殺し合いのハーフタイム、それは対話
僕は、覚えていた。
長い長い道の先に、砂漠が広がり続ける光景を。
でも、そのことを深く考えると、思考が何かに止められる。
なぜ?
誰が止めている?
誰も答えてはくれない。
気づけば僕は来栖に背負われていた。
彼女は走っていた。
よくわからない、うねる道を。
彼女は、道をわかっているのか?絶対普通なら使わない道だろうに。
そんなこと思いながらまどろむ
ああ、寝よう。
彼女の体温が僕に安心を与え、安心は僕を眠りの世界へいざなう。
また起きれば、地面に寝かせられていた。
「おお、ようやく起きたっスね」
僕のすぐ隣にデブ男に襲われてた子が座っていた。
「君は……」
「冬晴春雪、とうばはるゆきっス、助けてくれてありがとうございましたッス」
それから彼女は事情を話だす。
両親が急に病死したから親戚の家に住まわせてもらう……ために親戚の家に行ったところを
デブ男に襲われたらしい。
つまりあそこの死体は彼女の親戚のものだったようだ。
僕は両親かと思ったけど違った。
「……でもさーとりあえず、ここどこ?」
起き上がりながら、あたりを見回すと
ひじょうにさびれた空地。
周りをビルに囲まれている。
「えーっと なぜここにいるのかというとっスねえ・・・」
「詳しい説明はいらない、なんとなく寝てる間の事でも覚えてるタイプだから」
「すごいッスね」
僕は嘘をついた。
正確にいうと激痛とともに頭を押さえ、ゲロをまき散らしたい気分になりながら映像が流れ込んできたのだ。
……こうやって流れ込む映像は、誰かの記憶、いつかの過去の記録。
僕はそれを「追体験」していると先ほど理解した。
だってコレはちょっと前の春雪の記憶らしく、来栖と僕が映っているから。
流れてきた映像はこんなだ。
デブ男を殺した家にアメフトの防具みたいな謎の装甲を全身に着た奴らがいる。
正体はわからないが、何かヤバい雰囲気な連中だった。
その中の1人が
「見たか、ならば殺すしかないな」
などといって、そいつらは銃を取り出す。
「おい、君!逃げるぞ!」
来栖の声がした。
そして来栖は僕を背負って装甲のやつらから逃げだした。
そして、銃を撃たれながら、助けた少女……春雪とともに逃げた。
そこで映像が終わったのでこの後は正確にはわからない。
少女の「あーヤバかった」という危機は去った!みたいな表情を見るに
逃げきれたことは分かった。
「目覚めたか、さっき殴ってごめん」
そんな声がした、来栖が、救急箱をもってこちらにやってきた。
そういえば僕の体はあちこち傷ついている。
「マジ装甲を着たやつビビったっスよね」
来栖の怪我の治療を受けながら、さっき映像で見た話を一応聞く。
あの装甲着た奴らは突然デブ男と戦った家に殴りこんできたらしい。
まぁ、やっぱり流れ込んできた映像と大差ない情報しかなかった。
……ホント最近色々あって、考えがまとまらない。
ヤバい出来事が連続してるのはたしかなんだけど、頭がついていってないというか。
本当今、僕は何に巻き込まれてるんだろう?超能力といい謎の装甲といい……
とりあえず、来栖の処置に身を任せておいた、怪我を治すに越したことはない。
そして、治療の終わり際。
来栖は言った。
「なあ、別に殺す必要はなかったよな?」と。
その瞳には静かな怒りが見える。もはや敬語は捨ててる。
僕は反論する。
「でも、殺しに来たのは向こうだった」
「拘束するだけで済んだだろ!」
お互い、ヒートアップして、お互いの思考にいら立つ。
「甘い!殺しに来た相手に!」
怒りが敬語を吹き飛ばしていた。
春雪が、僕らの口げんかにおろおろしている。
「殺しにかかってくる相手にそんな慈悲をかける必要はない!僕は正当防衛しただけだ!」
「来栖だって、殺されかけててよくそんなこと言えるね!」
「・・・お前は人を殺しておいて何も思わないのか!?」
思わなかったわけじゃない。
どうでもいいと無理やり思い込み気持ちから目をそらしていたが_
僕は、人を殺すことに喜びを感じてしまった。
身を守るために殺したなんて、嘘だ。
殺したくて殺してしまった。
「まあまあ、二人とも落ち着いて、助けてくれてありがとうっス、たしかに人殺しはよくないけど、あの場合しょうがないっスよ」
春雪が仲裁に入ってくる。
おかげさまで、来栖も冷静さを取り戻す。
流石にわざわざ助けた相手に喧嘩の光景を見せたくはないようだ。
「・・・・・・まあ、私を助ようとして、立ち向かってくれたのはうれしいが」
そんな風に、僕らは口げんかをやめた。
今こんな風に口げんかしても何の実りもない。
僕が人を殺したことはうやむやになった。
うやむやにしちゃイケないはずなのに。
その時、僕でも来栖でも春雪でもない
誰か別の雑魚っぽくて、なんだか調子に乗って痛い目みそーな
女の声がした。
彼女が今の僕にはありがたい。
彼女のどこか間抜けな表情を見ていると
不思議と心が安らぐ。
「おお、神浦か、なにしてるんだ?」
そう、桜木さんだ!
自信満々ふてぶてしい態度偉そうな口調!
なんでここにいるのかわからないけど!ありがたい!
僕は、彼女に装甲を着たやつらのことを話した。
少しして、桜木さんは話しだした。
「その装甲は、パワードスーツとかいうやつだな2年前から実用化が進んでた、警察が使うためにな
でも報道は少なかったし知らなくてもしょうがない。」
警察が使う用?
つまり、そういうことかと僕たち4人は顔を見合わせる。
その、パワードスーツ_装甲兵と呼ぼう_がわざわざ殺しに来たってことは……少なくとも警察並に大きな何かがヤバいってことだ。
「フフ、楽しくなってきたな!」
バシバシと嬉しそうに僕の背中をたたきながら桜木さんは大笑いする。
そして「じゃあまた!」と叫び、帰っていく。
彼女が見えなくなり、僕はつぶやいた。
「何しに来たんだアンタ」
遠くから、声が響いた。
「私は散歩してたんだ!」
耳いいな。
「じゃあ、私は一度家に帰る、親の死体をしっかり埋葬してやれてなかった」
来栖はそう言って、帰ろうとする。僕は、また装甲兵に襲われるかもよ?
と心配になったが、彼女は僕より強いし大丈夫だろう。
帰っていく彼女を僕は引き止めなかった。
春雪は「アッツお礼してないのに!」
と来栖を引き留めるが、来栖が速すぎて
その言葉を春雪が言う前にもう見えなくなっていた。
*
「あー、リョウトさん、改めて助けてくれてありがとっス」
春雪が礼をする。
「なんか、来栖さんはそこまで驚くことじゃないッて言ってたけど超能力すごかったッスね……漫画の中じゃなくてもああいうのあるもんっスね」
・・・・・そういえば、超能力を使ったの見られてた。べつに見られてもいいが妙な恥ずかしさがある。
「で、助けてもらったお礼がお二人にしたいんっスけど来栖さんは帰ったんで、リョウトさんのしてほしいこと教えてくれますか?」
して欲しいことかあ。どうしよう、と悩む。
いろいろあるが、彼女にできそうかつ、言っても問題ないこと。
それを考える。
ハイ、一瞬で決まりました。
「家に泊まらせてくれない?」
僕はデブを追う数日間まともな寝床で寝てないから。
人が殺された場所でぐっすり眠れる程は僕はおかしくなってない。
「は?」
「あぁいや、君の親戚が殺された家じゃなくて、その前の君がご両親と一緒に住んでた家の事だよ、そっちは死体とかもちゃんと掃除してあるでしょ?」
死体、という言葉を聞いた途端春雪は嫌なものを思い出したらしく手で口を押える。
そういえば人ってこうだった、僕みたいに両親とかが殺された死体を平気で思い出せるほうが珍しいんだった。
しかも彼女は何かを誤解したらしく、僕のことをゴミを見るような目で見た。
僕はべつに変な意味でないと説得し納得してもらうのには10分かかった。
もっとこうさあ、命の恩人に対して惚れたりしてもいいんじゃない?
クソ、来栖も彼女を助けたからな。
きっと「私を助けてくれるなんてステキ!」っていう惚れる理由になる気持ちを
来栖にも感じているのだろう。
僕に対する好感度が半減しても仕方ないか。
「まぁいいっスよ、死んだ家族をちゃんとあの世に送ったらその後来てくださいっス」
あ、なんか家に行く許可が出た。
……そういえば色々ありすぎて失念してたけど、僕も自分の親の死体を放置してちゃダメだな。
ちゃんと法的手続きにのっとって処理してから春雪の家に行こう。




