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M〇八 従妹を救え!ドMがブッパでエネルギー重病チャージ!(誤字ニアラズ)

やはりゆ●理論……!

ゆ●理論はすべてを解決する……!

(っっっ……! おねえさまの、まりょく、はいってくる────!

……あつい、けど、きもち、いいっ……あたま、ぼーっ、って、

なっちゃ、う────────♪)


兎萌ともいは、自分の体に流れこんでくる真理亜の魔力に、

溶かされそうなほどの多幸感を覚えていた。

そして、魔力と共に、真理亜の思念も、自分の心に流れこんでくるのを

感じる。


“どうか、幸せになってほしい。自分は、どんなことになってもいいから────”


それは、真理亜の、嘘偽りない願いに他ならない。


兎萌にとって、それは、久しぶりに触れる、母性愛と呼ばれるもの。

実の母親から、常に与えられてしかるべき感情であった。


兎萌の頬を、大粒の涙が伝う。


専属メイドの叶夜かなやや、メイド長の漱祗すすぎから受ける優しさとは決定的に違う、

理屈抜きの、純粋な愛情──────。

真理亜の思念に、心震わされ、兎萌は、嬉しさのあまり、とめどなく涙を

流し続けていた。


「────兎萌、どこか、体が痛むの?」


真理亜から、事の成り行きを見守ってほしい、と言われていた美摩であったが、

兎萌の涙する様子を、さすがに見かねて、そう声をかけてしまった。


「……だいじょうぶ、です、おかあさま………!」


兎萌には、自分が真理亜の思念を感じた喜びを、言葉にして伝える術がなく、

ただそれだけ答えるにとどまる。


だがその声の響きが、美摩には、今まで自分が耳にしたことのない、

明るさに満ちているように聞こえ、ひとり、また胸を痛めていた。

自分は、我が子に、こんな声を出させたことがあったろうか、と。


しばらく、美摩は、そんな煩悶はんもんとした思いを、心の中で渦巻かせながら、

幼女ふたりを見守っていたが、ふと、気づく。

………規格外の、膨大な真理亜の魔力を、兎萌の身体が受け入れ続けていることの

異常さに。


美摩から見て、兎萌がその肉体に宿している魔力量は、並だ。

つまり、その並の魔力量をれている器───肉体もまた、〈並〉であり、

そこへ貯蔵可能な許容量以上の魔力を注ぎこむことは、

肉体そのものを破壊しかねない。


しかし、兎萌は、痛みを訴えることもなく、むしろ、さらなる魔力の注入を

望んでいるようにも見える。

美摩は、真理亜が、『兎萌のかせはずすことができるかもしれない』、

と言ったことを思い出した。


(“かせ”────! では、今まで、兎萌が魔力を持ちながら、

使うことができなかったのは……!?)


目の前で起こっている異常な出来事に、美摩が、おぼろげながら、

答に辿り着くか、と思われた時。

室内に、聞いたことがない、鳥類が出すような鳴き声が、響き渡った。


自然界の生物が出すものとは思えない、

だが、鳥類のいななきを連想させる鳴き声。


その数瞬あと、兎萌の全身が、閃光を放ちだす。

黄金の輝きであった。


黄金光は、兎萌を中心に渦を巻いたかと見るや、ふたすじの大きな光流をかたどる。

そのまばゆさに目をかばいながらも、事を見守る四人には、

それが、二枚の翼に見えた。


その光の双翼が、部屋を覆い尽くすほどに、広がる。











カキィィィィィィィィィィィィィィィ────────────ン











直後、金属同士が激しく打ち合ったような音が、轟き響いた。

同時に、室内を満たしていた黄金光も、消え失せる。


そして、美摩、漱祗、叶夜、叶穂の四人は、見た。


兎萌の頭上に、黄金の杖が、浮かんでいるのを────────。


「これ、は─────ま、まさか……!?」


黄金の杖を目にした美摩は、知らず、呟いていた。


見たことなどない。

けれど、〈退魔法師たいまほうし〉ならば、いやさ、御三家ごさんけが一角である、

真渡園まどぞのの人間ならば、知っていて当然の、〈三神器さんじんぎ〉がひとつ。


鳳凰ほうおうの杖〉


美摩以外の三人も、その神器の名を、頭に思い浮かべていた。

禍威魔かいま〉をはらう、絶大な〈力〉を宿した宝具。


伝承では、いにしえの〈禍威魔かいま〉との大戦で、失われたはずの杖。


その消失の真相は、『いとしき花は門に咲く』の原作設定において、

しっかりと語られている。


〈鳳凰の杖〉は、古き大戦で、ほとんど〈力〉を消費し尽くし、消滅しかけた。

そのため、その根源たる物質情報(データ)霊子りょうし情報(データ)に変換し、真渡園一族の祖の魂へと、

その情報(データ)を取り込ませ、休眠状態に入ったのである。


真渡園の一族が、悠久の時を掛け、子々孫々に、魂を受け継がせながら、

再物質化するための魔力を、蓄積させ続けることにしたのだった。


〈鳳凰の杖〉の再物質化───つまり、その復活を結実させる役目を

負うことになったのが、兎萌である。


〈鳳凰の杖〉復活の口伝くでんは、真渡園一族が血脈をつないでいく途中で

失われてしまったため、現代にてその詳細を知る者は、残されていない。


それゆえ、兎萌が魔力を扱うことができない状態を、“魔力操作不能症”と

判断されてしまったのだ。


兎萌の肉体には、魔力が宿っているのに、本人には、使えない………。

それもそのはず、兎萌本人が生み出し、使えるはずの魔力を、復活しかけている

〈鳳凰の杖〉が、根こそぎ吸収し続けていたからであった。


兎萌自身の魔力生成量は、決して低くはない。

が、魔力を生み出すはしから〈鳳凰の杖〉に奪われ続けていたため、

肉体の生存本能が、魔力生成機能を大幅に抑制セーブさせていたのだ。


何故なら、他者に魔力を奪われ続ける状態で、十全に魔力生成を機能させれば、

兎萌の生命活動に支障をきたす恐れがあったからである。

そのせいで、〈鳳凰の杖〉は、復活を前にして、

いわば、足踏み状態となっていた。


完全復活のための魔力は、今、この時点より十年後まで蓄積し続け、かつ、

愛をはぐくんだ主人公から、思いがけず膨大な魔力を受け取るイベントが

起こるまで────具体的には、兎萌ルートの百合Hイベント直前まで、

まらないはずだった。


そこで、この転生者である真理亜の、千倍チート魔力である。


真理亜が持てる魔力を全注入(ブッパ)した結果、〈鳳凰の杖〉復活に、必要な量の魔力を、

数分とたず、一気にフルチャージ。

あっけなく、〈鳳凰の杖〉を、復活させてしまった。


真理亜は、こうなることを、完全に理解していたのか……?

答は、半分YESで、半分NO。


兎萌ルートにおける、〈鳳凰の杖〉復活イベントを、当然ながら真理亜は、

経験プレイ済みではある。

けれども、真理亜は、その際における詳細なテキストを、クリック連打(カチカチ)

もしくは“次のシーンまでスキップ”で、読み飛ばしていた。


いとしき花は門に咲く』を、“マイベストゲーム”とか

標榜ひょうぼうしてるクセに、真理亜は、Hシーン以外のテキストを、

読んだり読まなかったり、の、いわゆる“スキップレイヤー”だったのである。

ライターが、必死に悩んで書きつづったシナリオを、適当なクリック操作で

ポンポンポン♪、と、すっ飛ばすプレイヤー─────断罪されるべき、

しき者……!


────なので、〈鳳凰の杖〉復活における詳細な理屈は、知らないに等しく、

『なんか主人公が兎萌ちゃんに魔力をあげてたナ~』くらいの、軽いノリで

魔力注入をやっていたのであった。


とはいえ、兎萌を幸せにしてあげたい、という願いだけは、混じりなしの、

純粋に善良な想いから生まれたものである。

その一点に関してだけ言えば、真理亜は、賞賛されるべきかもしれなかった。


もっとも、その願いを知る人間はただひとり、魔力と共に、真理亜の思念を

受け取った兎萌だけであったが。

しかし、兎萌が今、真理亜に対して抱いている気持ちは、

真理亜への賞賛ではなく────よろこびだった。


無償で、自分の幸せを願ってくれる存在に、出会えたよろこび。

この時、兎萌は、“魔力操作不能症”が解消されるかどうか、その結果のことなど、

どうでもよくなっていた。


今日、初めて出会って、義姉あねになるという女の子。

“おねえさま”がいてくれれば、自分は、なにもかも満たされるような気がする。


兎萌は、根拠なく、そう確信していた。


「………うまくいったみたいですね────」


真理亜は、兎萌から額を離し、宙に浮かぶ〈鳳凰の杖〉を見上げる。

それから、美摩へ、微笑を浮かべてみせた。


「美摩お姉様、杖をお取りください。

真渡園まどぞのの人間なら、所有者として認められるはずです」


「え、ええ───」


真理亜の言葉で、我に返った美摩は、〈鳳凰の杖〉に、おそるおそる手をのばす。

美摩が意を決して杖を掴むと、杖全体が淡い黄金光を放った。


その発光に、美摩は一瞬だけひるんだが、すぐにその反応が、悪いもので

なかったことを理解する。

〈鳳凰の杖〉が、美摩を“真渡園一族にして、〈杖〉のにない手”であると

認めたことを、伝えてきたのだ。


「良かった────これで、兎萌さんも………」


そこまで言って、不意に、真理亜の体が、カクンと傾く。


「おねえさま!?」


いまだ両(てのひら)を合わせたままだった兎萌が、慌ててその体を支えようとするが、

幼女の反応速度と力では、間に合わない。

あわやふたりとも床に崩れ落ちるか、というところを、漱祗すすぎが、素早く駆け寄り、

ふたりをまとめて抱き止めた。


「……! 真理亜お嬢様は、気を失っておられます────!」


ふたりを抱き止めた漱祗は、即座に真理亜の状態に気づき、美摩に知らせる。


言われた美摩は、すぐに原因に思い至った。

〈鳳凰の杖〉復活のために、真理亜は、自分の魔力を、限界まで兎萌の肉体に

注ぎこんだのに違いない……!


真理亜がいかに膨大な魔力を持っているとはいえ、幼い子供だ。

莫大な量の魔力を一気に失えば、大人でも命に関わることがある。


「真理亜っっっ!!!!!」


美摩の悲痛な叫びが、室内にこだました………………。

気絶してしまった真理亜……!

果たして真理亜は無事なのか……!?(←白々しくに)

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