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自我の修復

やっとこの章終わります

世界は鬱病だった。


なぜかというと僕の気分が憂鬱だからだ。


世界は、僕、神浦リョウトの認識によってつくられる。


少なくとも僕にとっての世界はそう。


他の人がどうかは知らない。


世界にとって僕はいらない存在だと、思う。


目の前が、暗いと気づいた。


頭がぼんやりする。


どうしようもない永遠の常闇。


冷たい。


ここは冷たい、そしてひどく寂しい。


まるで深海、光の入る余地は無い。


「おい」


声が、上からした。


僕は落ちて行っている。


だるい。何もかも捨てて投げ捨ててこのまま落ちていきたい。


それは、ダメだと思う。


上がらなきゃいけないんだ。


まだ、捨てるのは早いだろ。


逃げるのは早すぎるだろ。


僕は、まだ、何もやってない。


また、彼女に会うんだ。


少なくとも僕は彼女に会って話をする責任がある。


暗闇の中を、声のした方へもがくように泳ぐ。


僕は、僕は、もう一度あの人と会いたい。




視界の闇が、ビリビリ切り裂かれていく。


僕の体に温かみが伝わってくる。

光が差し込む。


安心感があった。

もう何もかも終わった後のような。

ずっとずっと、求めていたような気がする。


「やっと、起きた……」

口元に水滴が落ちてくる

舐めると、少しだけ甘い。


僕の顔を来栖がのぞき込んでいた。


僕の体が、痛い。

車の座席に寝かされてたっぽいや。

起きなきゃ。

「痛だだだだだだだあだだだだあああ!」

体を動かそうとしたら、全身に激痛が走る。

久しぶりだ。

全身が痺れて行く。

活力が隅々までいきわたるたび

痛覚が鋭敏になって、ただの筋肉痛が余計痛く感じる。


世界とつながってる感覚。

世界と接続してる。

___本当に?_


「お前、もう目覚めないのかと思ってたぞ?」

どうにか上半身を起こし、車内を見回すと、僕と来栖だけだった。

なんで?


「リョウト……」

来栖は黙って僕を抱きしめる。

力強く、圧をかけるから

体温が伝わってくる。


「頼む、もうどこにも行かないでくれ」

彼女の心臓の鼓動が伝わってくる。

テレパシーなんてなくとも。

事象の地平線だろうとわかる。


不安、孤独、苦しみ。

ネガティブの感情。


「ねえ来栖、キョウヤ達は?」

「……」

何も答えてくれなかった。


来栖が、僕を意図的に無視してる。

なぜだろうか

来栖は、そんなことする人ではないはずなんだ。


「頼むよ、今は聞かないでくれ、それでしばらくこのままでいいか?」

来栖は、僕に懇願する。

ふと、気づいてしまった。


これは、夢だ。

精密でリアルで、それでもちょっと歪な。


夢の中なのに、痛みも来栖の体温も息遣いも

伝わってくる。

明晰夢?


来栖はしばらく僕を抱きしめて

目覚めるべきか迷い。

夢の中とはいえここまでリアルだと

彼女を突き放して目覚めるのも気分悪いなー

と考えてたら。


「……ん、ありがとうもういい」

彼女が、そう言った。


満足したのかどうかはわからないけど

夢の中だけど

来栖が幸せになってくれたのなら嬉しい。


さあ、起きなければ

夢はいくらリアルだろうと、夢だ。

現実と地続きなだけで現実じゃない。

僕が、やりたいことはここじゃできない。


だから、目を開けるんだ。


また、僕は目を覚ました。

夢の中のような世界とつながる感覚は消えたけど

今度は自分がここに在る、世界が不変であるという

感覚が強く伝わってくる。


深呼吸、瞬き、手の開閉。

ここが夢じゃないと確かめ。


周りを見回した。

車内。

来栖が「起きた……」と、僕を見下ろして微笑んで

周りには、キョウヤも春雪もライムもみんないたんだ。


どうやら僕は座席に寝てたらしい。


「おい、リョウトなんでいきなり逃げたか?とかはしっかり聞くからな

言えよ?」

キョウヤの声。

「リョウトさん、も―――いきなりすぎて困惑しまくりっスからねこっちは」

春雪の声。

「まったくお前は……」

桜木さんの声。


トキヤが運転しながらただ次の目的地のことを話す。

「次は、どこに行く?」


ライムがフヒフヒ笑ってる。


来栖が、僕に抱きついてくる。

「リョウト……!」

泣きながら彼女は笑っていた。

僕は強く彼女を抱き返す。


夢の中よりも鮮明に彼女の存在が伝わってきた。


次回はここまでの話まとめて、その次の回から最終章に入っていきます(入るはずです)

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