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月 17 月をなくした街

僕は、また車の中で目覚め、ガソリンが尽きかけのことに気づき。

ガソリンスタンドに急行し、その途中で野菜がすべて売り切れの八百屋を見た。

いや、八百屋だけでなくほとんどの店の食材が売り切れだ。


僕は何となく不安になって、車に積まれた食料を確認する。

保存のきく缶詰が多い。よしこれならしばらくは持つ。

確かこれらの食糧は、みんなで持ち寄ったものだ。

でも、肉は、みんな食べたくないという。

割とおいしいのに。

肉を一つとって、食べる。うまい。


なんだかみんな疲弊している。

「リョウト、次はどうする?」トキヤが、僕に言う。

皆が僕を見ている。

そうだ、目的が必要だ。

とにかく、目的がないと、人の心は枯れていく。


春雪にはその疲れが顕著に表れている。

大丈夫か?

そういや彼女は、完全に巻き込まれた人だ。

他のみんなは自分から戦いに来たけど、春雪は違う。


じゃあ、殺すか。

なんだ今の。

頭の中で浮かぶ考えを振り払い、僕は何も考えず言った。


「今、僕らにはやることがない、なぜなら僕らは降りかかる火の粉をはらうだけだから

だから、僕のやりたいことをしてもいいかな?」

桜木さんは、えー、とあからさまに嫌な顔をした。

なんですか、アンタ、文句があるなら言って。

どうせ、危ないことは嫌だとかそういうのだろうけど。


まあ、無視して僕は「春雪の家に行く時、変な扉を見たんだ」

来栖は食いついた「おお、それで?」

ありがたい、話しやすい。

「そこを見た時、僕は明らかに発狂してた、あそこは何か大事と思うんだ」

僕は、そう言っただけだ。

大事かもしれないというのは勘だ。


今この落ち着いた状況でないと、僕の提案は受け入れられなかったろう。

つまり、僕はもう一度あの扉の謎に迫ることにした。


ブロロロロロロロと間抜けな音を立てて、車は僕の記憶をナビに

扉へ向かう。

黒塗りのデカい車、トキヤの車、そういやトキヤってどんな仕事してたんだ?

あと、春雪、ライム、そういやこの三人のことあんま知らないや。


なので、三人に色々質問した。

春雪が卓球うまかったり、トキヤの親が行方不明だったり

そんなことが分かったけど、ライムのことは塩辛が好きなこと程度しかわからなかった。

というか、こいつら僕について来てる理由なんだっけ?

ああ、命狙われてるから協力しようぜって感じだった。


そんなことしてたら、だいぶ扉に近づいていた。

確かあれは車でいけないくらい狭いとこにある。

僕は車から降りた。

そして、僕だけで扉を見に行こうとした(だって、僕の都合に他人巻き込みにくいし)

だけど、トキヤと来栖はついてくるという。


ついてきそうな桜木さんは爆睡していたので放っておく。

その寝姿はふてぶてしいものだった。


そして、トキヤと来栖は、その扉へ足を進めながら話す。

「なんか、いつの間にかヤバくなってきたな」

「そうだね、僕はただたんに自分の記憶の謎が知りたかっただけなのに

そうも言ってられないほどこの町はおかしくなった。」


話を聞き

僕は、あたりを見回す。ああ、自販機がぶっ壊されている。

治安が悪くなっているな。

ゴミ箱は横倒しだし、なんだか町の落書きも増えた。

そーいや、この辺ってこの時間は

無職のおじさんがギターで弾き語りしてるはず。

今日いないや。

確かにおかしくなってるような。


僕は、そんな些細に思えることで唸っていたら

だんだん頭が痛くなってきた。

ああ、だんだんあの扉に近づいてきた。

来栖は平気そうで、トキヤは苦しそうに汗をだらだら流していた。


なぜかわからないが、この前より痛みが少ない。

だから、ふらつきながらも足は止めない。

頭の中で、僕が痛みに叫ぶ。


でも、止まらない。行きたい。行かなきゃ。行くべきなんだ。

来栖は心配そうに僕を見て、肩を貸そうとするけど

僕じゃなくトキヤを助けたほうがいい。

そう伝えると、彼女はトキヤに肩を貸した、それでいいんだ。


頭の中にトキヤの悲鳴が響くんだ。

そういえば、彼の能力はテレパシーだったか。


歩くことが苦しい。

足を動かすたびに頭が痛くなる。

やめよ。

やめない。

めんどくささと義務感が反発しあう。


確かに行く必要は無い。

ただたんに僕が気になるだけなんだ。

だから、この頭痛をこれ以上味わう必要もない。

_僕は、事実が知りたい_


頭の中にトキヤの声が聞こえた。

彼は、僕よりも苦しそうだ。

クソ、これじゃ、止まれない。

そんなこと言われたら。

ふらふらと歩く僕らの姿はどこか間の抜けた

馬鹿みたいな姿だったろう。


でも、だからどうした?


そして、結局へんぴなとこにある「扉」にたどり着くまで。

十分かかり、ついた時には僕らの頭痛は消えていた。

なんというか、キツ過ぎて逆にキツさがわかんなくなるみたいな感じだった。


その扉はやけにに厳重で、強固で、見た覚えがある、どこかで。

頭の中に映像が浮かぶ。

子供が、やけに怯えている映像。なんかトキヤに似てるけど

なにこの映像。


僕のサイコキネシスで扉をこじ開けようとしたけど開かない。

なので、来栖のパワーで無理やり開けた。

何で開くんだよ、パワーありすぎだろ。


その、開けた先に空間があり、階段があった。

細長くて、曲がっている階段。

「行くのか?」と来栖

「そうだね」とトキヤ

「行こう」と僕

疲れてるせいか、長台詞はでてこなかった。


上りだして五分ぐらいから、だんだん僕らは不安になってきた。

この階段、景色が変わらない。

周りは壁と天井に囲まれてる。


だから、登っているのかだんだん不安になり。

二十分くらいで階段は終わった。

天井にブチあたって終わったのだ。


くそ、階段!天井まで続いて何がしたいのさ?

僕は試しに天井をあちこち触って調べる。

なんだか、少しだけど動いてる気がする。

よし、僕はサイコキネシスでそこの天井に上方向に力を与える。

バキッとか、そんな音がして、ギイイイと天井は開いていく。

天窓を開けるみたいに。


そして、開ききったので、僕らはそこを抜けた。


なんだこれ

頭の中でそんな言葉ばっかり反復する。

来栖もトキヤもきっと同じ。

トキヤは「さすがにこれは、予想外だったという」

来栖は、あまりの現実に言葉を失っていた。


空には月が登っている。

今は暗くて、寒い。


風が吹いて、砂ぼこりが舞う。

あちこちでビルが倒壊している。


どこまでもどこまでも、砂が続いている。


頭の中で、反射的に言葉が出てくる。

亀裂 砂 砂漠  人肉 食糧不足

街のそと 破滅  


来栖は「なんだこれ!」と走り。

砂の上で泣く。

「何でどこまでも砂なんだ!?なんなんだ!」

ああ、そうか、世界は終わっていたんだ。

滅んでたんだ。


何となく僕は、無月町という名前の由来を理解した。

ああ、あの空は本物じゃなかったんだ。

あの町の天井に出された偽物。

太陽も月もなくなってたんだ。


今は月がでているから。

あの町は、月をなくした街だ。

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