第3話 邂逅
「・・・あー、こんにちは。私、名前、アキラ。君たちに危険、ない。言葉、通じていますか?」
自分の名前を語るのに、『アキラ』の方が自然に出てきた。
記憶を構築する際、メインとして上書きされたのがアキラだったようだ。だが、それでは繋がらない部分が発生する。それを、ジェイクの記憶を後から繋げることで補填したようだ。
正直よくわからないが、AIが記憶領域を何とかしたらしい。
しかし、ジェイク的にはどうなんだ? って言っても俺か。 まぁジェイクの記憶としてもよくわからないし、もともと自分とAIが混在しているような生き方をしてきた。別の記憶が生えた程度問題ない、か。ジェイクもなかなか神経が太い。
さ、そんな事より彼らの反応を見よう
アキラの言葉にランス達四人は顔を見合わせた。
最初に口を開いたのはアルヴァイン。
「何ともたどたどしいが、理解はできるぜ。俺はアルヴァインだ。わかるか?」
「あなた、名前はアルヴァイン。理解できます」
「話は出来るみたいだな。・・・アキラ、だったか。率直に聞きたい。ここは何だ?」
「ここ・・・は、揺り籠・・・だった。 xxxから落ち、大地に含まれ・・・た」
「うーん、ちょっと何言ってるか分かんねーな」
どうやら時の流れとともに言葉が色々と変わってしまったらしい。AIが構築した想定言語とはかなりのズレが生じているようだ。 ズレを修正するためにも、向こうの話をなるべく多く聞いて、修正していかなくては。
「すみません、いま、学ぶ、進める。さあ、話をする」
「俺たちの言葉と、似てるようでなんか違うんだよなー」
「ねぇ、アルブール地方あたりの方言なんじゃない?」
赤い髪の女性。
確か、名前はエルザと言ったか。
「私、会話、学習する。 なんでも 話 する」
「よくわかんないけど、たくさん話したら言葉を覚えるって事?」
首をかしげながらケモミミ女性が聞いてきた。ちょっと距離が近い。
「はい」
「いやいや、一瞬で言葉を覚えるとかどんな天才だよ」
アルヴァインと呼ばれた男性は懐疑的だ。
しかし、とんでもないイケメンだな。
「まぁ、とりあえず会話を続けてみましょうか」
エルザは冷静に物事を判断できるタイプなようだな。
自分で言うのもなんだが、こんな怪しい人間を前にしても落ち着いて対応できるとか、なかなか肝が据わっていると思うぞ。
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そんなこんなで会話をする事1時間・・・くらいか。
「・・・驚いた。本当に言葉が流暢になっていっているわ」
エルザが驚くほど、会話ができるようになっていた。
『言語修正は87.6%ほど完了しています。推測による補完制度も向上しています』
さすが未来の超高性能AI。俺が生きてきた時代のヤバい機械翻訳とは精度が違い過ぎるぜ。
「もうランスロットより喋れるんじゃない!?」
ケモミミ女性が先ほどからめっちゃ無口な男性の方を向いてニヤリとする。
「・・・俺は話せないわけじゃない。喋るのが好きじゃないだけだ」
おお、初めて喋った。ものすごいイケボだ。クールキャラってやつか?
「まったく、ちょっと会話しただけでしゃべれるようになるとか、どんな天才だよ・・・ ま、世の中にはそういうすげー奴もいるって事なんだな。 ・・・で、さっきは分からなかったからもう一度聞きたいんだが、ここは何だ?」
とアルヴァイン。
うーん、言葉が通じると言ってもなぁ。
事実を伝えたところで絶対に理解できないだろ。設定、設定を考えよう。
転移・・・そうだ、転移だ。まずこれが通じるか確かめて、伝わらなければ別のアプローチだな。
「転移・・・
転移は分かりますか?」
「ああ、わかるぜ。一瞬で長距離を移動するんだろ? 使える奴とかは限られて、というか殆ど国の管轄で管理されているものらしいから、詳しく知っているわけじゃないが、無いわけじゃない」
「良かった。私はもともと別の場所で研究をしていました。しかし、突然のトラブルに巻き込まれ、このようなところに研究施設ごと強制転移させられてしまったのです」
「研究施設ごとの強制転移!? さすがにそれは聞いたことのない魔力災害ね」
「はい、私もそのような経験は無かったので・・・
そして、その後地中深くに閉じ込められたことが分かり、私自身も負傷していましたので、修復しつつ永い眠りについていたのです」
「そう、そんな事になっていたのね。永い眠りにというのはちょっと気になるけれど、どうやってここから出るつもりだったの?」
「それが、脱出する手段は全く分かりませんでした。正直、私を見つけてくれて助かりました」
そんな話をしていると、ケモミミ少女が突然抱きしめてきた。
「危なかったんだね、怖かったんだね~!」
おお! なんか柔らかい感触が!!
ってソウジャナイ、冷静になれ、俺。
何とか設定が通じたようだ。
だが魔力災害? なんだそれは。 そもそも魔力って何だ?
そんなもんジェイクの記憶には無い。俺のファンタジーの記憶にならあるが、それは異世界の話だろう?
これは異世界転移ではないはずだ。
少なくとも俺のいた世界と時間軸では繋がって・・・・・ん?
もしやあの転移で世界を超えたのか!?
『不明。結論を出すには様々な調査が必要です』
AI様もこう言っておられる。
やはりここを出て、色々調査せねばならんようだ。
「本当に、助けて頂いてありがとうございました。このまま埋まっていては、生命維持装置もやがて使えなくなり、そのまま死ぬところでした」
「よかったね~! 私たちが命の恩人だよ!! 何かお礼してくれていいよ!」
「お前は恩着せがましい事言うな!!」
「そうよ、冒険者たるもの、危機に際して助け合うのは当然でしょう」
1人は無口なようだが、他の三人はよくしゃべる。性格もなんとなくつかめてきた。
それにしてもお礼か・・・
助けてもらったからには当然だと思うが、ここにはこの宇宙船の残骸しか無いんだよな。
何かないか?
『戦闘用の装備がいくつか、それとレーション、また、身なりから推測する文明レベルを考慮すると、この船体の素材そのものがオーバーテクノロジーであり、貴重な物資であると思われます』
なるほど、船体そのものか。
装甲なんかは、宇宙でしか生成できない特殊な反重力加工が施された超圧縮チタニウム合金だし、確実にここには存在しないレベルの逸品だろ。
武器は・・・マズいだろうな。
見るからに剣とかそういうのを使ってるのに、レーザーライフルとかイカンだろ。これは誤魔化しながら俺が使うしかない。レーションもアリだな。見た目はアレだが味は悪くない。俺は食べたことないけどな。ジェイクの記憶だ。
「本当にありがとうございました。お渡しできるものはほとんどないのですが、この施設の外壁そのものが貴重な素材だと聞いています。持っていかれてはいかがでしょうか」
「うお、マジかよ!? 気になってはいたんだよ。見たこともないし、何より魔法反射能力が付与されてるっぽいんだよな! 超貴重だぜ、これは!」
「アルヴァインったらいつの間に鑑定を・・・ どうもありがとう。それじゃ、遠慮なく頂いていくわね。でも、本当にいいの? あなたにとってここは大事な場所なんじゃない?」
「あ、大丈夫です。もうここに戻ってくることも無いでしょう。 何より、この施設を地上に運び出す方法なんて全く思い浮かびませんから」
「そう、なら良いけど。 確かに、こんなダンジョンの奥なんてなかなか来れないでしょうし、施設を運び出すのも無理よね」
「はい、なので好きなように使って下さい」
・・・・・・・・・
まてまてまてまて!!
冷静に話しているが頭の中は気になるキーワードで一杯だ!
ダンジョン? 魔法反射能力が付与されてるって何だ? 何それ? ジェイクの記憶にも無いんだが。
そんなのいつ付与された?
ってか魔法って何だ?
『そのような機能は思い当たりません。また、魔法というワード自体が何を意味するのか不明。推測も不可能です』
だよなぁ。
三人を観察していると、不思議な事に気づいた。
「あの、手にした素材が消えたように見えたのですが?」
近くにいたアルヴァインに聞いてみる。
「・・・?
ああ、インベントリを知らんのか。エルザと俺は優秀な魔法適正でな、結構な容量のインベントリが使えるんだぜ! 冒険するなら、使える人間を一人は確保しておきたいスキルの一つだな!」
「ちょっと、私はともかく、自分の事を優秀とか言わないでよ」
エルザは冷めた目で見ている。
「インベントリって言うのは空間魔法の一種よ。自分の魔力を捧げて確保した別の空間に物を収納して出し入れできるのよ。レベルが高いほど、インベントリの容量が増えたり詳細な設定ができるようになるの。私のは容量が約24立方メートルに、時間停止機能を付けられるわ」
「ほら、見せてやるよ。 こうやって、出し入れできるんだ。便利だろ?」
その動作をじっくり解析する。正直俺にはさっぱりわからない。魔法を使って別次元に収納してるって言われてもなぁ。なんぞそれ・・・
ジェイクの知識によると、超科学だと別空間への転送で似たような事は再現可能だが・・・
AIは解析できただろうか。
『解析不能。消えたところから全く観測ができなくなります。また、消えていく部分の観測も出来ません。未知のエネルギーによる、何らかのフィールドが展開されていると考えられます。アキラの知識も組み込みました。魔法や魔力とやらを観測するには、新たなセンサーの開発が必要なようです』
知識っつっても空想上だぜ?
それにしても・・・
魔法? 冒険!?
ワクワクワードで一杯じゃねーか!
面白い展開になってきたな!!




