表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の力は安眠のために。〜ブラック企業帰りの私は、現代知識で冷徹公爵を寝かしつけます〜  作者: サバ味噌饅頭
第4章:聖域争奪戦・究極の有給防衛線(前編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/85

第一話 騎士団の「有給休暇」ストライキ

「――我々は、もう以前の我らには戻れないのです、団長!」


フェルゼン騎士団の訓練場。本来なら剣戟の音と怒号が響くはずのその場所に、異様な静寂と、そして「決死の覚悟」を宿した騎士たちの叫びが響いていた。


団長グスタフの前に立ち塞がったのは、騎士団でも指折りの精鋭たちだ。しかし、その手にあるのは剣ではない。……自分たちの「枕」と「毛布」である。


「どういうつもりだ、貴様ら! 訓練の時間だと言っているだろうが!」


グスタフが熊のような巨体を震わせて怒鳴り散らす。


だが、騎士たちは一歩も引かなかった。その瞳には、かつての「過労による濁り」ではなく、紬の施術によって一度だけ味わってしまった「真の休息」を知る者特有の、研ぎ澄まされた光が宿っていた。


「……団長。我々は気づいてしまったのです。一日の終わりに訪れる、あの底なしの暗闇(深い眠り)こそが、真の救済であることを! あの快感を知ってしまった今、不眠不休の強行軍など……あんなものは訓練ではなく、ただの『ブラックな自傷行為』に過ぎません!」


「そうだ! 紬殿が仰っていた、『適切な休養こそが最大のバフ(強化魔法)である』という言葉は真実だった! 昨夜、我々は平均8時間の睡眠を確保しました。その結果、見てください……この、かつてないほどの剣のキレを!」


一人の騎士が、おもむろに剣を振るった。シュッ、と鋭い風切り音が響く。確かに、寝不足でフラフラだった頃の動きとは比較にならないほど精密で、力強い。


「……だが、今日の訓練メニューには『深夜の山岳突破演習』が含まれている。これは公爵閣下からの……」


「お断りします! 紬殿との契約によれば、夜間22時以降の活動は『著しいQOLの低下』を招き、翌日のパフォーマンスを30%低下させるとのこと! 我々は紬殿の教えに従い、今夜は定時で消灯、有給(休息)を申請します!」


「貴様ら……!!」


グスタフは絶句した。 かつては「寝る間を惜しんで剣を振るう」ことこそが騎士の美徳だったこの組織が、今や「いかに効率よく寝るか」を競い合う健康優良集団へと変貌しつつあった。


その頃、騎士団本部の一角にある紬のサロン。 窓の外で起きている「ストライキ」の騒ぎを、厚い遮音フェルト越しに微かに感じ取った紬は、最高級の羽毛布団の中でモゾモゾと身をよじった。


「(……なんか外、騒がしいわね。……まぁ、いいわ。グスタフさんに『現場の意識改革、よろしくお願いしますね』って丸投げしておいたし。……あー、今日もシーツが冷たくて神だわ……)」


紬が「マネジメントの成功」を確信しながら二度寝の淵に沈んでいく一方で、騎士団の機能は「健康意識の向上」という、国防上の新たな、そして最も平和的な危機によって麻痺し始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ