M〇五 早速拙速勘違い!お騒がせだぜ変態幼女!
なんでも『エロゲの世界だから』で済ませるのは自分でもどーかと思います。
が、寛大な目でお読みください(^ω^;)
しかし、そこで思考停止して終わらないのが、ただのドMとは一線を画す、
超弩級のドMであるところの、この真理亜だ。
(もしや、原作と違うこの流れは、女神様のアフター・サービス……?
っ! そうかっ! ジェットコースターのように、“上げてから、落とす”!
普通に最初から虐めがあっては、“通”の私には響かない、
そう思って、肝心の第一手は、敢えての焦らしプレイ……!
さすが女神様! わァ~~かってるゥ~~~~~~っっっ!!!)
真理亜は、そのような考えに至り、心密かに、自分を転生させてくれた〈女神〉、
ルキミステルへと、感謝と喝采を送る。
もちろん、〈女神〉ルキミステルは、そんなアフターケアなど行っていない。
ルキミステルの〈女神〉としての仕事は基本、魂を転生させたら、
ハイそれまでヨ、であった。
だが、この真理亜にしてみれば、“手紙を渡す”という、亡き母からの遺言を
実行しただけで、今後の展開が180度方向を変えようとは、
予想もできぬことである。
なにかしら、〈女神〉の介入があったと考えても、無理なからぬことではあった。
(ああ……大切に、優しくされたあとで、罵られて、
ぶたれる──────。そんなの、想像しただけで、もぉ……
あフぅ──────♪♪♪)
自身を襲う、理不尽な虐待を想像しただけで、静かに昂ぶり、興奮する真理亜。
まさしく、変態であった。
「……?」
美摩は、抱き締めている幼子の異変に気づき、その額に手を当てる。
「すごい熱……! 大変だわ……! 真理亜、あなた、苦しくないの!?」
真理亜の身体異常に気づき、慌てて、その顔を覗きこむ美摩。
元々、実母の死という、精神が不安定なところで、前世の意識が覚醒し、
その情報処理のため、真理亜の脳は、絶賛熱暴走中。
その影響が肉体に及び、全身、高熱を帯びているのに加え、
変態的勘違いによる妄想で大興奮したため、アドレナリン分泌しまくりの、
フィーバータイム突入である。
一般的な幼女ならば、すでに気絶して、救急搬送、待ったナシの状態だった。
「────大丈夫です、美摩お姉様」
どっこい、真理亜は、多幸感に包まれながら、美摩に、そう微笑んでみせる。
手酷い苦痛こそ、我が望み、なんなら、もっと苦しいのを頂戴。
心身を襲う痛みを甘受しながら、そんなことを考えている変態幼女であった。
美摩の目には、真理亜のその微笑が、とても儚い、他者を思い遣るための、
尊い作り笑いに見えてしまう。
(ああ───この娘は、本当に、姉様そっくり…………!)
美摩がそう勘違いしたとて、誰が責められようか。
またも涙ぐんで、美摩は、手近に備えられている呼び鈴を、荒々しく鳴らした。
それから数秒と待つことなく、応接室のドアがノックされる。
『お呼びでしょうか、奥様』
「入りなさいっ」
気が逸っているため、ついつい苛立った声を出してしまう美摩。
その応えに、入室してきたのは、真理亜をこの応接室に連れてきた、メイド服の女性であった。
名は、囲碁留漱祗。
ショートヘアの髪の色は、紫色であったが、これは染めているのではなく、
ゲーム世界の日本人なので、地毛である。
眼鏡を掛けており、端整な顔立ちの、若々しい美女だった。
メイド服は露出の少ないタイプだったが、そこはエロゲ世界の住人、体の輪郭を、
服の下からでも、強く主張させている。
バンッ・キュッ・ボン、であった。
年齢は三十三歳で、真渡園邸のメイド長を務めている。
「───この子が、酷い熱を出しているの。ゲストルームのベッドで休ませます。
着替えを用意なさい。同い年だから、兎萌の服が合うでしょう。
それから、医者を」
「かしこまりました」
美摩の命令に一礼し、漱祗は、真理亜を抱きあげるため、近づこうとした。
それを察した美摩が、声で制する。
「……この子は、私が運ぶわ。着替えと、医者の呼び出しをお願い」
漱祗は、一瞬、驚きに目を開かせたが、なにも言わず、頭を下げ、応接室から
退出していった。
(──────実の子には、触れようともしないのに、と思ったのでしょうね)
切迫した思いに駆られながら、美摩は、自虐的に、漱祗の胸中を推し量る。
手紙により、姉の想いに触れた美摩の心は、今や浄化され、原作世界にあった、
他者への攻撃性も消滅しつつあった。
心の余裕が生まれ、自分を、客観視できるようになっている。
(……私は今まで、母親としても、人としても、最低だった─────)
己のことを省みつつ、美摩は、真理亜を抱きあげる。
(それでも、変わらないと。────この子を託してくれた、姉様のためにも)
そう強く誓って、抱きあげた真理亜に、微笑んでみせた。
「疲れが、体に出てるのかもしれないわ。大丈夫、お医者様を呼びましたからね。
それまで少し、お休みなさい」
「……申し訳ありません、美摩お姉様」
真理亜の返事に、きゅっ、と、美摩は、胸を突かれる。
「────今日から、あなたは、うちの子……家族になるのだから、遠慮なんて、しなくていいのよ」
「………ありがとうございます」
そうにこりと微笑みを返してくる真理亜に、心の距離を感じながらも、
美摩は、うなずいてみせた。
それから、真理亜を抱いたまま、ゲストルームまで運び、そのベッドに、
座らせる。
十数秒後、漱祗がタオルや着替え等を持って、入室してきた。
美摩は、それらを受け取り、真理亜の服を脱がせる。
(……! すごい汗───!)
幼女の全身に噴き出ている汗の量に、美摩は、一瞬、息を呑んだ。
その体の症状から、実母を喪った真理亜の心労を思うと、
胸を締め付けられるような気持ちになってしまう美摩である。
もういっそ、治癒魔法で、ある程度、病状を軽減してしまおうか、と、美摩は、
迷ってしまった。
が、結局、ぐっ、と、治癒魔法を行使するのを、思いとどまる。
生死の間際でもないかぎり、児童に、幼少時から治癒魔法を施すのは、肉体の
免疫力低下につながるということで、推奨されることではないからであった。
この世界において、症状の軽い病気に対しては、可能な範囲で、
魔法なしの処方をすることが、常識とされているのである。
「真理亜、どこか、体が痛むところはない?」
美摩は、真理亜の体を、タオルで拭いてやりながら、そうたずねた。
「………痛いところ───頭が痛いですけど、平気です。なんともありません」
「──────熱が高すぎて、感覚が麻痺してるのかもしれないわ。
先に、解熱剤を飲ませたほうがいいのかしら……」
真理亜の言葉から、美摩は、心配のあまり、病状を悪いものへと
想定をしてしまう。
さて当然ながら、真理亜の言った言葉は、文字通りの意味でしかなかった。
(………痛いとこぉ? なんつーか痛いとこしかないですわ! めちゃ痛いのは
頭ですけど、無問題っすわー。平常運転っすわー。がっはっはっ)
真理亜の言おうとしたこの言葉は、〈優●変換〉がその効力を発揮し、
令嬢にふさわしいものへと翻訳・添削されてから、声となって発せられている。
幸か不幸か、そのおかげで、真理亜の変態的思考は、美摩から微塵も
気取られることなく、普通に会話が成立しているのであった。
そもそもの話、今現在、この真理亜、本当に、幼女として振る舞う気が、
欠片もない。
そういう思考に、辿り着いていないのである。
『早く私を虐めて……! 私を詰って……!
HURRY! HURRY!』
現時点では、熱暴走のせいか、ドM本能の赴くまま、そんな欲求に心身共に
焦がれている状態なのだった。
処置なし。
「お医者様の診断の前に、解熱剤は、服用させないほうがよいでしょう。
意識もはっきりしているようですし、重篤な病状ではないと思われます。
水枕と、冷却シートをお持ち致しましたので、まずはこれらで真理亜様の
ご気分を和らげたほうがよいかと」
メイドである漱祗もまた、そんな真理亜の被虐欲求など知る由もないので、
体調の優れない幼女に対しての、常識的な提案をする。
「そう……そうね、そうしましょう」
漱祗の落ち着いた声に、美摩は、自分がうろたえすぎていたことに気づき、
おとなしく、その提案にうなずいてみせた。
そして、真理亜を寝衣に着替えさせ、ベッドにその体を横たわらせる。
続けて美摩は、漱祗の用意した水枕を使い、真理亜の額に、冷却シートを張った。
「あ───ひんやりして、気持ちいい、です─────」
真理亜は、素直にそんな声を出して、わずかに微笑む。
その儚げな微笑を見て、美摩は、ほっと一息ついた。
「辛いでしょうけど、もう少しがんばって、起きていてね。
お医者様に診てもらってから眠ったほうが、安心できるから」
「はい、お姉様─────」
と、答える真理亜は、普通の幼女なら、気絶していないとおかしくない体調を、
ドM精神で愉悦んで、意識を保っている。
辛いのが最高♡、眠ってなどいられるか、といったところ。
やがて医師が到着し、真理亜は診断を受けた結果、『ストレスによる体調不良』と見なされた。
というか、前世の記憶が蘇ったことによる、脳の異常活性化が原因、などと
医師が見抜けるはずはない。
追加でドM妄想著しく過剰興奮しているため、高熱昂ぶる一方、とは、
転生させた〈女神〉すら与り知らぬことなので、
そう結論づけられるしかなかったのである。
実際、医師が処方した薬を飲んで、二時間ほど寝たあと、真理亜は、
熱が下がって、気分爽快で普通に起きた。
人騒がせなことはなはだしい、変態幼女であった……………………………。
念入りに周囲を勘違いさせていく方針です。
……本当に迷惑だよなこの変態(^∀^;)




