M三六 〈妖神〉消滅!ドMの狂喜が百連発!
【前回までのあらすじ】
魔導結社〈那由他の蛇〉首領・真渡園玄紺の手に囚われてしまった真理亜。
邪悪な魔法儀式によって、〈妖神〉絶沌の生贄、〈器〉に捧げられてしまい、
その身に〈妖神〉の魂が顕現復活してしまう。
果たして真理亜は、どうなってしまうのか……!?
真理亜の“肉体”という〈器〉、その“内”、“内宇宙”と呼ばれる、精神世界。
そこで──────────────────。
“ギニ゛ャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?!?!?!?!?!?!?!?”
〈妖神〉絶沌は、苦悶の絶叫を上げていた。
“キッ、貴様ッ!? コッ、コノ感情ハッ!? 〈歓喜〉…!?、ダト……!? ウゴアァッ!?”
絶沌は、己が魂を焼き焦がす、真理亜の感情に、混乱する。
“アリエヌ゛!”
と、絶沌は、大激痛に悶えながら、そう叫んだ。
人間が、その魂の内に、自分という異物を容れて、そのような感情を
抱くはずがない!、と。
…………………絶沌は、人間が持つ“負”の感情、
特に、恐怖、不安、嫉妬、憎悪、悲哀──────そういった感情を、
糧、養分として、〈力〉を蓄える〈禍威魔〉なのである。
が、逆に言えば、人間の“正”の感情は、毒にしかならない。
真理亜が、現在進行形で抱いている〈歓喜〉の感情は、絶沌にとって、
猛毒と言っていいほど、強烈なものであった。
“グゴゴゴッ!? ナッ、何故ダッ!? 何故、コンナ感情ヲッ!?
コンナ感情ヲ、我ニ抱ケルノダッ!? グゲェェェッ!?”
理解不能、意味不明、阿鼻叫喚。
苦痛にもんどり打つ中、まったくもって、『わけがわからないよ』状態の
絶沌である。
人間の魂にとって、自分の魂は、剣の刃が無数に飛び出た、
巨大な球のようなものだ。
それが魂の内で動き、語りかけてくるとなれば、その苦痛、その恐怖は、
絶大なものとなるはずなのに。
よもや、その絶大な苦痛を美味しくいただいちゃうドMがいようとは、
さしもの〈禍威魔〉の〈神〉でも、埒外の話だったようである。
『愛しき花は門に咲く』本編では、絶沌は、無事(?)真理亜が
抱く、恐怖と不安、美摩からの虐待による悲しみなどの、“負”の感情を、
数年間かけて吸収することで、順調に〈力〉を蓄えてゆき、〈妖神〉として
世界を脅かす存在に返り咲くのだ。
しかし、復活したとはいえ、いまだ物質世界に顕現することのできない現在、
絶沌は、魂だけの、脆弱な存在である。
そんな状態に、猛毒に等しい感情を向けられ続けるということは、
病み上がりの体に、プロボクサーによる渾身の拳を撃ち込まれ
続けるようなものだった。
『まっ●のうち! まっ●のうち!』の叫びと共に、振り子運動拳撃連打が
無限ループしている感じ。
カウンターで迎撃する隙など、ありゃしない。
復活の手はじめに、幼女の恐怖と絶望で、空腹を満たすつもりだった絶沌。
それがまさか、
『いらっしゃいませお客様ァッ!!! ア●メイトへ、ようこそォォォッ!!!』
と、関●一が演じる兄●命斗ばりの、熱烈歓迎を受けるなどとは。
絶沌にすれば、純白の雪原、その白き美しさを汚す暗い悦楽を味わおう、
と、意気揚々に飛び込んだら、その先が底なしの毒沼だった、
といったところだろうか。
話が違う!、詐欺だ!、と、絶賛泣き喚きたい気分。
当然ながら、こいつはたまらん、と、絶沌は、真理亜という〈器〉から、
直ちに抜け出そうとする。
ところがどっこい、真理亜がそんな絶沌の魂を、ガッシと掴んで放さない。
“どちらへ行かれるのですか? せっかくひとつになれたというのに……”
“ギョエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!?!?!?”
真理亜から向けられた新たな感情は、切なる慕情。
そんな感情を向けられたことのない絶沌にしてみると、零距離で
銃弾を受けたような衝撃と苦痛であった。
絶沌は、腐っても〈禍威魔〉の〈神〉。
通常の状態ならば、とっくに真理亜の魂を振りほどいて、
窮地を脱していたことだろう。
だが、今の絶沌は、復活直後で、全盛期にはほど遠い状態のうえ、
かつて陥った経験のない、大混乱の極み。
さらに、ここに来て、真理亜の千倍チート魔力が、火を噴いていた。
精神世界においては、魂に直結する、強い魔力こそが、物を言う。
ただでさえの千倍チート魔力に加え、半年以上の、気絶半歩先まで行く
魔力光操作訓練で培われた真理亜の妙技が、この精神世界でも、
猛威を奮った。
匠石運斤と言っていい正確さで絶沌の魂を縛り、大力無比に締め上げる。
加えて、その千倍チート魔力の属性は、〈聖〉属性魔力だ。
邪悪な存在、〈禍威魔〉にとって、ただでさえ深刻な傷手を受けてしまう属性の
魔力なのに、それが魂を直に拘束してくるとなれば、致命的な打撃を継続して
喰らい続けるようなものである。
……魔力の保有総量ならば、復活直後とはいえ、絶沌の持つ魔力のほうが、
真理亜の魔力量を、はるかに上回ってはいた。
理論的には、絶沌が平静を取り戻した状態ならば、その圧倒的な魔力差で、
真理亜の拘束を振り解くことは、容易なことのはずなのである。
────が、その圧倒的魔力量が、仇となっていた。
“さ、さ、もそっと、もそっと近くに寄ってくださいまし……いいえ、もっと、
もっと密に、ひとつになって、溶け合いませう♡♡♡♡♡”
ンー、ここから数年かけて寄生されて苦しめられるのもいいけど、もういっそ、
このまま絶沌と融合しちゃったほうが、すンごい苦痛、味わえるんジャマイカ?
そう昂った真理亜が、絶沌の魂との融合を、熱烈に望むあまり、
拘束を増強するのに合わせ、無意識のうちに、絶沌の魔力を、
根こそぎ吸収しはじめていたのである。
そして、真理亜は、絶沌の魔力を吸収する端から、おのれの
〈聖〉属性魔力として、絶沌の魂を拘束する〈力〉に全ブッパ。
こうなっては、混乱したままの絶沌に、逃れられる術はない。
絶沌を〈妖神〉たらしめる絶大な魔力が、完全に、
自分で自分の首を絞める形になっていた。
“ヒッ、ヒイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィ─────!?!?!?
ヤッ、ヤメテエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェッッッ!!!
許シテエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェッッッ!!!”
なおも続く、歓喜と慕情の振り子運動拳撃連打。
もはやそのダメージは、アサルトライフルによる、零距離での
フルオート連射攻撃総受け状態のようなものへと、被害段階が繰り上がっている。
過剰殺戮攻撃もいいところであった。
『もうやめて! 真理亜! とっくに絶沌のライフはゼロよ!
もう勝負はついたのよ!』
と、制止してくれる真●杏子は、どこにもいない。
だが、そもそも、相手は〈禍威魔〉の〈妖神〉である。
客観的に判断すれば、容赦なく絶沌を攻撃している形なのだから、
間違いなく、真理亜の行動は正しい。
けれども実際には、絶沌と融合を果たそうとする行為は、
人類に対する背信行為に他ならないのだ。
それが絶沌を致命的に苦しめているのだから、事態はもう、
支離滅裂と言う他ない。
“ッッ!? 貴様ッ!? 魔力ダケデハ飽キタラズ、我ガ権能マデ!?
イ、イッタイ、ドウヤッテ…!? グギャアァァァァァァッッッ!?!?!?”
絶沌は、魔力だけではなく、自分が〈神〉として備えている
権能まで、真理亜に奪われていることに気づき、戦慄の絶叫を上げる。
一方、真理亜としては、なにも奪っているつもりはない。
“良いっっっ♡ 良いよぉっ♡ もっとっ♡♡♡ もっとひとつにっ♡♡♡♡♡♡”
こんなにスゴいの、前世の最期に覚えた心筋梗塞の痛み以来、
ううん、それ以上だワ♡♡♡♡♡♡
常人なら精神崩壊しそうな死の激痛を覚えながら、真理亜はもう、気分上々↑↑の
PartyNight、ヒップホップピーポゥみんなで踊れ状態。
一刻も早く、融合を完了してしてしまおうと、真理亜は、我武者羅に
絶沌の魂を求め、さらにさらにと、拘束していった。
その結果、絶沌の魂を構成する霊子情報を、真理亜のそれが侵蝕し、
すべて真理亜の魂に支配されるものとして、
その属性を、書き換えていってしまったのである。
つまり、ここまでの流れをインターネットの話で喩えるならば、
絶沌がスパイウェアを使って、真理亜の端末を乗っ取ろうとしたら、
逆に自分の端末が乗っ取られて、個人情報を軒並み抜かれたあげく、財産まで
奪われていっている状態、というところであろうか。
どっちが化け物で、どっちが悪者だよ、という話であった。
ピシリ
魔力と霊子情報を一切合切奪われ、いよいよ、絶沌の魂の根源、
〈核〉に、大きなヒビが入る。
“ガアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!?!?!?
ヤッ、ヤメロォォォォォォォォッッッ!!! ヤメテクレェェェェッッッ!!!
ナッ、ナンデモ貴様ノ望ムモノヲヤルッ!!! ダカラッ!!!
頼ムッ!!! ヤメテクレェェェェェェェェッッッ!?!?!?
言エッ!!! 貴様ガ欲シイモノハ、ナンナノダッ!?!?!?”
魂の〈核〉が砕け、壊れてしまえば、〈禍威魔〉の〈神〉とて、その存在性の
消失、完全なる“死”、〈魂魄消滅〉は免れない。
絶沌は、おのれの魂に迫る危機を悟り、なりふりかまわず、命乞いをしはじめた。
対する真理亜の返答は、簡潔に、一言。
“あ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ な♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ た♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡”
それはもはや、“愛”に等しい感情。
その感情が、絶沌の魂の〈核〉、その中心を、ズキュゥゥゥンと撃ち抜く。
“ウボァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ─────!!!!!!!!!!!!!!!”
そんな断末魔と共に、絶沌の魂の〈核〉は、粉々に砕け散った。
その魂は、完全に、世界から消滅したのである。
〈禍威魔〉の〈神〉、〈妖神〉絶沌は、
ここに討ち果たされ(?)たのだった───────────────。
…………南無南無。
みなさん予想はついていたでしょうけども、感想で先回りした方はいなかったので、セーフ!
一話で退場するラスボス、やってみたかったんだ……(^∀^;)




