表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の力は安眠のために。〜ブラック企業帰りの私は、現代知識で冷徹公爵を寝かしつけます〜  作者: サバ味噌饅頭
第11章:忍び寄る王宮の影、安眠の終わり?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/87

第三話 安眠vs科学:ゼノスの持ち込んだ『悪夢』

アルベルトに襟首を掴まれたまま気絶したゼノスを、紬は「……仕方ないわね」とサロンの予備室に収容した。しかし、彼が馬車から引きずり出してきた「未完成の魔導具」が、その夜、事件を引き起こす。


それは、ゼノスが紬の噂だけを頼りに作り上げた、**『広域安眠導入機・試作零号』**だった。


「(……なんか、嫌な予感がするわね)」


紬がそう思った時には遅かった。深夜、ゼノスが寝ぼけて魔導具のスイッチを蹴飛ばしたのか、機械が「キィィィン」という奇妙な高周波を放ち、サロン全体に紫色の霧のような魔力が充満したのだ。それは前世で深夜残業中に鳴り響いた緊急アラートのような不快な音色で、人々の理性を強制的にシャットダウンさせていく。


「……う、……なんだ、この暴力的な眠気は……」


見回りをしていたカイルが、膝から崩れ落ちる。


「紬……、体が……動か、な……」


隣の部屋で読書をしていたアルベルトも、本を落として深い眠りへと強制的に引きずり込まれた。


紬自身も、抗えない重力に押し潰されるようにベッドに倒れ込んだ。 だが、その眠りは「安眠」とは程遠いものだった。


「(なによこれ……。脳が勝手に変なイメージを見せられてる……!?)」


ゼノスの機械が放出したのは、脳内の欲望を増幅させて具現化する**『強制夢ドリーム・コンストラクト』**の魔力だった。


夢の中で、紬は真っ白な空間にいた。 そこに現れたのは、これまでにないほど積極的なアルベルト。 「紬……。もう、公爵としての立場などどうでもいい。私を、君だけのものにしてくれ」 彼は紬を押し倒し、その首筋に熱い吐息を吹きかける。


だが、そこへシリルの声が割って入る。


「おっと、アルベルト。君には重すぎるよ。紬、僕と一緒に、誰にも見つからない永遠のバカンスへ行こう」


シリルが紬の反対側の手を引き、二人の男が彼女を左右から奪い合う。


「……待て。その筋肉量と心拍数のデータは、安眠の妨げだ。……解析、させて、くれ……」


夢の中にまで、眼鏡を光らせたゼノスがノートを持って乱入してくる。


「うるさーーーーい!!」


紬は夢の中で、現代知識という名の鉄槌を振り下ろした。


「あんたたちの欲望で私のレム睡眠を汚さないで! 睡眠の質を下げたら、明日の私の肌はどうなると思ってるのよ!」


紬の怒りの波動が、ゼノスの未完成な魔法回路を内側から焼き切った。 「ガシャン!」という音と共に、サロンに充満していた紫色の霧が霧散する。


翌朝。 全員が、かつてないほどの「寝起きの悪さ」で居間に集まった。 アルベルトは顔を真っ赤にして紬を直視できず、シリルは「……変な夢を見たよ。でも、悪くなかったな」と鼻の下を伸ばしている。


「……あ。……あぁ、僕の試作機が……。紬、君の『怒りの脳波』で、回路がオーバーヒートしたのか……。……素晴らしい……、これだよ、このデータが欲しかったんだ……」


ゼノスは床に這いつくばりながら、壊れた魔導具から漏れる煙をうっとりと眺めていた。


「ゼノス。……あんた、次に私の睡眠を邪魔したら、その眼鏡を叩き割って、一週間『目覚まし時計の精霊』と一緒に監禁するからね」


紬の冷徹な宣告に、天才魔導具師は


「……ゾクゾクするね……。その非論理的なまでの執着、ビジネスパートナーとして最高だよ……」


と隈を深くして微笑むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ