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貴方の瞳に映りたい  作者: 蒼華
本編
53/63

46 ダン子爵家


シェラルージェは動きやすいようにシンプルなワンピースを着て、その上から靴まで隠れる長さの黒いローブで全身を覆う。

これで顔まで隠す布があれば、いつもの館での格好に似た感じになるだろう。

この姿を見せてハリー様に気づかれないか不安に思ったけれど、どうやら大丈夫そうだった。


馬車に乗り込み、ダン子爵家から少し離れたところで降りる。

深夜に走る馬車の音で警戒される可能性を考えて、少し離れたところで降りてから歩いてダン子爵家に向かった。

シェラルージェとアルム兄様、ハリー様が到着したときにはユリウス兄様とカミル兄様が待ち構えていた。

公爵家の影部隊はすでに配置についているらしく、ユリウス兄様の指示を待っているようだった。


「来たか」

「待たせたかな?」

「いや、時間通りだ」


ユリウス兄様の言葉にアルム兄様が軽い感じで応えていた。

アルム兄様はとても落ち着いていて余裕があった。お父様に連れられてたまに結界の見回りに行っていたりしているので場慣れしているからだろう。

勿論ハリー様は騎士としての経験があるので、自然体で気負ったところもなく頼もしい佇まいで指示を待っている。

そんな中、やはりユリウス兄様とカミル兄様には緊張感が漂っていた。

本人たちも言っていたように書物や先達者の話などを聞いて知識としてはわかっていても、お祖父様の代で戦争もなくなり平和な時代になった私達世代は、騎士や警邏隊等の職務に就いていなければ現場の経験などを自身の身で知ることは皆無である。

その為、ユリウス兄様とカミル兄様には張り詰めた緊張感があった。

剣の腕前は2人とも高いので、あと足りないのは現場経験だけ。それを今回経験することが陛下やバロットナイト公爵から与えられた試練という訳なのだろう。


2人の緊張感に触発されて、シェラルージェも緊張してきた。


「シェラ、始めてくれ」

「はい」


ユリウス兄様の声に、袋に入れていた結界創石(そうせき)を取り出す。

シェラルージェは一度深呼吸して、心を落ち着かせてから、結界創石の核となる聖石に自分の魔力を注いでいく。

シェラルージェの魔力が核の聖石から繋がっている聖石に流れていくと、結界創石が空中に浮き始める。

そして大きな円に拡がりながらダン子爵家の屋敷を囲むくらいの大きさになり、屋敷の上空に移動する。

聖石ひとつずつの間はシェラルージェの魔力で繋がっていて、ダン子爵家の屋敷の上空に聖石が点々と浮いているように見えた。

シェラルージェは十分な大きさに拡がったのを確認して、結界創石を地面に向かって下ろしていく。

地面に触れたのを確認して、最後に結界を固定するために魔力を注いで、結界が完成した。

これで結界の中からは私が許可した者以外は出られなくなった。


「完了しました」


ユリウス兄様に向けて告げると、ユリウス兄様は頷いた。


「アルムとシェラはここで結界の維持を頼む」

「了解」

「かしこまりました」


アルム兄様とシェラルージェの返事を聞いたユリウス兄様は、今度はカミル兄様とハリー様に視線を向ける。


「では、行くぞ」


ユリウス兄様はカミル兄様とハリー様を従えて、ダン子爵家の玄関へ向かって歩いていく。


今回、陛下からの出頭命令書を携えている。

だから、素直に従ってくれるなら何の問題もなく捕縛作戦は終了するはずなのだが、反抗したり逃げ出したりすることも考えられるので予防対策の為にユリウス兄様達は剣を携え、シェラルージェは結界を張ったのである。


玄関に辿り着くと、カミル兄様がノッカーを叩く。

中から訝しげに出てきた家令がカミル兄様を見て驚いたように瞳を見開いた。

そのあと、後ろにいるユリウス兄様を見て深々と一礼する。

その家令にカミル兄様は書状を見せて訪問理由を説明すると、顔を青ざめさせた家令はしばらく固まったあと玄関を広く開けてユリウス兄様達を招き入れた。


ユリウス兄様達が入っていった後に、公爵家の影部隊がゾロゾロと続いていく。何人来ているのだろう。影部隊の人達は全身黒い服で身を包み、髪の色こそ違えども全員後ろに髪の毛を流し口許を布で覆っていた。

影部隊という名の通り普段は表立って活動はしていないらしい。けれど今回は顔がわからないように布で隠して協力してくれているとカミル兄様が言っていた。

影部隊の人達は数名玄関前で待機して扉を閉めた。


とりあえずダン子爵家へ入るのは問題なく済んだようだ。


シェラルージェはホッとして緊張していた肩の力を抜いた。


「シェラ、気を抜くのはまだ早いよ」

「…っはい!」


アルム兄様の指摘に、背筋を伸ばして気持ちを引き締める。

そのシェラルージェの様子を見て、アルム兄様は苦笑する。


「ほどほどの緊張感は必要だけど、肩に力が入っていると柔軟に対応が出来なくなるから気を付けるんだよ」

「はい。気を付けます」

「まあ、兄様がついているから大丈夫だけどね?」

「はい。心強いです」

「ふふ、任せておくれ」


そういってアルム兄様は笑いかけてくれる。

アルム兄様はシェラルージェの緊張をほぐす為に声をかけてくれたようだ。

気負っていたものが抜けて神経が研ぎ澄まされていた。






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