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月街 21 病院 リネン室にて

「ホラ、これが必要なものだ」

桜木さんが、僕、春雪、来栖の携帯にメールを送る。

どうやら、キョウヤの治療に必要なものが書かれているようだ。

包帯とか、薬の名前とかそんなもの。


僕等は病院の受付に職員も誰もいないことを訝しみながら

これからの行動を話し合っていた。


特に問題なのは_____

「こういうの医療品てどこにあるんです?いくつか薬局で買えそうなものもありますけど」

僕は、聞いてみた。

桜木さんは「ああ、そういう薬局にあるものは既に調達してる」と答えた。


アンタ!なに既に持ってるものも書いてんだよ!

それを探すのに時間をかけてたらあんまり意味ないだろ!

と文句を言いたくなったけど、ここで喧嘩になったらキョウヤを助けるのが遅くなる。

迅速に動かなきゃ助けられないかもしれない。


怒りを抑えて、僕はたずねる。

「で、今持ってない薬とか、どこにあるんです?僕病院あんま詳しくないんで」

桜木さんは首を横に振る。

「ワタシだって知ってたら今すぐ取りに行ってるっつーの」

おい、と文句を言いたくなるが。

とにかくキョウヤを助けることだけ考えよう。


「じゃあ、僕と来栖 桜木さんと春雪 そうやって手分けして必要なものを探そう」

3人に向かって提案。来栖と春雪が却下した。

「お前、春雪と桜木のペアじゃ何かに襲われた時対処できないだろ」

「リョウトさんッ、来栖さんの言う通りっス来栖さんと私入れ替えてっス!」


というわけで、僕と春雪 桜木さんと来栖 このペアで探索することになった。

まあ、確かに何かに襲われる可能性はある。

この町はもう平和でないんだから。


3階から4階までを僕等は探すことになった。

僕等は片っ端からドアを開けて調べていく。

むかつくことに、ドアに書いてある「ここは〇〇です」

っていうのが消えてたりして、苦労する。

何度か病室を間違えて開けるし。

でも、どうにかいくつか薬を手に入れた。


トキヤとライムのどちらかに来てもらうべきだったかな?

いや、二人は車とキョウヤを守ってもらわないといけない。

じゃあ、1階か2階の来栖たちは?

だめだ、手分けした意味ないだろ呼んだら。


ガチャガチャとドアを開け、リネン室とかいうとこを開けた

どういうところかというと、ベットシーツやカバーが保管されているとこだ。

電機は点いておらず、薄暗くて不気味である。


ここはなにもないな、薬なんてあったらおかしい。

と、振り返ろうとした瞬間突き飛ばされこけた。

あわてて見上げると。春雪が手を前に突き出していた。

そのポーズをすぐに解き、体を部屋に滑り込ませ後ろ手でドアを閉める。


起き上がる僕の口元に春雪は人差し指を立てる。

これは、静かにしろというサインか。

たしかに、部屋の外でコツコツという音が響いている。

たった一つの音、来栖「たち」がやってきたのならおかしい。


春雪がぼそぼそと「危なそうな人がいる・・・・・・っス」と

耳元でささやく。

くそ、ちゃっちゃと片付けよう。殺そう。

僕は持ってきた鉄パイプを握りしめ、コツコツとした音の出し手

と戦いに行こうとした。


しかし、春雪は僕の右腕をしっかり握り、離さない。

これじゃ行けない。

無理やり振りほどけば、その音で相手に気づかれる気がした。

僕は大して強くないから、不意打ちは必須だ。

なのに、離して、くれない。


邪魔だ、春雪、お前、殺してやる。


叫びたくなった。

今、春雪にそう思ってしまった。

落ち着け、僕、落ち着け。

春雪になにもされてないそうだ絶対そう殺す必要なんてない。


春雪は僕を見つめる。

純粋な瞳に思わず僕は目をそらす。


コツコツコツコツと外の音が遠ざかっていき。

それから音が鳴りやんで数十秒。

春雪は緊張が解けたのかその場にへなへなと座り込む。


僕が手を離さなかったことに文句を言うと。


「リョウトさん・・・・・・調子悪いっすよね?そんな時は戦っちゃダメっすよ」

何を言っているんだ、絶好調だぞ僕は。

「ずっと前から苦しそうな顔してたっスよね」

イライラする、あのコツコツより先にお前を殺してやろうか。

こっちは鉄パイプがある。

「キョウヤさんが怪我して、もっと苦しそうになってるっス」

春雪、いい加減黙れ。

なんだか心のうちを見透かされているようでむかつく。

ミンチにしてやろうか。


残虐でクソみたいな自分の思考に吐き気がする。

脳みそを取り出してトラックでぐちゃぐちゃにひき潰して欲しくなった。


春雪はぽつぽつ言葉を出す。

「その、悩みがあったりするなら」

なんだよ、なんでも相談に乗るとでも言う気か?

「私は相談されてもたぶん何もできないっスけど

休んだり、考えるのをやめたり」

あまり、そういうことは言われたことがなかった。

「そういうのも良いんじゃないッスか?

いや、良くないっスかね?」


それは逃げだ。

春雪は僕に、どうしようもないことから逃げろと言っている。

でも、僕はそんなことできるほど器用じゃないんだ。


僕は無理やり声を絞り出す。

「僕のことよりキョウヤのほうが先だ」

心配そうに僕を見る彼女がかわいそうになった。

こんな奴に心配する価値なんてない。


リネン室から出ると、廊下には静寂が満ちていた。

僕は、窓から何となく外を見る。

空が見えた。

窮屈な空と感じたことがあるそこを見て

なんだか気分が落ち着いた。


春雪の命を壊したい。

そんな思いをキョウヤを助けたいという思いで

塗りつぶして、また僕らは探索を始めた。

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