M三三 暗雲に沈む
今のところ玄紺のERO攻撃は問題ない……?
今回はさらなる攻撃があるのでドキドキです(^∀^;)
(く…♡ うぅ…♡ や、やはり、〈聖女〉である…真理亜を…狙って……)
玄紺の口から、真理亜が標的であることをはっきりと言葉にされ、
美摩は、自分の直感が正しかったことを悟る。
〈神〉への供物? 贄の〈聖女〉?
耳にした言葉だけでは、玄紺の目的を、完全に把握することはできなかった。
しかし、美摩は、過去に自身を襲った、
玄紺たちからのおぞましい陵辱を思い出す。
────あのような、筆舌に尽くしがたい暴虐を、真理亜に加えるつもりなのか。
そんなことは、させない……っ!
美摩の胸の中で、真理亜を絶対守る、という、母親としての強い意志が、
炎のように、燃え盛った。
だが、その強い意志に反して、体のほうは、いまだ満足に動かすことができない。
美摩の心が、使命感と焦燥感で、荒れ狂う。
玄紺が真理亜の魔法で動けぬ今こそ、千載一遇のチャンスだというのに……!
「叶穂っ! 近づいては駄目っ!」
真理亜が叫んで、叶穂を制止するのが聞こえた。
自由の身になった叶穂が、玄紺に斬りかかろうとしたのだろう。
「お嬢様っ…!? 何故です! 今ならっ……!」
「〈力〉の範囲に近づいたら、あなたが人質に取られてしまうわ!」
「……っ!」
叶穂が、警戒しながらわずかに退くのがわかった。
おそらく、真理亜の言葉は正しい。
美摩は、真理亜の慎重な姿勢に、心の中で同意する。
玄紺の邪悪な強さは、底が知れない。
うかつに近づけば、魔法で拘束されているとて、思わぬ反撃が飛び出し、
叶穂が人質に取られてしまうなどして、こちらが劣勢になる恐れがあった。
「用心深いことよのう───。この老いぼれの息の根を止めるには、今こそ、
またとない機会かもしれんというのに」
現に、玄紺がそう笑う声には、余裕の響きがある。
「叶穂と言ったか? 先の勇猛さはどうした。今度は、おまえの刃が
通るやもしれんぞ?」
「………」
玄紺の挑発に、叶穂は、激発するのを堪えたようだった。
そんな叶穂に、真理亜が、冷静に口を開く。
「……叶穂。兎萌ちゃんを連れて、逃げてちょうだい」
「「お姉さまっ!?」」
真理亜の言葉に、兎萌と叶穂の声が重なった。
「それはできませんっ! お嬢様を置いていくことなどっ!」
頑とした、反対の声を上げる叶穂。
「わたくしの魔力なら、美摩お姉様が立ち上がるまで、このまま捕まえて
おけます。……でも、確実ではありません」
真理亜は、玄紺から目を離さず、言葉を続ける。
「漱祗と叶夜も助けたいでしょうけれど、真渡園家の血筋を、
第一に守らなければなりません。────さあ、早く」
倒れ伏したままの美摩は、体を動かさんともがきながら、真理亜のその言葉を
聞き、驚嘆せざるをえない。
この子は〈聖女〉としてだけでなく、すでに当主としての器も形成しつつある、と。
「ですが……!」
「────お願いよ、わたくしの姉や。わたくしの大切な従妹を、守って」
なおも言い募ろうとする叶穂に、真理亜は、そう短く懇願した。
「っっっ!!! 承知致しました……っ!!!」
喉から血を吐くように声を絞り出したあと、叶穂は、真理亜から、
兎萌を抱き取る。
「だめっ! 叶穂っ! 放してっ! いやぁっ! お姉さまぁっ!
いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────────っっっ!!!」
叶穂に抱きかかえられた兎萌は、真理亜に向かって、手をのばした。
その手は空を切り、悲痛な叫びだけを残して、叶穂に抱かれ、広間から、
急速に遠ざかっていく。
「ふ。自分を犠牲に、従妹を逃すか。健気なことよのう……。だが、無駄だわい。
おまえを〈神〉に捧げたあと、すぐにあの童女も見つけて、儀式の主賓に
迎えてくれようぞ」
玄紺は、兎萌を逃がしたことなど、些事に過ぎぬとばかりに、嘲笑した。
「……わたくし、自分を犠牲にするつもりなど、ありません」
真理亜は、玄紺に向かって突き出している右手とは別に、左手を、頭上にかざす。
「むぅっ!?」
玄紺の目が、見開かれた。
真理亜の左掌に、大きな光───魔力の渦が、生じたからである。
しかも、その輝きは、黄金。
それを目にして、玄紺の顔から、余裕の色が、失せた。
「わたくしを〈聖女〉と呼ぶのなら、その魔力属性がなんなのか、ご存知では?」
真理亜がそう言う間に、掌の渦は、収束し、光球となる。
初級の攻撃魔法、〈光弾〉。
ただし、真理亜が撃ち放たんとするそれは、膨大な魔力が凝縮され、
最上級攻撃魔法と同等の威力を持つことは、間違いなかった。
さらに、その魔力は、〈聖〉属性の魔力。
肉体を〈屍霊鬼〉化させている玄紺にとって、最も忌避すべき魔力である。
〈禍威魔〉同然のその肉体が、〈聖〉属性の魔力を浴びれば、塵ひとつ残さず
消滅するのは、免れない。
真理亜が閃かせる黄金の輝きは、〈魔〉を滅ぼしせしめる、
まさに必殺の一撃なのだった。
「ぐおおおおおおおおおおっっっっっ!!!」
玄紺が吼えて、四肢を縛る魔力の鎖を、引きちぎる。
やはり、拘束魔法から逃れる余力を、隠し持っていたのだ。
が、それも束の間、別の光の鎖が飛び出し、再び玄紺の手足を拘束する。
「ぐうっ!? お、おのれっ……!」
「逃がしません」
焦る玄紺に、真理亜が、冷徹にも聞こえる声を投げかけた。
床に倒れたままの美摩は、再び驚嘆してしまう。
立場が、一気に逆転してしまったかのようだ。
邪悪な魔人を、六歳の幼子が、追い詰めている……!
このまま、自分が立てなくとも、真理亜が、玄紺を倒してしまうのではないか。
美摩が、そのような期待を抱いた時であった。
「ああぁっ!?♡
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!?!?!?♡♡♡」
美摩の全身を、脳を灼くような、甘い感覚が襲う。
「美摩お姉様っ!?」
「んぎぃい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛いぃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっっっ!!!♡♡♡」
真理亜が振り返ると、そこには、あられもなくよだれをまき散らし、床の上で、
もんどりのたうち回る美摩の姿があった。
「───おうおう、悦んでいるようだわのう……」
窮地にあったはずの玄紺の顔に、かろうじて、余裕の色が戻っている。
真理亜は、きっ、と、その玄紺の顔を睨みつけた。
「……っ! あなたが───! 美摩お姉様を苦しめるのは、やめなさい!!!」
「ふふふ、童女よの───。苦しんでいると見えるか。実際は、違うぞ?
女が感じられる快楽を、味わっているというだけのことよ」
真理亜に対して、美摩を人質に取る効果の覿面さに、玄紺は、ニタニタと笑う。
「な、なにを……っ!」
「儂は、嘘はつかんとも。ほぉれ───」
クンッ
すっかり余裕を取り戻した玄紺は、右手を、撫でるように動かしてみせた。
「あ゛ひい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛っっっ!?!?!?♡♡♡」
それに釣られるように、美摩の体が、大きく跳ねる。
その一度だけでは終わらず、床の上で、ビクンビクンと、体の跳ねが止まらない。
「美摩お姉様っっっ!!! お姉様っっっ!!!」
「お゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ あ゛お゛っ♡♡♡ お゛お゛っ♡♡♡ お゛お゛お゛っ♡♡♡」
真理亜が必死に呼びかけるが、美摩の口からもれ出るのは、獣じみた嬌声だけ
であった。
美摩にはもう、意識はない。
ただ、全身を襲う感覚の波に、流されるがままになっている。
「その〈光弾〉を撃てば、確かに、儂は死ぬであろう。が、美摩は、このままぞ。
あまりの快楽に、身も心も、保つまいて。まあ、夢見心地のまま、
逝けるならば、それも幸せかもしれんがなあ?」
この場の主導権を握り直したことを確信し、玄紺は、勝ち誇った笑みを
浮かべていた。
床の上を転がり回り、全身を痙攣させ、声を上げ続ける美摩を見て、
真理亜は、苦悩にその顔を曇らせる。
やがて、その左掌に生じさせていた〈光弾〉が、その輝きを失っていった。
「………美摩お姉様を苦しめるのは、やめて───やめて、ください。
お願いします────」
真理亜が、左手を下ろし、うなだれてそう懇願すると、黄金の〈光弾〉は
完全に消失し、玄紺を拘束していた光の鎖も、次々に消えていく。
玄紺は、満足そうにうなずいて、笑った。
「孝行義娘よな。美摩も、鼻が高かろう」
皮肉を口にして、玄紺が、右手を大きく動かす。
グンッ
「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!?!?!?♡♡♡」
途端に、美摩の体が、ひときわ大きく跳ねた。
そして、ぐったりと、床の上に倒れ伏す。
「美摩お姉様っ!!! あうっ!?」
その美摩に駆け寄ろうとした真理亜だったが、見えざる力に絡め取られ、
動きを封じられてしまった。
そのまま、真理亜の体は宙に浮き、右手を突き出した玄紺の前に、
引き寄せられる。
玄紺は、ニタリ、と、真理亜にいやらしい笑みを向けた。
「想像以上の魔力を宿しておる……。真魅を失ったのは痛かったが、最高の供物を
遺してくれたわい。───なにより、母親譲りの見目麗しさよ」
真理亜の体を、さらに自身の近くに寄せて、玄紺は、真理亜の顎を、引き掴む。
「いや、母親以上の美貌になるやものう……ふふ、体が熟すのが、楽しみよな」
玄紺の赤い両眼が、邪な期待に、爛々と光った。
「っ……! あなたの思い通りには、なりませんっ!」
顎を掴まれたままながら、真理亜は、毅然と言い放つ。
それを聞いて、玄紺は、クハハッ!、と、楽しげに笑い声を上げた。
「お前の母も、祖母も! 曾祖母も! 最初は、同じようなことを
口にしておったわ! くく……良いぞ、良いぞ───それをそのうち、
儂なしではおれぬように仕上げていくのも、楽しみのひとつよ」
玄紺の手が、真理亜の顎から離れると、いずこからか、黒く大きい布を
取りだし、そのままその黒布で、真理亜の体を、覆い包む。
「……っ!!! 美摩お母様───っ!!!」
それと、真理亜の口から、そんな声が上がるのが、同時であった。
玄紺は、黒布にくるまれた真理亜を、両腕で抱きかかえ、床に倒れた
美摩、漱祗、叶夜らを一顧だにせず、悠然と、広間を後にする。
──────真渡園の屋敷に、玄紺の嘲笑が木霊したあと、無力に満ちた静寂が、
無情にも似て、訪れるのであった………………………………………。
嗚呼、真理亜が邪悪な老翁の手に……!どうなってしまうのか!?
今回のERO攻撃表現はギリセーフなのか!?(←こっちがドキドキ)




