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貴方の瞳に映りたい  作者: 蒼華
本編
52/63

45 捕縛作戦決行日


決意してから、結局ハリー様に会うのが捕縛作戦当日になってしまった。

作戦が始まる前に渡さないと腕輪を渡す意味がなくなってしまうのに、腕輪はまだ私の手の中にあった。

だからハリー様が私とアルム兄様を迎えに来たときに渡すしかないのだけれど、いや、渡すだけなら問題はないのだけれど、気持ちを伝えてもいいのかを迷っていた。

昨日も眠る前までずっと悩んで、今朝起きてからも捕縛作戦の準備をしながら待っている間もずっと悩んでいた。本当に捕縛作戦が始まる前に気持ちを伝えてしまっていいのかを。

でも、ハリー様があんなに急いで指輪を取りに来たのだから猶予はない気がする。それこそ捕縛作戦が終わったら好きな女性に指輪を贈るかもしれない。そうであるなら、今しか気持ちを伝えられる機会はないだろうという結論に辿り着いた。


その為、私の心臓はさっきから破裂しそうなほどバクバクと言っている。

腕輪が入ったケースを持つ手が震えて、緊張から呼吸も浅くなってきた。


何度も考えて、今しかないと決めたのだから、ちゃんと伝える。

何度も自分に言い聞かせていると、ハリー様が迎えに来るには少し早い時間に屋敷に現れた。


「失礼します」

「ハリス、早い到着だね」

「ああ、何事も準備は万全にした方がいいからね」

「──はいはい。入念に確認してくれ」


ハリー様とアルム兄様が挨拶して、アルム兄様はチラリとシェラルージェを見る。

ハリー様も私を見ると心配そうな瞳を向けられた。

もしかして私が心配で早めにいらしたのだろうか。


ハリー様が早めに来られたため、ハリー様には時間がありそうだった。

今なら、ハリー様の時間を少しいただいても大丈夫かもしれない。

そう思って一度息を吸ってからハリー様に声をかける。


「ハリー様、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

「シェーラ嬢? 私は構いませんが……」


そう言ってハリー様はアルム兄様に視線を送る。

ハリー様の視線を受けたアルム兄様は仕方なさそうにシェラルージェを見た。


「いいよ、行って。ただし、呼んだらすぐに来るように」

「ああ、ありがとう」

「アルム兄様、ありがとうございます」


アルム兄様にお礼を言って、玄関近くの客室に入る。

二人きりになるのはよくないことだとわかっていたけれど、告白を聞かれたくはないので部屋の入口だけ少し開けたまま、通路からは死角になる場所で立ち止まる。

振り向くと、ハリー様はやはり心配そうな顔でシェラルージェを見ていた。


「何かございましたか? やはり恐ろしくなりましたか?」

「いいえ、それは大丈夫です」

「そうですか? ですが、恐ろしくなったら私に言ってください。私が必ずお護りしますから」

「ありがとうございます」


ハリー様の言葉に心がじんわりと温かくなった。

平気だと思っていたけれど、やはり少し怖かったのかもしれない。

でも、ハリー様が一緒に行ってくださるなら大丈夫だと思えた。


シェラルージェは思いきって手に持っていたケースをハリー様の前に差し出した。


「あの…、……これを受け取って下さい!」


シェラルージェの差し出したケースを見て、ハリー様は戸惑っていた。


「これは?」

「私が創った腕輪です」

「シェーラ嬢が創られた物ですか?」

「はい」

「私が頂いてしまってもよろしいのですか?」

「はい」

「ありがとうございます。大切に使わせて頂きますね」


ハリー様はシェラルージェの手からケースを受け取ると、とても嬉しそうに微笑んでくれた。


(喜んでもらえた。よかった)


シェラルージェの心に安堵の気持ちが広がる。


「今付けてもよろしいですか?」

「はい」

「こちらは物理防御と魔法防御。こちらは俊敏性向上と身体能力向上を付与しています」

「ああ、本当ですね。身体が軽く感じます。これで今回の捕縛作戦も容易でしょう。ありがとうございます」


ハリー様にまた微笑みかけられる。

けれど、シェラルージェは次に言わなければいけない告白の言葉に緊張して、顔が強張って返事を返せなかった。


「……………………」

「……………………」


突然の沈黙が落ちた。

空気が張り詰めているような感じがして息苦しくなる。


────伝えるって決めたのだから。

シェラルージェは一度強く手を握り締める。


「あのっ……」


思いきって上げた視線の先に、ハリー様が優しく微笑んでいた。


「私はっ……ハリー様をお慕いしています」


シェラルージェの声は緊張のため掠れていた。言い終えた後も、緊張からか瞳が潤みだした。

ハリー様はシェラルージェの言葉に驚いたように瞳を見開いて、シェラルージェを凝視していた。


「え?」

「……それだけお伝えしたかったのです。失礼します」


言い逃げる形で去ろうとしたシェラルージェの腕をハリー様が掴む。


「──待って下さい!」


腕を引かれる形で振り向いたシェラルージェはハリー様の熱を帯びた強い眼差しに囚われた。

ハリー様が口を開こうとした瞬間。


「ハリス!」


アルム兄様の呼ぶ声が聞こえた。

ハリー様は一度声のした方を見て、その後シェラルージェを見て無念そうに唇を引き結んだ。


「シェーラ嬢、後で必ず私の話を聞いてください。絶対ですよ」


ハリー様の圧に押されて、シェラルージェは頷いていた。

それを確認してから、ハリー様は早足で部屋を出ていった。


その後ろ姿を見て、シェラルージェの顔に思い出したかのように熱が戻ってきて真っ赤に染まった。


──ついに言ってしまった。


心臓がドクドクと激しく鳴っていた。

言い終わってから、全ての感覚が戻ってきていた。


後でと言われたハリー様の話を聞くのは恐いけれど、気持ちを伝えられてよかったと思った。

ハリー様からお断りの言葉を言われるだろうけれど受けとめる。

想像して胸がチクチクと痛んだけれど、告白を後悔する気持ちは湧いてこなかった。


シェラルージェは顔を押さえて、赤みが治まるのを待ってから、気持ちを切りかえてアルム兄様のところへ向かった。






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