ヤラレゾン
アリスの【ヒール】のおかげでマサヒコは傷跡ヒトツ残らなかった。
出血でフラつくというコトもない。完全回復だ。
あのアト、友人彼氏と友人はサッサと逃げてしまった。駆けつけた警察官にフタリは事情を聞かれた。
「ウチ、アイツの連絡先知ってっから。捕まえてよ」
銀ナース魔装のままイキリ立つアリス。
「イヤ、ケンカ両成敗と言ってね。どっちも悪いから、特に捕まえたりはしないんだよ」
警察官の青年は言った。
鮮やかな青い制服姿である。
「ソレじゃあ、ヤラれ損じゃんか」
アリスが警官をニラむ。
「なんなら決闘するとイイ。正式に申請して、警察所に連れてきてくれれば、立ち合うよ」
「じゃあ、ソレっ」
「アリス、イイよ。決闘とか。物騒だしさ。ホラ、俺もアリスのおかげでケガ治ったし」
「大丈夫。ウチがアイツぶっ殺してヤルから」
「イヤ、大丈夫だから、ホント。マジでさ」
さすがに刺されたショックからテンション低めのマサヒコである。
マサヒコと反対にアリスは頭に血が上っている。
「マジ、アイツら、ザケンなよ」
「面子をツブされると、男はさー。トニカク、大丈夫だから。落ち着いて。ねっ、アリス」
アリスのホッペをナデる。
マサヒコとしてはこれ以上、あんな沸点の低い連中に関わりたくなかった。
マサヒコはなんとかアリスをなだめた。さすがにそのままデートを続ける気にはなれず寮に戻る。
アリスは無口になっていた。自分の軽挙がマサヒコを危険な目に合わせたことを反省していたのだ。
マサヒコも、マズったなー、と思った。
カッコウをつけて舐めプしてしまったが、ヤルならしっかり、反撃の予知を与えないほど倒すべきだったし、そうでなければほどほど相手の面子を立てて、ウマく引き分けるべきだった。
それにしてもこの世界の、イヤこの国のというべきだろうか。法律はかなり緩い。あの程度では逮捕されないらしい。
現代日本並みの文化的な世界なので、ついつい油断があったが、その内実はカナリ物騒だ。
ヤッパリ、早めにアリスをレベルアップさせた方がイイかも。
今日だけでマサヒコは2回もケンカに巻き込まれている。たまたま相手の力量を上回っていたが、次もそうだとは限らない。魔装顕現していれば、まず負けなさそうだが、そうでなければ上には上がいそうだ。
それに自分がいないときにアリスが襲われたら……。
傷害ですら逮捕されないのだ。強姦も、よほどのコトがない限り罪に問われない可能性がある。
寮の部屋に戻ると、グっ、と疲れが押し寄せてきて、マサヒコはベッドに横たわった。
「ナンカ、疲れたなー。イロイロありすぎだろ」
ボヤく。
アリスはシャワーを浴びに行ってしまった。どうせなら夕食を食べてからにすればイイのに、とマサヒコはボンヤリと思った。
そーいえば、俺、童貞捨てたの昨日だったんだよな。
そして、今日は生まれて初めて彼女ができた。ヤバすぎるケンカもあったし、初めて刺された。
コレは疲れて当然だろ、とマサヒコは思い、目を閉じた。
ソレにしても、アリスのナース魔装、エロかったなあ、と思い出す。
マサヒコは特別ナース萌えというワケではないが、とにかくアリスには似合いすぎた。まさにエロカワイイ。
すると、アリスとしたディープキスの感触までヨミガエってきた。
疲れているハズなのにチンチンが立ってしまった。
ダメだ、アリスでエロいこと考えちゃあ……アレ、ダメなのか?
今や、友達ではなく彼女である。
彼女でエロいことを考えるのは、健全ではないか?
イヤ、だけど、エロ目でばかり見ていたら、まるでヤリたいがためにツキアったみたいな感じだ。
そーだよ。そーいうの良くないよな。
マサヒコは顔を手で覆って、自身の邪な念を封じ込める。
ツキアってすぐエロいコトしたら、アリスが嫌な気持ちになるかもしれない。体目的だったんだ、などと思うかもしれない。
それはもちろん、マサヒコだって健全な10代半ばの少年。エッチはスゴいしたい。
だが、ソレ以上に、アリスが悲しい思いをするのは嫌だ。
さっきのケンカだってアリスは止めようとしたのだ。マサヒコが刺されたアトは、カタキを取るとまで言ってくれた。
そんなイイ子を失望させたらバチが当たるというものだ。
「よし。当分、エロいコトはなし。プラトニックだ、プラトニック」
言っておいてなんだが、プラトニックが具体的にどこまでのコトを言っているのかよくわかっていなかった。
一方、その頃、アリスはというとシャワーを終えて、バッチリとメイクをしなおしていた。
気合十分。もうエッチする気満々である。
今までのアリスだったら、もっとゆっくりとコトを進めていたところ。だが、アリスはマサヒコが体目当てで自分とツキアったと誤解している。セフレのようなものだという認識。
だから、もうちゃんとヤラせてあげないと、と思っている。
さらにいえば、アリス自身が超ヤリたい。今まで5人とツキアい、なおかつ、それぞれと肉体関係があったアリスである。同世代としては、カナリ経験豊富な方で、体も快楽を覚えている。
そこに今までで1番好きな男ができたのだ。もう、ヤリたいに決まってる。
マサヒコはアリスが今までツキアってきた男たちに比べ、格段にアリスの自尊心を満たしてくれる。ちゃんと、女として、パートナーとして、人として、タテてくれる。
だから、だろう。自分を安売りしたくないというような思いがあまりワかない。
よし、行くか。
アリスは鏡でメイクを確認すると、うなずいた。服は着替えず、制服のまま。ただし下着はピンクのツルツルのヤツ。
最初にこの世界に来た時のコーデだ。
シュマホーを見ると時間は5時半。まだ夕食には早い。外はスッカリ暗くなっている。灯りを消せば部屋は暗くなり、雰囲気は問題ないだろう。
部屋の前に到着。
アリスは、スーハースーハー、大きく深呼吸。
ドキドキする。手汗がスゴい。脇も結構、汗をカイてる気がする。
エッチはもう数えきれないくらいしているが、こんなに緊張するのは初めてだ。
ドアを開く。
部屋は暗かった。マサヒコは灯りを付けていない。
ヤッパリ待っていたんだ。
寝息が聞こえる。
アリスは常夜灯をつけた。青いボンヤリとした光が部屋を照らす。
マサヒコはベッドで寝ている。
アリスを待っているうちに寝てしまったのか。
マサヒコのベッドに座った。
マサヒコの寝顔をナガめる。前髪を切ったからか、スゴくカッコ良くなった。無防備に少し口を開けて、眠っている顔がカワイイ。
ハアっ、と吐息。
なんだか見惚れてしまう。
好きな男の寝顔というのは、こんなに魅力的なものなのか。
元彼たちの寝顔を見ても、あー、寝てんな、と思っただけだったのに。
ハアっ、とまた吐息。
マサヒコの首筋がなんだかエロい。エリ元からノゾく鎖骨。触りたい。キスしたい。
襲っちゃえ。襲っちゃえ。
そんな風に自分をアオってみるが、なぜだか体が動かない。
だらんと伸びている手の指先に、ちょんと触れるのが精一杯だった。
しかも、触れたとたん、シビれたような心地がした。
ヤバっ。なんだよもー。
結局、アリスは寝込みを襲うどころか、マサヒコにロクに触れることもできず。ただただ、その寝顔をナガめ続けることしかできなかった。




