喜んだ。
「なんとか、今日も全部コナせたね。オツカレさま」
帰りの駅馬車に揺られながら、マサヒコ。
隣に座るアリスはマサヒコの腕を抱えるようにしてくっついている。
「悪くないよね。コッチの世界も」
アリスが言った。
「冒険者、結構、楽しいし? こうして、彼氏とデート? みたいなさ」
「ウン。俺も楽しい。アリスがいるから」
その言葉にアリスがテレて下を向く。
「ホストかよ」
「えっ、ナニ?」
「別に、なんでもないから」
ギュっとアリスがマサヒコの腕を強く抱く。マサヒコは押し付けられるオッパイの感触に全集中だ。
しばらくフタリとも黙っていた。
車内にはフタリのほかには誰もおらず、静かな時間がすぎていく。
「マサヒコ」
「ウン?」
「呼んでみただけ」
「なんだよ、ソレ」
「超好き」
マサヒコはいきなりの攻撃に真っ赤になって、ソッポを向いた。
「お、俺も、超好きだし」
チラッとアリスを見ると、ウルんだ目で見上げている。
ツン、と唇を突き出してきた。
マサヒコは唇を重ねた。そのまま長いキスをする。
そのキスは次の駅に止まるまで続いた。




