22 病院
病院編中編です
リネン室を出て。
僕等はまた探索した。
「リョウトさん、ホントに世界が滅んでることはどうでも
良いと思ってるんスか?」
そんなことを聞かれたけど、答えることはできなかった。
僕の中でその答えは出てるけど。
二つの相反する答えが出たから。
だから、言葉を返せなかった。
あの、コツコツ音の主は誰だったんだろう?
ぼけっと考えながらうろついてたら
いつの間にか、抗生物質を持っていた。
「リョウトさん?何ボーっとしてんスか?」
ここは、病院の廊下だった。
うんそうだ、白い道が続いてる。
最近疲れてる。
「あと一個なんですから、頑張りましょう!」
えーっと、そう、あと一個薬がいる。
この瞬間、また遠くでコツコツと音が鳴る。
僕と春雪は慌てて近くの部屋に隠れた。
病室だった。
くそ、あのコツコツめ、廊下を巡回してやがる。
僕は戦いに行きたいが、春雪が全力で止める。
止められるってことはたぶん、相当不味い状態に僕はいる。
だから行かない。
それは彼女を信頼してるってことのか?
そうなのかもしれない。
コツコツと響く音を聞きながら
僕は、部屋の中を一応見やる。
ベッドの上に捨てられたようにして、ノートが置かれている。
たまたま見つけたそのノートは、妙に不気味。
春雪が、それに気づく。
それを取って、それを、読む。
めくるページを覗き込むと
1ページ目
まさか、病気になるとは。
全く、街の管理者の跡継ぎはいないんだぞ。
後、3か月で死ぬってなー
管理者__というと、大道寺の日記?
すこし、変だ。
だって、ここには余命3か月って書いてるんだ。
この日記に書いてある月日は半年以上前のものなんだ。
なのに、ついこの前あいつと会ったんだ。
僕の頭の中に映像が流れ込んでくる。
脳をネジ開け、ぐりぐりとドリルで穴をあけて。
大道寺が、このノートに何かを書きながら、倒れ。
その後絶命する映像。
そして、砂嵐。
映像は終わり。
やっぱり、僕に流れ込む映像は過去の物のようだ。
サイコメトリーという奴?いや、誰かの視点からの映像の時もあるし…
こんなとこで僕の能力を理解できたが、制御できてないので
あんま意味ない。
映像から戻ってきたら春雪は2ページ目を開いていた。
2ページ目
虫を脳に入れることで、記憶障害を引き起こす。
特定の出来事を思い出そうとすると、脳の機能を抑制するのだ。
いきなり内容が変わって、ずっこけそうになる。
なんチューまとまりのない……
いや、待て、この内容。
3ページ目を見た
二人の少年が外を見てしまった、ああもう記憶を消すしか
ああくそ、子供たちはどの子もどっかに遺伝子異常はあるし
青い髪とか生えてくるし、日本人だろお前ら。
連想ゲームが始まる。
世界 滅んでる 誰も知らない 脳 記憶障害
虫頭の中 痛み 頭痛 超能力
繋がった!気がする!
「なんスかこれ、1pと2pで全くつながりがない」
そういえば、トキヤは何かを覚えてないだのなんだのと言っていた。
扉に行く時や超能力を使うとき脳が痛かった。
つまりこうだ。
大道寺は、なんらかの理由で世界が滅んでることを
皆に忘れてほしかった、そして虫を頭の中にいれ
忘れさせる、そして、僕とトキヤは何らかの理由で
その世界を知ってしまった。
だから、忘れさせられたのだ。
証拠はいくつかある、扉に最初に近づいた時、脳の機能が確実に抑制されてた。
それと、トキヤの発言のいくつか。
でも、なんで忘れさせたんだ・・・・?
まだ、謎は残ってる、でも前よりかなり進んだ。
僕が、いきなり、春雪に殴りかかろうとした。
ちょっ!?
「リョウトさん、変な顔してドーしたっス?」
あわてて、春雪から目を逸らす。
僕の心の中で、欲が育ってる。
ぐんぐんと、それが育てば、それに対抗するように不安
も育つ。
僕の顎を汗が伝っていた、動機は多分乱れてる
息も浅くなって、だんだん自分が呼吸できなくなってるのか
分からなくなってきて。
春雪が、僕をそっと優しく抱く。
「……何か怖いんスか?」
ただ、何も言わず優しいながらもしっかりと抱きしめてくる。
そこに性の欲はただ一つも感じさせず。
どうにかして、人の不安を解消してあげたいという。
暖かさがあった。
落ち着け、僕。
相手は中学生だ、この暖かさに変な意図はないぜったいそう
でも、ずっとこうしていたい。
いや、だめだろ?
どうする?
ベットに押し倒して、顔面を殴りつけてあげたくなって
ああ、僕DVの素質あるわと自覚する。
悲しいような楽しいような気持になった。
そして、頭の中にイメージが浮かぶ。
春雪が、手足を切り裂かれ血をどくどく流しながら
目隠しをされ。
どこか冷たいところで、ひどいことをされている光景。
それは、僕の望み。
叫びたくなった瞬間
僕のポケットでスマホが振動する。
あわてて画面を見ると
桜木さんから「必要なものは集め終わった」ときた。
僕等も、お互いに離れ、また探索して
すぐに必要なものが見つかった。
はじめて桜木さんがヒーローに見えた。
そして、一階で僕らは合流することにした。
階段を下りながら
「リョウトさん、正直私は世界が滅んでたり人肉とか怖いんっスけど
皆さんリアクション薄くないっスか?」
なんてことを聞かれ、ほっとした。
不安を共有できたから。
僕は
「僕も怖いけど、あのさ、怖すぎるときって悲鳴ってでるのかな?
多分、反応が少ないのは皆のキャパシティオーバーなだけと思うよ」
と返してあげた。彼女とも心を共有しよう。
_優しくして、外道さを僕はごまかしてるだけだ_
そして、一階に続く階段。
受付のとこに来栖と桜木さんが見えた。
おーい!と手を振ろうとして。
来栖の叫びが僕に届く。
「前に跳べ!」
ん?みたいな顔してる春雪を抱きかかえ、指示通り僕は前に飛ぶ。
火事場のバカ力で、けっこう高く長く飛べた。
そして、一階に着地。
周りは受付エリアらしく休憩用の長いすだらけ。
階段に振り替える。
コツコツという音を立てながら不気味なナース女が下りてきている。
チェーンソーを振り回しながら。
なんだかヤバい奴だ。
つけられてたのか。
武器の刃がデカく、長く、壁によくぶつけているが。
なにも問題なさそうだ。
壁をいとも簡単に切り砕いている。
なるほど、春雪が戦うなというのも理解できる。
僕はサイコキネシスで、女の体を捻じ曲げようとして…
できない。
ああ、クソ、僕の力ってホントによくわからない。
何ができて、何がダメなのか。
墓場の女と戦ったときはできたのになぜ・・・・・?
アイツは超能力のさいのうがあるからだ。
むいしきのうちに超能力を超能力でそうさいしてる
自分の疑問を自分で答えててビビる。
女は、走ってきながら春雪を狙った。
僕は、女の足首をゴルフのように鉄パイプで殴る。
女はこけた。大きく音を立てて。
今の走り、けっこう早かったな。
「桜木さんと春雪はにげて!来栖は僕と一緒に戦って!」
普通に逃げても追いつかれるから、結局戦うことになる。
だから、ここでこいつを倒さなきゃ。
春雪と桜木さんはキョウヤの治療に必要なものをもって
病院の外に逃げていた。
僕は、来栖と一緒に
女と距離を取りながら、できるだけ短い言葉かつ早口で会話する。
「あの二人だけで安全?」
「車までの距離近い」
「この女とどう戦う?」
「回避優先して、武器の威力たかすぎる」
相談をやめ、女を見ると
起き上がっていた。
僕等は立ち止まって、女とにらみ合う。
あのチェーンソーは強い
あたったら多分一発でアウト
なのに僕と来栖は近接主体の戦い方。
そして、超能力が奴自身に効かない。
使えそうな2つの作戦を考えた。
作戦1
超能力で物を飛ばしてぶつける。
これはできるけど、相手の動きは機敏で、僕の力は使うに時間がかかる。
邪魔されないかな?
作戦2
来栖か僕が囮になって、もう片方が相手にダメージをあたえる。
危険すぎ、作戦1のほうがいい。
作戦を伝えようと口を開いた瞬間女が動いた。
5メートルはあった僕等との距離を一瞬で詰めて
チェーンソーを振り回す。
僕と来栖は、飛びのいて避けた。
女は、チェーンソーを振り回しながら涎をだらだらながし
僕等を追いかける。
くそ、隙が見つからない。
来栖は女の懐に飛び込んで蹴り飛ばした!
何メートルも勢いよく奴はふっとぶ。
完全にクリーンヒット。
しかし、簡単に受け身を取って起き上がり
僕等に向かって走ってくる。
「ちょちょちょちょいったん逃げよう!」
ウン、無理。普通の戦い方じゃ無理。
僕等は階段を駆け上がって、2階の病室に駆け込んだ。
外の廊下をコツコツではなくどたどたという不快な音が駆け抜けていって
ああ、撒けたなとホッとする。
しかし、僕等を見失ったら春雪たちを追いに行ったりしないかな?
と来栖は不安がった、けど、奴は僕等のことしか今目に入ってない。
大丈夫だろう。
もしかしてこのまま逃げたらいいのかな
撒けてるんだしさ。
もう春雪たちがどこに行ったかも奴はわからないだろうから追えないだろうし大丈夫だろ。
じゃあ、どこから逃げようか。
そういえば、なんで奴は廊下しかうろつかないんだ?
いくらやべー奴とはいえドアくらい開けれるだろ?
一回も部屋にはいったりしてないぞ?。
なんとなく、ベッドを、見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」
思わず声を漏らす。
ノートが無造作に置かれていた。
乱雑に。
同じ、春雪と一緒に見たノートと同じ。
ページをぺらぺらめくる。
何もかも同じ。
それをベッドに投げ捨てる。なんだこれ?
と思うけど、今はノートより奴のほうが大事。
来栖が僕に「じゃ、これからどうしようか?逃げるか?」
と聞いてくる。
うん、そうしよう。
逃げるのにわざわざ奴のうろついてる廊下を歩く必要は無いから……
窓を開けようと手をかける
「あり?」
開かない、何か引っかかってんのか?
来栖と一緒に頑張っても開けられない。
慌てて、窓ガラスを鉄パイプで叩いてみたけど
なんにも、効果はなかった。
ああ、クソ何で僕そういうことを確認しておかないんだ。
敵がいるんだから逃走経路くらい確認しとけよ。
注意力散漫してるのか。
いや、落ち着け。
まだ、大丈夫。逃げれないだけ。
戦う道もあるんだ。
鉄パイプを握りしめ、虚空を僕は睨んだ。
そこに奴がいるかのように。
「戦うのか?でも、攻撃をくらったら多分ただの怪我じゃすまないぞ」
「いや、遭遇したときだけ戦うから」
短い会話を交わし、またドアを開ける。
奴が、目の前にいた。
噴いた。
ドアを勢いよく閉める。
外からギャリギャリギャリギャリと不快な音が聞こえてくる。
うるさい、騒音。
一応飛びのいておく。
ズガ!
ドアをチェーンソーの刃が貫通していた。
豆腐のように目の前でドアが切り裂かれていく。
奴の声が大きく聞こえる、うるさくて不快な声。
「私の赤ちゃんの部屋に入るな!」
・・・・・・・・・・は?
「勝手にいじくりまわすな!」
切れたドアの隙間から、僕等とチェーンソーの女はにらみ合う。
どんどん隙間が広がり、数秒で人一人通れるほどのものになる。
チェーンソーってここまで強いっけ?
もしかして、超能力で強化してるのか?
そう考えたら、この窓が開かないのも奴の超能力?
物を強化する力?
女は僕等に突進してきた。
僕はどーにか攻撃を紙一重で躱し、相手の頭上に鉄パイプを振り下ろす。
「ッダああア!」そんな掛け声だして。
ゴインゴインゴインと音が響く、クリーンヒット。
相手は死なない。
ゆっくりと頭をもたげながら、僕に「赤ちゃんはどこ?」
と言う。そして、チェーンソーで切りかかってきた。
来栖は不意を突いて、女を殴り飛ばした
「アギャッ!」悲鳴が不快と正反対に感じる。
来栖は「いい加減にしろ」と女に構える、本気だ。
「なあリョウト、殺さないからな私はこの人のこと」
その、言葉はキョウヤを想起させた。
ああでも、キョウヤのは正義で、彼女のは・・・・?
いや、今は女と戦うのが先だ。
僕等は廊下に飛び出した。
チェーンソーをこれで避けやすい
やったぜ。
女はチェーンソーを振り回しながら、今度は来栖に
突進した。
来栖は、女の攻撃を前方に低い姿勢で跳んで避けカウンター気味
に女の後頭部に跳び膝蹴りをくらわす。
綺麗に入った、勝ったと思う。
「いい加減気絶くらいは……」
女はダメージをまるで受けていないようだった。
さすがに来栖も驚いて怯んだ。
それがまずく、女は来栖を押し倒し
馬乗りになって来栖を滅多切りにしようとする。
「やめろ!」僕は女の腕をとって、やめさせようとするが
女の力が、異常に強い。
これじゃ、これじゃダメだ。
来栖が簡単に押し倒される相手の力が弱いわけないじゃないか。
でも、相手に超能力は聞かないし、どうしようか。
・・・・・・・思いついた。
緊張が、周りの世界をゆっくりにする。
ありがたかった。
この方法は少し失敗すれば。
足をうしなうせいみつなさぎょうだから。
女が武器を突き刺そうとしたその瞬間。
僕は自分の「脚」にサイコキネシスを発動した。
チェーンソーの刃と刃の間
横っ腹
つまり、切ろうと思っても切れないとこ
めがけて「蹴る」
ゆっくり、ゆっくりと僕の足とチェーンソーが近づき
ぶつかり弾きあって。
第二撃だ。僕は今度は蹴っていない軸足のほうに超能力を使う
変な使い方したからか、脚がギシギシ痛むけど、気にしない。
「ん――――――あああ!」変な叫びをしながら。
僕の軸足は宙に浮く、二つの足が宙に浮いてる。
ああ、落ちたらこれベッドから落ちたりするのと同じ痛み来るなっていう
体勢で、超能力で空中回転。
女の「手」を弾く。
女は、チェーンソーの制御を一瞬失い。
自分の頭をぎゃりぎゃりと削っていく。
ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり




