三角関係に巻き込まれー
リーズのパーティ『暁の微笑み』はDランクパーティである。
黒髪長身のウィナス。
赤髪イケメンのザック。
それにリーズを加えた3人組パーティだ。
3人はもともと幼なじみでベルドーン市近隣の村で生まれ育った。幼い頃から大きくなったら街に出て冒険者になろうと、誓い合っていたのだ。
冒険者となって1年。ウィナスとザックが16歳でリーズが15歳。彼らのパーティは今、破局の危機にあった。
三角関係。
幼なじみの男2人が1人の女を好きになり、というヤツである。
だが、ウィナスもザックも親友同士。そして、互いの想いに気づいている。今の関係を壊したくない。だから、隠してきた。
リーズが無邪気に抱き着いてきても、ハハハっ、いつまでもガキだな、とか笑った。
リーズの着替えの場面に鉢合わせても、オマエ、ゼンゼン、成長してないじゃん、とか馬鹿にした。
いくら心臓が、メチャクチャ、ドキドキしても、とりつくろって隠した。
しかし、フタリのそんな努力が昨日の夜、ついに決壊した。
冒険者ギルドのラウンジで、ほか冒険者にカラまれていたリーズを、ウィナスが助けたアト、その昂りにまかせて彼は言ってしまったのだ。
「お前が好きだ、リーズ」と。
ちょうど長いトイレから帰ってきたザックがソレを聞いてしまった。コノヤロー、ヌケガケしやがって。
それなら俺だって。
こうしてザックも直後に告白。
パーティは一触即発の事態にあった。
「て、コトなんだけど」
アリスがマサヒコに耳打ちした。
対面の席に座って気マズイ空気をかもしだしている3人を見て、ナンカあったのカナ、と聞いたら、教えてくれたところである。
マサヒコはアリスが耳元でコショコショと話していたことに気をトられ、内容はあまり頭に入ってこなかった。アリスの息が耳にかかるワ。髪の毛がうなじにつんツン当たるワ。いいニオイはするワ。
もう、いっぱいいっぱい。チンチンも立ちかけた。
さらにアリスの話では朝から気マズイ空気に参ったリーズは、ほかパーティとの合同冒険を提案したという。
マサヒコは自分たちと『暁の微笑み』3人しか乗っていない車内を何気ない様子で見回した。
あんまり内緒話していると感じ悪いからね、という配慮である。マサヒコはそういうところに気が使える男の子なのである。
街から街へと定期的に出ている公共交通手段。それが駅馬車である。やはり馬車とは言いながらもヒいているのは馬ならざる者。
車両前で牽引するのがデッカいライオンの変身人間(出発前に挨拶をしてくれた。サワヤカなイケメン)。車両後ろで押しているのが6つの手を持つ阿修羅のような魔装の女性。
駅馬車は国が運航しているのでフタリとも公務員である。
マサヒコはシュマホーに入っていた本の1つ、『インフラと馬車』という本を読んだ。『トーダ商会』の前会長が書いたもので、『トーダ商会』がいかに大陸のインフラ整備に貢献してきたかというような内容だ。
チナミに運送ギルドは『トーダ商会』が牛耳っているらしい。
『インフラと馬車』によれば、運送関係の仕事はカナリ需要があり、なおかつ高給取りのようだ。ギルドに所属さえすれば、腕一本で稼げる。そのあたりは冒険者と近いだろう。
巨大ネズミのオッサンが言っていたように、変身人間だと魔装を維持するための【MP】も必要ないため、【MP】回復ポーションも無用。タイヘンお得。
魔装はパワーとスタミナに全振り(【ギルドカード】により、ステータス内容が違う)。最初は街中の運送から始め【レベル】が上がったら、街から街へ。だんだんと長距離となるというワケである。
その中でも駅馬車の運行員はカナリのエリートでなくてはなれないという。
マサヒコは車両(大型バスくらいの大きさ。長椅子が向かい合うように左右に配置されている)の前面の窓と背面の窓に映る運行員の姿をナガめながらそんなことを思い出した。
少し間を置いてから、今度はマサヒコがアリスに耳打ち。白っぽい巻き巻きの金髪にウズモレた耳に囁く。
ニオイがもうヤバい。
「それで、リーズさんは、どうしたいの? どっちが好きなの?」
冒険者ギルドのロビーで、対面、挨拶した際に受けた印象では、サワヤカで男気アフれるウィナス。
「俺にマカセとけよ。俺がお前を幸せにしてやるぜ」みたいな。
クールで思慮深いザック。
「君は俺を選ぶのが最適解だ」みたいな。
チナミにセリフはマサヒコのイメージである。
「どっちも好き。決められない、みたいな」
アリスが言った。
「イヤ、そりゃダメでしょ」
思わずマサヒコは大きめの声で言ってしまった。
対面の3人がマサヒコを見る。
「あっ、スイマセン。ただのヒトリ言です」
うぇへへへ、とちょっと卑屈っぽく笑ってゴマカす。
アリスが手にしていたシュマホーをトットとイジり、マサヒコに画面を見せる。メモ帳のアプリ。
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シャーナイじゃん
どっちも幼なじみでマブダチなんだからキメられないっしょっ
リーズだってイキナリでビックリだし
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マサヒコはシュマホーをブレザーのポケットから出した。
彼はメールアプリを開いて、トットと文字を打ち込んでいく。
ソレをアリスに送信。
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イヤ、絶対、気づいてたって。知らないフリしてたんでしょ。どっちにしようかなって選んでたんだよ、じっくり。
私たちずっと友達でいようね、みたいな感じで告白してこないようにけん制してさ。
だけど、それが急展開で告白されたもんだから、俺たちを間に入れて時間稼ぎをしようとしてるんだよ。
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というのがマサヒコの見解である。穿っているが、実際のところ、リーズの心境を看破している。
アリスが自身のシュマホーを顔に近づけ、マサヒコのメールを読む。
「ハっ?」と不快感を露わにした声。「ナニソレ、超ヒネクレてんだけど」
「イヤ、駆け引きでしょ。そういうの。女子好きじゃん」
マサヒコはアリスを見ずにツブヤくように言った。
チナミに対面の3人は当然のようにリーズが真ん中。男2人がソッポを向き合っている。
「そんなんだからボッチなんじゃね?」とアリスがマサヒコの心をエグる言葉を吐く。
マサヒコの言い方がシャクにサワったのだ。
マサヒコは大ダメージを受けた。グサっときた。致命傷っぽい痛みだ。確かにマサヒコはヒネクレて考えすぎてしまうキライがあり、それがコミュニケーションを阻害している部分がある。
イロイロ気にしすぎて動けなくなってしまうのだ。
目を閉じて心の痛みにタエる。走馬灯のようにボッチだった高校生活が思い浮かぶ。
クソっ、中学の頃は友達いたんだぞ。
チョンチョンと肩をツツかれる。
目を開けるとアリスがシュマホーを見せていた。
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ゴメン
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一言のアト謝っている顔文字があった。
マサヒコはメールをまた送った。
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俺もナンカ言いすぎた。アリスの友達のコト悪く言ってゴメンなさい。
俺たちで3人の関係をウマく取り持ってあげられたらいいね。
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などと心にもないコトを書いた。
本心を言えば、もうリア充爆発しろ、としか。三角関係? 知らんがな。
アリスがまたシュマホーを見せる。
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アリガト
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それからポッと頬を赤らめた顔文字。
えっ、ナニコレ。アレ、なに? 好感度上がった的なヤツ?
マサヒコは混乱した。




