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目指せCランク

 マサヒコが目を覚ましたのは真夜中だった。シュマホーで確認してみると、深夜2時。

 また寝落ちしたかー。


 よほど疲れていたのだろう。ベッドに横たわってからの記憶がない。

 上からアリスの寝息が聞こえる。しばらくベッドの中でアリスでエッチな妄想をする。


 俺の彼女。アリスが俺の彼女。


 コッチの世界に来た当初はギャルだからと敬遠していたが、今ではギャルのアリスがサイコーにカワイイ。


 ハアっ、と悩ましい吐息をする。

 ハシゴを上っていって寝ているアリスにイロイロする欲求をオサえる。


 ストイックに、プラトニックに、だぞ。マサヒコ。

 自分を叱咤(しった)する。


 ともかく、シャワーを浴びよう。

 これだけしっかり寝てしまったら、もう今夜は寝れないだろう。


 さすがに深夜である。廊下にもシャワー室にも人っ子ヒトリ見当たらない。熱いシャワーを浴び、洗濯室で、ボー、と洗濯の終わりを待つ。

 ボンヤリとしながらも今後の方針について思いをハせる。


 当初はアリスがコチラの世界に残る予定だったので、彼女のタメに大金を稼ごうと思っていた。『トーダ商会』と接触して異世界の知識でナニか商品を売り出して大金持ち、みたいな。

 だが、アリスも一緒に帰るとなると、その必要はないだろう。


 ただ、予定通り冒険者ランクは上げた方が良さそうだ。帰る方法を探すには情報をたやすく得られる立場の方がイイに決まってる。今のまま闇雲に動いても時間ばかりがすぎていくだろう。


 それにアリスのレベルアップ。

 この街はヒカク的治安が良い方だろうが、他もそうとは限らない。ヒャッハーな連中がウロウロしている可能性もあるのだ。


 となると、やはり、Cランクの依頼をガンガンこなしていくしかないか。

 だが、確かCランクからは昇格試験を受ける必要があったはず。夜が明けたら、そのあたりもギルドで調べてみた方がイイだろう。


 ヤッパリ、まだまだ情報不足だな。

 シュマホーでカナリ知識は得たが、それでも情報が足りなすぎる。分からないことだらけだ。

 ランクを上げながら、引き続き情報収集もしていった方がイイ。とりあえず、買った本を全部読むか。


 シュマホーで読書しているうちに洗濯が終了。ちゃんと乾燥までしてくれるのでありがたい。

 コチラの世界の文明レベルが高いおかげで、ストレスがカナリ少ない。

 この世界に貢献してきたクラスメートたちに感謝だ。


 部屋に戻り、テーブル席でシュマホー読書。以前、本を大量に購入しておいたおかげで読むものには困らない。

 むしろ、困ったのは空腹の方。

 これからは非常食も【ギルドカード】に入れておいた方が良いかもしれない。


 6時をすぎたところでアリスが起きた。

 うーん、と声をアゲ、それからノソノソとハシゴを降りる。途中でマサヒコの存在に気づいて固まった。ダボっとしたTシャツのエリが広いので、エリ元がかなり広くノゾいている。


「オハヨウ。ゴメンね、昨日、俺、寝落ちしちゃったみたいで」


「……オハヨ。ちょっと、コッチ見ないでくんない」


「あっ、ゴメン。俺、外出てるから」

 そういえば、アリスは寝起きを見られるのを嫌がるのだった。


 体操でもしてこようか、と部屋を出て屋上へ行った。

 屋上へ出る鉄のドアを開けると朝の冷たい風がマサヒコの顔をサーっとナデていった。


 太陽はすでに上っており、ベルドーン市の朝の景色が見渡せた。

 鳥の鳴き声を聞きながら、うろ覚えのラジオ体操をする。


 そういえばボッチ仲間の少女マリア・ミルティアはまだ帰ってきていないようだ。

 彼女のパーティ『鋼の風』はBランクパーティ。滅多なことはないだろうが。


 屋上でしばらく時間をツブしてから部屋に戻る。アリスはいなかった。今頃、ギャルメイクをしているコトだろう。

 

 またしてもテーブルで、シュマホー読書。本を読む者にとって読書は最高の暇ツブしだ。


 アリスが戻ってきた。

 今日のアリスは、黒の超ミニにピチっとした赤いシャツ。


「今日も、ガンガン依頼をコナしてこーか。目指せ、Cランク」


「アーイ」

 アリスが素直に返事をする。


「当面、アリスが中心に敵を倒していくって感じにしたいんだ。アリスの【レベル】上げたいから」


「ソレで、イイよぉ」

 アリスも特に異論はないらしい。


 食堂に行くとアックスと会った。

 そこでアリスと恋人になったコトを話す。


「オオっ、良かったじゃねえか。若いもんはそーじゃないとな。ウワキすんじゃねえぞ」


「分かってますって」


「まー、結婚しちまうのもイイかもしれんぞ。ギルドから祝い金も出るしな」


「け、結婚……」

 さすがにマサヒコはまだソコまで考えてなかった。


 食ついたのはアリスだ。

「結婚て、どんな感じでするモンなの?」


「俺もクワしくは知らんが、簡単なのだと神殿に行って祈ってもらうだけってのだし。友人たちをパーティを開く場合もあるな。まー、庶民の結婚なんて、テキトーなモンだよ。あー、リング。そろいのリングを左手の薬指にハメるってのが一般的だな。既婚者の証でもある」


 結婚指輪はコッチの世界でも同じなんだな、とマサヒコは思った。イヤ、ヒョットしたら、クラスメートの誰かがそういうしきたりを広めたのかもしれないが。


「へえっ。ヤッパ、ウェディングドレス着たり?」


「あー、そーいうモンらしいな」


「役所に届けたりしないんですか?」


「あー、そーいうのは神殿の方でヤってくれるんじゃないのか」


 結婚かあ、とマサヒコは思った。

 なにしろ、まだ高校生の身。今まで本当に考えたこともなかった。

 だが、彼女もできたし、ヒョットしたら、このままアリスと……。


 アリスが奥さんになって一戸建ての家で子供たちと暮らすイメージが頭に浮かんだ。アリスは相変わらずギャルで。女の子も小さなギャルで。

 なぜか、そのイメージの中のマサヒコは、ヤカラっぽい感じになっていた。


 朝食後、ギルドへ。

 まだ朝早いせいでロビーは空いている。

 入り口に立っている案内役のシャーリーがカワイく挨拶をしてきた。

 やはり、マサヒコを見る目が熱っぽい。

 当のマサヒコは気づかなかったが、アリスはバッチリ気が付き、けん制のようにマサヒコの腕に腕をカラませた。


 マサヒコを引っ張るようにCランク掲示板へと行く。


「ゴブリン退治、多いな」

 やたら目につくゴブリン退治。それにまじってオーク退治やヘルスパイダー退治がある。


「コレと、コレと、コレが同じ方面だね。あっ、コレもイケるかな」

 マサヒコはシュマホーの地図アプリを見ながら、依頼の位置を確認していった。

 ゴブリン集団退治(推定30体)が2件。

 ヘルスパイダー退治、1件。

 そしてオーク退治。

 どれもベルドーンから南へ向かうルート上にある村や集落からの依頼だ。


 1番遠くがオーク退治で、サンダ村。駅馬車を使って30分ほどの距離。


「ちょっ、4つも受けんの?」


「その方が効率がイイ気がするけど、どーかな?」


「……まあ、マサヒコがそーいうなら? ウチはイイけどぉ」


「あっ、コレも南方面だ」

 さらにマサヒコは殺人蜂キラービーの巣の駆除の依頼も取った。

 コレで全部で5つ。


 受付に依頼書を持っていくと、さすがに驚かれた。


「5つ全て受けるんですか? 期日もありますから、1つずつ受けた方がイイのでは?」


「いや、たぶん、今日1日で終わると思うんです」


「はあ……」

 受付嬢はイブカシみながらも依頼処理をしてくれた。


「あの、Cランクに上がるための条件を教えて貰えませんか?」


「ああ、ハイ。Cランクからは昇格試験を受ける必要があります。ただ、試験を受けるためには、Cランク依頼を50件達成しなくてはなりません」


「50件……。多いなあ」

 先が長い。


「あるいは、Cランク依頼20件と【迷宮】3層の攻略ですね。ただ、コチラはお勧めはしません。【迷宮】攻略はカナリ危険なので」


 そんな条件もあったのか、とマサヒコは思った。時間短縮を狙うなら、ソッチの方がイイかもしれない。

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