休日です
翌日。
マサヒコは寝不足であった。フラフラである。朝方までエロいコトを考えていたせいだ。
アリスも調子が悪かった。コチラは生理のせい。ただ、マサヒコにはさすがに言えず、体調が悪いとだけ言った。
「そうか。じゃあ、今日は休みにしようか」
「ウン、マジ、ゴメンね」
アリスが血の気のない顔で言った。
「大丈夫? なんなら、ヒールかけようか」
ヒールにはケガだけではなく、体に活力を与える効果もあるのだ。
「ダイジョーブ。いつものヤツだから」
「うん? そうなの?」
ピンとこない男、マサヒコだった。
「今日は寝てるわ」
「ナニか必要なモノがあったら言ってよ」
言いながらもマサヒコもアクビをカみ殺す。
「ヤベ、俺も眠い。ちょっと寝ようかな」
そういったワケで、この日は、フタリとも昼まで寝ていた。
昼すぎに起きたマサヒコは、食堂に昼食を食べに行き、ついでにアリスの分をオニギリにしてもらってきた。
「アリガト。マジ、サイコーの彼氏なんだけどぉ」
アリスが感激で目をウルませた。ちなみにスッピン。眉毛がほとんどないが、マサヒコはスッピンのアリスの方が好みである。ギャルメイクでワザと魅力を落としているとしか思えない。
「ほかに欲しい物ない? 俺の方は、元気になったから、買い物くらい行けるけど」
「んっ、ダイジョーブ」
調子の悪いアリスを置いて外に行く気にもなれず、マサヒコは午後も部屋にコモりきりだった。
シュマホーで読書にイソシむ。
ときどき、アリスと話して、また読書。
実にマッタリとした一日であった。
夕方。
マサヒコはなんとなく屋上に行った。
ちょうど夕日が沈むところだった。
街が真っ赤に染まっている。
ここに来ると、マリアのコトを考えてしまう。
別にウワキ心ではない。マサヒコはマリアに対して、あくまでも友人としか見ていない。そう、同じ陰キャで、ボッチ気質。
なんとなく、放っておけない感じなのだ。
まだ戻ってきてないのかな。ずいぶん、遠くに遠征に行ったんだな。
同時期に冒険者稼業を始めた同志である。
マリアは幸運にもBランクパーティに拾ってもらったので、ドンドン成長していくコトだろう。
にしても、よくBランクパーティに入れたよな。
素人同然のFランクなど仲間に入れても、Bランクパーティにメリットがあるとは思えない。
単純に善意なのだろう。
ともあれ、マサヒコたちもCランク。次はBランクを目指していく。
今のところ、あのゴブリンキングとの戦い以来、ほとんど苦戦らしい苦戦はしてない。
【トレーニングルーム】ではAランク魔物でも楽勝だったので、Aランクまでは順調にいくハズである。
そうしたら元の世界に戻るための旅に出る。
アリスと一緒に元の世界に帰るのだ。
元の世界に帰っても、アリス、気が変わったりしないかな。
それだけが心配だ。
今は吊り橋効果的なヤツでマサヒコのことを好きだと思っていても。元の世界でイケメンとかに口説かれたら。
マサヒコは頭を振って嫌な想像を打ち消した。
◇
アリスはベッドでゴロゴロとしながらシュマホーをイジっていた。
友達とメールしたり。シュマホー書籍の雑誌を読んだり。写真を見たり。
考えてみれば異世界に来てから初めての生理。日本にいた頃は調子が悪くとも学校に行っていたので、まあ、ガンバれば動けなくはない。
コチラの世界の生理用品はカナリ優れもので、シールのようなものをペタッと貼っておくと、それが吸収してくれる。魔法がカケられているのだ。
【ギルドカード】を持っていない魔法が使えない者には、もう少し大きくてボテっとしたタイプのモノがあるらしい。
ドアがガチャッと開き、マサヒコが部屋に戻ってきた。
「調子どう? 大丈夫?」
「ウン。結構、良くなった。夕飯は食べに行けるかも」
「そう。じゃあ、もう少ししたら行こうか」
「マサヒコー」
アリスはベッドの柵のスキマから手を伸ばした。
「なになに」
言いながら、マサヒコがアリスの伸ばした指先にフれる。
「どうしたの?」
「ウウン。ただ、触りたかっただけ」
マサヒコが下で笑った。ちょっとテレたような笑い。
カワイイ、とアリスは思った。
マサヒコがテーブル席について、足を組む。シュマホーで読書開始。
アリスは上からマサヒコをしばらく見下ろしていた。
「そういえばさ」
マサヒコがシュマホーを見ながら言った。
「んっ? ナニ?」
「元の世界に戻っても、さ」
「ウン?」
「イヤ、やっぱイイや」
「ハア? 気になるじゃんか」
「イヤ、ホント、気にしないで」
「気になるし。言ってよぉ」
「……ただ、その、戻っても、彼女でいてほしいなって。ソレだけだから」
「ハアー? そんなん当たり前じゃん。てか、ウチ、ずっとそのツモリでしたけどぉ」
「イヤ、なんか心配になっちゃったんだよ。ほら、アリス、カワイイし、モテるし。俺、陰キャだし。ボッチだし」
だんだん、声が小さくなる。自分で言っていてテンションが下がるマサヒコであった。
アリスはそんな見当はずれなコトを心配するマサヒコに、愛おしさが込み上げてきた。これはもうフれ合わないとダメだ、と思い、ハシゴを降りる。
「馬鹿じゃん。そんなコト絶対ないから」
座るマサヒコの前に立って言った。
「ウン、頼むよ。マジで」
ちょっと情けない顔。
アリスは体を折るとマサヒコに顔を近づける。マサヒコが目を丸くし、それから緊張の面持ち。だがアリスの意図を察して、優しく体を支えるように手を回す。
そのままキス。
互いの舌をカラめ合う長いキス。
アリスは少し態勢がキツかったが、あまりにも気持ちよくて終われなかった。
ようやく離れる。
「マジで大好き。超好きだら」
ボーとするマサヒコの頬をナデナデ。
「好きすぎてヤバいから」
「俺も、スゴい好き。アリスのコト」
それからマサヒコは頭をカイた。
「カワイすぎるだろ」
そのまま見つめ合う。
アリスは不思議だった。エッチをしているワケじゃないのに、心地よくて。体の内側から満たされる感じがする。
コレが本当の恋愛か、と思った。
魂で愛撫しあうような。
肉体を優しさで満たし合うような。
「青木正彦」
フルネームで読んでみた。
「なに、鈴木亜里栖さん」
マサヒコがコタえる。
「なんでもないよ」
微笑みをかわしあった。




