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聖女の力は安眠のために。〜ブラック企業帰りの私は、現代知識で冷徹公爵を寝かしつけます〜  作者: サバ味噌饅頭
第10章:公爵邸の密室、安眠の罠?

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第二話 シリル王子の「夜襲」と妨害

アルベルトの低い声が紬の耳元で震え、彼女の理性が「安眠」という名の誘惑に屈しそうになった、その時。


静寂に包まれていたはずの公爵邸の庭園から、情緒もへったくれもないけたたましい音が響き渡った。ジャカジャカと掻き鳴らされるリュートの音に、高らかに吹き鳴らされるラッパ。そして、夜の静寂を切り裂く、これ以上なく聞き慣れた華やかなテノールボイス。


「やあやあ、こんばんは! 兄上……いや、アルベルト公爵! 親愛なる友である君の体調が、夜の冷気で悪化していないか心配でね! お見舞いに夜食を届けに来たよ、今すぐ窓を開けてくれないか!」


「……っ、あの……根性の腐り果てた、馬鹿王子が……!!」


アルベルトが殺気立って紬を解放し、乱暴に窓を蹴り開けた。 眼下の庭園を見下ろすと、そこには月光を浴びてキラキラと輝く白馬に跨ったシリル王子がいた。彼はなんと、王宮専属の楽団員数名を「不法侵入(あるいは公爵邸の門番を金で買収)」させて引き連れ、手には湯気を立てる最高級の「特製ホット・ワイン」の瓶を抱えている。前世で、ようやく定時に帰れると思った瞬間に、「親睦会だ!」と大声で叫びながらオフィスに乱入してきた空気の読めない上席を思い出し、紬の眉間は深く刻まれた。


「紬! 紬、そこにいるんだろう? 君が不慣れな屋敷で、この『氷の塊』みたいな男に冷え切らされ、退屈のあまり不眠に陥っていないか心配でね。さあ、僕が最高のセレナーデと共に、君を甘い夢の国へとエスコートしてあげるよ!」


「シリル様……。夜中に、しかもよりによって楽団を連れくるなんて、安眠のプロから言わせてもらえば、あなたは今、この領地で最大の『有害騒音源』ですよ」


紬が窓から身を乗り出し、呆れ果てた声をかけると、シリルは花が咲き誇るような、無駄に眩しい笑みを浮かべてマントを翻した。


「おや、寝起きの……いや、お取り込み中の怒った顔も可愛いね。……でも、僕を今すぐ部屋に入れないなら、この楽団に命じて、一晩中ここで『愛の凱旋門』をリピート演奏させるよ? 領民たちが明日の朝、全員寝不足でフラフラになってもいいのかな?」


「……貴様、今度こそ万死に値する! 騎士団を呼ぶまでもない、私がこの手で細切れにしてくれる!!」


アルベルトが壁に掛けてあった愛剣を掴み、窓から飛び降りんばかりの勢いで身を乗り出す。しかし、紬はその室内着の袖をグイと力強く引いて、彼を現実に引き戻した。


「いいです、止めてください、アルベルト様。……あの方をこのまま放置すれば、本当に領内の安眠環境が破壊されます。……入れましょう。部屋に入れて、物理的に黙らせるしかありません」


「紬……! だが、ここは私の私室だぞ! 二人きりの、大切な……」


「わかってます。でも、今のシリル様は、放っておくと朝まで止まらないタイプの発情した……いえ、興奮した猛獣です。カイル! カイル、いるんでしょ! あの方を、一番静かなルートでここまで案内して!」


天井の影が微かに揺れ、カイルの「……御意。やれやれ、今夜も徹夜確定ですね」という諦めを含んだ声が響く。


こうして、アルベルトが心血を注いで作り上げた「二人きりの安眠密室」は、一人のチャラい王子の乱入により、一瞬にしてカオスな修羅場へと変貌を遂げたのである。


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