3.戦隊ごっこは進化の後で。
お初目のかかります。前書きを落書き帳扱いすると決めたフグ(魚類)です。
それはそれとて……後書きのステータス、もしかしなくても必要ないのか……?
《しゅ〜りょ〜!お疲れ様でした♪》
陽気なサ声くんの声が鳴り響く。
第一ラウンドは無事に終了したようだ。
《ではここでハーフタイム……いや、三試合ありますからサードタイムですかね? 実はまだ次の試合が準備できていなかったりもするので……
とりあえず、ここで休憩を挟みたいと思います♪》
このテストは突貫工事で行なわれているようだ。
しかし、休憩を挟んでくれるのは嬉しい。技能を使ったことで消費したMPゲージの回復をさせたかったところだった。
……そうだ。今のうちに経験値をステータスに振っておこう。
ゴブリンの中では強めであろう奴らを計五体も狩ったのだ。それも最初期の種族で。手に入った経験値は中々の量である。
これだけの経験値があれば、新しい『技能』……いや、今の私は初期も初期なのだし、次の種に進化できてもおかしくない。
カイは自身のステータスから進化についての項目を探す。
「これか。えーっと、今の私が『ほつれた人形』だから次の進化先が……これか。『種族:人形』……おお、やっとほつれた状態から脱せるのか。」
単にほつれを改善させただけのようにも思えるが、歴とした進化なのだろう。
私はゴブリン討伐で手に入れた経験値の殆どを消費して『人形』への進化を行う。
《『種族:人形』への進化を行いますか?》
サ声くんの声が頭に響く。
「もちろん!」
その瞬間、私の体が発光し始める。
視界の端のステータスを見ると、私の種族が既に『人形』へ変化している。どうやらステータスから先に処理が行われていくようだ。
《『種族:人形』への進化が完了しました。
条件を満たしました。『種族:指人形』への進化が可能となりました。
条件を満たしました。『種族:着せ替え人形』への進化が可能となりました。
条件を満たしました。『種族:ヒトガタ』への進化が可能となりました。
条件を満たしました。『技能:リメイク』を習得しました。
はい。以上で進化のリザルトは終了です♪》
色々な進化先の解放と新しい技能の習得があった。
進化先に関しては今は経験値がほぼゼロに等しいので後回しにする。どうせ今見たところで何かできる訳でもなかろう。
だが、新しく習得した技能は別である。
これは次の試合と今後の私のプレイスタイルに大きく影響してもおかしくないものだ。事実、私の現状はほとんどが技能頼りのプレイングなのだ。
そんな新しく習得した技能だが、『リメイク』というものらしい。
だが、実際に使ってみようと口に出してみても効果が今ひとつわからない。
本当は攻略本の内容をそのまま読みながらプレイするようで嫌だったのだが、ここは仕方なくサ声くんに聞いてみることにした。
《やっと質問してくださいましたか♪》
サ声くんが嬉しそうに声を上げる。うちのサポート音声、段々とかまってちゃんに変貌してはいないだろうか。いや、最初からだったか。
少しずつだが、確かに人間らしい反応へと変わっているAI音声についてくだらない事を考えていると、サ声くんは説明を始めていた。
《『リメイク』は主に再作成、再構築などが可能になる技能です。
一部の種族と技術系職が習得可能な技能です。具体的にどのような活用法があるかと申しますと、自身の作成物などをリセットし再度作り直すことが可能となる、などですね♪》
『自身』が『過去に作った』ものであればいくらでも修正をかけられるようだ。試しに私が『工作』を習得した際に作った木の剣に『リメイク』を行なってみる。
「『リメイク』」
すると木の剣は一時的に元の木の棒に戻り、木の棒と私の間にステータスの画面によく似ている半透明のパネルが表示され、そこには目の前にある木の棒と同じ物が二次的に映っている。
これで作業しろということだろうか。
パネル上の木の棒に触ってみる。すると木の棒は私の指先に沿って粘土のように形を変えていくではないか。
……楽しいな、これ。
元々が木製の硬い棒であるはずなのに、粘土……泥以上に柔らかくうねりながら姿形を変えていく。
次第に操作も慣れてきて今ならどんな形にでも変貌させられるだろう……と思った刹那、唐突に私の視界が暗転した。
*
《あ、起きました?おはようございます♪》
毎度お馴染みのサ声くんの挨拶と共に目が覚める。
「もしかしなくもないんだけど……私また死んだ感じ?」
《死んだ……というよりは気絶ですね。
MPゲージを初めて消費し切ってしまったことで一時的にこの世界と意識の繋がりが断ち切られた感じです♪》
なるほど、MPは消費しすぎると無防備な姿を周りに晒してしまう訳だ。今後は気をつけよう。
《『睡眠無効』があれば気絶も防げるのですが、無効系の『技能』は今のカイ様では習得不可能ですね。出直してきてください♪》
聞いてもいない事を知らされて出直しを喰らった。解せぬ。
しかし……そうか。
「サ声くん、『リメイク』のMP消費って時間経過で増えていくタイプ?」
《そうですね。というか、ステータスから自身の『技能』の使用条件などは確認できますよ?何やら必死で試行錯誤されてたご様子ですけど》
「んなっ……」
本当だ。各技能の下に「説明を開く」という表示があった。
今更感が満載の説明を事後に受ける。これ以上に時間の浪費への後悔が募ることはない。
「……サ声くん、君ってサポートAIなんだよね?」
《はい。私はカイ様専属の管理・システム・サポートAIですよ♪》
「じゃあさ、次からはそういう大事なことは先に教えてくれないかなぁ? 今のままじゃ全くサポートできてないよぉ……」
サポートAIが全然サポートしていなかったことにがっかりしつつ、私は自身の『習得可能な技能』の欄を眺めていく。
すると、とても使い勝手が良さそうで、習得に必要な経験値も少ない……などという超優良物件があった。
どうせサポートAIはあてにならないので質問はしない。
私が新しく取った技能は『収納』である。
そう、数々のライトノベルを読み込んだ私だから断言できる。絶対に取って損はしない。
早速、倒した後から私が気絶している間も放置されていたゴブリン達を『収納』してみる。
ゴブリンの死体はスッと消えてしまい、私の『収納』に『アーマードゴブリンの死体:良』などが追加される。ゴブリンの死体は良質なようだ。
その後も付近の木の棒や石ころなど次々に『収納』に入れていくが、MPの消費は確認できる限りでは無く、量の制限がいつになっても引っ掛らない。おそらく無制限である。
しかし、無制限となると「この世の全てを『収納』してやるぜ!」なんてプレイヤーも出てきそうだ。私はやらないが。
*
《第二ラウンド、開始いたします》
十分な休息を取り、サ声くん側も準備が完了したとのことで第二ラウンドが始まった。
毎度同じく、広場のように拓かれた空間に突如としてヒビが入る。
果たしてヒビの中から現れたのは蠢く泥の山……塊?であった。
《召喚される敵対モブはインスタントクレイゴーレムのみの計五体です♪》
先ほどと同じく五体の魔物が相手のようだ。それにしても……
「即席の粘土のゴーレムねぇ……名前がやけに長くて説明くさいな」
《ゴーレムですから長ったらしい名前なのは仕方ないですね。あえて理由付けするなら、初めて召喚された相手が学者のようなヒトとかだったんじゃないですか?》
「へーなるほどー」
サ声くんの話は半分聞かない程度に聞き流す。
そうこうしているうちにゴーレムたちは全員の召喚が終了していた。
私は第一ラウンドと同じように木の上で相手方の出方を伺っている。すると、ゴーレムたちが唐突に一箇所に集まり始めた。
「ん? どうしたんだ……?」
ゴーレムたちが一つの大きな泥の塊になっていく。まさかこれは……
「合体か!」
気付いたときには既に遅かった。
ゴーレムたち……いや、もはや一体の巨大ゴーレムとなった奴は森の木々よりも高く、大きい存在へと成り果てた。
まさか、この世界のゴーレムが戦隊モノのロボットのような性能をしているとは!
……それにしては合体するタイミングが早すぎるように思えるが。
巨大泥ゴーレムは静かに佇みながらもこちらを見つめている。
確実にさっきの驚愕の叫び声で存在がバレている。しかし、覆い茂る木の葉と私の小さいサイズで見つからずに済んだようだ。
だが、場所がバレていなくとも、私が奴を倒す手段が思いつかなければ意味がない。
とりあえず、行動しないことには何も始まらないので『糸操作』で糸を泥の隙間からゴーレムの体内に侵入させる。
ゴーレムも最初は無反応のままであった。だがしかし、体のどこかにあったらしい硬い石のようなものに糸先が触れたその瞬間。奴は唐突に暴れ出し、周囲の木々を薙ぎ倒し始めた。
「……核だな。コアに違いない」
こういう無生物系……それも合体する奴の弱点というものは大抵がコアやエンジンなどのエネルギー源だ。
このゴーレムも不可視の相手に体内の弱点を触られたことで、見えない相手を倒そうと自棄になっているに違いない。
私だって幽霊とかそういう類の相手に体内の綿を触られたら絶叫して暴れ回る。
巨大なゴーレムは決して意図してではなかろうが、木々を薙ぎ倒すことで広場の拡大を行っている。
このままでは私の位置まで拡がるのも時間の問題だ。
もう一度でもあのコアに触れることができれば何か倒すための布石が見つかるかもしれないが、暴れ回る泥の怪物の隙間にどうやって侵入すればいいのか、という話である。
少なくとも奴が動いている状態では糸の侵入は不可能。動きを止めるのには何か、注意を引く囮が必要だ。囮は私の活動の目隠しにする為にも私より大きいか多いモノがいい。
……果たして本当にできるのか?
私は今、道徳的にも自身の能力的にもできるかできないかギリギリの案が思いついた。
実行するには少し……いや、かなり躊躇うが、この案が実行できなければ私は死ぬだろう。
どうせリスポーンできる……などと言うのは甘えである。第一ラウンドはノーデス・ノーミスのパーフェクトゲームだったのだ。だったら第二、今後確実にある第三ラウンドもパーフェクトゲームで終わらせたいじゃないか。
だったら……!
私はすぐさまに自身の『収納』の中からアーマードゴブリン二体の死体を引き摺り出す。
ゴーレムはもう目の前まで迫って来ている。
「上手くいってくれよ……『糸操作』!」
ゴブリンの死体が私の糸に吊られて空高くへ舞い踊る。ゴブリンの頭、胴、手足に繋がれた糸はここら付近でゴーレム以上に最も高い樹木の枝に引っ掛け、空中に吊るす。
その姿はさながら操り人形そのものであり、ゴブリン特有の緑色の体とクズ鉄の鎧が擦れ合って溢れる不愉快な金属音が合わさることで、ゴーレムの注意を引くには十分な案山子になった。
グォゴガァァァァ!
怒り狂った? ゴーレムは傀儡ゴブリンに向かって無鉄砲に突進していく。
……まだだ。
……あと少し。
「来た……ここだぁぁぁ!」
私は糸を操れる限りの力で引き戻し、ゴブリン達をさらに空高く飛翔させる。
大樹の木の表面が見かけ以上にとっかかりが少なかったこともあり、糸とゴブリンは私の命令をしっかりと遂行してくれた。
巨大ゴーレムの枷が外れていたであろう全力で出した速度はゴーレム自身の重さも合わさりそう簡単には減速はできない。
ゴーレムは辺りの木々を蹴散らしながら大樹へと近づいて行き……
ドゴォォォォォン……
凄まじい衝撃と轟音を辺りに撒き散らして撃沈した。前を見ず、意識を別のモノへ逸らして走るからそうなるのだ。
「やったか……!?」
私は本来ならば勲章ものであるゴブリン達――なお本人らは任務以前から死亡していた模様――を『収納』した後、大樹と共に砕け散った泥の怪物の末路を追っていた。
小さな体をエッホエッホと動かして大樹の元へ辿り着いた時。
果たしてそこに居たのは随分と小さくなった――元の大きさになったとも言える――泥ゴーレムが一体と剥き出しとなったコアであろう、小さく緑色に輝く宝石だった。
「最終決戦って訳か……」
どんな戦隊ものや〇〇マンでも巨大化した怪物を倒すと小型化した本体が姿を現すシーンは存在する。
そしてそういう小型化した奴に限って、小型な体による敏捷性と謎の超攻撃力を持つのだ。決して油断してはならない相手だ。
私は『収納』から暇つぶしに集めておいた石ころの塊を糸で絡めとり、モーニングスターのように振り回す。
振り回すが、所詮私はシステムの補助も実際の技術もないただの一般人なのである。なので自ら攻めに入るなどという蛮行に走ることはできない。ただ相手が攻めて近づいて来た所へ一発かますのが精々だ。
ゴーレムと私の間に静寂が訪れる。
先に仕掛けたのはやはりゴーレムだった。というより、私側から仕掛けるなど問題外だ。
ゴーレムは睨み合いの間に自身の体へ辺りに散らばった泥を集めていた様子で、少しだけ体が肥大化しているが宝石を守れるほどの泥は回収できなかったようだ。
「弱点露出は叩いてくれって言ってるようなものだぁ!?」
決め台詞が上手くいかなかったが、私の目論見は達成されたと見て間違いない。
疑似モーニングストーンを投げつける。
解き放たれた石飛礫は一瞬軌道がズレていたように見えたが問題ない。
『糸操作』で少し命中補正をかけてやれば……
石の、それも尖った部位がものの見事に露出された玉に衝撃を与える。
グシャァ……
《戦闘を終了しました。
経験値を獲得しました。
『ゴーレムの心臓:劣』を獲得しました。》
ASMRバージョンがあれば少しは中毒者が付きそうな音を立て、私の泥ゴーレム初討伐は終了した。
『Rebellion』
【カイ】ステータス
種族:人形
性別:なし
状態:健康
技能:裁縫、糸操作、工作、状態異常:弱、リメイク、収納
称号:なし
経験値システムは最近映画化まで行った某ピクセルキューブゲームと似たような代物です。レベルが上がるほど溜まりにくくなるゲージ式。技能習得などでレベルが下がります。
なお、粘土ゴーレム群体の唐突な合体は召喚前に原因がある模様。




