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貴方の瞳に映りたい  作者: 蒼華
本編
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41 ユリウスの変貌


部屋を出た途端に、自分の情けなさがシェラルージェを襲った。

セリーナの優しさに触れる度に、セリーナの大きさを感じる。なぜセリーナは平気な顔でシェラルージェに接することが出来るのかな。

それが出来ない自分の弱さに、唇を噛みしめることしか出来なかった。


シェラルージェの後に部屋を出てきたハリー様がシェラルージェを見ていた。その視線を避けて下を向く。

こんな嫉妬で歪んで、自己嫌悪に陥っている顔なんて見られたくなかった。

ハリー様から俯くシェラルージェを心配している視線を感じた。でも、今はハリー様の心配そうな視線も辛かった。心配してもらえるような立場にないと分かっていたから。

シェラルージェはハリー様の視線を避けるようにして下を向いて歩きだす。それを見てハリー様も護衛のためにシェラルージェの前を歩き出した。


黙々と歩き、部屋から少し進んだところで声をかけられた。


「シェラルージェ嬢、お会いできて良かった」

「ユリウス様」


振り向くと、ユリウス兄様が近寄ってきていた。

部屋の外で声をかけられたので、ドレスの裾を持ってお辞儀する。

ユリウス兄様に部屋の外で声をかけられるのはとても珍しかった。

どうしたのだろうか。何かあったのだろうか。

うまく表情を変えられなくてぎこちなかったけれど、対外的な笑顔を浮かべた。


「少し伝え忘れていたことがあって戻ってきたのだけれど、どうした?」


対外的な態度で話しかけてきたユリウス兄様は、シェラルージェの様子に眉をひそめる。

最後のどうした?はシェラルージェだけに聞こえるように囁いて問いかけられた。

ユリウス兄様にもシェラルージェの異変を見抜かれてしまって、情けなくてより落ち込んだ。


「シェラ、おいで」


ユリウス兄様はシェラルージェの手を取ると、歩き出した。

ユリウス兄様にエスコートされる形で手を引かれて、困惑しながらも着いていく。

その後をハリー様が無言で着いてきた。


着いた先は前にハリー様に連れられて来たことがある薔薇の花園だった。


「ハリスはここで待て」


ユリウス兄様が薔薇の花園の入口でハリー様に指示を出す。

それを受けて、ハリー様は一礼して立ち止まった。

シェラルージェは背中にハリー様の視線を感じつつ、ユリウス兄様に手を引かれるまま花園の奥へと進み、奥に設置された椅子に促されて座る。

ここに座って話しても、ハリー様には話し声は聞こえない距離だった。

そしてユリウス兄様も隣に座ると、顔を覗き込まれた。


「なんでそんなに追い詰められた顔をしている?」

「それは……」

「言ってごらん? マリーやセリーナ、アルムに言えないから悩んでいるのだろう?」

「………」


確かに誰にも言えなくて、とても苦しかった。

セリーナには勿論言えないし、マリーにも言えない。

アルム兄様にも、お兄様だからこそこんな気持ちは言えなかった。

ユリウス兄様の優しく何でも受け入れてくれるような眼差しに、シェラルージェは口を開いていた。


「自分の醜い心が嫌になってしまって落ち込んでいたんです。セリーナとハリー様とのことを応援したいのに、嫉妬してしまってそれが出来ない……」

「──どういうこと、かな?」

「セリーナとハリー様が想い合っているのに、私は心から応援できないのです」

「それはあり得ない」


ユリウス兄様の強い否定の言葉に、シェラルージェはびくっと身体が縮こまった。


「ああ、ごめんよ。でもね、そんなことはあり得ないと言い切れるよ。ハリスがセリーナを好きなどあり得ない」

「ですが……」


何故ユリウス兄様があり得ないと言い切れるのか分からないけれど、シェラルージェはハリー様がセリーナに指輪のサイズを聞いたことを知っているために、ユリウス兄様の言葉が信じられなかった。


「それよりも……セリーナがハリスを好きだと言ったの?」


ユリウス兄様の声が一段低くなった。


「え?……あの、直接は聞いていないのですが、ハリー様に指輪のサイズを聞かれたと言ったときのセリーナがいつもとは違ってとても嬉しそうにしていたのでそうなのかと……」

「ふーん、指輪のサイズねー。……許せないね、──シェラ?」

「はい?」


左手をユリウス兄様に取られ、口許に持っていかれる。

そして、見せつけるかのようにユリウス兄様はシェラルージェの薬指の根元に唇を押しつけた。


「っ──?!」

「好きだよ、シェラ。(妹としてね)」


『妹としてね』は耳元で囁かれた。

耳元で囁かれた言葉を理解しても、ユリウス兄様の行動が理解できなかった。


え?

どういうこと?

シェラルージェは混乱して目を白黒させてしまった。

シェラルージェを見つめるユリウス兄様の瞳は妖しく光っていて怖かった。

今までに見たことのないユリウス兄様の表情に言葉をなくした。


「行くよ」

「…どこへ?」

「セリーナのところ」


手を引かれて立ち上がると、ユリウス兄様に促されるまま歩き出す。

ユリウス兄様はハリー様のところまで来ると、挑発するような笑みを浮かべて一瞥した。

ハリー様は私達が近づく前から険しい表情をしていて、ユリウス兄様の視線に一瞬顔を引きつらせていた。

シェラルージェはユリウス兄様とハリー様のやりとりに困惑を隠せなかった。

展開が早すぎて何がなんだか分からず、シェラルージェが混乱しているのにも関わらずにユリウス兄様は引きずるようにしてセリーナのいる部屋へ足を進めた。






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