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聖女の力は安眠のために。〜ブラック企業帰りの私は、現代知識で冷徹公爵を寝かしつけます〜  作者: サバ味噌饅頭
第3章:安眠サロンへようこそ(※公爵専用……のはずが?)

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番外編 『第二回・安眠維持定例連絡会議』

場所は前回と同じ、紬の家からほど近い森の天幕。しかし、中の空気は前回よりも一段と重く、そしてどこか「異教の儀式」のような敬虔さに満ちていた。


「……それでは、第二回会議を始める。議題は『紬様のQOLクオリティ・オブ・スリープの向上と、不確定要素の排除』だ。カイル、直近の動向を」


カイルは、もはや隠密の報告書ではなく「聖典」でも扱うかのような手つきで、一冊の手帳を広げた。


「はっ。ここ数日、紬様が寝言で発せられる『ノルマ』という単語の頻度が、15%減少しました。代わって『二度寝最高』という、非常に幸福度の高い詠唱が確認されております。……ですが、問題が発生しました」


カイルの言葉に、アルベルトの眉がピクリと動く。


「……何だ。彼女の眠りを妨げる不届き者が現れたのか?」


「はい。……閣下です」


「……私だと?」


カイルは無表情のまま、冷徹に事実を突きつけた。


「昨夜、閣下が紬様の寝顔を覗き込みながら漏らされた**『……ようやく、捕まえた』**という、重苦しい独り言。あの執念の混じった低周波の振動が、紬様のレム睡眠を0.2秒阻害しました。紬様はその直後、眉間に皺を寄せ、『……この低音、会議室に響くから嫌なのよね……』と、かつての戦場の記憶を呼び起こされておりました」


「なっ……!!」


アルベルトは、雷に打たれたような衝撃を受け、その場に膝をついた。 「救いの主(眠り)を確実に手中に収めたいという私の執着が、彼女にとっての騒音ストレスだったというのか……!」と絶望する公爵。それを見たエレノアが、扇子で口元を隠しながら勝ち誇ったように笑う。


「おーほっほ! だから申し上げましたのよ、アルベルト様。執着だの独占欲だのは、安眠の前ではただの『ノイズ』に過ぎませんわ! わたくしを見習いなさいな。わたくし、昨日は紬様のために、一切の音を立てない『究極の無音スリッパ』を開発させて献上いたしましたのよ!」


「エレノア……貴様、また勝手なものを……」


「あら、紬様は『これ、足音が消えて最高ね。会社に欲しかったわ』と、涙を流して喜んでくださいましたわ! これこそが真の守護ですわよ!」


アルベルトは悔しげに拳を握り、カイルを見上げた。


「……カイル。至急、発声訓練のやり直しを命じろ。彼女の眠りを妨げない、超音波に近い領域での会話術を習得する。……私の『安らぎ』を、不快感で逃すわけにはいかない」


「……採用です、閣下。ついでに、閣下の心拍音も紬様に聞こえている可能性があります。緊張による動悸を魔力で抑制する特訓もメニューに加えましょう」


「ああ、頼む」


もはや人間を辞める領域にまで踏み込もうとする主従を、エレノアは「……少し、引きますわ……」という顔で見つめていた。しかし、彼女もまた、紬に「肌ツヤが良くなった」と褒められたい一心で、私兵たちに「森の鳥をすべて遠くへ移動させなさい!」と、無茶な命令を出し続けているのである。


「……結論。我々の『切実すぎる依存』が紬様の眠りを妨げることは、最大の不敬である。……各員、さらなる『気配の抹消』を徹底せよ」


「「了解!!」」


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