M〇四 母の手紙がオーバーキル!毒親ルートにSAYグッバイ!
本日も三話更新です。
よろしくお願いします(^ω^)
(あれっ。そーいや、設定集とかで読んだ話の流れと、なんか、違うな?)
叔母である美摩に抱き締められる感触を、思う存分味わいながら、
真理亜は、前世の原作知識のことを、うっすらと思い浮かべる。
確か、真理亜と美摩は、出会って五秒で即虐待の仲ではなかったか、と。
その設定を思い出しただけでも、この変態、もとい、この真理亜にしてみれば、
たいしたものだったかもしれない。
が、それでも、現状の流れは、もう、幼女の言動でどうこうできるのものでは
なくなっていた。
(あっ。この手紙を渡してないからか?)
真理亜としての記憶にあった、亡き母からの、叔母への美摩に宛てた手紙のことを
思い出し、もぞもぞと、喪服のポケットをまさぐる。
はたして、そのポケットには、白い封筒が入れられていた。
真理亜は、抱き締められるその胸の中で、声を出す。
(美摩姐さん。うちのオカンから、姐さん宛ての手紙があるんだけど)
「美摩お姉様。お母様から、お姉様へのお手紙があります」
あれっ?、と、自分で自分が言った言葉に驚く真理亜。
おかしいな、と思いつつも、そのまま言葉を続けてみる。
(うちのオカンがさー、自分が死んだ時、美摩姐さんが来てくれるように
してあるから、その時、この手紙を渡すよう、言われてたんですわー)
「お母様は、もし自分が亡くなった時、美摩お姉様が来てくださるはずだから、
その時、この手紙を渡すように、と言われていました」
んん!?、と、言おうとした言葉と、口に出た言葉との差異に、再び驚く真理亜。
しかし、真理亜には、この現象に、心当たりがあった。
〈優●変換〉(※出典:上●道郎著『悪役令嬢転生お●さん』)である。
原作世界の理、世界律の影響により、転生者がどのような言動を取ろうとも、
高貴な令嬢にふさわしい言葉遣いや、所作へと自動的に変換され、
実行される現象、転生者に付与される常時発動スキルとも言うべきものであった。
なお、この真理亜の〈優●変換〉による言葉遣いによって、美摩はまた、
真理亜に感心していたりする。
実母を喪ったばかりだというのに、なんとしっかりとした話し方か、と。
美摩は、渡された封筒から手紙を取りだし、目を通す。
【 】
【愛しい美摩へ 】
【 】
【この手紙を貴方が読む時、私はこの世にいないでしょう。 】
【 】
【まずは貴方のそばから離れたことを謝ります。本当にごめんなさい。 】
【貴方のことを、この世の誰よりも愛していました。 】
【私は、叶うならば、一生、貴方と添い遂げたかった。 】
【けれど、あの老人から純潔を奪われ、おぞましい儀式の末に、私が望まぬ子を】
【身籠もってしまったことを知った時。私は、貴方のそばにいる資格がないと 】
【思いこみ、真渡園の家から、貴方から、逃げてしまいました。 】
【どうか、この愚かな姉を、許してください。 】
【 】
【真渡園の家を出て、身分を偽り、在野の法師として禍威魔を狩ることで 】
【生計を立てていましたが、一ヶ月前、強大な魔を相手にした時、私は恐ろしい】
【呪詛をこの身に受けてしまいました。おそらく、真渡園の家に戻ったとしても】
【解呪は不可能でしょう。 】
【それでも、最期に、ひと目、美摩、愛しい貴方に会いたい。 】
【そう、切に願ったけれど、呪詛によって、醜く弱り果てた私の姿を、貴方に 】
【見られるのが怖くて、真渡園の家に戻ることができませんでした。 】
【臆病で、卑怯な、私を許して。 】
【 】
【貴方に会えず逝くことの他に、心残りなのが、娘の真理亜のことです。 】
【望んで生んだ子ではないけれど。貴方の次に、愛しいと思えた我が子。 】
【娘の真理亜には、破格の魔力が、その身に宿っています。 】
【私の見立てでは真渡園の歴史上でも、類を見ないほど、いえ、日本の歴史上、】
【最高の魔力を持つようになる可能性がある、と確信しています。 】
【この娘を、美摩、貴方に託します。 】
【貴方を捨てたような私が、今更、都合のいいことをお願いしているのは 】
【わかっていますが、他に託せる者がおりません。 】
【貴方を愛した姉の、最後の頼みです。 】
【どうか、真理亜を守り、育ててくださいますよう。 】
【 】
【 】
【 】
【美摩。この命が果てたとしても、私はずっと、貴方を愛し続けます。 】
【 】
【 】
【 】
【 永遠の愛と共に 】
【 】
【 真渡園真魅 】
【 】
「あ、ああぁ……」
手紙を読み終えた美摩は、口から嗚咽をもらし、その目から、
涙をあふれさせた。
そして、顔をくしゃくしゃにして泣きながら、再び、真理亜を抱き締める。
(あるぇーっ!? どうしたんスか姐さん!? うちのオカン、
なんて書いてたん!?)
「だ、大丈夫ですかお姉様? お母様は、なんと書かれていたのですか?」
号泣しながら、またも強く抱き締めてくる美摩に、真理亜は狼狽し、
気遣うように、そうたずねた。
根本的には手のつけられない変態だが、基本的には、女性に優しい紳士、
変態紳士な魂を持っているのが、今世の真理亜である。
「────ありがとう」
「え?」
「真魅姉様……あなたのお母様の、最後の言葉を、私に届けてくれて、
ありがとう─────」
「………」
原作同様の、虐待の序章である罵詈雑言を期待していた真理亜は、
感謝の言葉を受け、押し黙るしかなかった。
『話が違うじゃないですか、原作スタッフ! 答えてよ原作スタッフ!』
と、真理亜は、心の中で叫ばざるをえない。
だが、真理亜が原作スタッフに文句を言うのは、筋違いなことであった。
原作設定ではこの手紙は、美摩に読まれることなく、
破り捨てられてしまうはずだったのである。
原作の美摩だと、無様に泣き喚く真理亜に逆上し、応接室にあるテーブルから
なにから壊してしまい、真理亜の着ている服をズタズタに引き裂いてしまうほどの
折檻をキめてしまうからだった。
一方、こちらの世界の美摩は、これまでの、姉に対する自分の恩讐が、すべて
思い違いだったと理解し、感極まっていたりする。
捨てられた、と思っていた。
呪われた〈退魔法師〉の家、真渡園家の宿命を、押しつけられたと思っていた。
けれど、違った。
心から愛していた女性、姉の真魅もまた、ずっと、
自分を愛し続けてくれていたのだ。
手紙によってそう悟った美摩は、涙を流しながら、真理亜を、抱き締め続ける。
姉の真魅に、そうしたかったように、強く、優しく。
………原作の流れが大きく変わり出したところに、破り捨てられるはずの手紙を
渡してしまったことで、この世界の美摩の性格もまた、完全に変化してしまう。
神経質で短気な、暴力的虐待毒親になるはずだったその心は、愛していた姉の
最後の言葉により、浄化されたのだ。
亡き母の指示どおりとはいえ、手紙を渡す、という、自分の余計な行動のせいで、
期待の虐待主が、慈しみ深い義母に変わりつつあるとは、まったく
思いも寄らぬ真理亜である。
いよいよ初手から、自分の願望とは真逆の方向へと進んでいる真理亜は、
美摩から抱き締められながら、軽く途方に暮れるしかなかった。
─────わけがわからないよ、と。
児童虐待ダメ!絶対!
世の子供がみな幸せに育ちますように……( ˘ω˘ ) 人




