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聖女の力は安眠のために。〜ブラック企業帰りの私は、現代知識で冷徹公爵を寝かしつけます〜  作者: サバ味噌饅頭
第6章:安眠妨害の第二王子と、不眠公爵の独占欲

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第一話 チャラい王子の宣戦布告

エレノアを(物理的なマッサージで)手懐け、ようやく嵐が去ったかと思われたその時。 サロンのドアが再び、今度はノックという概念すら忘れたかのような傲慢さで跳ね飛ばされた。


「やあ、ここが噂の『天国の寝床』かな? 想像よりずっと、店主が可愛くて驚いたよ。……なるほど、兄上が執着するわけだ」


現れたのは、緩く着崩した最高級の貴族服に、享楽的な笑みを浮かべた美男子――この国の第二王子、シリル・フォン・ルミナリス。 彼は、不快そうに縦ロールを揺らすエレノアを「やあ、ロザリオ嬢。今日も派手だね」と軽く無視し、まっすぐに紬へと歩み寄った。


紬が「……あ、また仕事が増える音がする」と絶望の表情を浮かべる間もなく、シリルはその手を取り、跪いて指先に唇を寄せた。


「君が紬? 兄上の命令で君を王都へ連れ戻しに来たんだけど……。うん、取りやめだ。君みたいな素敵な女性は、僕が独り占めしたくなっちゃうな」


「……どちら様ですか? あと、その手、今すぐ離して。不特定多数と接触している手は衛生的に良くないから。消毒したくなるわ」


「冷たいね! 僕はシリル。この国の第二王子だよ。君の噂を聞いて、僕も最近『寂しくて』眠れないんだ。……ねえ、僕のことも、君のその魔法の指でトロトロに溶かしてくれない?」


シリルの甘い、しかし計算高い声が室内に響く。それは女慣れした誘惑の響きを帯びていたが、紬にとっては、納期当日に笑顔で仕様変更を告げにくる営業担当の「悪魔の囁き」と同種の不快感しかなかった。その瞬間。窓ガラスがビリビリと震えるほどの、凄まじい「殺気」が外から飛んできた。


「――シリル。貴様、そこで私の『主治医』に何をしている」


扉を物理的に破壊せんばかりの勢いで戻ってきたのは、騎士団の公務に行ったはずのアルベルトだった。 彼の銀色の瞳は、かつての不眠時よりも鋭く、そしてドロドロとした嫉妬の炎で燃え上がっている。


「おヤ、アルベルト公爵。早いお帰りだね。彼女に『恋の処方箋』をもらいに来たのかな? 残念ながら、今は僕の初診中なんだ」


シリルは挑戦的に笑い、紬の肩を引き寄せ、己の胸元に抱き寄せた。 アルベルトの剣の柄を握る手に、みしり、と不穏な力がこもる。


「……その女から離れろ、シリル。彼女は……。彼女は、私の安眠を司る、唯一の存在だ。貴様のような遊び人に、指一本触れさせるつもりはない」


アルベルトの言葉はもはや「患者」のそれを超え、獲物を囲い込む猛獣の独占欲そのものだった。 一方、紬は、自分の肩を抱くチャラい王子と、今にも抜剣しそうな冷徹公爵、そしてソファで「……なんですの、うるさいですわ……」と寝ぼけている令嬢を見渡し、深く、深ーい、魂が抜けるような溜息をついた。


「……あんたたち。ここをなんだと思ってるの? サロン内では喧嘩禁止、殺気禁止、ナンパ禁止。これ、利用規約の第一条ね。……王子様だろうと関係ないわ。寝たいなら順番守って、受付表に名前を書いてちょうだい。……あ、王子様は初診料と特別指定料で、価格は通常の三倍ですからね」


紬の「鉄の理性」が、利害と感情が入り混じる四角関係のゴングを事務的に鳴らした瞬間だった。


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