18 材木屋
冒険者ギルドから出たあと、街を出ようと歩いているとふと材木屋が目に入った。
……そうね。
「せっかくこの街に来たんだし、名産品の木材でも買っていきましょうよ。」
「…なぜですか?」
「だって、なにか作れるかも知れないじゃないの。私の空想造形とレティの万象縫合を使えば!」
「……マジックバッグの容量を考えながらですよ。」
「やった!」
流石に歩き続けるのは疲れるのよねぇ〜 こっから先次の街まで急いでいかないといけないんだから。
だからこの木材でなにか作れないかな〜っておもって。
徒歩もいいけれど、馬車みたいなものが作れたら便利よね。……まあ、作れるかは知らないけど!
歩くのをを楽しみたいときに、マジックバッグに入れておけば大丈夫だしね!
…マジックバッグに馬車を入れれるスペースがあるのかしら…?
「……いかにも老舗の名店のような雰囲気漂う材木屋があるわね。」
「看板からまさにって感じがしますね。店主は何代目でしょうか。」
「案外4代目だったりして。」
「いえ、私は8代目と予想しますね。」
さぁ、正解を確認しに行こうじゃないの。
木製の取っ手のついたドアを開くと、蝶番からキィーっと軋む音がする。
店内はいろいろな木材が並んでいて、広々としている。向こう側には倉庫らしきものがあり、大量に木材が積み重なっている。
「いらっしゃい。見ない顔だね?」
若い青年が店番をしている。…奥の方に店主がいたりするのかしら?
「えぇ。旅をしているの。…ところで店主さんは何代目かしら?」
「? 僕が1代目だけれど?」
「まさかの創業者!?」
じゃああの外観は何だったの!?
年季の入った木材なんだなーって思ってたんだけど!?
レティもちょっとだけ驚いた顔をしているし…
「あぁ、この店は懇意にしてもらった人のものをもらったんだ。なかなかに雰囲気があるだろう?」
「えぇ。いかにも歴史の詰まっていそうな店ね。」
「そうなんだよ! …っと、旅のお嬢ちゃん、どんな木材を求めているんだ?」
「えぇと……せっかくこの街に来たから、木材でも買おうかと思ってこの店に来たのだけれど…特にこれといったものはないわ。」
「…お嬢ちゃん、よく変わり者とか言われない?」
……まぁ、やっていることが変わっているって言われてもおかしくないはないわね。
王城時代では変わり者とはあまり言われなかったけれど……
今は好奇心が爆発しているせいね…
「まぁ、適当に使いやすい木材を見繕ってやろうか?」
「いいの?」
「あぁ。今は客も少ないからな。」
「では、よろしくね。」
受付から出た青年は、倉庫の方に向かったのでついて行く。
「店の中に置いてある木材じゃダメなの?」
「あそこにあるのは超一級品だけだ。エルダートレントの木材とかな。嬢ちゃん旅してるんだろ? んな金を使うこともねぇかなって思って。」
「そうね。そこまでお金をかけるつもりはないわ。」
エルダートレントの木材を陳列できるあたり、商人としての才能はあるのでしょうね。
まぁ、買わないけれどね。加工技術も持っていないし。…レティならやりかねないけど、まぁそこまで高いものじゃなくていいわ。こだわりとかもないし。
だとしても、エルダートレントなんて熟達した職人しか加工できないっていうもの。
たとえレティでも無理でしょう。………フラグじゃないわよ?
「…この店においてある一番高い木材って何?」
完全に純粋な好奇心で聞いてみる。
「そうだなぁ…完全な展示用で非売品だが、緑竜の爪なんかがあるな。」
「緑竜!? …どこから仕入れたの?」
「前の爺さん…前店主の親父が、樹人から譲り受けたって話だ。」
「へぇ、それは興味深いわね。」
…一体何年前の話なのかしら。まぁ深堀りしようとしても、この青年がどこまで知っているかを知らないからね… まぁ、諦めようかしら。
「っと、これとかどうだ? 初心者にも加工しやすい上に香りもいいし、ある程度水にも強い。」
「…いいわね。これ。」
店主も人が良さそうだし、信用させてもらおうかしら。
色合いや木目、香りも申し分なしね。
「これにするわ。」
「どれぐらいをお求めで?」
「…うーん……レティ。」
「この板のサイズならば、8枚までなら容量的には問題ないですよ。」
「じゃあ、8枚でお願いするわ。」
「毎度ありー!」
とりあえず私は大銀貨1枚を渡す。まあ、多分これで足りるでしょう。足りなければ追加するだけだし。
「えーっと、大銀貨1枚だから…はい、銀貨1枚と大銅貨2枚のお釣りだな。いったんカウンターまで持っていってくれるか? ……あれ? 持てるか? 大丈夫か?」
「レティ、マジックバッグに入れておいて。」
「了解です。」
スルッとマジックバッグに木材を入れるレティと、あんぐりしながら目を見開く。
「マ、ママ、マジックバッグ!?」
「はい、じゃあカウンターでお釣りお願いするわね。」
「…は、はい。」
私たちはカウンターに行き、青年はお金を引き出しから出し、銀貨一枚と大銅貨二枚を渡してくる。
「ありがとうございましたー。」
「えぇ。こちらこそ。また来ることはないでしょうが。」
そう言って、私たちはこの店を後にした。
そう言えば私、この街に来てから一度もご褒美らしいこと一つもしてないわね…?




