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貴方の瞳に映りたい  作者: 蒼華
本編
51/63

44 シェラルージェの決意


家に帰ってきた後、シェラルージェは部屋に一人にしてもらい今日の出来事を振り返って頭の中を整理した。


[1]

ハリー様の口から婚約話は全て断ったことを聞いた。

だから、ハリー様には今現在婚約者がいないということになる。


[2]

セリーナからハリー様のことは好きではないと勘違いを正された。

これは本当に私の思い込みだったようで、セリーナに呆れられてしまった。今も思い出すと恥ずかしくなって直ぐにでも布団の中に潜ってしまいたい。


[3]

ユリウス兄様はハリー様がセリーナを好きではないと言い切れると言っていた。

それが本当なのか分からないけれど、ユリウス兄様の言い方は自信に溢れていたので、ハリー様がセリーナを好きではない可能性も出てきた。けれど、ハリー様がセリーナに指輪のサイズを聞いたのも事実なので実際のところ分からない。けれど、ハリー様に好きな人がいるのは確かで、それがセリーナかもしれない可能性は残ったまま。


そのため、セリーナがハリー様を好きだと私が思い込む前の状況に戻っただけだった。いや、私が勘違いしていただけで、勘違いする前から何も変わっていなかったのだけれど。


…………ということは、私は頑張るしかない?

頑張ってみようとしたあの時に、状況は戻っているのだから。

ハリー様から依頼された指輪を渡して、ハリー様が好きな女性に指輪を渡すまでの間。

短い期間だけれど、私の気持ちを伝えるべきなのか。


───今考えても答えが出てこなかった。


だからまずは、今すべき事から始めよう。

頼まれた結界を創るために、聖石を選ぶ。聖石を選びながらもやはり頭の片隅でハリー様のことを考えていた。



翌日、ハリー様から館へ指輪の進捗状況の問い合わせがあったのでいつでも大丈夫と伝えたところ、可能なら直ぐにでも受け取りたいとの返事が来たので、返事を返した次の日に指輪を渡すことになった。

そして、約束の日、館を訪れたハリー様は緊張した面持ちで現れた。


ハリー様が目の前に座ったのを確認して、指輪のケースを開けた状態でハリー様の前に置く。


「こちらが依頼された指輪です」


ハリー様はそのケースの中にある指輪を見つめると、嬉しそうに破顔した。


「本当にありがとうございます。とても素敵なデザインですね。あの#娘__こ__#に似合いそうだ。これで自信を持って結婚を申し込めます」

「──っ!」


結婚──。

その言葉にドンと胸を打たれたような衝撃を受けた。

分かっていたけれど、ハリー様の口から聞く言葉には破壊力があった。

キューッと締め付けられるように胸が痛みを訴え始める。


やはりその女性と結婚を考えているのですね。

ハリー様だって勝算がまったくない状態では結婚を申し込んだりしないはず。ということはハリー様が指輪をその女性に渡した時点で私の失恋は確定。

遂にハリー様の口から決定的な言葉を聞いてしまい、やはり胸が苦しくなった。


「それでは失礼します」と最後まで笑顔のまま帰っていくハリー様を無言で見送る。


シェラルージェは受けた衝撃を処理できないまま、このあと予約が入っていなかったので家に帰ることにした。


家に帰ってきて部屋で一人になると、棚にしまっていた腕輪を取り出し、そっと腕輪に触れる。


ハリー様の決意を聞いて、私はどうしたいのだろうか。

その問いがずっと頭の中を回っていた。

このまま何も言わずに失恋でいいのだろうか。

それでは前の閉じこもっていた時と変わらないのではないのか。


自問自答していると、セリーナに言われたことが頭に響いた。


『自分の気持ちに正直になってぶつかってみなさい』


セリーナに背中を押されたような気がした。


──セリーナの言うとおり、ぶつかってみようかな。


もう一度手の中にある腕輪にそっと触れる。


今回の捕縛作戦はそれ程危険はないというけれど、渡せないと思っていたハリー様の為に創った腕輪を渡してもいいのではないかと思えた。少しでもハリー様の力になれるのであれば。

そして、その時に好きという気持ちだけでも伝えたい。渡すときしか自分の気持ちを伝えられる機会がない気がしたから。


手の中の腕輪をぎゅっと握り締める。

自分の気持ちを伝えられる最後のチャンス。

失恋したらセリーナとマリーに慰めて貰おう。2人なら泣き止むまで付き合ってくれるはず。

決意したシェラルージェは手にした腕輪を胸の前で抱きしめた。





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