ゴブリン退治
5人が受けた依頼はゴブリン退治である。
本来ゴブリンはDランク魔物。だが依頼は魔物の数によりランクが上がる。
依頼村であるゴトー村近郊の森に巣くっているとオボしきゴブリンは30体以上。
依頼料は100万エーン。1人当たり5体で20万エーンなのだから、ソコソコの金額だ。
「あと、ゴブリンのキンタマは3万エーンくらいで売れるんだよ。アレが元気になる薬が作れるんだってよ」
隣を歩くウィナスがマサヒコに言った。
「だから、1人30万エーンだ」
「キ、キンタマ。それ、効くの?」
「イヤ、俺は使ったことねーから知らないけどさ。結構、需要はあるみたいだぜ」
ウィナスが言った。
現在は依頼をしてきたゴトー村から森に向かって歩いているところ。
チナミにマサヒコの反対隣にはザックが本を読みながら歩いている。
「アレ、でも雌もいるんじゃない?」
「あー、それもそうだな。じゃあ、30万エーンはムリか」
ウィナスが頭をカイた。
フン、とザックが鼻で笑った。
「そんな計算もできないのか。お前は」
「あっ? ただ、勘違いしてただけだろうがよ」
ウィナスがマサヒコ越しにザックをニラむ。
「そういうころがダメなんだよ」
「コノヤロー。お前だって、チョクチョク間違えてんだろうが」
マサヒコは、ドードー、とウィナスをいさめた。いきなりケンカを始めないでほしい。チキンハートがムダにブルブルしてしまったではないか。
マサヒコはチラリ、と後ろを振り返った。
アリスとリーズが楽しそうに話しながら歩いている。
「2人とも、昨日、リーズさんに告白したんだよね」
マサヒコはいちおう2人の仲を取り持ってみようと思った。ここでウマくやればアリスの好感度がさらに上がるかもしれない。
「ああっ」とザックが苦虫をカみ潰したような顔で言った。「コイツが、いきなりヌケガケしたせいだ」
「しょ、しょーがねーだろ。つい、なんつうか、ポロっと出ちゃったんだから」
ウィナスが上ずった声で言った。
「ホントに、ポロっとさ」
「だけど、ウィナスもザックも互いがリーズさんのコトが好きなことを知っていたんだよね」
「そ、そりゃー、まー。長い付き合いだし? なあ」
「ああ、こいつは単純だから、バレバレだったけどな」
「ザックさんだって、ケッコー、バレバレでしたけどぉ」
まあまあまあ、とまたしても興奮する2人をいさめる。
しかし、聞いた感じだと、やっぱりリーズは知っていたのではないだろうか?
「俺、思うんだけど。たぶん、リーズさん、2人の気持ちに気づいてたよ」
「イヤ、そりゃあ、ないだろ」
ウィナスがナイナイと手の平をヒラヒラさせる。
一方、ザックは小さくうなずいた。
「タブンな」
「ハア? お前までナニ言ってんの? そんなワケないだろ」
「それくらいお前の態度はバレバレだったんだよ。だが、例え気づいていたとしても、俺たちの関係を壊したくなくて、知らないフリをしていた。リーズはそういう子だ」
「……そうかもな」
マサヒコとしては、リーズの狡猾さを指摘して、どちらかの熱量が冷めないだろうか、という考えであった。そう簡単にはいかなかった。
えーと、とナニを言おうか、考えていると、ウィナスが腕でマサヒコの歩みを止めた。
森へと続く小道。あと100メートルほどで森へと着くというところだ。
ウィナスが【ギルドカード】から【魔物レーダー】を出した。例の黒い半透明の立方体だ。
「ここで魔装顕現するか。連中、矢を射てくることもあるからな」
ウィナスが言った。
「魔装顕現」
片手を天へと突き上げる。
ウィナスが青い光に包まれ、すぐに青いシルエット、そして甲冑姿になった。
デザイン的には、マサヒコが今まで使っていたバニラの魔装とほとんど変わらない。
ただ色が黄金だった。あと兜もカブっている。額からVの字のツノが生えてて目元だけ出てる。
武器は長剣を背負っている。
えっ、ナンカ、こーいう人見たことある。
マサヒコは思った。
と、隣でもクールな声が聞こえた。
「魔装顕現」
ザックが光ってシルエットになって、魔装顕現した。
こちらは黒いロングコートのようなマントに、下はタイトな黒いレザーアーマー。ちょっとマサヒコとカブる。
そして武器はなんと銃だった。手にしているのは騎兵隊が持っていたような感じの長い銃。さらに腰に拳銃もある。やはり、アンティークな感じのシロモノ。
「えっ、ソレ、銃だよね。えっ、そんな魔装あるの?」
マサヒコ、超食つく。
「ネエ、ソレ、どうやったの? マジで教えてくんない」
「ウン? 銃はDランクからの魔装だからな。威力はあるが音がうるさく、敵を引き寄せるのが難点だ」
ザックが言って片手で騎兵銃を、片手で、拳銃を構えた。
「カッコイイ。超カッコイイじゃん。マジで。俺、絶対、Dランクに上がるから」
マサヒコのテンションがものスゴく上がった。
「お、おう」
ザックがマサヒコのテンションの高さにヒく。
「ガンバレよ」
「オイっ、イイからお前も早く魔装顕現しろよ」
ウィナスが言った。ザックばかり注目されてイラだっている。
「えっ、ウン、じゃあ」
言ってマサヒコは天に片手を突き上げた。
「魔装顕現。機動甲冑」
マサヒコも魔装顕現。頭からつま先まで黒いタイトな甲冑に、赤いマント。
「顕現、剣、盾」
ついでに長剣と盾も顕現しておく。
「お前、なんか、地味だなぁ」
ウィナスが言った。
「イヤ、カッコイイじゃん。ソッチが派手すぎなんだよ」
「確かに、ウィナスには言われたくないよな」
ザックも言った。
「目立ちたがりめ」
「ああっ?」
またしてもケンカになりそうなフタリ。
その後ろでは、アリスとリーズも魔装顕現していた。
アリスはデザインに凝りに凝った魔装。シースルーの白いコートに、金色タートルネックでソデなしニットミニワンピ。手にはジャラジャラとリングを鳴らし、足は白のロングブーツ。
「アリス、アンタすごいカワイイ。ナニソレ、ナニソレ」
リーズが目をキラキラさせたアリスの周囲をグルグル回る。
そのリーズはというと、ピンク色のフード付きマントに、赤いビスチェ型レザーアーマー(へそ出し)、それにホットパンツ。
自分の身長よりも長い杖を持っている。
「リーズも超カワイーじゃん。魔法使うの?」
「そっ。ウィナスが前衛でアタシが後衛。ザックは状況によって、前いったり、後ろいったり。アリスも魔法メインだよね? それとも、ソレで殴るの?」
リーズの視線の先はアリスが握るピンクのメイス。杖頭にトゲトゲハートがついている。
「キホン、後ろ。ウチ、遠くからチマチマヤル方が好きだしさ」
「まー、前は男子にマカセるのがイイよね。血しぶきとか浴びたくないしさ」
「じゃあ、サクッとヤっちゃおーぜ」
「イエーイ」
フタリでハイタッチ。ノリの合う女子たちであった。
「じゃあ、行くぜ。油断すんなよ、リーズ」
ウィナスが言った。リーズの名を呼ぶとき、少し声が固くなった。露骨に意識している。
「アリスも気を付けて。初めての魔装だし、俺たちはあまり出シャバらないようにしよう」とマサヒコ。
俺たち、Dランクパーティ『暁の微笑み』のオマケだしぃ、という気分である。
「ソッチこそ。ウチら、ちゃんと守ってよ」
アリスが言い返す。
一行は森へと近づいた。さすがにウィナスもザックも緊張しているらしく黙っていた。
ウィナスが手にしている【魔物レーダー】にいくつもの光点が現れた。カナリの数だ。
「ウン? ナンカ少ない気がするぜ」
ウィナスが首をカシげる。
「ここからなら、森全体を探知できてるハズなんだけどよー」
「ちょっと貸してみろ」
言ってザックがウィナスの手から【魔物レーダー】を取り上げる。
「18体。30体オーバーだと聞いたが、確かに少ないな」
「まー、村人の勘違いってトコだろ。大雑把そうだったからなあ」
「確かにね」
マサヒコは、ここへ向かう途中に会った村長の顔を思い出し、うなずいた。カナリいい加減な雰囲気だった。
「大めに言っておいた方がしっかりと退治してくれると思ったのかもな」
ザックが言った。
やがて森へ入った。
赤や黄色に紅葉した木々。その中へと分け入っていく。小道は森の中にも続いていたので、そのまま道沿いに進んだ。
「もうそろそろ連中の群れとブツかる。用心しろよ」
ウィナスが言った。
その言葉が終わった直後。
前方から矢が飛んできた。
マサヒコのすぐ脇の地面に突き刺さる。
警戒はしていたが突然のコトにマサヒコは大きくノケぞった。
その間にウィナスが動いていた。
長剣を手にしてまっすぐに駆けていく。
彼を狙って次々と矢が飛んでくる。
ウィナスはまったく怯まずに、矢の中を駆け抜ける。
少し遅れてザックも走る。
マサヒコも彼の後ろに続いた。
それにしても、とマサヒコはコートのスソをなびかせ走るザックの背中を追いながら思った。
フタリともナンカ遅くないか?
マサヒコはほとんど【敏捷性】を上げていない。にも関わらず、Dランクのフタリが走る速度に悠々(ゆうゆう)と合わせていける。
ウィナスはともかくザックなど、明らかに防具は軽装なのに。
だが、そんな違和感は長く続かなかった。
前方ではザックとゴブリンの戦いが始まったのだ。
荒々しく剣を振り回し、ゴブリンを斬っていくウィナス。剣というよりは、棍棒かナニカを振り回しているような戦い方。
それで、斬られたゴブリンは致命傷を受けて、倒れる。
そんなウィナスに何体ものゴブリンが殺到する。武器は短剣や手斧。ギーギー鳴きながら黄金のウィルナスにブツかるように攻撃する。
ダンっと耳をつんざく爆音が響いた。
ウィナスに攻撃をシカケていたゴブリンが倒れた。
ザックが騎兵銃の銃身を折って弾を込める。
マサヒコはソレを横目にウィナスの加勢に駆けつける。とはいえ、ウィナスの戦い方はあまりにも荒々しく、ソバに近づくと巻き込まれそうだ。
少し距離を置いて、ウィナスに近づこうとするゴブリンをけん制。ゴブリンが3体、マサヒコに向かってきた。
マサヒコは1体目を唐竹割に、2体目を袈裟切りで、3体目の首をハネた。まさに秒で片付けた。
えっ、俺、強くない?
レベルアップしたせいか、パワーもスピードも上がっている。
またしてもファンファーレが鳴った。しかも2連続。
「ヤルじゃねえか、マサヒコ」
ウィナスが左手で親指を立てサムズアップ。
その背中にゴブリンがナイフ突き刺す。ウィナスが、ウっ、とうめいた。振り返りざま、ゴブリンを斬る。
その間にも、ダンっ、ダンっと、銃声。
撃たれたゴブリンが次々と倒れていく。
さらには後方からリーズの魔法(三角形の光。ライトアロー)が飛んできて、ゴブリンを倒す。
それにマじって、アリスの矢も飛んできてゴブリンに当たった。矢じりがハートだが、しっかり刺さって倒していた。
マサヒコは途中から、トドメをさす役目に切り替えた。
ウィナスにしろ、ザックにしろ、一撃で倒しきれてないコトが多い。死にカケているゴブリンが、あまりにも苦しそうにしていて見ていられなかったのだ。
そうしていると、どんどんレベルアップしていく。
やはりゴブリンはDランクだけあって、【経験値】が美味しい。
やがて戦闘が終わった。
ゴブリンの群れは全滅。生きているゴブリンはいなくなった。
「ヨシ、こんなモンか。まー、楽勝だったな」
言いながらも、肩で息をしているウィナス。黄金の甲冑は見る影もないほどボロボロになっている。
魔装をしている限りケガは負わないが、その分ダメージは受ける。【HP】が減っていくのだ。
「悪い、リーズ。【ヒール】を頼む」
「ウン。ちょっと待って」
言ってリーズがウィナスに駆け寄る。
そういえば治癒魔法を見るの初めてだな、とマサヒコは注目した。
リーズが「ヒール」と唱えてウィナスに杖頭を向けると、彼の体が白く輝いた。見る見る黄金の甲冑が直っていく。
「サンキュー。お前の【ヒール】はヤッパ格別だわ」
などと照れながら言う。
「お世辞言ってもナニも出ないわよ」
リーズが言って、最後にバンっ、とウィナスの背中を叩いた。
そんなフタリをザックがサビしそうに見ていた。
ザックがふいにしゃがんだ。ゴブリンが手にしている短剣を見ている。それをもぎ取り、観察。
「どうかしたの?」
マサヒコが聞くと、ザックは、イヤ、と首をカシげた。
「なんだか、ずいぶん装備が整っていると思ってね」
言われてみれば、ゴブリンは革や金属の胸当てや籠手をしているものばかり。短剣や弓にしてもキチンとしている。
「こーいうモノかと思ってたけど」
マサヒコとしては【トレーニングルーム】以来のゴブリンである。確かに、あの時のゴブリンは、もっとボロボロの布を巻いて、粗末な武器を持っていた。
「どこかに大きな群れがあって。そこに上位種がいるのかもしれないな。コイツらはその先駆けかもしれない」
「ナルホド」と、さもそうかもしれない、というようにうなずいたマサヒコだったが、上位種がどういうモノかはピンとこない。
ゲームやマンガではホブゴブリンとか、ゴブリンキングとかだが。
ザックが宙に浮いている【魔物レーダー】を手にした。次の瞬間、叫ぶ。
「群れがまた来たぞ」
前方から矢が雨アラレと飛んできた。
マサヒコにも何本かが当たった。痛みはないがダメージは受けたかもしれない。
だが、自身のステータスを確認している場合ではない。
どうすればいい? と仲間たちを確認すると、ウィナスとザック、リーズはすでに、魔装がボロボロになっていた。
ゾッとしてアリスを振り返る。彼女は無事だ。その魔装に傷ヒトツついていない。
「アリス。みんなの回復を」
言って、マサヒコは走った。
矢の雨が今度はマサヒコに集中する。
クソっ、何体いるんだよ。
どう考えても先ほどよりも多い。いったい、どこから現れたのか。
矢はいくつもマサヒコに当たった。だが、不思議と黒い甲冑は傷ヒトツつかない。
弓を構えるゴブリンの中に飛び込む。
ほとんど、ヒト振りで、2体、3体と斬り倒す。
相手が密集しているせいもあるが、それにしても凄まじい切れ味の剣だ。
マサヒコは鬼神のごとき自らの戦いぶりなど気にしていなかった。とにかく、暴れ回ってアリスから注意を反らす。
彼女の姿を見た時、その魔装が自らと同じく特別なのだと感じた。だから『暁の微笑み』の回復を任せた。
だが、それでも不安はあった。
剣を手にしたゴブリンがマサヒコに次々と斬りかかってくる。
マサヒコの剣はそれを相手の剣ごと斬り、割っていく。
ファンファーレが鳴り続けているが、そんなコトを気にしている場合ではない。
フっ、と目の前に大きな影が現れた。
3メートルほどの大柄な体を銀色の甲冑に包んでいる。
なんだ、コイツ。
手にしているのは巨大な戦斧。それを、ブンっ、と振り回した。すぐソバに生えていた木が一緒に切れて倒れる。
なんとかカワしたマサヒコだったが、腹にかすかな痛みを覚えた。
見ると甲冑の腹の部分にヒビが入っていた。
なんだよ、コイツ。
背中に冷たい汗が流れる。今のが直撃したら死んでいたかもしれない。
ブンっ、ブンっ、と銀甲冑が戦斧を振り回す。マサヒコは必死でカワす。
木々が次々と倒れていく。マサヒコも完全には回避しきれていない。魔装がところどころ欠けていく。
マズい、コレは、マジで。
強すぎる。1対1で勝てる相手じゃない。
だが、逃げるスキも無い。
そのとき、ピタリと、銀甲冑の攻撃がやんだ。
次の瞬間、凄まじい大音声が響いた。
銀甲冑が発した咆哮。
空気がビリビリと震え、マサヒコの意識が一瞬とんだ。
気が付いた時には、すぐ目の前に戦斧が迫っていた。どう考えてもカワせない。
戦斧がマサヒコの首をトラえた。
マサヒコの体がフっ飛ぶ。魔装でなければ確実に首が飛んでいただろう。
そのままマサヒコは10メートルほどフキ飛び、木の幹に激突。あまりの痛みに体中がシビレた。
見ると魔装は見る影もなくなっていた。胸部と脚部がワズカにヘバリついているくらいだ。
ヤベっ、コレ死んだ。
もう次の一撃は耐えられないだろう。
あーあ、童貞のまま死ぬのか。彼女、欲しかったなあ。
異世界で死ぬことには、まーしょーがないか、と思えるのだが、童貞のまま死ぬのは、本当にイタダケナイ。彼女が欲しかった。エッチがしたかった。
なんだよもぉ。
せっかくアリスとちょっとイイ感じになってきたのに。俺の勘違いかもしんないけど。
マサヒコの脳裏にここ数日のアリスとのフれ合いが浮かんでは消えていく。
ピンクのツヤツヤパンツ、何回も見れたなー。
オッパイ、よく腕に当たったなー。
もう、とにかくラッキースケベの思い出ばかりだ。
…………でも、俺が死んだら、アリス、ヤベエんじゃね? だって、コイツ、超強いし。
『暁の微笑み』なんかボロボロだったし。ていうか、あんま強くないよな、アイツら。
三角関係とかヤってるからだよ。もっとストイックに生きようぜ。
イヤ、そんなのはイイんだよ。アリスだよ。
だって、ゴブリンてアレだろ。もう人間の女でもオカマイなしのオークとの二大強姦魔物だろ。アリス、ヤラれまくっちゃうのか? そんで、気がフレちゃって?
恐怖を味合わせるように、ゆっくりと歩いてきた銀甲冑。もうすぐソバまで来ていた。
じっ、としていれば、次の一撃で殺されるだろう。だが、そうなったらアリスのゴブリン輪姦は決定みたいなものだ。
「イヤイヤ、ダメでしょ、そんなんさあ」
マサヒコは立ち上がった。
体中がバキバキと鳴ったような気がした。それほど痛い。
「魔装変更。軽魔装」
マサヒコは片手を突き上げ叫んだ。
だが、いくら魔装を変えところで【HP】が回復するわけではない。レザーアーマの欠片が体にコビリついただけだ。
だが……。
銀甲冑が一気に動いた。
踏み込み、戦斧を大きく横に薙ぐ。
その軌道がハッキリとマサヒコには見えた。機動甲冑よりも【敏捷性】に振った魔装。だからこそ、戦斧をカワすことができた。
もちろん、【防御力】はアテにならない。下手したら、カスっただけで死ぬ。だが、どのみちソレは同じこと。
マサヒコは次の戦斧もカワした。空ぶりした銀甲冑が体勢を大きく崩す。
マサヒコは叫んでいた。
うぉー、というよりも、ぐぉー、という感じだった。
渾身の突きを銀甲冑の首に向かって放った。
銀甲冑の首にマサヒコの長剣が突き刺さった。それはそのまま太い首を貫いて、ウナジから飛びだした。
「アリスはヤラせねーから。絶対」
俺が筆おろししてもらうんだからさ。
マサヒコはヒザを折った。とても立っていられない。
数秒間が空いて銀甲冑が前倒しになった。アト少しズレていたら、マサヒコはツブされていただろう。
マサヒコは朦朧とする意識をなんとかツナぎトメようとする。
ヤバい、俺、落ちる。ヤバい。
その時、ナニカが駆け寄ってきた。マサヒコは気力を振り絞って振り向こうとしたが、そのままうつぶせに倒れた。




