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M〇六 初邂逅!従妹のあの子は攻略対象!

『伝奇モノで令嬢の側付きメイド、つったらオメエそりゃあ双子姉妹よ~』

そんな型●伝統に従いました(゜∀゜)

真理亜の叔母である、真渡園(まどぞの)美摩(みま)には、娘がいた。


真理亜の従妹いとこにあたる、真渡園(まどぞの)兎萌(ともい)である。

いとしき花は門に咲く』における攻略対象、ヒロインのひとりであった。


母親と同じ、赤銅色の髪は、鎖骨に届くくらいの長さ。

気弱な性格で、主人公と相思相愛になるまでは、前髪で目を隠した、

いわゆる“メカクレ”系美少女。


原作では、兎萌も真理亜と同様に、ある理由から、実母である美摩から、

精神的な虐待を受けている。


その理由とは、“魔力操作不能症”。

魔力をその身に有しているはずなのに、魔法を発動させるための魔力を、

扱うことができないのだ。


これは、〈退魔法師たいまほうし〉の御三家ごさんけである、真渡園(まどぞの)直系の人間として、

ありえぬことである。

魔法を使えぬ〈退魔法師たいまほうし〉など、笑い話にもならない。


───姉の真魅まみが望まぬ妊娠を知り、真渡園(まどぞの)()を去った直後、美摩もまた、

おぞましい儀式にて純潔を散らされ、名も知らぬ男たちから陵辱を受けていた。

その時に身籠もったのが、兎萌である。


兎萌は、美摩に望まれて生まれた子では、ない。

愛のかぬ子、そして、魔法を使えない、〈退魔法師たいまほうし〉失格の子。


美摩は、我が子に苛立ち、怒りと憎しみに狂った。

それゆえ、兎萌を冷遇し、養子となった真理亜をも、

手酷く虐待し続けたのである。


ここであだとなったのが、真理亜の悪役令嬢ハイスペックだった。


非凡な基礎能力と、真渡園(まどぞの)()の中でも群を抜いて高い魔力を持つ真理亜。

それらのことが、さらに美摩を狂わせる。


自分の子は魔力すら扱えないというのに、

姉を死に追いやった(と、原作の美摩は思いこんでいる)忌まわしいこの娘が、

何故こうも優秀なのか………!

本来ならば喜ぶべきところなのだが、

美摩は、そこに、理不尽さを覚えてしまった。


その理不尽さからくる憤りが、真理亜への虐待に拍車を掛けることになる。


……代々、真渡園(まどぞの)()の当主を継ぐのは、直系の女性。

現当主は美摩であり、その実子、兎萌は魔法を使えぬ身であるから、

次期当主が真理亜となることは、確定であった。


美摩はまた、この事実が、許せない。

もはや、怒りと憎しみのスパイラルである。


常に自分に対してオドオドとした態度の我が子、兎萌にいらつき、

視界に入れるだけでしゃくさわめい、真理亜。

美摩は、どんどんと神経質で短気な性格になっていき、ふたりへの虐待も、

苛烈にエスカレートしていくのだった。


─────────それらは、原作では、の話である。


(おかあさまが、わたしをよんでる、って。なんだろう……)


夕暮れ前。


びくびくとおびえて、兎萌は、メイド長である漱祗すすぎのあとについて、

屋敷の廊下を歩いていた。

母親である美摩は、兎萌にとって、恐怖の対象でしかない。


“魔力を使えないですって!? 私の子が!? 真渡園まどぞのの娘が!?”


自分が“魔力操作不能症”と判断された時の、激昂げっこうした母親の表情と叫び声は、

兎萌の記憶に、恐怖そのものとして刻みつけられている。


兎萌は、元々母親が自分に、好ましい感情を覚えていないと、幼いながらにも、

薄々と感じていた。

だから、その日以降、母親の自分を見る眼差まなざしが、汚らしいものでも

見るようなものへと、ますます悪化したのも、理解できてしまっている。


自分は、母親から、嫌われている。


幼くしてその事実に行き着いてしまったことから、兎萌は、臆病で、

内向的な性格にならざるをえなかった。

心を開ける相手は、自分専属のメイドである囲碁留(いごどめ)叶夜(かなや)のみで、

まともに話ができる人間は、他に誰ひとりとしていない。


兎萌は、歩きながら、一緒についてきてくれている、メイドの叶夜を、

不安げな目で見やる。

その視線に気づいた叶夜は、そっと兎萌の手を握ってみせた。


自分がついているから安心してください、と、はげますかのように。


………囲碁留(いごどめ)叶夜(かなや)は、現在、十四歳。

メイド長である囲碁留(いごどめ)漱祗(すすぎ)の、双子の娘、その姉のほうであった。


髪の色は、赤紫色で、前髪を綺麗に切り揃えているショートボブ。

十四歳にもかかわらず、母親に似て、胸とお尻が成人女性並に

大きく育っているのは、エロゲ世界の住人ゆえである。


原作では、双子の妹共々、攻略対象のひとりであった。

シナリオの進め方次第で、姉妹一緒に恋人になれるルートも存在する。


────その妹、囲碁留(いごどめ)叶穂(かなほ)は、兎萌が漱祗に連れられて

向かっている先、ゲストルームのドアの前で、待機していた。


双子の姉である叶夜と、同じ髪型で、顔はうりふたつ、

体のスタイルまで同じである。

違っているのは、髪の色が青紫色ということだけだった。


叶穂は、兎萌と漱祗に一礼したあと、ゲストルームのドアをノックする。


「兎萌様がいらっしゃいました」


『通しなさい』


美摩の簡潔な返事を聞いて、叶穂は、ドアを開け、その脇に退しりぞいた。


するりと入室する漱祗のあとに、兎萌は、胸の鼓動を激しくさせながら、

続いていく。


先ほど叶夜と握っていた手は、もう放していた。

母親に見咎みとがめられたら、またぞろ罵倒と叱責を浴びてしまうであろう、

と、身に染みてわかっていたからである。


(……! だれ……?)


兎萌は、室内のベッドの上に、自分と同じ子供がいることに気づき、そちらに

目を向けた。

そして、心を撃ち抜かれる。


(────!!! きれい………………)


ほう、と、兎萌は、見惚れてしまっていた。


紅玉ルビー色の長い髪と、瞳を持つ、お姫様のような女の子。

真理亜である。


中身はどうしようもない変態であっても、ガワだけは魔性の美貌を持つ幼女。

純粋無垢な幼子おさなごが魅了されてしまったとしても、無理もない話だった。


その真理亜と、兎萌の目が、ばちりと合ってしまう。


真理亜は、兎萌に向かって、花開くように、微笑んでみせた。

兎萌は、自分の心臓が、バクンと跳ね上がるのを感じる。


「───真理亜。この子は、私の娘で、兎萌というの。あなたの従妹いとこになるわ」


美摩がそう言って、兎萌を見た。


「……兎萌。挨拶なさい」


母親の短いうながしの言葉に、兎萌は、違和感を覚える。

自分に対する時、常ににじみ出ていた、声の刺々(とげとげ)しさが、消えているように

感じられたのであった。


「お嬢様」


美摩への違和感が先に立ち、反応の遅れている兎萌に、

叶夜が小さな声で呼びかける。


「……あっ、は、はじめまして。ま、まどぞの、ともい、です」


兎萌は慌ててそう名乗り、ぺこり、と一礼した。


無様ぶざまになってしまった所作に、兎萌は、母親の叱責があることを覚悟する。

が、美摩は、なにも言ってこなかった。


「初めまして。わたくしは、真渡園(まどぞの)真理亜(まりあ)と申します。

よろしくお願い致します」


代わりに声を掛けてきたのは、ベッドの上の真理亜である。

柔らかな声でありつつも、はきはきとした挨拶で、兎萌に頭を下げていた。


同席してる漱祗と、双子の娘たちは、その真理亜の所作に、軽く目をみはる。

言葉を向けられた兎萌など、すでに圧倒さえされてしまっていた。


ほんのわずかな所作に、幼女のものとは思えない、磨き上げられた品位と、

高貴さを感じ取っていたのである。

………実のところは、高貴さ起源のものではなく、真理亜の中の人の、

前世社会人の挨拶が、例の令嬢変換スキルで、

イイ感じになっただけのことであった。


無論、この場にいる者が、その事実を知るよしもない。


(───さすが姉様……子のしつけも、ちゃんとなさっていたのね。それなのに、

私ときたら──────)


美摩にいたっては、感心するやら、母親として自己嫌悪するやら、らぬ被弾を

している。


(あぁ~兎萌ちゃんぢゃあ~~~♡ かわいいのう♡♡♡ かわいいのう♡♡♡)


真理亜本人は、そんな周囲の反応なぞ気づくはずもなく、ヒロインの登場に

テンション(上げ)(上げ)のウキウキHAPPY状態。

まったくもって、やはり、なにも考えていなかった。


「真理亜は、今日から、本家の娘となります。────同い年だけれど、

生まれ月で言えば、兎萌、あなたの、義姉あねになるわ」


「あね……おねえさま、ですか────?」


「……ええ」


兎萌がたどたどしく口にした言葉に、美摩は、胸に懐かしさをこみ上げさせる。

娘に、幼い日の、自分の姿を重ねて見たのだった。


────自分と姉は、幸せを手にすることは、できなかったけれど。

真理亜と兎萌、このふたりには、願わくば、幸せになってほしい………。


美摩は、この日、初めて、母親たりうる願いを、その心に生じさせる。


美摩本人に、その自覚はない。

しかし、それは間違いなく、きざしに他ならなかった。

近親百合もイイよね……

兎萌ちゃんには母子揃って滅茶苦茶勘違いしてもらいます(゜ω゜)

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