閑話 ある令嬢の逆恨み
「ありえない、ありえない、ありえないわ!!!」
手にした扇を投げつけ、それでも足りなくて手当たり次第に物を掴んで投げていく。
物が割れる音に部屋に入ってきた侍女は、音もなく荒れた部屋を元に戻していく。
そんな侍女の姿も目に入らず、少女は目をつり上げ爪を噛んでいた。
今日は王家主催の夜会だった。
少女は張り切って誰よりも美しく見えるように着飾っていた。
何日も前から入念に肌の手入れをさせて、髪の毛も艶が出るように遠方から取り寄せた香油を塗り込み、その甲斐あって当日は肌も透き通るようにぷるんと艶めき、自慢の水色の髪の毛も潤いのある輝きを放っていた。
ドレスも最も美しく見えるように、王都の有名なデザイナーに作らせた自慢のドレスだった。
化粧をして水色の髪を結い上げた姿は文句なしの美少女だった。
出来栄えに満足して城に足を踏み入れれば、周りからは感嘆のため息が聞こえてきた。
もちろん私の下僕たちは私を見ると褒め称えてくる。
その言葉に内心当たり前でしょと思いながら、聞き流した。
今日、ユリウス王太子殿下とカミル様は私と絶対に踊るのだと決まっているのである。
今まで子爵令嬢という肩書きが邪魔をしてダンスを踊ることが出来なかったけれど、一度でも私と踊ればユリウス王太子殿下であろうとカミル様であろうと一目で私に恋に落ちると確信している。
でも、ユリウス王太子殿下ともカミル様ともお近づきになれる機会が訪れなかった。
私よりも位が高いというだけでユリウス王太子殿下やカミル様を取り囲む、公爵令嬢や侯爵令嬢、伯爵令嬢たちのせいでまったく近寄れなかった。
お父様の爵位がもっと上であれば私がこんなに苦労することなどなかったのに、本当に役にたたないのだから。
だから、地道に爵位の少し高い令息に話しかけて、ユリウス王太子やカミル様に紹介して貰おうと少しずつ交友の輪を広げていって、私の僕になっていく男達は増えていった。
そうしてやっと女好きの侯爵令息にお近づきになれて、今日、王太子殿下とカミル様に紹介してもらえると思っていたのに、まさか、別の女にその権利を掻っ攫われるなんて!!!
女好きの侯爵令息をあしらっている内に、いつの間にかユリウス王太子殿下が見たことも無い女とダンスを踊っていた。しかも楽しそうに!
そしてあろう事か、続けざまにカミル様とも踊っていた。
ただカミル様は嫌そうな顔をされてたから、嫌われたのね。ざまあみろだわ。
それだけでも許せなかったのに、あのハリス・フォード様とも踊るなんて!!
しかも、その後ハリス様と消えるだなんて本当にありえない!!!
ハリス・フォード様といえば、まったく社交の場には現れない方で有名で、結婚相手として申し分ない方なのに今まで取り付く島もないほど隙がなかった。
そんなハリス様とまで踊るなど許せるわけがなかった。
その後、ユリウス王太子殿下もカミル様もハリス様も会場から居なくなり、私の計画は丸潰れだった。
赦せない、あの女!
よくも私の邪魔をしてくれたわね。
しかもユリウス王太子殿下やカミル様、ハリス様に媚びを売るなんて下品な女!
身の程を知ってもらわないとね、ふふふ。




