表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/42

M〇九 母娘の絆!ドMが呼んだ奇跡の和解!

Q:このドM、奨学金もらえるほど成績優秀だったらしいのに、なんで頭の悪い思考と行動ばっかりしてるの?

A:勉強できるのと頭いいのは、方向性が違うから……(目逸らし)

美摩の悲痛な叫びに反して、真理亜は、普通に気絶しただけであった。

いや、普通に、というのは、この真理亜を基準にして、の話だったが。


通常の魔力保有者ならば、急激に膨大な魔力を失う時点で、肉体そのものを

がれるような苦痛を感じてもおかしくはない。

そのため、精神に異常をきたしたり、生命活動が危ぶまれる状態に

おちいることもある。


が、どっこい、この真理亜の精神は、最初から異常であったし、

前世の死に間際で、生命活動が停止する大苦痛に

歓喜したことのある“超”のつく被虐嗜好者マゾヒスト

気を失ったその顔には、愉悦にちた笑みが浮かんでいた。


しかし、これが、絶世の美幼女が浮かべる笑みであるから、たちが悪い。

なにも知らない第三者の目には、苦しいながらに、やるべきことをやりげたと

感じている、献身的な〈聖女〉の表情にしか見えなかったのである。


この表情に、恐慌状態を引き起こしかけている美摩と、緊張にこわばる漱祗すすぎは、

稲妻に打たれたかのごとく、感動と感銘を覚えていた。


────────おのれのことをかえりみず、会ったばかりの従妹いとこに、

命をささげて惜しまぬようなその姿。

まさしく、愛に満ちた〈聖女〉ではないか、と。


およそ買い被りもはなはだしかったが、兎萌ともいためを思っての、

真理亜の命()けの行動を見ては、そのように並外れた勘違いをしてしまっても、

無理はなかった。


事態がどうなっているのか理解できない兎萌(ともい)も、

その兎萌を抱きしめる専属メイドの叶夜(かなや)

そばで控えている叶夜の妹、叶穂(かなほ)らも、同様の気持ちを抱いている。


こちらの三人は、〈聖女〉という概念を意識していなかったが、

直感で理解していた。

今、目の前で行われたのは、とうとい犠牲行為であったことを──────────。


実際には、『原作でそういうシーンあったナ~』という、

軽いノリで実行されたコトであったし、

気絶して浮かべている笑みは、『強めの御褒美ゴホウビありあたーッスありがとうございますっ!』という、

イカれた被虐精神からくるモノであったのだが。


「………真理亜お嬢様の体温が急激に低下しています。急ぎ、処置を行わないと」


漱祗は、真理亜の体に触れ、端的にそう告げる。


漱祗の言葉どおり、真理亜の全身は、冬の外気に包まれていたかのごとく、

体温を失っていた。

それは、生命活動が危ぶまれるほどに、魔力を失ったということの証左しょうさである。


一日の短時間のうちに、急激に熱が上がったり、下がったり。

まったく忙しい、人騒がせな幼女であった。


とはいえ、コトの真相を知らない美摩たちにとっては、

幼気いたいけな子供の命が風前の灯火になっている、深刻な事態には違いない。


────漱祗が急いで、だが優しく真理亜の体を抱き上げ、

ベッドに横たわらせる。

そしてそのまま、真理亜の寝衣の上着をはだけさせ、

その幼い素肌に右手を添えた。


「奥様。真理亜お嬢様は、魔力の枯渇状態にあるはず。奥様と私とで、

真理亜お嬢様のお体に魔力を分け与えれば、命の危険の心配はなくなるかと」


「───え、ええ、そうね、その通りだわ」


漱祗の冷静な言葉に、恐慌状態におちいりかけていた美摩は我に返り、

うなずいてみせる。

手にしていた〈鳳凰の杖〉をベッド近くの台座に置き、それから、漱祗と同じく、

真理亜の胸にその手を置いた。


「……タイミングを合わせてちょうだい───3、2、1、今よっ」


長年の付き合いである主従、美摩と漱祗は、呼吸をぴったりと合わせて、

真理亜の体へ魔力を注ぎこみはじめた。


ふたりの魔力が流れ込んでいくにつれ、魔力の甚大な消耗により、冷え切っていた

真理亜の体は、みるみるうちに温かさを取り戻していく。

真理亜の体に触れている美摩は、その事実をじかに感じ取り、大いに安堵した。


同じく、真理亜の容態の安定をてとった漱祗が、美摩に進言してくる。


「奥様、真理亜お嬢様は、もう大丈夫でしょう。

あとは私が魔力を分け与えますので、奥様はお休みになってください」


「─────いいえ、私も、もう少し……」


「奥様。奥様が体調を悪くされては、本末転倒でございます」


「……漱祗。あなたの主を、見くびってもらっては困るわ。

それに、この子は、今日から私の、もうひとりの娘になるのよ」


そう言うと、美摩は、叶夜に抱きしめられる兎萌を見やった。

そして、静かに、けれどあたたかみのある声を出す。


「……兎萌。こちらに来なさい」


兎萌は、久しく聞いたことのない母親の穏やかな声音に戸惑ったが、

抱きしめてくれている叶夜の手を離れ、おずおずと美摩のそばへと歩み寄った。


美摩は、いったん真理亜の体から手を放し、兎萌の前に両膝をつく。

それから、ゆっくりと、兎萌を抱きしめた。


「──────────ごめんなさい」


「っ……おかあさま──────?」


思わぬ母の謝罪の言葉に、兎萌は、我が耳を疑ってしまう。


「……魔力を使えないあなたに、

今まで辛く当たってしまってばかりだったわ─────

あなたは、なにも悪くなかったというのに」


ぎゅう、と、美摩は、兎萌を抱きしめる力を、強くした。


「────魔力を扱えなかったあなたの気持ちを、

考えてあげなければいけなかったというのに。

駄目な母親で、本当にごめんなさい………」


「おかあさま……………」


兎萌は、抱きしめてくれる母親のぬくもりに、

それ以上の言葉もなく、涙ぐむ。


幼い兎萌には、呼び出されてからの一連の出来事が、よく理解できていない。

けれども、感覚だけで、わかっていた。


〈母〉が、戻ってきてくれたのだと─────────────────。

そしてそのすべては、初めて会った従姉いとこ……義姉あねである、

真理亜のおかげである、と。


先ほど、真理亜が兎萌に魔力を注ぎこんだ際に、兎萌の幸せを願う気持ちを

直接受け取っていることと合わせて、兎萌は、喜びに体を震わせる。


(おねえさまは、わたしをたすけにきてくれたんだ………!)


間違ってはいないのだが、正しくない認識をしてしまい、兎萌の脳は、

見事に真理亜への勘違いによってかれてしまった。


誠にもって、ご愁傷様しゅうしょうさまと言うほかない。

アーメン。

さあ、どんどん勘違いさせていっちゃおうねえ……(゜∀゜)

(人の心とかないんか?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ