8 デュオキャンプ
「ふっふーん♪」
「上機嫌ですね。」
今は、昼食を街で食べ、東門から次の街まで向かう途中だ。
「だって、ピクニックとか初めてだもの。」
「…キャンプのほうが近いかと。」
「どっちでも良いじゃない。次の街に行くだけなんだから。」
「2日ほどかかることを覚悟しておいてくださいね。」
「上等よ! キャンプは不便を楽しむものなんでしょう?」
「よくおわかりで。」
どうせ、魔獣がでてもレティが退治して夕食にでも出すだろうし、安心感が半端ないのよね。
「街道に沿って歩いて行くと一週間ほどかかりますので、こちらの森を抜けます。」
「あぁ、ずっと街道を作る計画を破壊してくる魔獣がいるあの…………え?」
…超危険な森じゃなかったかしら…?
「エルセ一人ぐらいなら余裕で守れますので。」
「レティが殺せるのならここに街道を作っても良かったんじゃ…」
「流石に殲滅は無理なので。」
…うーん、未開拓の森もレティがいれば色々解決できたんじゃないかしら…
まぁ、そんな事考えていてもしょうがないわね! 大量に冒険者を雇う資金もなかったし!
「途中で薪を集めたり、日差しを遮って涼しかったりするので、こちらのほうが楽なのですよ。」
「…そうね。密猟者の罠と、魔獣には気をつけましょう。」
「密猟者は印をするので、よほどの阿呆でなければ引っかかりませんよ。」
…それって引っかかるフラグなんじゃ…?
まぁ、レティに限ってそんなことはないのだろうけど。
私たちは、時々休憩しながらも歩き続け、少し木があまり生えていない開けた場所についた。
今はもう日が沈んで、夜になっている。今日はここで夜を明かすつもりだ。
道中ではレティがナイフで罠を切ったり、私に当たりそうな枝を切ったりしてくれていてとても助かった。
小休憩したときに、林檎をまるかじりをした。蜜がいっぱいで美味しかったわ。行儀が悪いけど、ちょっとした憧れだったのよね。王城じゃそんな事したらマナーが悪いだとか、他の人達がうるさかったから。
「では、テントを組み立て始めましょうか。」
「魔獣対策とかはしているの?」
「結界の魔道具を持ってきていますので。ちなみに私物です。」
「…国宝レベルのものなはずなのだけど…」
「またまたご冗談を。ダンジョンでたまたま出てきただけですよ。」
「結界の魔術具なんて深層でしか出ないはずだけど!?」
…つくづく、レティには驚かされるわね…
まぁもうヤケクソよ! 私のために使ってくれるのなら全然問題ないわ!
「では、椅子をおいておきますので、テントの設営までちょっと待っていてください。」
「私も手伝うわ。新しい経験をしてみたいのよ!」
「……そうですか。では、こちらを抑えていただけると嬉しいです。」
良かった。受け入れてくれた。
…流石に、レティにすべて任せるのは申し訳ないから。自分のできることぐらいはするわ!
……着々と、テントの設営が終わったので、焚き火のパチパチとした心地よい音に身を委ねながら、椅子にもたれかかる。
…この椅子座り心地良いわね…
「夕食はどういたします? 道中で狩った魔獣の肉と、街で買った肉がありますが。」
「うーん、魔獣の肉は、最悪向こうの街で売ればお金になるから、街のお肉かしら。」
…レティが襲いかかってきた魔獣を一撃で叩き伏せ絶命させた時は腰を抜かしたわ。
しかも、解体の技術さえも持っているって… 逆に何ならできないのかしら。
「わかりました。料理しておくので少し待っていてください。」
「私も手伝……」
「待っていてください。」
…むぅ…
絶対、レティは厨房には立たせようとしないのよね…
小腹が空いてこっそりと夜食を作ろうとした日には、何かを察知したレティが厨房に待ち構えているのよね。
…ちょっとしたこだわりなのかしら。
もしくは、私の料理が信用ならないってことかしら…?
「…レティ、私もそこまで料理下手じゃないわよ?」
「これまでに何度料理した経験が?」
「……うっ…」
「失敗すればそのいただく命を無駄にするということです。確実な私にお任せください。」
「……はい。」
ちょっとぐらい出来ることさせてくれたって良いじゃない…
「あと、エルセが包丁で指を切ったりなんかすれば……私は腹を切……」
「ストップストップ!」
「エルセには介錯を…」
「するつもりもないからね!?」
「なら良かったです。」
……言いくるめられてしまったわ…
私が厨房に立てる日は来るのかしら…
マジックバッグから小型の机を取り出して、まな板を置く。
水で洗ったナイフを取り出し、焚き火のそばで野菜を切っていく。
…レティが。
マジックバッグからフライパンを取り出し、焚き火の上にかざす。
そこに、油、根菜、塩などを入れ、ある程度炒めたら肉を入れる。
ジュウジュウと焚き火の炎で焼ける良い音がする。匂いがこちらまで漂ってきて、よだれがたれそうになる。
…やっぱり、こういうのって最高だわ!
香草を入れ、少し水を入れて蓋をする。
私は、手が離せないレティの代わりに、机にお皿を並べておく。
パン屋で買った黒パンを取り出してそれぞれに一つずつ置いて、私は席につく。
「ありがとうございます。」
「料理に関与しないことぐらいなら手伝えると思ったからね。」
むしろ、調理してくれてありがとうって思うのはこっちなんだけどね。
…もう一品スープか何かが欲しいわね。
ポトフか何かがあったらと思ったのだけど… まあ良いかしら。
じゃがいもや玉ねぎはあっても、腸詰めは買っていないのよね。やっぱり、ポトフと言えば腸詰め…らしいわ。
王城での食事には出てこないのよね…
保存食用に燻製肉も買ったけど、それを使うにはいささか早すぎると思うのよね。
「出来ました。」
「早いわね。」
「二人前なのであまり時間もかかりませんしね。」
私たちは席につき…
「「いただきます。」」
お肉を切って口に運ぶと、肉汁が口の中で溢れてくる。
やっぱり絶妙な焼き加減よね… このレベルになるにはどれだけの時間がかかるのかしら。是非いつか教えてもらいたいわ。
そんな事を考えながら、月光の下、女二人で静かに夕飯を食べていた。
…魔獣の出る森の中で。
キャンプ、良いですよね。




