シタイケドサア
今夜こそ。
と、アリスは気張っていた。
今夜こそ、マサヒコとヤル。もうバッチリ決める。エッチする。
なぜって、マサヒコは自分の体目当てでツキアってるのだから。
エッチできないなら別れる、と言い出すかもしれない。ちゃんと期待に応えないとならないのだ。
それになによりアリスがエッチしたい。
そういうワケで夕食をトり、各自シャワーを浴びたところで、アリスは気合を入れてボディのケアをした。ムダ毛の処理を念入りにし、メイクもバッチリし直して、香水もキッチリつけて。
服はチューブトップに超ミニ。肩も胸も足も露出しまくり。コレにジャケットをハオる。
ヨシっ、行くぞっ。
アリスは気合を入れて、バシッと自身の頬をハると部屋に戻った。
マサヒコは当然すでに戻っており、テーブルでシュマホー読書をしていた。
真剣にシュマホーを見ているその眼差しが、カッコ良くて、アリスは、イイなー、と思わず見惚れた。
「あっ、オカエリ」
マサヒコが顔を上げた。それから、ウン? と首をカシげる。
「アレ、これから、ドッカでかけるの?」
「ウウン。別にでかけないケド」
緊張しながら、マサヒコの元へ。なんだか足元がオボつかない。フワフワする。
チョコンとマサヒコの隣に腰かける。
自分で言うのもなんだがカナリ大胆な服装。距離も近め。
今までの元彼たちなら、もう、スゴい勢いで迫ってきたコトだろう。
だが、マサヒコはシュマホーに視線を落とすと、また読書を再開してしまった。
アリスはそこからどうしてイイか分からない。なにしろ、今まで、自分から誘ったことなどないのだ。だいたい部屋でフタリきりになると向こうから迫ってきた。
真剣な面持ちで読書を始めるマサヒコの横顔をナガめる。
心臓がドキドキ。ノドがカワく。
チナミにマサヒコの方も平静ではなかった。当たり前。
アリスの生足が、ムキ出しの肩や、大いに主張している胸の谷間が、すぐ隣にあるのだ。アト香水のニオイも強く、鼻孔をクスぐる。イロイロ、ヤバい。
なんだよ。なんで、そんなカッコウしてるの? アト寝るだけだろ。メイク落とせよ。寝間着着ろよ。
いちおう、読書のテイはトっているが、内容などチットモ頭に入ってこない。もう考えることはアリスの体のコトばかり。
スッゴイ、ヤリてー。
アリスは立ち上がった。
ココまで来てヒけるか。最後までイったる、とそういう意志。
マサヒコの後ろに回り込む。
マサヒコは当然、その気配を感じて緊張する。
なんだ、ナニ始める気? 怖いんだけど。
アリスはマサヒコの背中に覆いカブさった。椅子の背もたれが邪魔で、頭をキュッと抱くようになった。
そのまましばし沈黙。
「ネっ。しようか。エッチ」
囁くように言った。
マサヒコはコタえない。反応なし。
アリスは不安になった。
ちょっと、なんか言ってよ、マジで。
ヒいてんの? ヒいてんの?
マサヒコの手がアリスの手にソっと重なってきた。優しく。
「俺、その、アリスのコト大事にしたいんだ。ゆっくり関係を育みたいっていうか。ツキアってすぐ、そういうコトするの、違うんじゃないかって。そういうのが目的でツキアったワケじゃないから」
落ち着いた声で言った。
またしても沈黙。そのまま時間が止まったかのようにフタリは動かなかった。ただ、互いの触れ合っている部分が、ヒドく愛おしかった。
やがて、アリスが言った。
「……そっか。ヤリたいからツキアったワケじゃないんだ」
「ウン。もちろん、ヤリたいけど。それだけじゃないから。絶対」
「そっか」
アリスがマサヒコから離れた。
ズズズっと鼻をススり、部屋のドアの前へ。
「メイク落としてくる」
言って部屋を出ていった。
アトに残されたマサヒコは、あー、と髪の毛をカキ回した。
良かったの? 今の正解だった? 間違ってなかった? アレ、俺アリスに恥かかせちゃった?
ワカンない。マジ分からない。
ハッキリ言って、チンチンはスゴい元気そのもの。俺はまだアキラめてないぜ、みたいな感じで、まだフルパワーを維持している。
もう、アリスが抱き着いてきたときは、本当にヤバかった。頭が真っ白になった。
襲いカカる寸前だった。
それでも。
アリスを大事にしたいという気持ちは本心で。カッコウもつけていた部分もあるが、本当に、心から、傷つけたくないのだ。
ここで誘われるまま、欲望のまま、セックスをしてしまうのは違う。そんな感じがしたのだ。
アリスが本当に求めているものと違う。そんな気がしたのだ。
「でも、ヤリたかったです」
テーブルに突っ伏してウメいた。
一方、部屋を飛び出したアリス。
泣いていた。なんだか知らないが、涙がずっとアフれてきて、止まらない。
ヤバっ、ウチ、ナンデ泣いてんの。意味ワカンないんだけどー。
とにかく、感情が乱れに乱れ。
体が、ザケンな、と訴えていて。
ウチは、スゲエ、ヤリたいのにっ。
それなのに胸いっぱいの幸福感。胸の中がホカホカと温かく。ワクワクとこそばゆく。
シャワー室にまた戻って。
顔を洗う。バシャバシャと。涙を洗い流す。
マサヒコ、マジでウチとツキアってくれんだ。ヤリたいからじゃなくて。セフレ気分じゃなくて。マジの恋人?
カアーっ、と濡らしたばかりの顔が熱くなる。体も熱くなる。
なんなん、アイツ。ホストかよ。ウチをハメようとしてんの? あんなコト真顔で言うなよっ。
などと、心の中でテレ隠しの暴言を吐き散らす。
もちろん、ウレしくてタマらない。
大事にしたい、なんて言われて、ウレしくないワケがない。
せっせ、せっせとメイクを落とす。
いつもマサヒコにスッピンを見られたくないから、タオルで顔を隠して部屋に入っていた。
だが、今日はもうスッピン見せちゃう。
ウチ、こんなんだけどぉ。オッケー?
メイクを落としてる最中に思い出して、また涙がでてきた。
ヤバっ、目がハレる。明日、顏ヤベエじゃん。
ともかく、メイクを落とし終わる。
そこで、ハっ、と気が付いた。なんか、モらしちゃってるみたいな。
下着を確認。アっ、コレ……。
急いで【ギルドカード】から事前に買っておいた生理用品を出した。
このタイミングかよ、と思った。
そのままトイレに直行。
しばらく、そのままトイレにコモり、落ち着いたところで、部屋に戻る。
部屋の電気はついたままだがマサヒコはベッドに入っていた。寝ているのか静かだ。
たぶん、寝たフリをしてくれてるんだろうな、とアリスは思った。マサヒコのそういうさりげない優しさが好きだ。
アリスはマサヒコの顔をノゾくと、チュッと軽くキスをした。
「超好き。オヤスミ」
言って、ハシゴを上る。
照明を消しても、まるっきり眠くはなかった。
アリスは何度か寝返りを打った。
ウチ、大事にされてる。超大事にされてる。
もう、幸福感でいっぱい。大好き、大好き、と何回でも口に出したくなる。
生理が始まって腹が痛いのに、それでもウレしくてタマらない。
何度かトイレに行った。そのたびに、マサヒコの顔を見る。もう寝ちゃったかな?
またキスしちゃおうかな?
その夜、アリスは思いっきり浮かれていた。
さて、実はこの夜、マサヒコも寝れなかった。イヤ、寝れるワケがない。
アリスにあんな風にエッチに誘われて。
オマケに寝たフリをしてたらキスまでしてきて。超好き、とか言われちゃって。
興奮しないワケがない。思い出してはチンチンがパワーアップしてしまう。
オマケにアリスが中々寝ないもんだから、もう意識しまくりだ。
クソっ、ミスったー。カッコつけないでヤっちゃえば良かった。ナニやってんだ、俺。
何度も心の中で絶叫した。
せっかく、ヤラせてくれるって言ったのに。俺のバカー。
エロいコトが次から次へと頭に浮かんで、体はカッカとホテってしまい。
モダエるように何度も何度も寝返りを打った。
ああ、時間よ戻れ。あの瞬間に戻れ。




