そしてマサヒコは……
結局、マサヒコたちはパンケーキを食べにいかなかった。ローズがお茶を入れてくれたのだ。
温室の中、3人でお茶を飲み、茶菓子を食べた。
アリスは相変わらずコミュ力の化け物で、ローズと大盛り上がり。別れ際にはシュマホーの連絡先まで交換し合っていた。
そんなこんなで冒険者ギルドに戻ってきたのは午後5時。
マサヒコはいよいよ決断しなくてはならなかった。
行くべきか、行かざるべきか、それが問題だ。
行くつもりがあるなら、6時までに連絡をしろ、とジャックに言われていたのだ。
「今日、マジ働いたぁ。夕食、ドコで食べる?」
アリスが言った。
「俺は疲れたし、寮でもイイかなあ」
「うーん、ウチは、ナンカ外で食べたいかな」
そこにアリスの友人のエラが声をカケてきた。相変わらずキャッキャと楽し気な声をあげる。
しばらくしてアリスが戻ってきた。
「ウチ、エラと外で食べるわ。マサヒコも来る?」
「イヤ、俺はイイよ。アトは俺がヤっとくから」
「サンキュ」
アリスがエラとギルドを出ていくのを見送ると、マサヒコは素早くシュマホーを取り出した。
今まで踏ん切りがツカなかったのは、カタワらにアリスがいたからコソ。
アリスに後ろめたい気持ちが、マサヒコの欲望の最後のストッパーになっていたのだ。
その抑制が今、外れた。
もはや少年のエロ心を、好奇心を、成人への渇望を止めるものはない。
マサヒコは素早くジャックにメールを送った。
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例の件、参加します
よろしくお願いします
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すぐに返信が来た。6時に冒険者ギルドのラウンジで待ち合わせるコトになった。
ついに、今夜、俺は……。
マサヒコはフツフツと体の奥から沸き上がる女体への欲望に、燃えるように熱くなっていた。
あと、チンチンもちょっと立ち上がりかけていた。
◇
ジャックとヘインはマサヒコの決断を大いにホメた。
「そーだ。恐れるな前に進めだ、だ。男が女を求める。これが自然。これこそが真理。上ってやれよ。大人の階段ってヤツをよ」
ジャックが言った。
「おし、予約完了だ。これでもう後には引けねえぜ、キョーダイ」
ヘインがシュマホーを見せた。
つい先ほどマサヒコが選んだ女性の顔写真。その下に指名の文字。
マサヒコは当然だが未成年。元の世界でも風俗など体験したことがない。なので、もうサッパリわからない。センパイたちにマカセます、状態である。
「なにしろ、今日は2割引きだからな。キチンと指名しとかないと、イマイチな娘しか残ってないなんてことになるかもしれん。俺たちだけなら、まー、それもイイかってなんだけど。なんせ、マサの初体験だ。ナットクいく相手じゃないとよ」
ヘインが言った。
「そうそう。イイか、マサ。遊び心ってのは確かに大事だ。もう、行き当たりバッタリ、運を天に任すってのもよ、悪くはねえ。だが、それは不運を引いちまった時に、笑い飛ばす余裕がある時にしとくんだ」
ジャックが渋みのある微笑みを向ける。
「あの、シャワーとか。浴びてきた方がイイかな? 俺、今日、結構、動き回ったし。今も、ナンカ変な汗がダラダラ出てるし」
「大丈夫だ。プレイの前にシャワーを浴びるコトになる。チナミに、その時に通る部屋で病気のチェックもされる。イイか。コレも大事なコトだが、娼館ってのはキチンとしたトコにしとけ。設備投資をしているところは、それなりに箱に金を使っているからな。違法行為で稼ぐだけ稼いでトンずらってワケにはイカン。だからこそ、信用もできる」
ジャックが言った。
「そーだ。今時のデカい店のキャストは、素人女より安全なんだぜ」
ヘインも言った。
プレイとかキャストとか、マサヒコには聞きなれない言葉だったが、意味はだいたいわかった。
ちなみに今3人がいるのは娼館の立ち並んだ一角。通称『アルテミーナ横丁』。ベルドーン市の風俗街。その酒場の1つである。
まだ時間も早いため、お目当ての娼館『ラミアの乳房』はやっていない。
時間ツブしを兼ね、ここで景気づけに一杯ひっかけているところである。
チナミにこの世界では成人年齢が15歳。
マサヒコが酒を飲んでも特に問題はない。
もっともマサヒコはオレンジジュースにトドめた。
下手に飲酒したら肝心な時に起動しないかもしれない。ソレはなんとしても避けたかった。
「しかし、意外だったぜ。俺はてっきり、マサは、アリスとイイ仲なのかと思ったからよ」とヘイン。
「寮で一緒の部屋なんだろう。なんで、ヤんないの?」
「イヤイヤ、友達にそんな無理だって。イヤ、俺も、最初は、ナンカ、ねー。アリスでエロいことイロイロ考えちゃって。もう、ブッチャケいつかヤラせてくれないかなあ、なんて思ったけど。でも、アリスと気まずくなったら、俺、マジで嫌だもん。あの子、スゲー、イイ子なんだぜ」
「まー、分かるな。俺たちだって、なー。ロミナに手、出せねえよ。そりゃあ、アイツはイイ女だし。モノにしたいって気持ちも、正直ある。なー、ジャック」
「あー、もともと、俺たちはロミナを取り合ってたからな。だが、どうだ? 一緒に汗水流して、戦って、旅して。そうすっと、ナンカ、下手に手を出して、アイツとの関係が終わっちまう方が、怖くてよ」
「アト、な。アイツ、キレると超怖えんだよ。前に、アイツが彼氏を作ったことがあるんだが。ウワキしたトカで、金玉をメイスで……何度も何度も。治しては、ツブし、治してはツブし」
「なー。アレ、見ちまうと、ナンカ、女として見れないというか。さすがに、ちょっと……」
そう話すフタリの顔色は血の気が引いていた。
気まずい沈黙が3人のテーブルを支配する。
「ナ、ナンカ重い空気になっちまったし。そろそろ行くか。ウン」
ジャックが立ち上がった。
「オウ、そ、そうだな。行くか」
ヘインも立ち上がる。
メイスを構え、狂気じみた表情を浮かべるアリスを思い浮かべていたマサヒコは、その妄想を振り払うと立ち上がった。
すでにアリスには友達と飲みに行くから遅くなる、とメールを入れてある。
アリスからの返信もすでに来ている。
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マジ?
イイけど飲みすぎんなヨー
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まったく疑っている様子はない。
まあ、実際に飲みに来ているわけだから嘘でもない。ただ酒を飲んだアトに(マサヒコは飲んでないが)、ノリで娼館に行っちゃった、みたいな。
酒場を出る。
さすがに大都市ベルドーン市の風俗街。
魔法灯りで光る看板がギラギラ、エッチいオネーサンがいろんなところに立って、客引きしている。
だが、マサヒコの前を行くジャックとヘインはそんなキレイでエッチなオネーサンになど見向きもしない。
彼らの目指す場所は、ただヒトツ。
『ラミアの乳房』だけだ。
マサヒコの心臓が高鳴る。変な汗が首や脇からワき出す。ともすれば、後ろを向いて逃げ出したくなる。
今ならまだ引き返せる。寮に戻ってアリスの笑顔を見たい欲求にカラれる。
マサヒコは首をブンブンと振った。
ダメだ。今日だって、何度も何度もアリスをエロい目で見てしまった。
このままでは、いつかアリスを傷つけてしまうかもしれない。ソレはなんとしても避けるべき。
「ついたぜ、キョーダイ」
足を止めたヘインがマサヒコの肩を叩いた。
マサヒコはピンク色の外壁の建物を見上げた。煌々(こうこう)と赤く輝く看板には『ラミアの乳房』の文字。
「さあ、行こうぜ。お前は今夜、男になるんだ」
マサヒコはコクリとうなずくと、フタリのアトに続いて、天国への扉をクグった。




