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聖女の力は安眠のために。〜ブラック企業帰りの私は、現代知識で冷徹公爵を寝かしつけます〜  作者: サバ味噌饅頭
第14章:聖女、公爵夫人になっても寝かせてもらえません!

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第五話 守りたい笑顔: 紬とアルベルトの日常

王都の喧騒も、世界中からの賞賛も、北の地の深い森に建つ公爵邸までは届かない。 夕暮れ時、黄金色の光がテラスを染め上げる頃、紬とアルベルトは二人、特製のハーブティーを楽しみながら静かな時間を過ごしていた。


「……紬。今日、領民たちが言っていたよ。君がこの地に来てから、子供たちの寝顔がより安らかになり、老人たちは長生きになったと。君は本当に、この国の『心』を救ったんだな」


アルベルトは紬の隣に座り、その小さくも力強い手を自らの大きな掌で包み込んだ。 かつて「死神」と恐れられた彼の瞳には、今や険しさは微塵もない。そこにあるのは、自分を救ってくれた一人の女性への、海よりも深い慈しみだけだ。


「……大げさよ、アルベルト様。私はただ、みんながぐっすり寝て、気持ちよく起きてほしかっただけ。人間、寝不足だとろくなこと考えないもの」


紬は少し照れくさそうに笑い、彼の広い肩に頭を預けた。 かつて王宮で孤独に耐え、有給休暇を求めて逃げ出した少女は、今、世界で一番贅沢な「安息」の中にいる。前世で、終電の窓に映る自分の疲れ切った顔を見ながら「いつか、誰の目も気にせず夕陽を眺めたい」と願ったあの切実な祈りが、今、この強靭な男の体温と共に現実のものとなっていた。


「……アルベルト様。あんた、最近はちゃんと眠れてる?」


「ああ。君が隣にいてくれるだけで、私の夜から悪夢は消え去った。……だが、時折不安になるのだ。これはあまりに幸福すぎる夢で、目覚めたらまたあの戦場にいるのではないかと」


アルベルトの指先が、紬の頬を愛おしそうになぞる。 彼の強すぎる責任感と繊細な神経は、平穏の中でも時折、過去の影を呼び寄せてしまう。紬は彼の目を見つめ、いたずらっぽく、しかし確信に満ちた声で囁いた。


「もしこれが夢なら、私が永遠に終わらせないようにしてあげる。……あんたの横には、一生、私がいるんだから。……いいわね?」


「……ああ。……誓おう。この命が尽きるその瞬間まで、君の笑顔と、その穏やかな眠りを私が守り抜くと」


二人は夕闇の中で、静かに、そして深く寄り添い合った。 カイルが影からそれを見守り、ゼノスが遠くの塔で「幸せの脳波、観測完了……!」と涙ぐんでいる。そんな騒がしくも愛おしい日常が、紬が手に入れた「最高の報酬」だった。


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