M三二 魔人の圧倒
この世界は伝奇百合鬼畜エロゲーの世界である……。
という、“伝奇”と“鬼畜”を体現した竿役爺キャラです(・∀・)
くくく……、と、広間に現れた侵入者は、再び哄笑する。
「応よ。美摩、漱祗。そなたらふたりの肉体が、忘れられんでな────。
この身を半分、吹き飛ばされ、焼き払われても、迷い戻ってきたのよ」
侵入者は、ベロリ、と、いやらしく舌なめずりをして見せた。
「っ……! 黙れっ! この下衆がっ……!」
「ほう? 子供らには聞かせたくないか? 儂がおまえたちの、初めての
おと──」
侵入者がすべてを言い終える前に、美摩の突き出した両掌から、
光輝く魔力の塊が、撃ち放たれる。
初歩の攻撃魔法、〈光弾〉。
だが、真渡園家当主、〈退魔法師〉の最高導師である美摩が、
高い魔力を込め、独自の理法で撃ったそれは、必殺の一撃に他ならない。
命中したが最後、並の〈禍威魔〉なら、
木っ端微塵に消し飛ばしてしまうほどの威力を持っていた。
しかし────────────────────。
〈光弾〉は、侵入者の眼前で、見えざる壁に阻まれたかのように、爆発四散し、
光の粒子となって、消える。
(……〈魔力障壁〉───! 全力ではなかったにせよ、こうも簡単に……!?)
美摩は、おのれの攻撃魔法を易々と防がれたことに、戦慄した。
美摩の心中で、焦りの色が濃くなっていく。
何故なら、侵入者が、魔法を使って、自分の〈光弾〉を防いだわけでは
ないことを、見抜いたからであった。
魔法を発動させて、攻撃を防ぐ力場を作り出すのが〈魔法障壁〉。
魔力を周囲に放出し、その魔力の“圧”だけで攻撃を防ぐのが〈魔力障壁〉。
侵入者が、美摩の〈光弾〉を防ぎ、消滅せしめたのは、
〈魔力障壁〉によるものだったのである。
美摩は、怒りと、焦りの混じった視線を、侵入者に向けた。
侵入者は、美摩のその視線を、嘲りの笑みを以て受け止めている。
侵入者の風貌は、がっしりとした体格の、着流しの老人であった。
ただし、その着流しは、両肩口から袖が破かれており、
老人の筋骨隆々な両腕が露わになっている。
青白い炎に照らされた、その肌の色は薄紫色で、張りと艶があった。
“老人”と見えたのは、ざんばらとした長い髪の白さ、深い皺が刻まれた顔と、
頬と顎に、白髭を生やしているからである。
両足は、裸足。
そして、その両眼は、本来、白いはずの部分が黒く、目の色は、赤色。
異様。
人間の形をしているが、人ではないモノ。
────この老人こそが、邪法により、おのれの肉体を〈屍霊鬼〉化させ、
不死の存在となった魔人………真渡園玄紺であった。
美摩は、戦慄と混乱に荒れる心をなんとか圧し鎮め、考えを巡らせる。
六年前、自分と漱祗の策によって、なんとか討ち果たしたはずの、諸悪の根源。
この凶悪な魔人が、何故、今頃になって、目の前に現れたのか。
自分と、漱祗に復讐するため───?
真っ先に、その考えが浮かんだ。
いや、それもあるだろう。
けれど、それだけではない。
真理亜だ。
美摩は、そう直感する。
〈聖女〉である真理亜を、狙って来たのだ………!
「儂を騙し討ちにして六年か───。多少、腕を上げたようだが、その程度で
“最高導師”を名乗れるとはなあ……これだから女は度し難いというのだ」
そう言って、なおも玄紺は、嘲笑する。
「散々その肉体に、おのれの身の程を教えてやったというに、小娘が、
いまだ理解できておらんようだわい」
「───その小娘に一度殺されたくせに、どの口がほざくのかしら」
悪態で返す美摩だが、完全に、虚勢であった。
その顔は、玄紺に純潔を奪われ、恥辱の限りを尽くされた過去を思い出し、
朱に染まっている。
子供らふたりを後ろにかばい、顔が見えぬようになっているのが、幸いであった。
………力の差は、歴然。
美摩は、漱祗、叶穂らとの連携攻撃による打倒を脳内で数十通り試行したが、
敗北の結末しか、予測できない。
しかし、美摩には、切り札があった。
〈鳳凰の杖〉である。
玄紺が、どのようにして冥府から舞い戻ったかは謎だが、現在、自分が、
〈鳳凰の杖〉を霊的に常備しているとは、知るまい。
〈鳳凰の杖〉による魔法攻撃ならば、玄紺の〈魔力障壁〉を破り、討ち滅ぼす
ことができるに違いない、と、美摩は、確信していた。
問題は、〈鳳凰の杖〉を顕現させるために要する、時間である。
古代魔法真言を唱え、美摩の体から〈鳳凰の杖〉が実体化を終えるのに必要な
時間は、約三秒。
短い呼吸が済む程度のわずかな間だが、魔人である玄紺なら、不測の反撃を
察知、警戒し、妨害と制圧にかかるには、十分な時間に違いなかった。
美摩ひとりだけで立ち向かうのならば、勝ち目はない。
が、美摩には、漱祗と、叶穂がいる。
ふたりの援護と牽制を念頭に置くことで、
〈鳳凰の杖〉顕現までの時間の目途はつけられた。
あとは、攻撃開始の呼吸だけである。
子供たちを、守らなければ……!
美摩は、その絶対の意志を以て、漱祗と叶穂に、攻撃命令を下そうとした。
だが──────。
玄紺が、機先を制するように、ニヤリと嘲笑う。
「なにやら、隠し玉があるようだの」
「っ……!」
胸中を見透かされた思いになった美摩だったが、最早、攻撃する他に、
選択肢はない。
「漱祗! 叶穂!」
美摩は、ふたりに号令を発した。
美摩の号令直下、漱祗と叶穂が、玄紺に討ちかかり出す。
〈鳳凰の杖〉を顕現させるべく、美摩も即座に、
古代魔法真言を唱え始めた。
“来たれ、人界の護り…”
「ふ」
玄紺は、それらを一瞥し、一笑に付した。
そして、その右手を、わずかに動かす。
クンッ
「「んぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!?!?!?♡♡♡♡♡♡」」
美摩と漱祗が、突如として沸き起こった、下腹部から脳天を焦がす感覚に、
嬌声を上げて、のけぞった。
それから、ふたり同時に、その場で床へと、膝から崩れ落ちる。
(うぅっ!?♡ あっ♡ どっ♡、どうしてっ……!?♡)
美摩は、身動きが取れぬほど、下腹部から、全身に響き走る感覚に襲われていた。
漱祗のほうも、同様である。
頬を赤く染め、両手を床に付き、体を苛む感覚からもれそうになる声を、
必死に抑え込んでいた。
「美摩お姉様!」
「お母さまっ!?」
真理亜と兎萌が、美摩に駆け寄ろうとする。
「だっ♡…駄目っ! 近づいてはっ! 駄目っ!」
全身を襲う感覚に抗いながら、美摩は、自分に近づこうとするふたりを制した。
そんな美摩を、またしても玄紺は、嘲り笑う。
「〈淫紋〉を解呪して、安堵しておったか? くく、甘い甘い……
おまえたちの下腹の内に、儂の肉腫を潜ませておいたのよ。
万が一の時の保険に、のう────」
クンッ
「「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ────っっっっっっっ♡♡♡♡♡♡」」
玄紺が右手を動かすだけで、美摩と漱祗は、再び悶えて、体をのけぞらせた。
あまりの衝撃と感覚に、もはや、その身を起こしておくことも叶わず、
ふたりとも、その場に倒れ伏してしまう。
「っ…!」
叶穂が、自分ひとりだけでも一撃穿たん、と、玄紺めがけて、苦無を流星のごとく
投擲した。
が、その苦無は、見えざる壁───〈魔力障壁〉に阻まれ、弾かれる。
それを想定していた叶穂は、構わず、別の苦無を逆手に持ち、玄紺へと
突貫した。
「姉妹揃って、猪武者か。漱祗の娘にしては、いま少し芸が足りんのう」
玄紺は、叶穂に向けて、左手をかざす。
「ぐぅっ!?」
それだけで、叶穂の全身は、床から縛り付けられたように、動けなくなった。
玄紺が、哄笑する。
「役者不足、役者不足。……儂の相手ができるのは、肉付きのいい、
その体だけのようだて」
「くっ……うぅぅぅ───っっっ!!!」
叶穂は、歯を食いしばって体を動かそうとするが、もがくことすらできない。
「おまえの肉体も味見したいところではあるが……今は、急ぎの用があるでな。
また次の機会に取っておくとしよう」
立ったまま動けぬ叶穂に、粘りつくような視線と下卑た笑いを送ったあと、
玄紺は、真理亜と兎萌のほうに、向き直った。
真理亜が、兎萌を護り庇うように抱き締めて、きっ、と玄紺を睨みつける。
「ほほ、意志の強い童女よの。……わかるぞ───その身に宿す膨大な魔力………。
まさに、我らが〈神〉の贄となるにふさわしい────!」
玄紺が、ひと目で真理亜の魔力保有量を見抜き、喜びの声を上げた。
「っ…♡ あ…♡ ぅ…っ……♡」
美摩の耳は、玄紺のその声を確かに拾っていたが、全身を襲った強烈な感覚の
余韻が残響しており、甘い痺れに、指先一つ動かすこともままならない。
漱祗に関してはさらに酷く、口から涎をたらし、普段の冷静沈着な姿からは
考えられぬ、蕩けた顔で失神し、全身を小刻みに痙攣させている。
幼いふたりを庇護する存在は、ことごとく、陥落してしまっていた。
玄紺が、勝ち誇ったように、邪悪な笑みを浮かべる。
「さて、連れて行くかの。なに、怖がることなどひとつもない────むしろ、
女として生まれた幸せを、余すことなく教えてやるでな………」
真理亜と兎萌のふたりに、玄紺の加虐性に満ちた視線が、ねっとりと注がれた。
兎萌は、恐怖のあまり、悲鳴すら喉から出せず、涙目のまま全身を震わせ、
真理亜の体に、しがみつくことしかできない。
真理亜は、そんな兎萌を勇気づけるように、強く抱きしめ返し、唇を固く結んで、
玄紺を睨み続けている。
幼女ふたりは、為す術なく、魔人の手に落ちるしかないと思われた。
玄紺が、悠々と、真理亜と兎萌に向かい、一歩、踏み出そうとする。
「ぬっ───!?」
その時、玄紺の足元、その周囲の床から、鮮烈な光が噴き上がった。
ひとつだけではない。
四方八方から、光の鎖が床から飛び出し、玄紺の四肢と胴体に絡みつく。
「儂の〈魔力障壁〉を破るだとっ……!?」
玄紺の顔が、驚愕で歪んだ。
目を剥いて、真理亜を見る。
真理亜は、左手で兎萌を抱きしめたまま、右手を、玄紺に向かって
突き出していた。
「まさか、その齢で、〈星雲嵐鎖〉を使うのか────!?」
知らず、玄紺は、最上級鎖状拘束魔法を使ったのか、との真理亜への問いを、
口からもらしてしまう。
「…今のは〈星雲嵐鎖〉ではありません…。〈縛鎖〉です」
真理亜は、慇懃にも、玄紺に答えていた。
────自分が今、使っている魔法は、初級の魔法、〈縛鎖〉である、と。
この返答には、さしもの玄紺でも、たじろがざるをえない。
それが意味するところは、初級魔法である〈縛鎖〉を、圧倒的魔力の
絶対量によって、最上級魔法と同等の威力を持たせた、ということだからである。
その事実にたじろいだ玄紺であったが、すぐに、喜色満面の笑みを浮かべた。
そして、うなずきながら、賞賛するように、笑い声を上げる。
「なるほどなるほど! 素晴らしい魔力だわい! それでこそ、
我らが〈神〉への最高の供物! 贄の〈聖女〉ぞ………!!!」
直接描写ではないので、ギリセーフ、と思ってるんですが、どうでしょう、ドキドキ……。
迷ったんですが「設定上、このジジイなら絶対こうしてる」と伝奇エロゲー魂を優先させました。
OUTだったらどうにか書き直すつもりです(^∀^;)




