モウダメダ。ミラレテシマッタ
パスタは美味しかった。
ミートソースは、もうまんまミートソーススパゲティであり、マサヒコは大満足だった。コチラの世界の食事が、カナリ現代日本に近いのは非常に助かる。
食事が口に合わないのは地味にストレスなのだ。
昼食を取りながら、マサヒコは今後の方針を話した。
とにかく、2、3日は情報集めについやすこと。よって冒険者は一時中断。
「アト、寮から出ようと思うんだけど」
「んっ? ナンデ?」
「イヤ、ほら、今、2人部屋じゃん。さすがに、さ。マズイと思うんだよね。俺たち、ツキアってもないし」
マサヒコにしてみれば、断腸の思いでつむいだ言葉だ。
ハッキリいって同棲生活を続けたい。ギャルと同じ部屋で寝起きとか、嫌なワケがない。
だが、である。
最初はツンツンしていたアリスも、だいぶ当たりが優しくなった。笑顔も増えた。自分を信用してくれている証である。
ココで、ちょっとムラムラして、なんかセクハラめいたことをしてしまったら。
今の関係が崩壊する。ラッキースケベどころではなくなってしまう。
アリスはマサヒコがいなくても普通にやっていけそうだが、マサヒコはかなりハードモードだ。チートがあってもハードモードな気がする。
ステータスにはコミュ力とかなかったし。
一方、アリスの方はマサヒコの気持ちなどいざ知らず、ツキアやイイじゃん、という言葉を寸前で飲み込んだ。
ヤバっ、危なっ。そんなん言ったらウチから告った感じになんじゃん。
「金もったないじゃん。あと、ウチ、寮に友達いるし。便利だし」
こう言われると、マサヒコもそれ以上は言えなかった。なにしろ、やっぱりアリスとの同棲は心オドるのだ。胸ハズむのだ。
「じゃあ、とりあえず、無料期間の1ヵ月は寮にいるか」
「ウン、いる」
パアッとアリスの顔が輝いた。満面の笑顔でコクコクうなずくアリス。
思わずマサヒコは見惚れてしまった。
そしてドキドキもした。アリスが自分との同棲を惜しんでいるように思えたのだ。
すぐに、そうではなく、単に、ロミナを始めとする、友人との別れを惜しんでいるだけだろう、と思った。
「俺は、今日買った本を読んだりしてるから、アリスは今まで通り友達からいろんな情報を集めてよ」
「アーイ」
ソンナコンナでフタリは寮に戻った。
まだ時間も早く寮内はガランとしていた。
マサヒコとアリスはテーブルについて、シュマホーをイジる。
マサヒコは買ってきた本をカタハシから読み。
アリスは友人たちとメールをしていた。
マサヒコの目がときどきアリスの組んだ足へといってしまう。黒のニットワンピはかなりスソが短く、もう、ギリギリ見えてしまいそうなのだ。中が。
読書に疲れた目に、その魅惑の光景が、どれほどのオアシスとなっているコトか。
ダメ。俺、この暮らしを手放せない。
マサヒコは心底そう思った。
1時間ほどして、アリスがスクっと立った。
「ウチ、出かけてくっから」
「ウン。分かった」
マサヒコは読書に夢中である。シュマホーを見ながら言った。
「夕飯食べてくるカモ」
そこでマサヒコが顔を上げた。
「了解。気を付けてね」
微笑む。
「……んっ」
アリスはマサヒコの優し気な笑みに、胸が、ポっとなった。こういうトコ好き、などと思った。
恋にフンワリとなった気分で出ていったアリス。
マサヒコの表情がサっと真剣みを帯びた。
ティッシュ(向こうの世界のモノに比べて厚め)を準備。
シュマホーをテーブルに立てかける(そのための道具もちゃんと購入しておいた)。
ズボンとパンツを降ろす。
久しぶりの行為にマサヒコの胸はドキドキだ。
シュマホーで午前中に買っておいたエッチな本(中身を確認していないが、たぶんアダルトな内容)を開く。
マサヒコに油断があったとは言えないだろう。彼は可能な限り準備をした。スムーズにコトを終えるために抜かりなく動いた。
エッチな本は、あまりエッチではなく、ちょびっとエッチくらいだったが、それは仕方ない。
ただ、ひとつだけ、彼は致命的なミスをしてしまった。内カギをカケるのを忘れていたのだ。
カギさえカケておけば、不審は招くかもしれないが時間は稼げたはずなのだ。
ガチャッとドアが開いた。
「ヤバっ、雨降ってるし」
マサヒコは彫像のように固まった。パンツを上げるという行動すら、トれなかった。
天国から地獄へと叩き落とされた瞬間だった。
「…………」
「……あっ」
アリスがテーブルの上のシュマホーとマサヒコの露出した股間を見て、気づいた。その意味に。
性知識に乏しい女性だったら、ナニやってんだコイツ、風邪ヒくぞ、くらいに思ったかもしれないが、アリスは5人の男とツキアい、それぞれと肉体関係をもった経験豊富な女子。
しかも、トヨとショウマとは、そういうようなプレイをしたことがあった。
重苦しい沈黙。
マサヒコは固まったままだ。サアーと血の気が引いていく。
「あのさっ。別にウチ、なんも気にしないかんね。そんなん見慣れてるし。ウチも元彼の前でヤラされたことあるしさ。だから、ゼンゼン、オッケーだから」
「あ、あの、とりあえず、部屋から出てもらえると……」
マサヒコはカボソイ声でそれだけ言った。
「ホント、気にしなくてイイからっ」
言って部屋を出かける。だが、もう少しフォローが必要なのでは、と思った。
「アト、マサヒコのソレ、立派だから。デカい方だから」
精一杯のフォローであった。
バタンとドアが締まったあと、マサヒコは、ああっ、と絶望的な声をアゲて、ベッドに飛び込んだ。
ウメき声をアゲて、のたうつ。
うがあぁー、ぐおぉー、と、魂が叫ぶ。
のたうったり、うめいたりしていたら、少しずつ冷静になった。そうなると、ソレはソレで、キツイ。
ナンダヨ、モー。なんで戻ってくんだよ。ザケンな。
アト、俺、なんで、カギ閉めなかった。致命的だろ、ソレ。
アリスと自分をひたすら罵る。
そして、またあの時の地獄の時間を思い出してはのたうった。
◇
決定的な瞬間を目撃してしまったアリスは、口で言うほど気にしていないワケではなかった。
ただ、それは嫌悪感とはまったく別の感情で。
ナンカ申しワケないような。アト、なんとなーく得したような。
てか、マサヒコもするんだ、あーいうコト。
アリスの印象ではマサヒコはガツガツしていない。露骨にオス感を出してこない。
オーラでヤラせろアピールをしてこない。
エロ分の少ない男子という感じであった。
雰囲気的には4番目の彼氏トヨに近い。いわゆる草食系。
アリスの脳裏にマサヒコの力みすぎた性器の様子が思い浮かぶ。
顔が赤らんだ。アト、下腹がウズいた。
仕方がない。アリスは同年代の女子に比べ、カナリ経験が多い。彼氏のいる時期はケッコーな頻度でシテいた。
好きな男子のチンチンを見て興奮してしまうのもムリからぬコト。むしろ自然なコトだ。
そこから妄想してしまう。
「ソレ、ウチが手伝ってやろうか?」
「えっ? ……イヤ、でも、俺たち、ツキアってるワケじゃないし」
「嫌なら、別にイイけどぉ」
「……して、欲しい、カナ」
真っ赤になって言うマサヒコ。
「手と口、どっちがイイ?」
「えっ、えっ、く、口でしてくれるの。マ、マジで? イイの?」
「別にイイけどぉ。先、キスしない? 順番的に、ウチがヤだし。ナンカ」
「その、イイのかな。俺なんかとキスして」
「イロイロ頑張ってくれてるしー。まっ、ゴホービ的な?」
そこまで妄想が進んでアリスは壁にゴツンと頭を打ち付けた。
ナニ考えてんだ、ウチ。
いろいろヤバい。ヘンタイチック。
しかも、下着に違和感が発生していた。
シュマホーで待ち合わせているリーズとエラに少し遅れるムネを伝える。
そういえば買った傘を取りに部屋へ戻ったのだが(包装をといたまま、【ギルドカード】に入れるのをすっかり忘れていた)、結局、持ってくるのを忘れた。
アリスはとりあえずトイレに行って、イロイロ整えることにした。
歩いていると、またしても妄想が頭の中で展開する。
てか、もうヤッちゃった方がよくね?
その方がお互いウィンウィンでエコな気がした。
その後、アリスは2人の友人と合流して、若者たちの集う一角『マーサ横丁』へ行った。ひと通り、買い物をし、コジャレたカフェテラスでお茶を飲む。
そこでアリスは2人にマサヒコへの恋心を打ち明けた。ついでに、さっき、アレを目撃してしまったことも打ち明けた。
「さっさと告白したらイイじゃん」
エラが言った。アリスと同い年ながら彼女もカナリ経験豊富である。
「というか、そこまで見ちゃったら、アタシなら、そのまま押し倒すね」
「そーいう感じになんなかったし。てか、ムリ、押し倒すとか。ウチ、自分からいくの苦手だし」
アリスがムリムリムリと手を振る。
「イヤ、順番大事だと思うよ」
リーズが言った。コチラは幼なじみのウィナスとツキアイ始めたばかりで、今ヒトツ話題についていけない。
フタリの話を興味深げに聞いていた。
「だけどさ。男ってプライド超高いからね。変なプライド。そーいうトコ見られたら、プライドが傷ついて、ヤバいんじゃない?」
「フォローはした」
「どんな?」
「見慣れてるし。チンチン、大きいよって」
それにエラが吹き出した。そのまま大笑いする。
「だ、だって、ほか言いようあるか?」
アリスもフォローがウマくいったとは思っていない。だが、あれくらいしかフォローのしようがなかったのだ。
「だから、そのままヤッちゃえば良かったのよ。そうしたら、ウヤムヤになったし。むしろ、イイ想い出になったじゃん」
エラが言った。
「とっさに、そんなコトできんから。てか、ウチ、テーソーての、ケッコー、しっかりしてるし。彼氏じゃないのに、エッチとか、ないし」
「過去に5人とツキアってる時点で相手はそう思っちゃいないと思うけどね。その辺、話しちゃってるワケでしょ? 今さら、そんな、ブってもねー」
「それは私もそう思うわ」
リーズもうなずいた。
「アリスはアリスなりに、ルールがあるんだろうけど。その辺、もっと柔軟に考えたらイイんじゃないの? 処女の私が言うのもなんだけどさ」
「そっかな」
グラリとアリスの心が揺らいだ。なにしろ、自分でも、もうヤッちゃってもイイんじゃないか、と思うのだ。
今まで初彼アキラに言われた言葉が、どうしても引っかかり続け、手順を必要としていた。それだけのことなのだ。
まっ、あんなヤツの言葉にずっとコダワってんのもなー。
ただ、それでも自分から、という勇気はなかった。拒否されようものなら、もうイロイロ、ヤバい。
「そこはもうスキンシップ大めにして。チラ見せとか、さ。距離も詰めて。相手からクるようにシムケるのよ。あっ、媚薬売ってる店教えようか? ケッコー、効果あるよ」
「イヤ、薬とか、ヤメとく。マサヒコに悪いし」
そこで一度、会話が途切れた。
アリスはイカニしてマサヒコを誘惑するか頭をメグらせた。今まで5人の男とツキアったが、特に誘惑などしなくとも全員、向こうからグイグイ来た。
草食系のトヨさえも。
だからアリスはそのあたりの手管を知らない。
「とにかくスキンシップ。くっつく。距離近め。アト、チラ見せ。コンダケ、やってけば、まー、健全な男なら食つくでしょ」
エラが言った。
結局、そのあとアリスは下着を購入。下着はコチラでもカナリ種類が豊富だ。黒いシルクの面積少なめのパンツ。ブラもソレとオソロイを買った。
それから避妊具を買った。男性器に装着する、いわゆるコンドームなどはこの世界に存在しない。
避妊具といえば男性の体にペタッと貼っとく魔法陣のついたシール。これで男性は射精する際、白い精液ではなく、緑色のナンダカよく分からない液体を吐き出すことになる。
「いちおう【MP】回復効果があるよ」とエラが教えてくれた。
アリスに便乗してリーズも購入していった。




